気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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 ⬛⬛の人生関連をこれとは別に出そうか出さまいか悩んでる者です、ども。それと最近東方Projectに沼って二次創作書こうか迷ってます。
 まあ、更新された情報の中に種は蒔いておいたので、新たに書くなら東方Projectかなあ。




花結いのきらめき【52】

 

 

 

 

 

 軟弱者。それが第一印象であった。

 力を持たず、武器すら持たず。だと言うのに意志だけは一丁前で決して折れることなく無謀であっても戦いへ赴く。神代ですら滅多に目にしなかった精神性。

 だが、それだけだ。

 恋した者達のために己が使命を捨て、矛先を定めた。

 あまりにも短慮で、愚かしく浅ましい。かつての自分を見ているようで方向すら定まらない怒りを覚える。

 

 何よりも愛す者を優先し、愛する者のためだけに生きる。

 それが赦されるのは強者のみ。這うようにしか生きていけない者に叶えられる筈がない。だからこそ、私は――――――お前に力を貸すのだ、馬鹿者が。

 

 

 

 


 

 

 

 シャルルが御影を連れ去った頃、部室にて。

 救急車の手配を終え、次に運搬しようと負傷者を担架に乗せていた。球子、高嶋、結城、夏凜の順にいき、最後に村正を乗せようと歌野が近づいた時であった。

 村正の閉じていた瞼が上がった。

 

「あ!良かった、⬛⬛。目が覚め··········⬛⬛?」

 

 のっそりとした動きで椅子から立ち上がる村正。起きた村正を見て、歌野は安堵の声を挙げる。しかし、ある一点が普段と違うのに気づき、表情を曇らせた。

 

 水底のような瞳が辺りを見渡す。

 顔を伏せ俯いていた千景以外の者達が身を強張らせる。だって、あの瞳の色は須佐之男命以外にいないのだから。

 

「須佐之男!?なんで貴方が⬛⬛の体に―――」

「案ずるな。ただ留守を預かっているだけだ。3日もすれば奴も戻ってくるだろうさ」

 

 そう語りながら歌野の横を通り過ぎ、誰にも目をくれず担架に横たわっているタマの前で止まった。そして、その場にしゃがみ込み、そっと右手をタマの胸あたりに置く。

 

「なにをしてるんですか?」

 

「自然治癒を促進させている。生憎と私は剣と酒しか持たん。河童の妙薬でもあれば良かったのだがな」

 

 内心ハラハラしているひなたの問いに意外にも返答した須佐之男は、置いていた手を退け、立ち上がってから全員の方へと向き直った。

 

「何を呆けている。救急車とやらが来るのであろう?であれば、そこまで運ばぬか」

 

 ⬛⬛の体、声であると言うのに、その中身が違うだけでこうまで変わるのかと驚く勇者部一同。しかし、驚いている時間はない。一先ず、須佐之男の事は置いておき、担架を二人組で運んでいった。

 

 ぽつんと残された須佐之男は、とある物が置かれていたであろう机をまじまじと見つめていた。

 

(何故、この一点だけ神秘が濃ゆいのだ。先刻感じたものはコレであるのは必定だが········はて。)

 

 ない、以上の情報を得れないため思考もそこまでにして振り返る。視線の先には伽藍とした勇者部部室、そんな空気と同化するように俯いたまま意気消沈している千景。

 

「手を引かれなければ動けぬのか、彼岸花の勇者」

 

 返答はない。ただ俯いていた顔が少し上がり、睨みつけるような黒い瞳とかち合う。

 かの暴君は意にも止めず続ける。

 

「何故、他者と比較し続けるのか。私には理解し難い。

 種という括りでまとめられようが、容姿・思考・癖、それらによって齎される特徴によって他とはかけ離れた個が生まれる。

 それ故、誰も彼もが特別であり、生きるに値する。

 自己を誇れ。限られた生を謳歌しろ。それが、個に許された権利である。」

 

 鬱陶しく睨んでいた千景はいつの間にか須佐之男に見入っていた。

 いつも高圧的な物言いで勇者部へ心労をかけていたかの神とのギャップも大きな一因ではあるが、何と言ってもやはり、その堂々とした振る舞いにあった。

 その振る舞いは、何処か御影の面影を感じるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は流れ、真っ暗闇の夜。森の中ということもあり殊更。寄せ集めた枝を燃料としている焚き火がなければ、何も見えい状態だったろう。

 そんな中、焚き火を囲っているのは大赦から堂々と逃げおおせたシャルルと御影。

 シャルルは火の維持。その真正面に焚き火を挟んでいる御影は何故か体育座りで顔を膝あたりに押し付けている。

 

 二人の間に静寂が佇む。

 普段も口数が少ないと言うのに、この気まずい状況下で喋ろうなどと考える者はいない。だが、喋らないと進まないのは事実。

 そう考えたシャルルが意を決して口を開く。

 

「俺はお前が自死しようとした場面しか見ていない。それほどまでに追い詰められた原因があったのだとは思うが、一切俺は知らない」

 

 小さな枝を焚き火に投げ込み終えると目線を身を縮めるように丸まる御影へと向ける。

 

「·········違う。俺がみんなを追い詰めたんだ」

 

 顔を上げないままくぐもった声で返答する。

 意味ありげな言葉に思う所がありながらも、少しの動揺も出せないシャルル。

 

「そうか」

 

「え?」

 

 淡白に締め、目線を御影から離して焚き火に戻す。そのあまりの呆気なさに思わず下げていた顔を上げる御影。予想から大きく外れていたのだろう。

 

「そうか、ってそれだけじゃないだろ!?本当は言いたいことあるだろ!」

 

「俺が罵った所で罪が消える訳ではない。

 御影、それはただの自己満足だ。悪しきを潰してきたお前だからこそ、そう考えるのだろうがソレは間違いに他ならない」

 

「だけど」

「だけど、ではない。

 俺にはお前を止めることは可能であっても裁く権利はない。裁く権利はお前自身にある」

 

 法による裁定、他者からの心ない罵詈雑言。それら全てを自身の罪によるものとして受け止める。それこそが罪の清算だとシャルルは語る。

 しかし、御影は言葉を理解できてもどうしていいのかが分からない様子で動揺している。

 

「もちろん、逃げることだってできる。禍根を残したままお別れだってできるんだ。お前なら俺達に見つかる事なく、逃亡だって可能だろう?」

 

「それは、違う·········絶対にやっちゃダメだろ······」

 

 自分に言い聞かせるようにしてシャルルの提案を切り捨てる。だが、その弱々しい姿からどんな些細な事でも転がり落ちそうな危うさを感じる。

 

「それが解っているのなら、俺から言うことはない」

 

 だからこそなにも言うまい。

 これ以上の議論でその軸から転がり落ちれば、もう二度と戻れなくなることを知っている身としては、一先ずここで議論を止める。今は考える時間が必要なのだ。

 そう結論づけたシャルルは完全に意識を御影から切り離した。

 

「·············くそっ、意味がわからねえ」

 

 少し考えたものの、シャルルの意図が掴めない。どれだけ考えても分からず、いつの間にか眠ってしまっていた。

 その姿を確認したシャルルは、その少し後に起こさないようその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かん、かん、とかつて聞いた音が鼓膜を打つ。次いで瞼を上げると眼前には真っ白な部屋。いや、ただ一点だけ赤く燃え上がっている。

 伽藍堂になってしまった心がその火を求めるように足を動かす。

 そうして辿り着いた先にあったのは天まで昇ろうと燃え上がる炎。その側には金槌を振り上げる白髪のお爺さん。金槌を振り下ろす先には熱を灯した刀。

 火花が散る。

 

 ずっと聞きたかったことを口にする。

 

“アンタはどうして、ずっと刀を打ってられるんだ?”

 

 俺が振るい続けてきた刀。それを打ち続けていたことに感謝している。けれど、この言葉だけは聞きたかった。

 休暇も報酬もなく、ただ打ち続ける。最早それは人であらず。機械と形容した方が正しいだろう。

 

 お爺さんは金槌を振り上げながら口を開く。

 

(オレ)は鍛冶師だ。

 依頼があらば刀を鍛ち、銭の対価として渡す。その後どう使おうが担い手の勝手だ。そうなれば当然、儂が刀を鍛っちまったせいで死ぬ奴も出てくる。

 ―――だがな。儂が鍛った刀のおかげで命拾いした奴だって出てくる。だから、儂はここで刀を鍛ち続ける」

 

 なるほど。このお爺さんは自身の仕事を誠実に、そして商売相手に対して敬意を持って続けているようだ。とてもではないが、真似できそうにない。

 

「――――ってのが今考えた建前だ」

 

 建前?

 つまり、今のは人聞きの良い場所だけということだろうか。なんで、ここで冗談を言ったのか意図がわからない。

 棒状に伸びてきた鉄を砂に突っ込み、顔ごと視線をこちらに向けてくる。先程まで険しい表情で鉄を見つめていた人とは思えない程、穏やかな表情だ。

 

「すまんすまん。まっ、長ったらしい建前とは裏腹にこっちは短ぇから安心しな。

 ただ儂は、究極の一刀を鍛ちたい」

 

“究極の一··········”

 

 その言葉に聞き馴染みがあった。そうだ、シャルがたまに言っている言葉だ。

 確か、何者にも劣らず、揺るがない価値を持つもの。一競技や技術で頂点に位置する絶対のもの。噛み砕いて言うなら、最強。それ以外ないだろう。

 

「ああ。儂はこれまでその一心で刀を鍛ち続けてきた」

 

“俺の為だとか、世界を守る為だとかではなく?”

 

「そうゆうこった」

 

“いいのか、そんな理由で”

 

 お爺さんの目的は極めて自分勝手で、利己的だった。しかし、お爺さんの刀がなければ俺は戦う武器を持たないまま戦場に立つことになっていたのは事実。俺に彼を咎めることはできない。

 

「コレは儂の人生、あいや、第二の人生か。ともかくな、自分の人生なんだから自分がしたい事しねエと損なんだよ」

 

“でも、それじゃあ―――”

 

 自身は楽をし、他者に苦労を強要する。

 それはダメだ。絶対にしちゃいけないことだ。しかし、お爺さんは自身の目的を見据えながら、結果的に俺の手助けをしてくれた。

 建前と本意がうまく同居している。

 

「御影 士郎。年長者からのありがたぁい言葉だ、耳ン中かっぽじって聞きやがれ」

 

“·············”

 

「人間ってのは生きてりゃ多かれ少なかれ罪を負っていく。儂達ってのは業が深い(そうゆう)存在だ。

 でもな。産まれてくる事事態が間違いだったなんて事は絶対にない。なんなら祝福される事なんだ。だから、そう気負うな。ずっと背筋伸ばすってのは疲れるし、大変だろしよ。」

 

“········背負った罪はどうすんだよ”

 

「一人でいけるなら一人で。一人で無理なら周りの奴らと払っていけばいい。お前さんの周りにはいっぱい仲間が·········友達、いんだろ?」

 

 友達··········そういえば、若葉達を友達と認識した事は一度もなかった。

 一緒に戦う仲間。気づけば皆のコミュニティに投げ込まれていた。そんな俺を快く受け入れてくれた皆には感謝しかない。でも、俺はそんな皆に――――――

 

 下がりかけていた額をお爺さんが人差し指で突く。

 

「ほら、考えすぎるなって。当たって砕ける、その気概で行動するのも時には進展を得るきっかけになる。

 いつだって前を見ろ。未来を見据えろ。それが、きっとお前の第一歩目になるだろうさ」

 

 ニカッと忖度ない笑顔を向けてくれるお爺さん。その顔に思わず、俺もつられて口角が上がる。

 そうだ、確かにそうだ。

 未来を予測できないにしても、見据え、構えることはできる。それさえできれば、後は·········よし、やってみよう。

 砕けるなら砕ける手前で踏ん張ろう。もし、進むことができれば突き抜けよう。何も行動しないよりはマシの筈だ。

 

「いい顔だ。もう爺のおせっかいは必要ないかね」

 

 そう言うと、砂に突っ込んでいた鉄を手にし、炎に晒す。そうして赤くなった鉄を最初と同じように金槌で鍛ち始める。

 

 視界が白くボヤケ始める。

 どうやら、ここでの時間はもう終わりのようだ。最後にお爺さんに感謝を叫ぶ。返事こそなかったけれど、一際大きく鉄を鍛つ音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 期間空けすぎてすいません。多分、今年度は今回と同じような頻度だと思います。まあ、今更ですけどね。来年度は戻せたらいいなと思ってるので、楽しみにしてもらってる人にはすいませんが、お持ちください。

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