共有されている合鍵を使い、施錠されている玄関を開ける。
今日は珍しく靴は一足。そこに新たに一足起き、板張りの廊下を歩き、リビングへと進む。
「おーい⬛⬛、林檎貰いにきたぞー」
慣れ親しんだ名前を呼ぶが返しはない。こういった場合、大抵寝ているか何かに没頭しているかだ。だが、今回はそのどれとも違う。
「二度目だな」
『!?』
傍観していたそっくり精霊が彼の発言に驚愕する。
この場は⬛⬛の底にあった記憶の再現。ここにいる彼の親友だって、だって·········いいや、⬛⬛の最期の記憶に
であれば、この男は一体―――
「··········見てるな」
『·········ッ!』
霊体化と同じような状況の自分へと黒い瞳が向けられる。
―――ありえない。絶対にありえない。
第三者視点とも言えるような自分を視認できる筈がない。そもそも視線を感じるというのが可笑しい。
思わず喉を鳴らし、視線を逸らす。
「まあいっか。⬛⬛の顔でも拝みに行こ」
興味が失くなったのか、踵を返す。歩を進める先は二階にある⬛⬛の部屋。そこに彼が居るというのは知っているようだ。
そっくり精霊もそれに続くように階段を上がる。
「入るぞー」
いつものノリでノックなしで扉を開ける。
扉の先にあるのは首を吊った⬛⬛の姿。一回目のような驚きはあまりないが、どこか納得したような落ち着いた表情で語りかける。
「
まぁ、言っちゃ悪いが·········こうなる気はしてた。というか、噛み合わせが悪かったこうなるって確信してたさ。お前の性格もだいたいわかるし」
俯いた状態で⬛⬛の顔は見えない。意識があるかも怪しい。だが、だからこそ語りかける。
彼にとってただの独り言であり独白である。
「でも、お前なら乗り越えれると信じた。信じてた。
·········変な信用で親友亡くしたら、たまったモンじゃないよな。これから先、俺は独りぼっちかぁ········狂っちまいそうだ」
はは、と自嘲の声を漏らす。
自責の念も後悔もないが、唯一の親友を亡くしたことは酷く淋しい。家族よりも解り合った仲の友ほど得難いものはない。
「後は·········家の妹泣かせた事とか、お前は悪くない事とかについて小一時間語りたいが、時間だ」
『時間?』
この空間に終わりなどない。⬛⬛の心意が潰えるまで永続的に見せ続ける空間だ。彼が言う終わりなどない。
「人を救う、なんて柄でもない。俺は隣で笑い合うことしかできないからな。
―――だから、本職に任せる」
親友が上げた右拳の人差し指を立てる。指先は言わずもがな天井に向けられている。
「俺はずっと
―――世界が硝子のように割れる。
それに伴い、首を吊っていたロープが消え、体を支えるものが失くなった⬛⬛が地面に落ちる。
元の真っ白な世界になると共に何かが落下し、轟音が響き渡る。
左腕が通っていない裾が靡く。金色の瞳が希望への転換を指し示す。
「救いを求める声を聞き、駆けつけた。
天の逆手持ち二人による必殺の一撃を受けた御影はぶっ飛ばされ、樹海の根に若干ふらつきながら降り立つ。やはり、着実にダメージは蓄積されていっているようだ。
(おいおい。ふらつく程度ってどうなってやがる。どんだけの幸運を勝ち取っての一撃だと思ってんだ)
「来るぞ――ッ!!!!!」
棗の叫びにハッとする。
即座に二振りを構え、神速に対応すべく歌野に目配せする。が、前方の勇者など見もせず後方の結城達へと向かう。
「わわっ!!?」
御影の突進を左にダイナミック緊急回避*1をすることで避け、更に左手で根を押し、半回転することで体勢を直そうとするがそこへ御影が迫る。
「友奈ッ!!」
結城の胸への刺突を二振りの剣を用いて上に弾く。そんな小細工関係なしと力任せに振り下ろす。
受け止めようと試みるが容易く二振りの剣は砕け、精霊の加護すらも斬り裂く。トドメに振り上げ―――
「夏凛ちゃん!!」
振り上げられる刀の側面を裏拳で撃ち抜き、辛うじて当たらない軌道へと逸らす。青い閃光が頭部を射止めるが最早反応すらしない。
刀が弾かれたのなら肉体で。
「あぐっ!!?」
「っ······!!」
目も止まらぬ速さで結城の横腹を精霊の加護を砕きながら蹴り飛ばされる。隣にいた夏凛を巻き込みながら根へと叩きつけられる。
「―――――――――」
気絶した結城と夏凛の息の根を止めるため、切っ先を心臓へと―――
「うっ、あぁぁぁぁぁ!!!!!」
巨大な血のように赤い拳が御影を殴り飛ばす。
大江山にいたとされる鬼の頭領である酒呑童子をその身に宿すは高嶋 友奈。身に余る力は身を壊すとは良く言ったもので、コレもその例に漏れず使い続けると共に体が軋んでいく。
「お前なんか、―――
殴る、殴る、殴る、感情のままに暴力を振り回す。
これでは御影 士郎、ひいては天の神としていることが同じである。
人類悪の否定とは人類の否定でもある。人類悪は人々の獣性によって形成される。即ち、ここまで築いてきた物の根本だ。それを否定するなど··········本物の阿呆だな。
「ハァァァァァァァァ!!!!!」
天の逆手と切り札によって、先程の勇者パンチ以上の威力なのは確実。だが、ただの怒りの発散である一撃が人類悪に届く筈がない。
「ガッ······!!?」
連撃の上から精霊の加護を斬り裂き、右肩へ右斜めから蹴りを入れる。空中であったためそのまま根へと叩きつけられ、あまりの激痛に意識を手放した。
一瞬にして三人が気絶。それも主軸であった天の逆手が両方とも戦闘不能となれば、絶望一歩手前である。
「ッ、撤た―――」
全滅だけは阻止しなければいけない。まだシャルルマーニュが復帰してから総出でかかった方が勝率が高い。これ以上勝率を下げないためにも撤退を選ぶ。
が、撤退を言うよりも早く小銀が根から出て御影へ駆け出すのが視界に写った。
「バカ野郎ッ!!!」
さっきは園子のナイス援護によって大事に至らなかったが二度目はない。必ず殺しにくるだろう。
100mを1秒も経たない内に0とする。
「へ―――?」
既に置かれていただろう切っ先が精霊の加護を貫き、胸を貫くべく迫る。
急ストップはできない。自分の方から自身の命を取る切っ先に向かってしまう。本当の本当にどうしようもない。諦めて走馬灯に耽る程度しかやることがない。
―――右肩が力強く押された。
「ッ、―――須美!!!」
左腹から刺され背中から刀身が飛び出る。これで動くにしても刀を抜くという一工程が必要となる。つまり、絶好の的!
避けられない
神樹館の勇者が振るう武器は『殺される前に殺す』を
溜めこそ必要だが、当たった箇所を文字通り消滅させる矢を放つことができる。だからこそ村正はここぞという時まで残しておきたかった。初見で殺す、これが一番なのだ。
「は·············?」
目の前で頭部に当たったのを見た。なら、次に見えるのは消失した場所から出てくる脳味噌の類ではないのか?
なんで、無傷で―――
村正に突き刺さっていた刀を抜くため、上へ振り上げる。
左肩から腰より少し上の所まで裂ける。血が噴水のように吹き上がる。
辛うじて体としては繋がっているが全く左腕が動かない。出血が止まらない。
「·············。」
“···········勝てない。”
どんな策を弄してもここから勝ち目がこちらに傾くことはない。万策尽きた。
でも、このままじゃ皆が·········
「村正さんっ!!早く逃げないと!!!」
御影が俺にトドメを刺すべく刀を上げ、振り下ろす。
やけに音が遠く聞こえる。それに時間の流れもゆっくりだ。死にそうになったことは何度もあるのに、初めての感覚だ。
これが人類悪と戦うということなのか。
一向に首が落ちない。いくら時間がゆっくりに感じるとしても明らかに可笑しい。
シャルルマーニュが復帰してくれたのか?でも、それだけじゃ御影を倒すには―――
「貴様のその面は見るに堪えん」
近くにいる銀の声でも遠くにいる歌野の声でもない。何なら勇者部の全員に該当しない声が鼓膜を打つ。けれど、三年間を共にした声でもある。
「
だがまあ、ここはコレで良いか」
そう言う絹袴を着た男性の手には乃木 若葉が愛用していた生太刀が握られていた。
そもそもの話、生太刀は大国主命が須佐之男から奪い取った品であるとされている。
「それでは続きをしようか、御影 士郎。四国の大英雄と謳われし、その雄名*2。我が雄名に届くか?」
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シャルルマーニュ
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御影 士郎
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⬛⬛ ⬛⬛
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結城 友奈
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東郷 美森
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犬吠埼 風
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犬吠埼 樹
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にぼっ······三好夏凜
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乃木 若葉
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上里 ひなた
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高嶋 友奈
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郡 千景
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土居 球子
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伊予島 杏
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白鳥 歌野
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藤森 水都
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乃木 園子
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三ノ輪 銀
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その他(北野とか柚葉とか)