気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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『俺の親友を救ってやって欲しい』

 救いの声を拾い上げようと思った矢先に浮上してきた声。遠く遠く、世界軸すらも違う場所から拾い上げたこの声はたった一人の親友のために救済を求める声だった。
 断る道理などなく、その親友の元へと駆けつけた。




創生前夜【48】

 

 

 

 

 

 

 どのようにして⬛⬛の精神世界内に来れたのか、どのようにして⬛⬛を救うのかなどはどうでもいい。ただ問題なのは―――

 

「救いの声など挙がる訳がない―――ッ!!

 これは当然たる帰結だ、然るべき結末だ!!」

 

 救世主の言った事が事実とするなら、救いを求めたのは⬛⬛ということになる。赦し難い甘えだ。

 自身の身から出た錆だと言うのに助けを求めるなど、それこそ愚者のすることだ。

 

「挙がるだろ」

 

 救世主は精霊の言葉を一言で切り捨てた。

 

「愛する人を想う、親しい人を想う、名前だけしか知らない人を想う。誰だって、悲劇に救済をと祈るんだ」

 

 泣かないでいて欲しい、笑顔でいて欲しい、幸せであって欲しいという願い。

 何時如何なる時も誰かを想う。

 我儘でも自己中でもいい。おせっかいだったとしてもいいじゃないか。

 

「っ······だが、この状況を知っている者など誰も―――」

 

 いや、いる。

 埋め込められた⬛⬛の記憶に一人だけいる。⬛⬛の唯一の親友にして神秘もクソもない世界で究極の一に座し、会話以外で疑問符を用いないと評されている者。

 彼であれば、どのタイミングで拾い上げられるかも定かではない救いの声を、救世主が聞こうとした瞬間に挙げることができる可能性がある。

 

 何処からの出なのかはわかった。本来なら到底ありえない話ではあるが、アレが絡んでくるのであれば十分ありえるのだろう。

 

「それで?どう救済を成すんだ?

 俺は言わば神の遣い。根底となった者にしか倒されない制約を基に作られた破壊不能な物体だ。救済しか頭にない舞台装置がどう退ける?」

 

「おいおい、俺は救世主だぞ。退けるなんて物騒な話すんなよ。俺ができる事と言えば精々―――」

 

 救世主の手に蛇行剣が握られる。

 仕掛けてくるかと精霊は身構えるが、切っ先は精霊へとは向けられず、逆手持ちによって自身の胸へと向けられる。そして、勢いよく自身の胸に突き刺した。

 

「―――神の座から引き摺り降ろすぐらいだ」

 

 草薙剣の刃が救世主の霊格を貫き、背中から一部刃が突出する。無論霊格は砕け、体が粒子へと変わっていく。

 

「なにを······っ、―――ぐっ!!?」

 

 戦慄したほんの束の間、心臓が握りつぶされるような感覚に襲われる。あまりの激痛に胸を押さえながら後退りしてしまう。

 

「第三宝具ってヤツだ。自決がトリガーの神堕とし······まあ、簡単に説明すればそんなところだ」

 

 詳しく説明するのであれば、神の権能を消滅させるというのが正しいだろうか。

 神由来のスキルが効力を失う。つまり、精霊は人間と同じような土俵に叩き落とされてしまった。

 

「っ、確かにこれなら殺せるだろう·······だが、この場で唯一動けるお前は消え去る運命にある。結局は無駄死にだ」

 

 精霊の言う通り、人の土俵に落とした所で戦う者がいない。戦う相手がいないということは精霊の不戦勝になるということ。

 ―――本当に、戦う相手はいないのか?

 

「神さんに教えてもらわなかったのか?

 “人々の想い(バトン)を繋げられた者を侮るなかれ”ってな。生憎、そこで寝てる奴は人類史(うち)のアンカーなんだ。そうそう負けるなんて事はねェぜ?」

 

「ハッ、お前ら可笑しいんじゃないか?そこらにいる個人に世界の命運を丸投げすることを“繋げる”と耳触りの良い言葉でいくら取り繕うが責任の押し付けでしかない。

 責任を押し付けられた者には逃げる諦めるの権利がある。―――それをお前は救済がどうたらこうたらと逃げ道を塞ぐ?

 

 ふざけるのも大概にしろ········っ!!!

 よく見ろ!何万、何千万の善意によって殺された優しき青年を!!お前達がしようとしているのはこういう事なんだぞ!!!」

 

 心の底にずっと押し留めていた言葉が発露されていく。一切の脚色なく、一切の贔屓をつけず止め処無い怒りを消えていく救世主へとぶつける。

 八つ当たりにも等しいソレを救世主は何も言わず受け入れている。

 

「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなッ!!!

 俺達は見ていた!私達は見ていた!お前達は見ていた!何の罪もない者を地獄に落とす鬼畜の所業を!!

 何故、看過できる!?救世主が聞いて呆れるッ!!」

 

 退去寸前となり、ようやく救世主が口を開く。その顔は穏やかでありながら、どこか悲痛な面持ちだった。

 

「ごめんな―――。」

 

 思いもよらなかった謝罪の言葉に精霊は激高していた頭が一瞬にして冷やされた。怒りこそ消えないが、感情任せの叫びはもう出ない。

 

「なにがごめんだ···········死人は生き返らない。過ちはなかったことにはならない」

 

 真っ白な空間に一人残された精霊は呟く。

 神の権能が消失したことにより、⬛⬛を失格にも合格にも出来ない今、彼にできることはない。腐り果てていく亡骸を見ていくことしか―――

 

「―――ありがとう」

 

「·········なんの感謝だ?」

 

 ゆったりと後方へと体を向ける。そこには先程まで倒れていた⬛⬛が立ち上がろうとしている姿があった。

 

「形はどうあれ、お前は俺の結末を嘆き怒ってくれた。案外優しいんだな」

 

 咳を一、二度しながら輝かしい金色の瞳で己と瓜二つな存在を真っ直ぐ射抜く。その瞳からは揺るぎない意志が垣間見える。

 

「聞いていたんなら、なんで立ち上がる?俺の言葉を理解できるのなら―――」

 

「間違いにさせたくない」

 

 精霊の言葉を遮るようにして言葉を紡ぐ。

 

「俺を救いたいと想っている奴が一人でもいる。なら俺は救われるしかない。ここで俺が立たないとその想いを否定することになる。間違った想いになってしまう。

 だから、立ったんだ」

 

「·············そんな事で?」

 

「ああ、そんな事でだ」

 

 あまりにも信じ難い理由に精霊が確認するが、⬛⬛は変わらず凛とした表情で肯定する。

 これには精霊も冷えていた頭に血が昇っていき、怒りを露わにしていく。

 

「ふざけるな·········っ、そんな取って付けた綺麗事で生きるなど不純だ。認める訳にはいかない」

 

「不純でも何でもいいさ。認めさせてやっから」

 

「決裂、―――であればッ!!」

 

 互いに拳を握り締める。

 右足を前に出し、続いて左足を出す。徐々に速くしていく。残り数歩といった所で右腕を上げる。

 

「うおぉぉぉぉらあ!!!!」

 

「ガッ·······!!」

 

 精霊の一撃を躱した⬛⬛の拳が精霊の頬へ突き刺さる。殴り飛ばされた精霊は二回跳ねながら地面を転がった。

 神の権能を失った精霊には精神攻撃でなくともダメージが入るようになっているものも、耐久は⬛⬛と同じ程度ある。拳一発でダウンする筈がなく、歯を噛み締めながら立ち上がろうと両手を地面に着ける。

 

ふざけるな(負けてたまるか)ッ!!」

 

「うごっ!!?」

 

 クラウチングスタートの要領で⬛⬛へ飛び出し、腹に頭突きする。防御なしに受けた⬛⬛は激痛と酸素不足で体が倒れかかるが意地で踏みとどまる。

 

「うっ、おぉぉぉぉ!!!!!」

 

「があぁぁぁぁ!!!!!」

 

 理性を失くした獣のように相手が倒れるまで拳を振るう。最早防御の事など頭から抜け、殴り殴られを繰り返し続けている。

 口の中が切れ、鼻血が垂れ落ち、いくつもの鬱血箇所ができ始める。

 

「ハッッッッッ!!!!!!」

 

「ッ―――、っは、は、ぁ······ぁぁ」

 

 二十数回にも及ぶ打撃の応酬は⬛⬛が放った精霊の胸への正拳突きにて幕を降ろした。

 死に体となった精霊は立つこともままならず⬛⬛の目の前で大の字となって倒れた。⬛⬛も傷がない所の方が少ない状態ではあるが、未だ自身の力で立っている。

 勝敗は明らかだ。

 

「っ、俺の、負けだ。バカはっ、死んでも、治らない、っとはこの事、だな·········っ」

 

「そうっ、だな········」

 

 絶え絶えとなった呼吸で勝者への賛辞述べる。言い切ると同時に⬛⬛の体が退去する時のように粒子へと変換されていく。

 

「勝者は前に進む権利がある。だが、もしも進むことを拒むのなら―――」

 

「拒まないさ。俺達は明日が確定してなくとも進まなくちゃいかないからな」

 

「そうか、··········それは、立派だな」

 

 精霊の言葉を最後まで聞いたかは不明ではあるが、時間となり⬛⬛は完全に粒子となり、自身の肉体を再起動した。

 

 本当の本当に一人残されてしまった精霊は瞼を降ろした。

 

「頑張れよ―――。」

 

 シャルルマーニュが退去して一分後の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャルルマーニュ現界から13分が経過。

 冠位(グランド)として須佐之男が召喚されたが、現存戦力は最初の半分程。芳しくない戦況ではあるが、未だ未知数な須佐之男によって戦況はまだひっくり返せる可能性は十分ある。

 

「⬛⬛、よく聞け」

 

「?」

 

 初めての名前呼びに少し驚くが、すぐ切り替え須佐之男の言葉に耳を傾ける。

 ちなみに裂かれた体は歌野が⬛⬛の裾を破り、その布を使って止血を試みている。具体的に言うなら、布で引き裂かれた体を形だけでも繋げようと力一杯に巻いている。

 

「アレは侵食ではなく変質だ。わかるな?」

 

「··········喰うか喰われるか。だいたいわかった」

 

「であれば良く見ておけ。貴様なら理解できる筈だ」

 

 全員で逃げに徹し、御影を惹きつけている渦中へと須佐之男はゆったりと歩いていく。その手には鞘から離れた生太刀が握られている。

 

「足枷をつける趣味はない。退けよ」

 

 御影の標的にされる距離に辿り着くや、樹海を駆け回っている勇者へとそう言い放つ。

 体力的にも精神的にも限界だった勇者達は須佐之男の言葉に従い、一斉に御影離れるよう背中を向けて一目散に走り出した。

 

 当然、無防備な得物の背中を獣が逃す訳がなく、一番近かった棗へと刃を―――

 

「貴様には退くよう云ってないが?」

 

 右手に持つ生太刀で軌道を左へとズラシ、空いている左手で殴り飛ばす。

 なんの構えも型もない防御と攻撃。どのような者が放ったてしても御影にはダメージすらないであろう物だろうが、今回ばかりは例外のようだ。

 

 須佐之男の一撃を防御もなしに顔面へと受けた御影は移動時の速さより速く吹き飛び、樹海を転がった。

 だが、それでもまだ立ってくる。致命傷であろう一撃を以てしても外傷一つない。

 

「ふむ。此度の大立者は土居 球子と伊予島 杏であろうな。隻腕でなければ勝負にすらなっていなかっだろう。

 故にこそ、あやしけれ。

 あれらの者達のために貴様の左腕(さわん)を失う価値はないと私は思うのだが···········娶る訳でもなかろうに」

 

 須佐之男の言う通り、左腕があれば、という場面は多々あった。

 左腕があれば犬吠埼姉妹の首はシャルルマーニュが介入する暇もなく地面を転がっていた。左腕があればシャルルマーニュの一撃を受け止め、空いている手で真っ二つにされていた。左腕があれば村正歌野コンビであっても防ぐこと能わず、銀銀の撹乱も意味をなさない。

 すべての策において彼が隻腕であるという前提を以て確立していると言っても過言ではない。

 

「⬛⬛の行動原理はまあ解る。だが貴様は··········いや、そうか。そうか、そうだったな!汝は四国の大英雄であったな!!

 ッ、ははははははははは!!!!」

 

 堪えきれないとばかりに天を仰ぎながら大爆笑し始める須佐之男に、その光景を眺めていた勇者一同は首を傾げる。意味がわかっているのは⬛⬛だけだろう。

 

 隙と言いようがない隙を晒している須佐之男へ御影が駆ける。

 右手を前を通して左脇腹の背へと隠す。もちろんその手にはずっと振るい続けている抜き身刀を握っている。 

 その刃を須佐之男の胴へと振り上げる。

 

「獣の牙が届くと思うたか?」

 

 先程より鋭く重い一撃ではあったが、それすらも両手構える生太刀によって難なく受け止められてしまった。

 硬直した御影の腹に須佐之男の蹴り上げが突き刺さる。

 

「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに」

 

 空中へと打ち上げられた御影目掛けて天から赤い鳥居が三つ降り注ぐ。避ける術などなく、身動きを封じられ樹海の根に貼り付けのように拘束される。

 

「八重垣作る その八重垣を」

 

 更に五つの赤い鳥居が大地を揺らす。けれど、これだけの拘束であったとしても完全に動きを止めることはできず、根に突き刺さっている鳥居が徐々に上がってきている。

 

 御影の前、正確には口の前に人が使うには大きすぎる赤い酒坏が何処からともなく出現する。その酒坏には並々と酒だろう透明な液体が注がれている。

 

「さあ、大厄災すらも酔わす美酒ぞ。飲み干して見せよ」

 

 身動ぎを止めない御影の口へと酒坏が誰の手もなく運ばれ、中身を御影へと注ぐべくゆっくりと傾き始める。それに伴い、酒が御影の口を通り喉を潤していく。それでもまだ身動ぎを止めない。後数十秒あれば拘束から抜けるだろう。

 

「獣如きに真剣勝負など馬鹿馬鹿しい。阿呆がすることだ」

 

 中身が失くなったことにより消えた酒坏を見て、生太刀を構えた須佐之男は断首すべく脱力した御影へと近づく。

 須佐之男は致命的な勘違いをしていた。

 

 八つもの鳥居が弾け飛んだ。

 須佐之男はすぐさま地を蹴り、後ろへ飛ぶ。

 

「これが、はじまりを告げる終焉(アナザー・ジェネシス)か。神酒()をこうも易易と·········厄介極まりない」

 

 木片が粉雪のように降り、視界不良となった場から御影 士郎が飛び出す。それと同時に須佐之男も神速を以て駆ける。

 

「      」

 

「ッハ、張り合いが出てきたな!!」

 

 須佐之男が優勢なことに変わりないが、剣裁の音がいくつか鳴り響く。着実に御影は須佐之男の剣撃が見え始めている。

 

 三度目の刀がぶつかり合う音がした後、御影が力負けし弾き出されるように吹き飛び、樹海へと落とされる。

 吹き飛ばされる速さより速く須佐之男が接近し、丁度御影が着地した所へ蹴りを入れる。右腕の防御が間に合ってはいるが、それ如きで防ぐことなどできず、弾丸のように吹き飛ばされた。

 

「中々頑丈だな」

 

 吹き飛んでいる御影に再度合流し、生太刀による一撃を入れるが、驚きのことに受け止められる。

 これには須佐之男も若干戦慄しながら、刀と共に一回転し、踵落としを御影の頭部へと入れる。その一撃を受けた御影は隕石のように地へと落ちた。

 

「むっ」

 

 一拍すら置かずに落ちた筈の御影が須佐之男の背後へ回り、刀を振るう。それを須佐之男は難なく受け止め、地に戻るため鍔迫り合いをし、地に着いたと同時に力任せに押し出す。

 一秒にも満たない時間で立て直し、神速に一歩踏み込んだような一刀を須佐之男へと振るう。

 

 凶刃が須佐之男へと迫る。

 

「貴様、まさか―――」

 

 受け止めようと生太刀を構えるが、あまりの剛腕に力負けし今度は須佐之男が後方へと退けさせられる。片腕だけだったものの力負けしたのは事実。その事実に須佐之男は眉間に皺を寄せる。

 

 須佐之男の言葉を遮るように御影が瞬間移動かと疑いたくなるような速度で接近し、刀を振るう。

 

「ふんっ!」

 

 今度は両手で構えた生太刀を振るい、御影を一蹴する。

 轟、と突風が吹く程の一撃を受けたとしても御影どころかその刃にすら傷一つない。

 動きが鈍るどころ研ぎ澄まされていくのを感じながら、須佐之男は御影の予想外の変容ぶりに目を見開いた。

 

「貴様、楽しんでいるなッ!!?」

 

 降り掛かる矢継ぎ早の猛襲を弾きながら叫ぶ。

 

 この一手でも狂えばどちらかの首が飛ぶような戦場を楽しんでいる異質さ。

 確かに得難い難敵と相対した際の心が揺れ動くのは須佐之男にもある。だが、それは敵に対しての期待でしかなく楽しいとはかけ離れたものだった。しかし、御影は戦いそのものを楽しんでいる。あまりにも異質だ。あってはならない性質だ。

 

「化けの皮が剥がれるとは正にこの事だな!」

 

 左腕で御影の一刀を完全に受け止め、語りかける。

 十拳剣を持ち込むことはできなかったが、肉体は全盛のそれ。たかが救世主が打った刀で荒ぶる神を傷つけることは容易ではない。

 

「獣となった貴様を容認する者はいない。貴様は己が信念を捻じ曲げて他者を容認したと言うのにな。

 わかるか、御影 士郎?貴様は生きるべきではないのだ」

 

 左腕で受け止めていた刀を振り払い、御影を下がらせる。もちろん御影は再度斬りかかるべく走り出す。

 

 呼吸を一つ。己が肉体に満遍なく酸素を流し込み、生太刀を両手で構える。

 

「―――――――――」

 

 押し寄せる津波のように御影へ振るわれる怒濤の八撃。

 日本武尊が宝具『八岐怒濤』のように水は現れないが、そんなものなくともお釣りが出る程のその身一つで放たれる八連撃。

 これこそ神が振るう御業であり、神業。

 津波が通った場所はなにも残らず、消えることのない傷跡を残す。予測不可能、対処不可能な自然災害。

 

 人一人の命を散らすには十分過ぎた。

 

「        」

 

 彼が持つ刃が砕け、根に突き刺さる。

 外傷は一つもないが、力尽きたのか膝から地面に崩れ落ち、命の灯火が消える。

 勝敗は決した。御影 士郎一人の命によって―――

 

 新たな世界が始まる。

 

 樹海化が終わる訳でもなく、塗り替えられる訳でもない。ただ新しい世界が始まる。

 現実の夜空が広がり、星々が輝くその光景は絶景に相応しい景色だ。大地は川が流れ、河川敷に始まり、草原が広がり、森が辺りを囲う。まるでそう、キャンプ場のような印象を受ける。

 

 この事態に驚愕しつつも、原因であろう先刻斬り捨てた御影へと体を向け―――

 

「やはり貴様、七つの―――、」

 

 ――ようとした瞬間、胸が裂け、血が噴き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界が始まった頃、戦線離脱組ではある異常事態が発生していた。

 ちなみに戦線離脱組は精霊の護りが消えた犬吠埼姉妹と気絶している友奈sと夏凛とタマ、そして傍観することにした若葉と杏と千景である。と言っても、若葉と千景は戦える状態でないが故だが。

 

「若葉さん、一つ聞きたいんですが···········」

 

「·········なんだ?」

 

 今にも吐きそうな面構えで杏の言葉に耳を傾ける。

 

「私はタマっち先輩の手当てをしていましたよね?」

 

「そうだな」

 

 樹のワイヤーによって回収されたタマは意識を失っており、御影の一撃を受けた腹は酷く腫れ上がっていた。骨も何本か折れているだろう。最悪内蔵が何個か破裂している。

 それを見た杏は切り札である雪女郎を降ろし、その特性である冷気を使用してタマの傷を冷やしていた。同時並行で他の者の傷も冷やしている。

 

「そうですよね、確かにここにいたんですよね」

 

「? 今も杏の膝で··········なにっ?」

 

 杏の言葉に違和感を持った若葉は確かめるべく、戦線へて向けていた体を後ろの方にいる杏へと向けた。

 視界の先には倒れ伏す仲間達とそれを介護する杏の姿。だが、そこにタマの姿はなかった。

 

「いなくなったんです、タマっち先輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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