気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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 コラボだぁぁぁぁ!!!!!
 はい。ということでコラボです。人生初の試みなんで心臓バキバキですが書かせていただきます。
 腰を水平に折りながらメール送ったのが今でも懐かしいです。

 時系列としては御影の問題とか諸々が全て終わった後です。なので御影が結構柔らかいと思いますが、他は変わらないのでご安心を。第二形態とかは増えてないです。

 作品名【美しき舞う花と黒き勇者】
 作者 【プロトタイプ・ゼロ】




美しき舞う花と黒き勇者【上】

 

 

 

 

 

 

――― 第1章 【嚆矢】―――

 

 

 

 雪がはらりはらりと舞い散る一面真っ白な空間。ただ一つ金色と黒色が降り混ざった椅子が置かれており、マフラーを巻いた青年が本を脇に挟み、椅子の隣に立っている。

 

 

「おや。別の時空軸からの訪問者とは物珍しいですね」

 

 

 床があるかすらもわからない地面を歩き、座っている青年へと近づいていく者が一人。その手には一振りの抜き刀が握られている。

 

 

「共倒れは阻止しなきゃいけねぇ。アンタなら理解出来る筈だ」

 

 

「剪定事象ですか······ですが、そこまで心配しなくとも良くないでしょうか?私が監理するこの世界も、貴方方が保護している世界も柔ではありませんよ」

 

 

 ある世界において神樹によって人里の守護者へと召し上げられた⬛⬛ ⬛⬛。そして、それに相対するは別世界の管理者であるウィルダム・ユットマン。

 

 

「それでも、だ―――ッ!」

 

 

 ただの青年であればこの一振りで上半身が肉片と化し飛び散るだけだが、彼は管理者。言わば神様。この程度の攻撃など直撃しようがものともしない。

 振り切ったことにより破片、さらに細かくなり砂状になって空中へと溶けていく刀。⬛⬛は妙な感触を受け、すぐさま後退する。

 

 

「――そうですか。それではこうしましょう」

 

 

「やっぱ無理か」

 

 

 当たった、効いていないなどの話ではない。住む次元が違う。言い表せない妙な感覚だ。⬛⬛は打倒を諦め、刀を逆手持ちし自身の腹へと―――

 

 

「おっとお待ちを。その物騒な物はお出し厳禁ですよ」

 

 

「何でもありかよ······っ!」

 

 

 その言葉で何かが発動したのか⬛⬛が持っていた刀は消え去り、結果として自死することは出来なかった。これにより第2プランであった道連れは失敗。第3プラン?ねぇよそんなもん。

 

 

「それではご清聴ください」

 

 

 脇に挟み込んでいた本を開くと誰の力も使わず次々にページが捲られていく。そして唐突に終わりを向え、あるページを指し示す。

 

 

「ッ―――!? お前、まさか――」

 

 

「枝分かれた二つの世界。どちらも近からず遠からず、しかし触れ合うことはないであろう。けれど、今この時を以て覆す。

 さぁ、黒き勇者よ。幻想を宿した勇者よ。その胸に我らが祝辞を―――」

 

 

 ⬛⬛が走り出そうが時すでに遅し。もう誰も青年を止めることはできない。もし、間に合ったとしても止めれたかは怪しい。だが、本題はそこではない。

 

 “乖離した世界が触れ合う”

 こんな事ある筈がない。あってはいけない。けれど、起きた。であれば後は見守るしかあるまい。悲劇か喜劇か、どちらにせよ碌な事にはないだろう。1mmでも良い方に転ぶことを祈っておくよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――第2章 【邂逅】―――

 

 

 

 あらゆる時代、場所から神樹様によって召喚された勇者が集う世界。それがこの疑似世界だ。

 あらゆる時代と言っても神世紀300年間と末期の西暦からのみだが。流石にそれ以前の英傑達を喚ぶことは神樹様、つまり神々であっても至難の技なのだろう。まぁ、と言ってもある特殊な条件下で一人の英雄が召喚されてはいる。

 

 

「··········」

 

 

 朝早く起き、同居人の分含めた朝ご飯を黙々と作っている姿は正に主夫。ではなくただの中学生。名はシャルルマーニュ。

 そう、彼が上記で記した英雄である。

 

 真名シャルルマーニュ。あるいはカール大帝。即ち、ヨーロッパの父である!(ドヤッ)というのは事実であるが事実ではない。

 彼は本物のシャルルマーニュではなく、ただその皮を被った元一般人。その力は紛れもない幻想の騎士によるもの。けれど、それはただの借り物でしかなく彼本来の力ではない。

 

 

「おっはよぉー!」

 

 

「おっは〜······むにゃむにゃ·―――」

 

 

 元気な挨拶、それとは真反対に眠たげな挨拶が木霊する。言わずもがな同居人(いつの間にか住み着いてた)三ノ輪 銀と乃木 園子である。どうやら、眠り続けていた園子を銀が引き摺りながら連れてきたようだ。なんならまた眠り始めている。

 

 

「おはよう。園子は顔を洗ってくるといい」

 

 

「あ〜ぃ」

 

 

 銀の肩に置いていた手を外し、目を擦りながら洗面所へとトコトコ歩いていく。以前、いや何度か洗面所で立ったまま寝ていることがあったが·········今回はないだろうと高を括り見送る。その間銀とシャルルは朝ご飯を机へと運んでいく。

 

 今日も今日とてシャルル宅は平和です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻8:00、とあるカフェにて。至って普通な黒髪、そして誰もが一度は二度見する金色の瞳。そんな青年(?)がパフェに使う材料の下拵えをしていた。

 

 

「村正さーん!こっちもお願いします!」

 

 

「へいへい。これやった後でな」

 

 

 名を千子 村正。真名は⬛⬛ ⬛⬛。言うなれば名前のない英雄·······いや、それはちょっと違うか。訂正して名前を忘れ去られた英雄としておこう。これには事情があるのだが説明が面倒いので省く。

 ちなみに千子 村正の擬似サーヴァントでもある。スキルは彼自身のものしか持ち合わせていないが、そのスキルによって村正のスキルも自由自在、とまではいかないが引き出せる。

 

 と、言っても今はただのパティシエである。充分な下拵えをし、オーダー通りに作るだけの者だ。まぁ、朝からスイーツを食す甘党はあまりおらず暇になることが多いが·········準備することは全てにおいて大切だ。

 そんな黙々と下拵えしている村正の内側から一体の精霊が飛び出る。だが、そんなアクシデントがあったとしてもその手を止める気などない。

 

 

「不味いことになったな」

 

 

 そうポツリと呟いた言葉により、止まる筈のない手が静止する。固まる、の方があってるかもしれない。

 一先ず下拵え中のスイーツに背を向け、精霊『建速須佐之男命』へと視線を向ける。

 

 

「まだ食ってないのに不味いとか言うなよ」

 

 

「いや、それの話ではない。そんな事はどうでも良くなる程の話だ」

 

 

 普段ならこのレベルでの会話で大笑いする二人だが、今は真面目パート。空気を読める男(自称)の二人が笑う筈もなく。

 

 

「イレギュラーは三人で手一杯だ。故に四人目は―――」

 

 

「殺す、か········やれたらやる」

 

 

「行けたら行く感覚で流すな。流石にこれは看過は不可能だぞ」

 

 

「はいはい。覚えてたら殺ってやるよ」

 

 

 この男の性質を理解している須佐之男はこれ以上は無駄、あるいは要件が終わった、と判断し⬛⬛の体内へと入っていく。それを見届け⬛⬛も下拵えへと再度着手―――

 

 ―――樹海化警報が鳴り響く。

 

 

「·········見極める、それ以上に苦手なもんはねぇな」

 

 

 手につけていた薄いポリエチレン手袋をゴミ袋へと投げ捨て、白く清潔感を漂わせる帽子を取る。そして次の瞬間には霊基を換装。その姿は千子 村正が鍛冶場を建てた際の装いであり、所謂第二再臨の霊基だ。一人なら野武士の姿でもいいが·······流石に女児の前であの姿は、ちょっと········。

 

 ―――花弁が舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 樹海。それは神樹によって現世から隔絶された世界。しかし、樹海のダメージは現世へ還元され自然災害や誰かの不幸として現れる。だが、この世界では心配無用だ。そのような時間制限も切り札、満開による代償もない。ゴリ押しし放題である。ただし肉体疲労はあるものとする。

 

 

「こんな朝っぱらから攻めてくるたぁ、いい度胸だ」

 

 

 そう悪態と共に最前線へと降り立つ御影 士郎。装いとしては左側の裾に腕が通っていない村正第三再臨の霊基である。説明は·······ダルくね?多分⬛⬛の三倍を要する。何もしないというのもあれなので、一先ず短めでいこう。

 

 西暦にて勇者と共に戦った正真正銘の勇者。他二人は厳密には勇者ではない。そして後世、神世紀では四国の大英雄と崇め奉れている者でもある。

 正体は⬛⬛ ⬛⬛の成れの果て。須佐之男との契約によって名と存在を神樹へと捧げ、抜け殻の肉体を残して去った者から生まれた者である。つまり、記憶喪失後に生まれた新たな人格である。まぁ、⬛⬛ではない⬛⬛と把握して貰えればOKです。

 

 

「なにか妙だな」

 

 

 次に到着したのはシャルル。それと同時に意味ありげな言葉を落とす。そんなシャルルへと御影が問う。

 

 

「妙······静か過ぎるってことか?」

 

 

「それもあるが·······ここまで来る際に他の者達とは会ったか?」

 

 

「!」

 

 

 その言葉でようやく気づき、すぐさまスマホを取り出し他の勇者の所在を確認するも······自身以外の位置を表す点と名前は表示されない。

 

 

「俺達以外いない、ってことか」

 

 

「星屑とバーテックス共も一匹も見当たらん」

 

 

「閉じ込められた可能性がありそうだな」

 

 

 樹海化が終わる条件としては迫りくる天蓋共の一掃。それがこれまでの樹海化が解けた際の例だ。一応人類滅亡の際は強制的に解除されるだろうが今は関係ない。

 それを踏まえて現状を改めて見よう。天蓋なし、イレギュラー組うち二名がいるだけ。これから考えるに·······閉じ込められた、そんな考えが御影の脳裏に過る。

 

 

「よっこいせっ、と」

 

 

 仲良しイレギュラー組三人目の村正が加わった。おじさんか、とツッコミたい気持ちをグっと堪えシャルルが村正へと問いかける。

 

 

「お前はこの事態について何かわかるか?」

 

 

「俺もさっぱりだ。とりあえず暇だから御影、なんか一発芸やってくれ」

 

 

「無茶振りが過ぎるぞ。とりま殺しとくか?」

 

 

「そうだな、殺すか」

 

 

「殺伐とし過ぎだろ」

 

 

 因果応報だろ、と思いつつ各自ぼーっと樹海の地平線を眺める。辛うじてではあるが壁が視える。あと人影も·······人影?

 

 

「·······人か、あれ?」

 

 

「人間だろうな」

 

 

「おお、速ぇな」

 

 

 二振りの大剣を携えて飛翔し続けながらこちらへと猛スピードで近づいてくる人影。全身黒いためあまり全貌は見えないが多分男だろう。それもかなりの強者。そして遂に―――

 

 

「―――お前達は誰だ?」

 

 

 邂逅を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――第3章 【独尊】―――

 

 

 

 突如として現れた正体不明の黒き装いを纏った少年。シャルルは黒尽くめでカッコイイ、村正と御影は業物をじっと審美する。普通なら驚く所ではあるが、普通ではないからしょうがない。もはや青年のことなど眼中にない。やっぱコイツらおかしいよ。

 

 

「おい、聞いてんのか?」

 

 

「おっと、すまない。少し········いや、かなりカッコ良さの再確認が出来た。黒は良い、とな」

 

 

「は?」

 

 

 おそらく最初の問いかけなど忘れているのだろう。シャルルにとって今の優先順位は『カッコイイ』が最高なのだろう。ということなので使い物にならなくったシャルルに代わって、審美を終えた御影が間に入る。

 

 

「俺の名前は御影 士郎だ。アンタの名前は?」

 

 

「········」

 

 

 そう御影が問いかけるも黒い少年の視線は御影と村正を行き来している。まるで見比べるかのようだ。まぁ、実際そうだろうが。

 

 

井嵩(いがさ) 優斗(ゆうと)。············一つ聞くがそこのお前とお前は兄弟なのか?」

 

 

「なぁに、ただのそっくりさんだ。よく聞くだろ、世界には自分のそっくりさんが3人いる、ってな」

 

 

 初対面であれば絶対に直面するであろう質問をいつもの屁理屈で返す。そんな返しではあったもののいつもとかけ離れている事象が連続して起こると、逆にその程度の問題はあまり気にしなくなってしまうようだ。慣れとは怖いな。

 

 

「ユウトか········漢字は勇者の勇か?」

 

 

「? 優しいの優だ」

 

 

「そうか、ユウト違いか。

 遅れてすまないが、俺の名はシャルルマーニュ。気軽にシャルでいい」

 

 

 ユウト、という名前に過剰反応するシャルル。これには深い理由があってな········こちら側の世界には勇斗という名前の主人公級な奴が三人いる。どういうこっちゃ。

 

 

「あ、俺は千子 村正な。偽名だが気にすんな」

 

 

「············」

 

 

 偽名と宣言されて気にしないのは無理だろ、とは口にせずだんまりを決め込む優斗。ちなみに本来の名前はユウト違いな名だ。文字表記するならば⬛⬛ ⬛⬛となる。

 

 

「んで、アンタは勇者なのか?」

 

 

「ああ」

 

 

「·······おい、シャルと御影集合」

 

 

「んだよ·······優斗、少し待っててくれ」

 

 

「わかった」

 

 

 優斗に話し声が聞こえないぐらいまで離れた村正から集合がかかる。それに従い、シャルと御影は優斗を置き去りにその場を離れる。

 

 

「そんで、なんのコソコソ話だ?」

 

 

 ここでコソコソ話を挟むということは真剣な話のような気がするが、村正の雰囲気は普段と変わらない。まぁ、だからと言って真剣な話ではないという法則などないが。

 

 

「お前らは井嵩 優斗って勇者聞いたことあるか?」

 

 

「西暦じゃ聞いたことがねぇ。シャルはどうだ?」

 

 

「英霊之牌にはそのような名はなかった。村正、神樹の守護者としての記憶内にあるか?」

 

 

「ないな。そもそも男の勇者は御影 士郎しか確認してない」

 

 

 であれば、アレは何者か。という議題に辿り着くがこの三人で考えても答えが出ないとなれば、それはもう迷宮入りである。

 と、そんな停滞を打破するためか村正の体内から須佐之男がにょきっと出てくる。

 

 

「お困りのようだな?」

 

 

「ああ、お困りだ。何か知ってたらさっさと吐いてくれ」

 

 

「不躾だが、まぁいい。此度は見逃してやる。話してやるからさっさと井嵩 優斗と合流するがいい」

 

 

 此度だけでなく毎度見逃してくれるこの神様はほんとに荒ぶりの神なのかと疑いそうになるが実力は本物だ。天の神如きなら物理的に雑巾絞りが出来る。ちなみに村正と結構仲が良い。

 

 てことで優斗と合流。優斗からして見ればおバカ三人組に小さいぬいぐるみ(?)が付属で帰ってきたように見える。

 

 

「内緒話は終わったか?」

 

 

「そこら辺は須佐之男から話があるってよ」

 

 

「須佐之男·······まさか、建速須佐之男命か!?」

 

 

「そうだ。崇め奉れ、献上品は貴様の命でいい」

 

 

「コラ、物騒な話してないでさっさとこの状態について説明しやがれ」

 

 

 物騒な話をし始めた須佐之男の頭を何処からか持ち出した丸めた新聞紙でぺしっと叩、こうとするも須佐之男の頭にヒットする前に砂状になり結果としては空振りとなった。

 

 

「井嵩 優斗、貴様はこの世界にとって別世界からの訪問者である」

 

 

「··········」

 

 

 須佐之男の衝撃のカミングアウトに優斗が何を思うのかは彼のみぞ知る。まぁ、案外異世界転生イッヤホー!とか心の中で叫んでいるかもしれない。

 

 

「別世界か。それならば、合点がいくな」

 

 

 別世界からの訪問者であれば、この世界に一切の情報がなくとしても不思議ではない。逆にあったらあったで恐怖である。

 

 

「そして、貴様達には殺し合いをしてもらう」

 

 

「っ―――!?」

 

 

「よしっ、俺はシャルルマーニュ、()殺すか」

 

 

「ならば殺し返すしかないな」

 

 

「よぉし、村正殺すかぁ」

 

 

「おい待て!ここは普通三竦み作るとこだろ!?」

 

 

 村正がシャルルマーニュ、シャルルマーニュが御影、御影が村正を。となれば誰も死なずに終わるが、村正がシャルルマーニュ、シャルが村正、御影が村正。となれば話は変わる。二対一はちょっと違う。いや、そもそも―――

 

 

「日頃の恨みだ、村正ァ!!」

 

 

「王の剣、受けてみよ―――ッ!」

 

 

「テメェら、マジで·····っ、終わったら、覚悟しとけよぉ、お!!」 

 

 

「ハハッ!やはり愉快!世界の道理など無視だな、貴様らは!」

 

 

 この光景に流石の須佐之男もご満悦。世界消失の危機があるというのにこれである。愉快すぎる。

 そして取り残された優斗はその破茶滅茶な光景を観戦し、唖然とする。

 

 隻腕だというのに繰り出される一撃が一撃がいくつもの根を切り裂き、しまいには斬撃を生み出す。そして、それに負けず劣らずの色彩。一手で終わるような攻撃を常に出し続けるという化け物っぷり。そんな攻撃を紙一重で躱し、未だ致命傷を受けてないあの不遇な男も大概化け物である。

 

 

「良かったな、小僧。寿命が一日伸びたぞ」

 

 

「········ほんとにな」

 

 

 今はその言葉に頷くしかない。あの三人を同時に相手取るなど無理だとわかる。一人ひとりが今まで戦ってきたバーテックスよりも遥かに強い。

 

 30分後、樹海化は無事解けそれぞれ元いた場所へと帰された。本来ならこの世界では勇者部部室へと戻されるが今回は特例のようだ。

 

 

「はぁ、疲れた·······マジで、アイツら·······許すまじ······っ!」

 

 

 全身切り傷だらけだが、再度ポリエチレン手袋をつけ下拵えを再開する。この程度の傷なら下拵え中に治るため然程問題ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある一室、正確には村正が一人暮らししているマンションの一室にて一人の少年がリポップする。

 

 

「ここ、何処だよ······」

 

 

 言わずもがな井嵩 優斗。もう頭がパンク気味だというのに開放されたかと思ったらこの仕打ちである。叫ばなかった彼を褒めてやって欲しい。

 

 黒き勇者は異世界転移を果たした。題名をつけるなら·········『黒き勇者の異世界転移 〜おバカ三人組との熱々な殺し合い!?〜』だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――第4章 【矜持】―――

 

 

 

 時刻7:27、村正宅にて。閉店作業、なくなりそうな調味料を買いに行ったことで普段より時間がかっかているが無事帰宅。階段で四階へと上がり、鍵を差し込み扉を開ける。そして、歩き慣れた廊下を進んでいきリビングへ―――

 

 

「不法侵入か?」

 

 

 TVの前に置いてあるソファーに腰かける優斗の姿がある。いつから村正の家はシェアハウスになったのだろうか。いや、前までは赤嶺と暮らしていたけれど

 

 

「待て、お前は物凄い誤解をしている。これは、なんというかだな·······気づいたらここにいたというか······多分、おそらく、神樹の仕業だ」

 

 

「保険かけ過ぎだろ。まっ、だいたい察しはつく······てかお前は樹海化が解けた後からずっとここにいんのか?」

 

 

「そうなる」

 

 

 樹海化が解けたのが8:00、そして現時刻は7:30。十二時間経とうとしている。周りを見渡すに荒らされた形跡はない。それは冷蔵庫も然りだ。

 

 

「晩飯、お前も食うだろ?」

 

 

「ああ、助かる」

 

 

 ちなみに優斗はずっとここにいた訳ではなく、変身して街中を散策している。そのついでに全勇者も目撃している。

 

 

「嫌いなもんは?」

 

 

「嫌いはないが、麺類は苦手だ。と言っても、お前の献立が麺類だとしても食べる」

 

 

「律儀なこった」

 

 

 半ば不法侵入している身で『嫌い、やだっ!』なんてしてみろ。印象最悪すぎる。

 村正としてはこの世界に来る以前、諏訪で子供の面倒を見てキレかけた経験があるため素直に優斗の振る舞いに好印象である。

 

 

「じゃ、一時間ぐらいで作っからTV見るかぼーっとしといてくれ」

 

 

「わかった」

 

 

 TVのリモコンを優斗の側に投げ、袖を捲りながら台所へ向かう。そして買ってきた調味料をエコ袋から取り出し、定位置に置く。

 食材は鶏肉、玉ねぎ、ニンジン、じゃがいも、牛乳、シチューの素。作るのはもちろんシチュー。他意はない。ただ村正が今日シチュー作ろー、程度で決めたものだ。

 

 スッパスッパと食材を切りながら、優斗の様子を見る。どうやらTVをつけ、ニュースを見ているようだ。顎に手を当て考え込むように見ている。

 

 

(衝突事故のニュースか······そんな考え込むようなことはない筈だが······有象無象の死で嘆くタイプとは思えない。なら、何故·······)

 

 

 食材を見ずに食材を均等に切り分けていく。地味に凄い特技ではあるが、そんなこと今は関係ない。ニュースに表示されている情報を一文字も逃さず推察する。

 

 

(―――神世紀300年7月18日·········そろそろ夏休みとか言ってたな。どういう原理で作られているのか、不思議だな。この·······世界······まさか?)

 

 

 画面の隅っこに書かれている今日の日付。ご丁寧に年代も記されている。だが、今を生きる者については普通である。今を生きる者達から見れば、だがな。

 

 

「なぁ、優斗。お前は神世紀何年を生きたんだ?」

 

 

 食材を切る音に負けないようにして優斗へ問いかける。突然話しかけたせいか目を一瞬見開いたが、すぐに戻しこちらへ振り向く。

 

 

「神世紀、ってなんだ?」

 

 

「やっぱ西暦か。出身地は四国のどっかか?」

 

 

「いや、近畿の三重だが」

 

 

 近畿の三重、その言葉に思わず刻んでいた包丁の音が止まる。

 三重県、というのが重要ではなく三重県から四国への最短経路が重要なのだ。三重県から四国、その間には壁がある。諏訪の人々を守るための壁が。

 

 

「まさかとは思うが·········お前、諏訪を守護している勇者か?」

 

 

 完全に行動を止め、じっと優斗を睨むかのように見つめる。そんな彼からは先程のおちゃらけた様子はない。

 

 

「そういう時期もあったが·········四国に移動した」

 

 

「お前一人でか?」

 

 

 圧が増す。

 おそらく彼は意識などしていない。声の抑揚は至って普通。だと言うのにこの発せられる圧。なにか、彼にとっての地雷に触っていると優斗は感じ取った。だが、答えを偽ることはしない。

 

 

「俺と諏訪の人々で四国へ向かった。··········結局、辿り着いたのは俺含め四人だけだったよ······」

 

 

「残りの三人は?」

 

 

「俺の妹と········知らないとは思うが、藤森 水都と白鳥 歌野って奴だ。」

 

 

「―――そうか。良くやった、大金星ってヤツだ」

 

 

 ⬛⬛は誰も救えなかった。

 宝具、筋力、機転、俊敏、技術、どれも足りない。諏訪の人々全てを助けようだなんて思わなかった。歌野さえ、水都さえ生きていれば········結局の所、自身は約束すら守れず燃え尽きた。誰の記憶にも残らずその生を取り零した。それが彼の独白。

 

 違う世界、自分ではない誰かが彼女達を無事送り届けた。それだけで満足感があった。そんな独り善がりな満足感を胸に晩飯作りへと再度着手した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優斗が寝静まった深夜1:00、マンションの裏手にて村正は須佐之男と密談をしていた。もちろん見つかれば大事だが·········まぁ、その時はぬいぐるみです。か、一人芝居の稽古中ですなどの言い訳を用意している。

 

 

「今なら喉元に振り下ろすだけで殺せるのだ。だと言うのに何故殺さない?」

 

 

「須佐之男、抑止力から派遣されたお前がここまで必死になる。そして別世界の勇者。こっから推測するには·······剪定事象か?」

 

 

「その通りだ。本来なら、神樹の守護者である⬛⬛が終わらせる筈だった。だが、終わらなかった」

 

 

「だからこそ、両世界の代表を殺し合わせようとしてんだろ?そんぐらいは察しがつく」

 

 

 これで機転が効かないは嘘だろ、と思う者もいるが今回の件に関しては露骨過ぎた。通常ならあまり口出ししない須佐之男が今回の件に関しては逐次説明と催促をしてきた。それだけで大ヒントだ。

 

 

「であれば何故殺さない?もし、お前達が負ければこちら側の世界は砕け散るのだぞ」

 

 

「理由は単純。あっちの世界では歌野と水都が生きている」

 

 

「貴様·········こんな時ですら·······恋心(そんなもの)すら知らなければ、神世紀などなかった。西暦で留まっていた筈だと言うのに·······っ!」

 

 

「知るか。全員が全員、人間として生きた結果だ」

 

 

「·········あぁ、そうだな。ならば私は何も言うまい。滅びるのも栄えるのも好きにせよ」

 

 

「それを決めるのは俺達じゃない。この先を生きる奴らだ」

 

 

「ふっ·······やはり、貴様は気に食わん」

 

 

「俺も、お前は気にわねぇよ」

 

 

 その言葉を最後とし、須佐之男は村正の体内へと入っていく。

 これ以降須佐之男は出てこないだろう。人と人の戦いであればそれが世の常だ。神々は試練を課すが人を操り人形として動かせることはない。その逆もだ。

 

 そんな人と神であるというのに彼らは最期を共にした。最期の景色がどのようなものであったのか········きっと、涙を流すのだろうな。別れに瞳を潤すのは誰だったか―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 中に続く!

 ほんとは歌野の誕生日に出そうと思ってたんだけどな、⬛⬛の独白。ネタがガガガ·······まぁ、いっか。歌野視点で書けば何とかなる筈······だよね?

人気投票をしようっ!←バカに付き合って下さい。お願いしますっ!

  • シャルルマーニュ
  • 御影 士郎
  • ⬛⬛ ⬛⬛
  • 結城 友奈
  • 東郷 美森
  • 犬吠埼 風
  • 犬吠埼 樹
  • にぼっ······三好夏凜
  • 乃木 若葉
  • 上里 ひなた
  • 高嶋 友奈
  • 郡 千景
  • 土居 球子
  • 伊予島 杏
  • 白鳥 歌野
  • 藤森 水都
  • 乃木 園子
  • 三ノ輪 銀
  • その他(北野とか柚葉とか)
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