気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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未だ青空は遠く【if√】

 

 

 

 

 ―――振るう

 

 

「ハ、ァァ······ア゛!」

 

 

 ―――放つ

 

 

王勇を示せ(ジュワユーズ)、―――ッ!」

 

 

 ―――防ぐ

 

 

「耐え、る······っ!」

 

 

 際限なく増えていくバーテックスへ果敢に応戦するが一向に進行を諦める気はない。それ以前にもう時期こちらが崩れる。

 

 一人、というのによくここまで保ったものだ。

 手足は既に千切れかけ、腸からは臓器がはみ出ようとしている。想像を絶する痛みだというのに剣を振るい、不可能無理な化け物を押し返す。これではどちらが化け物かわからないな。

 

 だが、それもここまで

 

 意識が一瞬、ほんの一瞬傾いた数秒。そこを奇跡的に十二勇士の防御網を掻い潜りシャルルマーニュの太腿を針が貫く。

 

「―――ッ、·······毒か」

 

 堪えるように顔を歪めながら、すぐさま蠍座を砕く。それに伴い針も抜け落ちるが········手遅れだ。

 視界が赤に染まり、鼻血が止め処なく流れ始める。次第に血不足となり肌が青白くなっていく。

 

「·······あぁ。これで最後だ―――カッコよく行こうぜ、テメェら!!」

 

 海底まで届き得る聖光が放たれる。人の最期はなによりも美しい、と狂人は言ったがどうやら彼にとっては正しいようだ。

 

「永続不変の輝き、千変無限の彩り

 万夫不当の騎士達よ、我が王勇を指し示せ!」

 

 誰よりも眩しく、誰よりも気高く、誰よりもカッコイイ。何者も逃さず邪を滅す至高の十三連撃。

 

王勇を示せ、遍く世を巡る十二の輝剣(ジュワユーズ・オルドル)ッ!!」

 

 

 

――――――――――――――――

 

―――――――――――――

 

――――――――

 

――――

 

 

 

 

 遥か彼方まで続く地平線。ただ、真っ白な空間が永遠と続く世界。そんな場所でもやが語りかけてくる。

 

「お前が悔む必要はねぇさ。ただまっ········悲しいとは思うだろうがここで終わりだ。

 ······さぁな。それは俺にもわからん」

 

 結末など誰にもわからない。

 300年間答えを探し求めた世界への答えはもう時期導かれるだろう。だが、それが人が謳うものなのか。神が謳うのかは·······いや、既に出てるか。

 

「シャルルマーニュ。俺が·····俺達が追いかけた色彩は誰の手にも握られなかった。

 それでいい。夢、理想ってのはそんぐらいが丁度いい。恋い焦がれる物なら尚良しだ」

 

 自身に足りなかった物はなんなのか。結局辿り着けなかった。やはり、俺にはそんな資格はなかったのかもそれない。

 

「········それはねぇよ。じゃなきゃ、あんなピッカピッカなジュワユーズ撃てる訳あるもんか!

 ―――もちろん、最高にカッコ良かったとも」

 

 ただその一言。たったそれだけの言葉が心を満たしていく。じんわりと、朗らかに。暖かい―――

 

「じゃあな。

 人類史の行く末、見守っていてくれ」

 

 もやへ背を向け、一人一寸の光もない道を歩く。ゴールがなくとも······きっと、いつかは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私は大罪人だ―――

 

 

 力があった。体があった。武器があった。

 

 私は、·······私は戦えたんだ。満開の副作用で体の機関が機能停止になったとしても戦えたんだ。

 でも、足が竦んだ。武器を握る手に力が籠めれなかった。去りゆく背中に手を伸ばせなかった。

 

 私は勇者。世界を守る勇者。

 ああ·········ほんとに――――

 

「笑わせないでよ·······っ!」

 

 そう誰もいない、最早誰も住んでいない家で唇を噛み締める。

 何故私は生きているのか。その答えを探すように家の中を彷徨う。これではまるで亡者だ。いや、正確にはそうなのだが。

 

「······あ、ここって」

 

 一階にある二室のリビングに近い方の一室。確かここはシャルが使っていた部屋だ。

 そっと扉を開く。どうやら、既に誰かが来たようで彼の荷物がきちんと整頓されている。

 

 分厚い一冊がドンと机に置かれている。

 

「アルバム······」

 

 手に取り、表紙を捲ると私達四人で初めて撮った写真が一ページ分を使って飾られている。これから察するにアルバムのようなものだ。

 

「······あ、プール行った時の········こっちは料理会の·······ふふっ」

 

 一枚一枚、過去を遡るようにして眺めていく。そして最後のページに―――

 

“楽しかった‼”

 

「あ―――、うん·····っ゛、私も·····〜゛、·····私も楽しかった、んだよ······?」

 

 咽び泣くように涙を流し、その言葉を指でなぞる。彼らしからぬ殴り書いたような文字。そんな拙い文字だというのに心が激しく揺れ動く。

 

 もっともっと思い出を作りたかった。だけど、もう彼はいない。このアルバムは残りのページはずっと空白のまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 波の音が彼らの眠りを告げる。一人、また一人と墓石を重ね世界を存続させていった。勇者だから、勇者ならば、それが当然だったのだろう。あまりに身勝手。そんな地獄を繰り返し虚しい300年を築いた。そして価値ある1年を出した。

 

 意味はあった。絶対にあったのだ。でなければ報われない。悲しいだけの死になってほしくない。だから、生者は胸を張って前を向け。それだけで彼らは満足だ。

 

「········」

 

「········」

 

 今日もまた一つの墓石の前へと膝をつき両手を合わせる。天国があるかは知らないが、きっと今頃天国でワイワイしているだろう。宴は駄目です。お酒飲める歳じゃないでしょ、と彼のノリで思う。

 

「·······来年から小学校の教科書にシャルの名前載るんだってよ」

 

「友人として誇らしいわ。でも、あまりはしゃぎ過ぎないようにね」

 

 世界を守って死した英雄。そんなところだろうか。

 シャルルマーニュ、本来であればもう片方のメジャーな名前が載っている筈なのだが········300百年は長すぎたな。誰も彼もが忘れていく。

 

「·······それじゃあ、行くか」

 

「ええ、·······また来るわね」

 

「またね、シャル」

 

 置いていた荷物を持ち、膝を上げる。

 いつまでもここにいられない事は重々承知だ。彼女達を引き止めることはしないが寂しいのには変わりない。

 

「っ······、ん?」

 

 墓石へ背を向けようとした時だった。誰かがこちらへ猛ダッシュで近づいてきている。靡く金色、あるいは栗色········どちらなのだろうか。いやいや、そんなことは今はどうでもいい。今重要なのは乃木 園子がアルバム抱き抱えてこちらに走ってくることだ。

 

「どうしたの、そのっち?それにその本······写真帳?」

 

「っ、うん、シャルの家で、見つけ、たんだ·····!」

 

 肩で息をしながらアルバムを差し出す。それを三人で囲み、四人で覗き込む。

 

「遠足の!懐かしいなぁ······」

 

「浴衣姿のもあるわね······あ――」

 

 そして最後のページを開く。そこには園子が見た言葉が変わらずある。持ち主はいなくともこのアルバムは不変。一生の思い出だ。

 

 その言葉を示すように見覚えのある指が置かれる。

 

「―――本当に、楽しかったんだ」

 

 とても穏やかで優しい声。でも、だと言うのに何処か泣きそうで震えている。

 

「――っ!」

 

「シャル―――、·······」

 

「·······シャルル君らしい現れ方ね······」

 

 いくら周りを探そうが何処にも彼の姿はいない。まるで怪奇現象にも出くわしたかのような感覚がある。もしかしたら、先程の声は幻聴で彼は最初からいなかったのかもしれない。

 

「あー·······アタシ、結婚できないかも」

 

「大丈夫よ、銀なら絶対見つかる」

 

「教科書に載れるような人、いるかな〜?」

 

 東郷からの助言を容易くぶっ壊す園子。普段通り、ではないかもしれないが冗談を言い合える仲であれば問題ないだろう。

 

 前を向き、ただひたすら歩む。それ程までに勇気がいることはない。だが、心配はない。彼女らは勇者で―――

 

「最高にカッコイイ奴らだよ―――」

 

 風と共に彼方へと飛んでいく。誰の耳にも届かず、ただ独り言のように消えていく。泣きそうで、挫けそうであるが彼女達が歩むのだ。そんなものは捨て去れ。ずっと願っていろ。

 

 ―――明日もいい天気だろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わり廃墟となった街。そんな中を姿形が瓜二つな者達が歩く。見分け方は左腕の有無だけだろうか。

 

「ここいらでいいか?」

 

「ん〜·······まっ、そうだな」

 

 瓦礫があれど、それすら無視してしまえば開けた空間。戦闘向きのフィールドではある。

 

「始める前に聞いておきたいんだが········どうして九州(ここ)なんだ?」

 

「俺の産まれ故郷、それだけだ」

 

「そうかい······じゃ、始めるか」

 

 そう言う彼の手には草薙剣が。もう片方の彼は抜き身刀を握る。

 

 天の神もその天蓋もいない。であれば戦う必要はない、その筈なのだが·······まぁ、簡単に言えばただの消化試合である。ただし、勝敗で世界の命運が別れることにはなる。

 

「殺してくれよ、四国の大英雄?」

 

「殺してやるよ、罪なき罪人」

 

 この後、どちらが勝ち、世界がどうなったかはわらかない。ただ確かなのは良き方向に転んだのは事実だ。人の世界―――その実現が近い。

 

 

 

 

 

 

 

 






 分岐点は先代勇者が一回目の満開で絶望したか否か。本来なら戦うしかありませんでしたが、シャルルマーニュという頼れる存在がいたために一歩を踏み出せなかった。つい彼に甘えてしまった。それがこの結末。

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  • ⬛⬛ ⬛⬛
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