「········うおっ。もう来たのか。案外早い到着だったな。
なに?シャルルマーニュが?········甘っちょろい奴だよ、アイツは。他にはどんなことを、っと違うな。
―――どうだ?良い人生だったか?」
神世紀七年。もう時期、私が理想として掲げていた大赦の土台作りが終わる頃だったろうか。
日々、激務を熟しながら勇斗の小学校を考えていく。ここは無難に近所の、と思う私と。由緒ある学校へと通わせるべきだと頭が硬い私がいる。
私服で通う勇斗········小さいながら制服を着熟す勇斗·········ああ、どっちも愛くるしさが爆発してます。若葉ちゃんの服を決める時と同等の胸の高鳴りを感じますね、これは。
「ねぇねぇ、おかあさん」
「はい、お母さんですよ?」
机から垂れ下がっている裾をぐいぐい引っ張ってる勇斗へ視線を向ける。きょとんとしながら士郎さん譲りの金色の瞳は私だけを映している。
「トイレ行ってきていい?」
「いいですよ。ただし、知らない人には絶対についていったらいけません」
「は〜い」
トテトテと小走りで―――――――――
ああ········この声······ようやく、私·····は―――
「――っ、若葉、ちゃん·····?」
曖昧だった視界が良好になっていき、夢現から覚める。少し横に視線をずらせば炎の海。どうやら、私は死にかけていたようだ。
「テロによる爆発を喰らった!ひなたは早く避難を······待て、勇斗は何処だ?」
「勇斗·······勇斗は、―――ッ!」
「っ、ひなた!そっちは危険だ!」
未だ目眩がする意識を奮い起こす。今はそんなことを気にする余裕なんてない。一刻も早く勇斗を見つけないといけない。
呼吸は最低限に、炎の隙間を掻い潜りながらひた走る。大赦の内部構造は脳にある。
―――大丈夫。勇斗は生きている。きっと大丈夫だ。あの子は今年で五歳、口を塞ぐ術もある。だから、この曲がり角さえ曲がってしまえば······っ!
「勇斗っ!」
丁度トイレの出入り口に倒れている勇斗。そして、それを己の肉体で守る一人の神官。ただそっと、勇斗の口にハンカチを添えている。
「――·―·····ようやく、来てくださり、···ましたか········」
「········勇斗は?」
「今は、頭を······打ち、気を―――····。右腕に、火傷·······神経は、――···大丈夫、····です。」
もう意識がはっきりとしていないのか、途切れ途切れになりながら勇斗の様態を口にする。
「あと、数秒後に···――··敵が、きますっ。―――足留めは私が·····―――、老骨では、ありますが···――逃げる時間ぐらい、作りましょう」
最早焼け落ちそうになっている右手に拳銃。焼け爛れている左手には一本のナイフを。
「わかりました········勇斗のこと、本当にありがとうございます」
「――······いえいえ。これでも、嘗ては教師だったのです。子には、未来が―――、····いえ、これは過ぎた話でしたね。それでは、お行きなさってください」
どこか遠い目をした瞳を見届け、その場を後にする。例え、勇斗を抱えたとしてもスピードは落ちない。無事逃げ切れる。逃げ切らなければいけない。
必要な犠牲だった·········そんな筈がない。犠牲はいらないものだ。だというのに、この結末は······あまりにも·······。
あと何秒生きれるかすらわからない体で、敵を待ち伏せる。必ずや、仕留める。仕留めなければ、立っている意味がない。
接敵まで、後5――4――3――2――
「1」
「ッ―、キっ、サマァ゛!」
ナイフで首元を一閃。残り二人に気づかれるが、すぐさま今殺した者を盾にし、拳銃を二人目へと向ける。
「2」
「 あっ」
脳みそが壁へとぶち撒けられる。血は炎によって瞬時に蒸発。残り一人はあまりの出来事に体が止まっている。
「3」
「や、やめっ―――」
心臓を一刺し。
残りがいないか確認した後、武器を投げ捨て血塗れになった両手を壁に寄りかかりながら眺める。
「どうしてこうも、望む才は与えられるなかったのか···········皮肉なものです。私は教師だと言うのに―――」
その言葉を最期にずりずりと壁から落ちていく。
もう一酸化中毒により、頭など回っている筈がないというのにその男は困ったように笑っていた。
重たい瞼を開け、即座に理解する。また、自分は意識を失っていたようだ。そして、近くに勇斗がいないということも。
「―――ッ!勇······っ!?」
かかっている布団を飛ばす程の勢いで体を起こすが、胴体に奔った激痛に思わず顔を顰める。
「寝てなさい。貴方も怪我人よ」
そう隣で寝ている千景さんによって諭される。どうやら、ここは病院のようだ。
「千景さん。········勇斗はどうなりましたか?」
「怪我はしてるものの無事よ。頭を打った時にいいクッションがあったんでしょうね」
「いいクッション·········本当にその通りです」
あの人には感謝してもしきれない。でも、今頃あの人は·······。
「大赦の残りの人員は百人程。どう?立て直せる?」
「立て直します。それよりも、襲撃者の正体は········」
「さぁ?乃木さんが全員殺したからわからないわ」
「若葉ちゃんが······?」
若葉ちゃんが全員殺した········勇者システムもなしに?いや、そんなことよりも若葉ちゃんが人殺しを··········そんな訳、ある筈が。
「事実よ。呑み込みなさい。
スポーツで言う所のゾーン状態だったんじゃないかしら、あれは」
「そう、なんですか」
その後の会話などなく、千景さんは私に背を向けて寝てしまった。私も回復に努めようと後を追うようにして瞼を降ろした。
観衆の声援がここまで聞こえる。それも当然、新たな時代の門出なのだから。
ああ、やっとここまで来ることが出来た。300年間を経て、ようやく形になったこの光景。例え、そこに私が立っていなくとも悔いはない。
「今日は一段と機嫌が良さそうだな」
「ふふっ。そう見えますか?」
「あぁ、怖いぐらいにな」
そう話す彼は天の神打倒の立役者、シャルルマーニュ。今回は威厳を出すため、と言って堅苦しそうな鎧を身に纏っている。
「夢が叶えば、誰だって嬉しいですよ。ねぇ?」
「そういうことか。それで、どうだ?数多の屍を築いて叶えた夢の光景は?」
やはり、彼は私のやり方に賛同してくれないようだ。けれど、それでいい。きっと彼はその在り方を死ぬまで変えないんだろう。
「·········認めたくねぇが、アンタの行いは正しいものだ。だからこそ問う。
アンタはどうしてその夢を叶えようと思ったんだ?」
「それは貴方がこれからの人生で見るものです。きっと、貴方ならわかると思いますよ」
神の加護などなく人が手を取り合って切磋琢磨していく。本来あるべき人の姿。きっと、この先にある筈の光景。
「自分を悪者にしてまで見たかったのか?」
「はい」
「そうか········」
諦めたかのように肩を竦める。そして、話はここまでとばかりに私に背を向ける。
「それでは、私はここで降ります。後のことは貴方達に全て託します」
「ああ、託された」
その力強い声と共にシャルルマーニュも舞台へと上がる。きっと彼なら、という淡い希望があった。その希望が、彼がシャルルマーニュだからなのか。それとも士郎さんに似ていたからか。それは私にもわからない。
「―――そっか。そりゃあ良かった。
········なんだよ。俺が労いの言葉を言うのは可笑しいか?俺だって労いの一つや二つ言うさ。
ん?あぁ······お疲れ様、ひなた」
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