気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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明け空【49】

 

 

 

 

 

 シャルルマーニュ現界から15分が経過。冠位(グランド)である須佐之男が顕現2分時点で一度目の人類悪打倒に成功。しかし、滅びることはなく第一の世界が旧世界を侵食。

 現状、御影 士郎の宝具かスキルに連なるものの影響だということは判明しているがそれ以外は不明。魔術の最奥である固有結界に酷似こそしているが全くの別物である。

 

 

 上半身を露わにした御影 士郎が予想外の事態に蹌踉めく須佐之男の背後で佇んでいる。その手には砕け散った筈の抜き身刀が握られている。

 

「一振りとは言え我が絶技を模倣したか。有り得ない話ではないが·········獣風情が舐めた事を」

 

 御影の強くなった要因であった須佐之男との同期。

 須佐之男が宿っていた草薙剣を常に体内に入れるということは精霊勇者の切り札と同義であり、精神汚染の片鱗もあるにはあったが彼の精神性はソレに打ち勝った、打ち勝ってしまった。

 するとどうなるか?―――空っぽな肉体が須佐之男の霊基に収まるように適した形に作り変えられることになる。

 故に、須佐之男の絶技を振るえたとしても不思議な話ではない。

 

「まあ、いい。所詮は獣、猿真似にも限度があろう。

 ―――あと二つは持って行く」

 

 振り向きざまに一振るい。

 何故か硬直していた御影の背を打ち、すかさず残っている右腕を断とうと振り下ろす。やはり刃は通らない。

 硬直が解けたのか、反撃せんと須佐之男の方へと体を向けようと右足を滑らせる。

 

「まだ遅い」

 

 金色の瞳が自身を貫くと共に全力で地を蹴る。

 姿がほんの一瞬掻き消える程の速さで御影の胸へ切っ先を立てる。

 全速力で放たれる刺突。

 先程とは違い絶技といったものではないが、かの神の全力をもって行えば、それは数多ある宝具を優に超える殺傷力を持つこととなる。

 

 ―――世界が終わり、また始まる。

 

「一つ、無垢な誇りは穢され」

 

 キャンプ場の面影は消え去り、神社の境内へと移り変わっていく。

 吊るされる照明代わりの提灯。人を惹きつける屋台の数々。何処からともなく聞こえてくる盆踊りの音楽。 それに合わさる太鼓の音。

 キャンプ場から夏祭りへ。

 何の法則があって、世界が変わっていくのか検討もつかない。だが、超常的な現象なのは事実。世界創生など神の権能を軽く凌駕する力である。

 

 世界が完全に切り替わると、そこら中から和気藹々とした声が聞こえてくるようになった。

 

「世界創生に飽き足らず、生命すらも生誕させるとは。貴様、人の枠に納まる気はないな?」

 

 須佐之男の応じかけに呼応するように振り向いた彼の瞳に映るは生太刀を大きく振りかぶった武神の姿。

 寸での所で掲げた抜き身刀で受け止める。

 たった一度のぶつかり合いで突風が吹き荒れる。

 提灯が激しく揺れ、屋台が吹き飛び、人々が埃のように飛んでいく。

 

「      」

 

 鬼神の一刀を押し上げ、水平一閃。前方20mが文字通り粉々となる一振り。

 先程飛ばされずにその場にいた人々の様々な部位が飛び交う。鮮血が境内を真っ赤に染め上げる。現実離れした光景が広がっていく。

 そんな一撃を振るわれた須佐之男は御影の頭に跳び箱の要領で左手を着き、背後へと回る。

 

「ははっ!!救済を成すのではなかったのか!?救世主の名が聞いて呆れるわ!!」

 

 縦に回転する最中に生太刀を首を落とさんと走らせる。無論、斬り落とすことはできなかったが地面に叩きつけることとなった。

 

 盛大に頭から落ちた御影はすぐさま須佐之男がやったように刺突を仕掛ける。

 

「ふむ、もう時期越されるか」

 

 御影の刺突は頬の薄皮一枚に抑えられ、反撃として腹へ蹴りが見舞われた。

 破壊力をそのままぶつけるため、蹴り飛ばすのではなく地面に叩きつけるようにして軌道を変更する。殺意マシマシな一撃である。

 

 再度地面に叩きつけられた御影は勢い止まらず、何度か地面をゴムボールのように跳ね、ようやく止まった。

 

(打てば打つほど、鬩ぎ合うほど牙が鋭くなっている。

 あと何度雌雄を決すればヤツは私を超えるだろうか。この調子でいけば遅くても二度、速くて次だ。どのような原理なのかは検討もつかん、が、考える暇はなさそうだ)

 

 月に重なる人影。

 大きく上体を反り、右手の刀を振り下ろそうと掲げている御影への視線を鋭くしながらどう対処すべく思案する。

 

「真似は好かんが········まあいい」

 

 戦闘開始と共に放り捨てられた鞘が引き寄せられるように須佐之男の左手に納まる。

 姿勢を低く保ち、鞘を腰と平行になるよう持ち、生太刀を鞘へと隠す。目線はガラ空きの腹。

 

「ふむ。名付けるのであればそうだな·······」

 

 受け止めれば死。避ければ死。そんな一振りが迫るなか呑気に技名を考える者など後にも先にも須佐之男ただ一人だけだろう。

 パッと思いつくのは以前耳にした西暦の風雲児が口にした技のみ。至高の十三連撃を放つあの技名は合わないため却下である。となると、やはり消去法として西暦の風雲児を参考にするしかあるまいと名を付ける。

 

 一瞬を凌駕し、刹那へと至る。

 

「居合、櫛名田之太刀」

 

 掻い潜り、腹に叩き込まれた須佐之男の居合は大元のソレを優に超え、人類悪を薙いだ。

 その身一つで受け止めるなど到底できない衝撃を受けた御影は神社を壊し、森を壊しながら飛ばされ、断崖によってようやく止まった。

 

「むっ。決まったと思ったのだが」 

 

 新世は現れない。ということは未だ御影は健在ということ。あの一撃を以てしても削れないとは、少々驚愕であろう。

 使う予定のない鞘は捨てられ、地面に落ちる。持ち主の元へ戻る機能があることを考慮すると何処にあっても変わらない気もする。

 

「勢いは衰えんか」

 

 御影から須佐之男までの進路上にある木々がへし折られ、いくつか宙を舞う。あれほどの一撃受けて尚、減速は見られない。なんなら、少しずつではあるが速くなっている。

 二秒程で須佐之男の眼前へと姿を現し、切っ先を須佐之男の太腿へと突き刺そう刺突の構えで迫る。

 

「狙うならば足ではなく腕が良い」

 

 刺突の構えとなったことで低姿勢となった御影の頭を踵で撃ち落とす。隕石でも落ちてきたのかと見誤る勢いであった。

 そんな一撃を喰らった御影は頭部を地面に突き刺した状態となり、今の一撃になんら関係なかった筈の刀が折れていた。

 

 ―――世界が終わり、また始まる。

 

 盆踊りの音楽、辺りを照らしていた提灯の残骸、この祭りを楽しみに来たであろう人々の夥しい死体や体の一部。それらが遠き日の幻想のように消えていく。

 

 終わりと始まりは表裏一体。

 夜空が黄昏時の空へ、神社の境内であろう場所から何の変哲もない市街地へ。

 御影と須佐之男は歩行者専用道路へと繰り出された。

 

「二つ、人はみな善性である」

 

 御影が唱えるは性善説。

 人はもともと善の情緒を持っており、それを発展させれば徳性へと達することができるという説。

 人類悪(ビースト)となった御影が保有する理を裏付けるものではあるが、今はまだ誰も知らない。

 

「善性、―――人の悪性によって形を成したお前が人の善性を謳うかッ!!?」

 

 胴を裂かんと横一閃。高層マンションの根本となる柱を切断しすれど、御影は先の世界で須佐之男がしたように跳び箱の要領で須佐之男の背後へと回る。

 着地するやすかさず口に食わいていた刀を右手で握り直し、袈裟斬りを須佐之男の背中目掛けて振るう。

 

「ッ·······!?」

 

 これを振り返りもせず、右手で持った生太刀を後ろへ回すことで防ごうと試みるが力が負けているのか須佐之男側の刀が震える。

 歯を食いしばることで追加で力を込め、弾く。

 劣勢の状況を少しでも優勢に戻すため地を蹴り、体を180°回転し御影を視界に捉える。

 

(力負けしている。これでは··········)

 

 須佐之男が人類悪を下した回数は三回。正確に判明こそしていないが、察するに後四回命を散らさなければ人類悪は打倒できない。

 もしも、ここで須佐之男が退去した場合、全回復してくるであろうシャルルマーニュと数少ない勇者達で四回を削らなければいけない。それも、須佐之男以上の驚異となった御影 士郎を。正直言って不可能である。どれだけの奇跡があろうと叶わない。

 

「語り合いはできんな。騎士に託すとしよう」

 

 須佐之男の姿が掻き消えた。

 

「ハッ!!!」

 

 御影の左側に姿勢を低く保った須佐之男が突如として現れ、必殺の一撃が引き絞った矢の如く御影へ放たれた。

 肘先までしかない左腕で防げる筈もなく、左脇腹に直撃。建物など障害にもならずぶっ飛んでいく。

 

 当然のように追いついた須佐之男は右足で御影の頭を踏み抜く。その衝撃で地面が豪快に抉れてしまった。が、頭を地面に押し潰した感覚がない。

 

「なっ······!?」

 

 目前に迫る踵落としに驚きながらも、交差した両腕で受け止める。

 どうやら、踏み抜かれた勢いを利用して回転し、回避と反撃を両立したようだ。このような技、誰が予想できようか。

 

「ふっ!!!」

 

 力任せに踵を跳ね返し、逆さまな状態の御影を薙ごうと生太刀を振るう。

 驚きのことに須佐之男が振るった一撃は軽々と防がれ、完全に受け止められてしまった。

 

「ハァァ········!!」

 

 一息吐き、柄を軋ませる。

 右足が地面に食い込む程の力強さで踏み込み、防御を腕力で捻じ伏せる。防御を崩された御影はその勢いすらも利用して、横回転しながら逆さな状態から更に逆さにして元に戻り、地上に帰還する。

 すかさず須佐之男が一蹴りで肉迫する。

 

 一呼吸する時間すら与えない暴風のような連撃を御影へと撃ち出す。

 それを、逸らし弾き受け止めて防いでいくが所詮は獣。適確に正確に防御を崩さんと本能のまま振るわれる武神の連撃を処理するなど到底不可能。必ず隙ができる。

 

「―――捉えた」

 

 御影の腕が引っ張られる程大きく弾かれた。

 正しい位置へと戻し、防御を再開するには一秒弱要する。つまり、絶好の的である。

 

「――――――ッ!!」

 

 怒濤の八連撃が御影の命を儚く散らす。

 二度目であろうが防御も回避も許されない。隙を作っただけでは刃を届かせるに値しないが、この絶技、この神業あってようやく届く。

 

 元通りになっていた筈の抜き身刀が砕け散り、第三の世界が終わりを告げる。―――新たな世界が始まる。

 

「三つ、愛は気高く」

 

 市街地の面影は消えていき、道場のような場所へと―――抜き身刀が砕け散る。

 

「なにっ?」

 

 形を成そうとしていた世界がジェンガのように崩れ去ってしまった。予想だにしなかった結果に須佐之男は思わず眉を寄せ怪訝そうに御影を見つめている。

 

「四つ、人は一人で生きていけず」

 

 何事もなかったように新たな世界が創生されていく。

 先程の場所はどういったものか全くわからなかったが、今回はどうやら誰かの部屋のようだ。それも多分どこかの寮の。

 

 先手を取るべく近くにあった椅子を視界封じとして御影へと投げる。それと同時に砕けるであろう椅子の破片によって死角になるであろう方向へと駆け出す。

 ―――抜き身刀が砕け散る。

 

「????」

 

 一先ずリプレイ&スロー再生で見てみよう。

 剛速球で投げられた椅子を御影が抜き身刀でたたっ斬り、空気に霧散していくまでの木片に変わった。そして、木片は動き続けようとする慣性の法則に従い進んでいき、御影の肩にぶつかった。すると抜き身刀が砕け散った。

 

 どうやら、第五の世界が崩れた原因は木片による攻撃のようだ。

 

「五つ、誰もが恵まれた環境ではなく」

 

 二連続で意味不明な原因で世界をぶち壊すことに成功したが、三度目がそうなるとは限らない。二度あることは三度あるという言葉があってもだ。

 

 次なる世界はとある施設のだだっ広い中庭。冬なのか雪が降っており、銀世界が広がっている。

 

「      」

 

 御影が地を蹴ると共に須佐之男はどこから来ようが防げるように感覚を鋭利にする。が、―――

 

「はっ、――――」

 

 須佐之男へ肉迫していた御影の姿が消えた。それも走っていた最中にだ。だが、すぐにどこへ行ったか判明することになった。

 

 背後に何か落ちてきたような衝撃音。

 最初に首を回して視界を確保し、次に体を背後へと動かそうとするが、それでは遅かった。

 

「ッ―――!!」

 

 視界に映る自身と寸分変わらずの構えをしている御影。そして、それが後一秒もせずに放たれるという事実を否応なしに理解してしまう。

 

「      」

 

 積もった雪に誰かの右腕と左腕が落ちた。切断面からゆっくりと経路を失くした血液達が雪を真っ赤に染めていく。

 

「やはり敵わんか·········」

 

 両肩から血を垂らす須佐之男が呟く。

 五連撃まで防ぐことはできたが、残る三連撃は不可能であると断定し己が肉体を用いて死を遠ざけることには成功した。結果として両腕がなくなることになったが須佐之男にとっては満足な成果だろう。

 

「さて、それでは―――」

 

 刀を握ることは叶わず、牙を突きつけることも叶わない今彼になにができるのか。それは―――

 

「逃げるか」

 

 敵に背を向け一目散に逃亡する。

 御影もそれに続き走り出すが、逃げることに徹した須佐之男に追いつくなど不可能であり、ましてトドメを刺すなど無理な話である。

 

「いやしかし、我が絶技は素晴らしい!このような神業誰も再現できまい!されたのだがなっ!!ふはははっ!!!」

 

 嬉々に満ちた顔で大爆笑しながら⬛⬛がいる方向へ走り続ける。あと数十秒もすれば大量出血で死ぬであろう身で走り続ける。

 目的はもちろん⬛⬛。

 彼も彼で死に体ではあるが、最後の一押しに彼がしなければいけないことがある。どのような結末になっても、押し付けなければならない。

 

「···········」

 

「ちょ、ちょっと⬛⬛!?まだ血が止まってないわよ!!」

 

 須佐之男がこちらに走ってくる姿を見るや、肉体の状態、周りからの静止すらも無視をして刀を持ち、立ち上がる。

 

「⬛⬛ ⬛⬛ッ!!わかっているな!!?」

 

「ああ」

 

 何処からともなく光が差し、須佐之男の心臓があるであろう場所を局所的に照らす。まるでここへ刀を刺せと言わんばかりの誘導だ。

 

「姉君の導きぞっ!さあ、―――殺れ!!!」

 

「っ········!」

 

 刀の切っ先が須佐之男の心臓を貫く。心臓が破裂したような感触に顔を歪ませながら、称号を剥奪する。

 

「―――はっ。存分に使い潰すがいい。貴様が、私の称号に食われん限りな」

 

 そう耳元で云った言葉を最期に、粒子となって天へ昇っていく。

 突きの体勢から直り、刀を粒子へと還元して元ある場所へと戻す。そうして空いた手に称号を取り出し、平常心にするため深呼吸をする。

 

「···········」

 

 後二秒もあれば接敵するであろう御影 士郎を確認し、意を決する。

 これで倒せなければ全員死ぬことになるだろう。多分世界も終わる。新樹内部だけの話ではない。きっと、現世も滅ぼされるだろう。それが人類悪だ。

 だから、ここで滅ぼさなければいけない。

 

「櫛名田比売を髪に挿し」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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