気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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 さて、予告通りの閑話です。今回はめっっっちゃ本筋に関わるので読んでくださると嬉しいです。

 アンケートご協力ありがとうございましたっ!
 誤字報告ありがとうございますっ!!



称号剥奪【閑話】

 

 

 

 俺と親友で導き明かした研究が世界に発表され、一ヶ月が経ったある日。俺は自室にあるベットに寝転がっていた。

 

「ふぅー········。」

 

 ようやく一息つけた。

 この頃、TVとか記者からのオファーが多すぎて休みなんて全然取れなかった。なんなら、一日中思考してる時より疲れた。

 

「次、だな。」

 

 今、ぐで〜っとしているが本当はそんな時間はない。

 研究の成果として、ある程度お金は貰ったが一生楽して過ごせる程の大金ではない。よって、俺は次の職を手に入れなければいけない。

 俺の親友はと言うと、普通に医者に復帰しました。まぁ、今回の協力は俺が無理言って頼んだ事なんだけどな。ほんっと、アイツには頭が上がらん。

 

「中学教諭、管理栄養士、市役所勤務。ん〜········」

 

 高校と大学で暇な時間に勉強して取った、歴史の中学教諭と管理栄養士の資格。そして、一応有利になるような資格を取っている公務員。

 俺的には中学教諭がやりがいあると思うが·······世間の反応を見るに一番大変そうだな。

 考えてみればわかる話だ。生徒の進路を考えたり、部活の顧問したりで大変だもんな。しかも、顧問は給料出ないらしいし(多分)。

 

「ん〜〜〜·········こうなったら、ルーレットで決めるしかないか。」

 

 スマホを起動し、手頃なルーレットを探す。使いやすくて、スッスッと設定出来る感じの―――

 

 \ピンポーン/

 

「んっ?」

 

 ··········誰だ?

 俺が思い当たる二人は、どっちも今日は忙しい筈だ。俺んちに来れる余裕なんてない。

 

「·······出るか」

 

 しばらく考えた後、俺は歓迎することに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、何方様で―――」

 

勇斗か?!勇斗だよな!」

 

 扉を開けた瞬間、知らない中年ぐらいのおじさんに迫られる。正直言って、すぐさま扉を閉めて警察に通報したい所だが、暴力などはないため思い留まる。

 

勇斗ですが·······貴女は?」

 

「ほら!俺だよ、俺っ!」

 

「?」

 

 そんなオレオレ詐欺みたいなことを言われても俺には全く心当たりはない。

 相手から隠している左手でスマホを握る。

 

「やっぱ、覚えてねぇよな······まだちっちゃかったもんな。」

 

 この口ぶり、まさか·········いや、そんな訳があるもんか。本当にそうなら、なんで今まで―――

 

「お前の父ちゃんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お茶」

 

「おっ、気が利くな。」

 

 一先ず、自称俺の父親を家に上げリビングへと通した。そして、社交辞令でもあるお茶を出す。

 自称俺の、面倒臭いな。自称父でいいや。

 自称父は俺が差し出したお茶を一気に喉へと流す。そして、空になったコップをテーブルへと戻す。

 

「いろいろ聞きたいことはありますが·······まず、貴女は本当に私の父ですか?」

 

「もちろん。DNA検査でもやるか?」

 

 自信たっぷり、と。嘘をついている感じはしないな。まぁ、俺の勘はそこまで鋭くないけど。

 

「じゃあ次の質問です。なんで今なんですか?母さんが死んだ時に来ればよかったんじゃないんですか?」

 

「それに関しては本当に申し訳ない。」

 

 はいダウト。

 申し訳ないと思ってる人の抑揚ではない。それともなんだ?感情の起伏が全くない人種か?

 

「母さんの死については、つい最近知ってな。TVでお前が出演してる時の質問で初めて知ったんだ。」

 

 なんだ、この人。

 本当にこの人は俺の父親なのか?もし、そうだったとしたら心底虫唾が走る。一滴でもこの人の血が入ってるなんて考えたくない。

 

「それじゃあ、最後の質問だ。今日はどんな要件で来たんだ?」

 

 さっさと話を終わらせて、この家から出て行って貰おう。ここは俺と母さんの家だ。部外者はお引取り願いします。

 

「もし、勇斗がいいって言うんならまた一緒に―――」

 

「アンタとの“また”なんてない。上辺を棄てて、さっさと要件言ったらどうだ?」

 

「うっ、上辺なんて·····そんなこと······。」

 

 なんかたじろいでんな。どうやら、演劇家のようだ。

 

「········正直、お父ちゃん最近困っててな。物価高のせいでお金が底を尽きたんだ。ちょっとだけでいいから、お金を貸してくれないか?」

 

 マジで殺そうかな。きっと、世のため人のためになると思うんだ。

 まぁ、困ってるのは本当みたいだな·········はぁ。

 

「今は手持ちがこれだけだ。」

 

「おぉ······!ほんっと、助かったよ!いつか絶対に返すからな!!」

 

 財布から2万円を取り出し、自称父へと渡す。返されないのは重々承知だが、こうでもしないと帰らないだろう。この場にずっと居座って貰ってはいつか殺してしまいそうだ。

 

「ただし、お金の貸し借りはこれまでだ。アンタと俺は他人同士。父と子の関係じゃない。だから、一生ここに来るな。次来れば問答無用で警察に通報する。」

 

「········わかったよ。無理言って上げてもらったのはこっちだもんな。あっ、でもこのお金を返すとき―――」

 

「返さなくていい。だから、一生この家に近づくな」

 

 どうせ、返すのを理由にまた来て、また金借りていくんだろ。そしてその繰り返し········。

 

「そっか········それじゃあな、勇斗。元気で」

 

「··········」

 

 一応、家から出ていくまで目線は外さない。まぁ、俺んちに金目の物は置かれてないけどな。

 そして、ゆっくりとしたペースで外へと出ていった自称父を確認した後、一人ため息をつく。

 

「吐き気がする········母さんはなんであんな奴と結婚なんかしたんだ。」

 

 母さんがあんな奴と結婚するなんて思えない。

 嘘が見抜けなかった、或るいはなにか秘密を握られていたのか········どちらにせよ、アイツとは今後一切関わらない。それが懸命な判断だろう。

 

「はぁ·········。」

 

 自称父が口をつけたコップを見る。

 DNA検査·······いや、止めておこう。もし、本当の父だったら殺しに行く自信がある。ここは不明にしておこう。

 スマホをつけ、先程設定したルーレットを回す。緩やかに遅くなっていき、針が指し示す。

 

「中学教諭、か」

 

 これからすることは決まった。なら、後はこれに全力ダッシュするだけだ。

 確か、教員採用試験が二ヶ月にあるからそこまで総復習してとけば問題ないだろう。

 

「また勉強だな·······」

 

 何処までも付いてきそうな感じだな······。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから二日。食事、風呂、睡眠以外の時間は机に向かっていた。今日も今日とて、机に向かおうとした時だった。

 

 \ピンポーン/

 

「んっ?」

 

 まさか、アイツじゃないよな?アイツだったら通報しなきゃ(使命感)

 

「はい、ど―――」

 

勇斗!なんで、電話出ねぇんだ!?」

 

「うおっ、どうした。そんな慌てて」

 

 自称父に負けず劣らずの勢いで扉を開けてきたのは、俺の親友。名前は······いいや。

 今まで見たことない程の剣幕で家の中に入ってくる。

 

「大変なことになってんぞ!いい加減、ニュース見る癖つけやがれ!」

 

「他人の死なんて見て、なんになるって言うんだ」

 

 ドタドタとリビングへと二人揃って行き、TVをつける。丁度何かの特番をやっているようだ。内容は―――

 

「··········」

 

「なんでか解らんがお前の成果が元々俺の成果だったっていうデマが流れてる。」

 

 デカデカと俺の名前と大嘘憑きというロゴが出ている。

 ん〜、ちょっと心当たりないな。

 

「·······まっ、一ヶ月もすれば落ち着くだろ」

 

「それは甘チャンだぞ。こういうのは徹底的にくる。今だって、家の前記者だらけだぞ。俺ん所もそうだ。全くいい迷惑、いや普通に迷惑だ。」

 

 めんどくせぇ·······どうせ、またインターネットからの情報なんだろ。情報リテラシーの授業受けてる?あとモラルも

 

「とりあえず、俺はお前がやった証拠の資料を整理する。その間、お前は········どうする?」

 

「俺も整理を手伝おう」

 

「それは絶対に駄目だ。また、そっから叩かれる。」

 

「つまり、俺はアリバイを作ればいいんだな?」

 

「あぁ。」

 

「オッケー、了解した。青森行ってくる」

 

「お土産はりんごで頼んだ」

 

「妹ちゃんもか?」

 

「もちろん。お前からの物なら、なんでも受け取るとは思うがな」

 

 親友に迷惑かけるが、林檎でチャラにしてもらおう。

 その後、記者達がいなくなった深夜までに身支度を済ませ、車を使い家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 それから酷い日々だった。

 少し、町を歩けば馬尾雑言を浴びせられ、効果がないとわかったのか暴力へと変わった。

 

 

 石を投げられた。

 

 

 カッターナイフを投げられた。

 

 

 タックルかまされた。

 

 

 殴られた。

 

 

 車に何箇所もの凹みができた。

 

 

 警察は見て見ぬ振りをした。

 

 

 入店拒否をされた。

 

 

 全て、俺の心には届かなかった。どうでも良かった。

 なんだ、一致団結出来るじゃねぇか。としか思わなかった。やはり、人類には倒すべきが悪が必要なんだと確信した。だが、それは俺ではない。倒されるべき悪は俺ではない。

 

 この程度で死ぬわけにはいかない。

 シャルルマーニュの言葉を借りるなら、俺に無抵抗は許されていない。

 怒りを、憎悪を、復讐心を抑え込む。例え、どんなことをされても俺が正義を語る奴らを倒してはいけない。

 

 誰も悪くないんだ。

 俺だって、他の奴らだって·······ただ、自分の正義を振りかざしてるだけなんだ。

 ただ、皆がそうしてるからだとかの理由ではない筈だ。

 

 ―――いや、解ってる。

 自分の行いは正しい。世界の汚点を消せる。そう思うのは最高に気持ち良いもんな。

 正義の味方に誰だって憧れるのは当然だ。

 

 青森で林檎を二箱買い、帰路につく。ここから、また一週間かけて家へと帰る。

 帰ってすることはもう決めてある。

 

「はは········」

 

 椅子の上に立つ。首は縄に括り付けて······椅子を退かす。

 これで俺の人生は終了。一生、あんなキモチワルイ生物に会わなくて済む。それだけでも、少し嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 縄が軋む音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 





 この翌日に親友とその妹が発見するのは別のお話。

 以上がある男の終着駅でした。
 え?カッコ悪い?········そうですね。彼も理解してます。この結末がカッコ悪いことだなんて百も承知です。
 それ程までに人間は気持ち悪かった。クルクル周りの状況に合わせて手の平を返す芥が。 


 デマ情報流したのは自称父です。相続財産で全額貰おうとしてます。

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