気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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流光【50】

 

 

 

 

 

 

 

 

 本来、彼の称号剥奪による効果は『AがBになる』である。従って発揮できる力はBが出せる限界値までとなり、Aが使用できる技も全く扱えなくなる。

 だがしかし、それ以上が出せないだけというだけで出せるものは出せてしまうのだ。スキルや宝具といった唯一無二のものすら再現可能となる。

 なんたる無法、赫怒必然の尊厳破壊である。

 

 しかし、この戦いにおいては()()()()では足りない。

 

 例え、⬛⬛(A)須佐之男(B)となり、その力を振るったてしても勝ちの目はない。同じ結果が出るだろう。

 

 であればどうするか。―――AはAのままBとなる。つまり、いいとこ取りする。

 

「櫛名田比売を髪に挿し」

 

 先刻、剥奪した須佐之男の称号を霊基に授与する。

 自己を確たる物とし、侵入物を飲み込んでいく。これは外からの侵食ではなく内からの変質。嘗て、不可能だと棄却したものを形に成していく。

 千子 村正の霊基による服装から両腕を曝け出した絹袴へと変わる。

 

「ッ―――、、、、   。」

 

 霊基が内から裂けていく。視界が靄に包まれ、耳鳴り音がきぃきぃ金属音のようなものが鼓膜を打つ。

 並の者であれば発狂するそれを、只管耐えて耐えて耐えて耐えてたえてたえてたええてたてえたえた······――――――

 

『どうか、どうか須佐之男様······!この娘にはこれから先があるのです!!』

 

 靄だらけだった視界に涙を浮かべながら懇願する翁の姿が突如として現れる。名前はよく聞こえなかったものの()()()()()()()()ことは確かだった。

 

「⬛⬛ッ!!」

 

「っ······わかってらあ!」

 

 神速を凌駕した速さで迫る人類悪の袈裟斬りを二刀をもって退ける。役目を終えた二振りはいつものように砕け散った。

 

「二天一流もらっとけッ!!」

 

 即座に新たな二振りを取り出し、振り切った体勢から御影の胴体へ四連撃を叩き込む。

 須佐之男のスペックによって放たれたそれは以前一撃も与えず砕かれたものと比べると雲泥の差があり、威力が桁違いだ。

 

 ほんの僅か蹌踉めいた所へ追撃を加えんと新たな一振りを取り出し、両手で力の限り握り締める。

 

「八重垣ッ!!!」

 

 頭蓋を割ろうと振るが、やはり一切の損傷を与えれず仕留めることはできなかった。

 そうして、出来てしまった隙。刹那であっても見逃さなかった御影がこの致命的な隙を見逃すかと言われればそうでない。確実に殺しにくる。そうだと分かっていてもどうすることもできない。だが、それは⬛⬛だけの場合だ。

 

「裁断の時である!!!」

 

 眩い輝きと共にシャルルマーニュが颯爽と登場。頭上から御影と⬛⬛の間に割って入り、落下の勢いを一撃に込めるがこれまた無傷。しかし、先程と違い後退させる程の一撃であったようだ。

 

「助かった!が、その姿どうした!?」

 

「大帝のおっちゃんからちょい借りてきた!」

 

 まさかの王たるシャルルマーニュでの再登場に驚きを隠せない⬛⬛だが、和気藹々と話している時間はない。

 聖剣/刀を構え、並び立つ。

 

「俺から離してくれ」

 

「わかった」

 

 頷き、ジュワユーズへと五大元素を収束させていく。輝きを強めていき、ついには刀身のように伸びてしまった。

 疾走する御影を阻害するように十二勇士が降り注ぎ、一時的にではあるが動けない状態へと追い込む。そこへジュワユーズを掲げたシャルルマーニュが突貫する。

 

「押し通る······ッ!!!」

 

 破壊の権現となった五大元素であったが、御影によって難なく受け止められてしまった。これでは⬛⬛から離すなど夢のまた夢の話。

 まぁ、そこは織り込み済みだが。

 

「我が栄光の輝きをッ!!」

 

 羽織の下に隠しておいた左手に圧縮していた五大元素を御影目掛けて放つ。

 破壊力は高いが御影にダメージはないため、ほぼ吹き飛ばしだけとなってしまったが問題はない。それが当初の狙いだ。

 

 新世が塗り替えられる。

 

「ここに至るはあらゆる修練」

 

 燃え盛る大地。幾千本と大地に刺さる刀。どれもが業物であり、一切衆生を斬り裂くものである。

 それらが今、一刀となる。

 

「縁を切り、定めを切り、業を切り」

 

 ⬛⬛の手に納まる草薙剣に負けず劣らずの神秘を有するソレを見てか、御影が思考を投げ捨て走り出す。二秒もあれば⬛⬛の腸から臓物が引き摺り出されるだろう。

 

「我をも断たん都牟刈村正」

 

 振りかぶるような構えを取った共に御影の刀が⬛⬛の腸を斬り裂か―――なかった。

 何かに引っ張られるように御影が宙に浮く。よく見てみれば御影の首に縄のようなものがキツく締め付けられている。言わずもがな⬛⬛の死因宝具である。

 

 身動きの取れない御影へと究極の一刀が振るわれる。

 

「即ち、―――宿業からの解放なり!!!!」

 

 縄諸共斬り裂かれるが、これでも御影に傷はつかない。どのような一撃を以てしても傷一つないのは何らかのスキルもしくは宝具による作用だろう。

 ⬛⬛の固有結界が破れ、()()()()()()()()()()。 

 

 ―――世界に輝きが満ちる。

 

王勇を示せ(ジュワユーズ)―――」

 

「至高の十四連撃、受けやがれ」

 

 固有結界解除時の座標ズラシは全てこのために。どれだけ強力な一撃以て作られた隙だと言え、御影はその後に放たれたシャルルマーニュの宝具ですら防ぐだろう。何せ、一点だけ抜け道があるのだから。須佐之男の絶技であってもギリギリだというのに、穴が空いている宝具で討ち取るなど無理な話。だからこそ、こうする必要があった。

 

「―――遍く世を巡る十二の輝剣(オルドル)ッッ!!!」

 

 ゼロ距離宝具である。

 これであれば防御ましてや回避など不可能。この流光は誰にも止められない。

 

 極光は人類悪を穿ち、神樹を木片と化していく。焼き焦がし、辺りを光で埋め尽くす。そのような一撃を一身に受けたためか御影が持つ抜き身刀が砕け散った。

 

 ―――世界が終わる。新世は現れなかった。

 

 久方ぶりに見る樹海の空が出たということは今ので人類悪打倒を成し遂げ――――――砕け散った筈の刀が元通りとなっていく。

 

「六つ、終幕とは開幕である」

 

 いや、―――それだけはない。

 俺達は確かに七度人類悪を打倒した。七つの人類悪と関与しているスキルではないのか?新世も人類悪としての権能でなければ説明がつかない。じゃないとするのなら·········救世主(セイヴァー)としての特権か!!?

 

 御影がシャルルマーニュへと近づくために地を蹴った。

 

「ッ?!!―――十二勇士円陣!!」

 

 ソニックブームが巻き起こり、比喩なしで樹海中に轟音が響く。あまりの衝撃にシャルルマーニュへの衝突を防いだアストルフォ、ローラン、そしてレナルドが星になってしまった。

 そんな光景を見て、驚きで固まっていた⬛⬛だったがキラーンという効果音で正気に戻り、禁じ手へと手を伸ばす。

 

「神刀抜刀」

 

 扱うには見不相応?なら、足りない分を俺自身の命で埋めるだけだ。

 柄を掴んだだけでも心臓の規則正しい鼓動が乱される。本来であれば自身ではない者に偽装している状態であるためこれ程までに反動は来ない訳だが、今の彼は⬛⬛、その本人である。つまり、ただのそんじょそこらにいる一般人なのである。結果、後数刻あれば彼は退去することになる。

 

「よせ、⬛⬛―――ッ!!!」

 

 シャルルマーニュの静止がかかるが彼は止まらない止まれない。切っ先を鍔迫り合いをしている御影へと落とそうと―――

 

「草薙之」

 

 鮮血が舞う。

 一撃目を受けたときのような激痛に顔を歪ませ、意図せず草薙剣を落としてしまった。そして、何故か足に力が入らず前のめりに倒れてしまった。

 早く体勢をと思い、手―――がない。左手は地面に着いているが右手は着かず、血で切断面が隠れたドロドロの先しかない。

 

 ドサリ、と誰かの下半身らしきものが眼前に倒れる。

 

「は―――――――――」

 

 自身の下半身から体温が消える。いや、そもそも下半身なんてこの体にはない。今しがた斬られたのだから。

 段々と遠のいていく意識に死を悟りながら瞳を上に上げる。視界には身を削りながらも打ち合う冷戦沈着なシャルルマーニュの姿。

 どうやら、偉大な皇帝は俺の勇姿を見届けてくれたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軽く、雑に。自身の周りを飛ぶ羽虫が如く片手間に払った。それにより、⬛⬛は上半身と下半身が別れ、草薙剣を握っていた右手は前腕部の半分あたりで落とされた。

 

 このような事はあってはならん。

 礼儀、そして勇気を重んじる。それが騎士道であり我らが生き方だ。例え、相対したものが悪であってもその命を勇気を軽んじる事は神であっても許されない。許してはいけない。

 

「――――――」

 

 九人となってしまった十二勇士を攻めとし、受けは俺が請け負う。ぶっ飛ばされた三人は戻ってくるのに三分以上はかかるだろう。一度霊体化させ再集結させる手段もあるにはあるがその隙はデカすぎる。首が落ちることとなる。

 

 苛烈な攻めぎあいの中、突拍子もなく御影が後退する。

 

「まず······っ!!」

 

 御影がとる構えを見るや否やシャルルマーニュも即座に後ろへと飛ぶ。だが、それでは避けれない。たかが1kmでは1秒も経たずに詰められる。

 あの構えを取られた時には彼の未来は確定してしまった。それなら、最高打点を出して終わるだけ。

 ジュワユーズ、そして十二勇士が輝剣に五大元素を収束していく。

 

「アディオス、―――おさらばっ!!」

 

 真名解放には劣るものの、その破壊力は人一人を消し飛ばすには十分な威力だ。だが、これで止まるなどとは一ミリも思えない。

 

「      」

 

 極光が裂かれていく。その身一つで突き進み、獲物へと翔ける。

 そんな姿に慄くもまだまだと出力を限界まで引き伸ばす。けれど、そこまでしても獣を止めることはできず。遂には刃が届いてしまった。

 

 振るわれる怒濤の八連撃。無防備なシャルルマーニュへ繰り出すには些か過剰と思われる技ではあるが、確実に仕留めるにはこれしかないという本能による勘だろう。

 言わずもがな避けること叶わず、無常にも首は地に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ああ·······、なんて美しいんだろうか”

 

 

“これこそが人類史!!正しく理想郷!!”

 

 

 他者を思い遣り、他者の為に命を投げ捨て、他者の為に人生を捧げる。誰も彼もが隣人の幸せを願いその姿。これを美しいと言わず何と言う!!?

 

 

『オマエらが『アナタ達が『欠陥だから『能無しが『顔を見せるな『吐き気がする『反吐が出る』この体たらく』なんで生きてるの』なんで』死んぢまえ』この······っ、役立たず!』

 

 

“人類史は美しい。だから、俺が滅ぼすんだ”

 

 

“美しいものは美しいままで、終わらせるんだ”

 

 

 逆手持ちにした刀を振り上げる。

 

 

「ぅ、あっ、―――しろ、う?」

 

 

 なんで?―――なんで、美しくないといけないんだ?美しくないもの失くならないといけないのか?

 意地汚く、苦汁を舐めても繁栄し続けたのが人類史だ。見苦しかったろう。目を覆いたくなる景色だったろう。―――結局、自己満足じゃないか。

 

 

 振り下ろす筈だった刀の切っ先を右脳へと向ける。

 

 

「ごめんな、千景」

 

 

 一思いに脳を串刺しにしようと刀を勢いよく押し込もうとしたが、一向に刺さらない。なんなら動きもしない。

 

 

 左頬で発生した衝撃によって後方へとぶっ飛ばされた頭から樹海の根に落ち、仰向けで根に倒れ込む。

 視界には満天の星々。樹海特有の幻想じみた空だ。

 

 

「頭を冷やせ、御影。自死などなんの解決にもならん」

 

 

 シャルルマーニュ限界から18分、―――ここに人類悪は討たれた。

 司る理は【盲信】

 人類史を慈しみ、善なるものとして定義した人類悪。人類史を理想郷とすべく滅ぼそうとした救世主。ただ、それは誰にも絶望してほしくなかったが故の論であり、弱点であった。だからこそ負けた、負けを認めてしまった。

 それが顛末。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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