気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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美しき舞う花と黒き勇者【中】

 

 

 

 

 

 

 

 

―――第5章【胡乱】―――

 

 

 

 翌日、昨日と同時間帯に樹海化。今回は強制的に四人集合させられたため移動の時間はなく、スムーズに話へと移る。

 

 

「時間制限はだいたい30分。神樹としてはその間に殺し合いしろよ、ってことだろうな」

 

 

「早速始めるか?」

 

 

「おっ、威勢が良いな。が、それだと勝負にならねぇからな」

 

 

「やってみないとわからないぞ?」

 

 

 昨日の戦いを見るに御影に手数はなく、シャルルマーニュは技術がない。ただ力任せに振るっているように優斗には見えた。だが、その力任せが究極の一に近しいためとっておきを使わない限り防戦一方となるのは気づいていないだろう。

 

 

「負けた方の世界が滅びる。と、なれば公正に取り決めなければ。後腐れなく滅びたいのでな」

 

 

「あー········無難に二本先取でいいか」

 

 

「異議なし」

 

 

「ちょっと待て。それだと優斗の負担がヤバいだろ」

 

 

「じゃあ········樹海化中に一試合。それを2、3セットでいいだろ、優斗?」

 

 

「まぁ、それでいいや」

 

 

 これにてルール決めは終了。このルールなら正々堂々な勝負が出来るが、もし優斗が2連勝した場合3番手は消化不良のまま消え去ることになるが········そこらへんは大丈夫なのだろうか。

 

 

「てことで俺達作戦会議するから」

 

 

「はいはい。さっさと行け」

 

 

 前日と同じく優斗から離れ、三人で固まる。作戦会議という名目ではあるが、誰に三番手を押し付けるのかという論争でもある。その間に優斗はしっかりと準備運動をし、体の動作確認をしている。

 

 

「俺が先手で情報引き絞ってくるわ」

 

 

「「なら、俺が二番手······じゃんけんだ!」」

 

 

 先手が村正、二番手はじゃんけん中。驚きのシンクロ率だな、と思いつつ刀を取り出し腕の可動域の確認。ついでに残数も確認しておく。

 

 

「―――よっしゃぁ!!」

 

 

「ぐわぁぁーー!!」

 

 

 じゃんけんの勝者は御影。つまり、村正、御影、シャルルマーニュという順で決定した。迫真すぎる叫びを過去のものとし、すぐさま立ち直るシャル。一周回ってシュールである。

 

 御影とシャルを置き去りにし、村正········いや、⬛⬛は飛翔する。そして、準備運動を終えた優斗の前に着地。両者武器を構え相対する。

 

 

「一宿一飯の恩義とか俺は考えないからな」

 

 

「そんなこたぁ別にどうでもいい。ただ、朝飯吐かねぇようにな?」

 

 

「吐かせてみやがれ」

 

 

 扱かう得物は両者共に剣であり、片手剣を二刀。即ち二刀流。だが、基本の立ち回りは正反対であり、優斗は攻め特化、⬛⬛は防御特化となっている。と言っても究極の一には程遠いが。

 

 

「········殺す気で、いいのか?」

 

 

「ああ、構わねぇ。·········俺が死んだらこの騒動が終わるまであの部屋を使っていい。通帳は自力で探せ。引き降ろしはー·········シャルルマーニュと一緒に行けばなんとかなる」

 

 

「最初から負け腰だな」

 

 

「保険だよ、保険。まっ、死にたくないから気軽に行こうぜ?」

 

 

「わかった、―――そのまま死んでいけ」

 

 

「ッ――!」

 

 

 一瞬消えたかと思う程のスピードを何とか接近される前に視認し、頭の天辺から振り下ろされた大剣を横に飛ぶことで回避する。だが、その程度は予測済み。

 

 

「見え透いてんぞ!」

 

 

 その言葉と共に優斗の大剣から黒炎が噴き上がり、⬛⬛を燃やさんと伸びる。燃え移れば死は免れないだろう。例え触れたのが刹那の事であっても。

 

 

「ぐぉ?!炎出せるんか、その剣!」

 

 

 ほんの数mm避けそこねたのたのか服へと燃え移り、さらには骨の髄まで······とはならず、すぐさま消火された。

 

 

「消えた······あの炎って消えんのか······?」

 

 

――主ぃ!あの人、なんだかキモい!ちゃっちゃっと倒して!!

 

 

――私も、それが良いと思う·······。

 

 

雷花(らいか)もか··········村正には何かとっておきのがあるのか?俺の鳳凰みたいな、何かが·········あと、焔香(えんか)はキモいって言わない)

 

 

――だってぇ·······

 

 

 勇者、井嵩 優斗が振るう二振りの大剣は護燕剣・焔。もう片方は護燕剣・雷。どちらも神器を冠する武器であり、その名に負けない程の業物である。あと内部には精霊に似た者達も完備。ちなみに護燕剣・焔は焔香、護燕剣・雷は雷花という名がある。

 

 

「どうせ、もう片方の剣も何かあんだろ?」

 

 

「御名答。ほれ、報酬代わりに一発貰っとけ」

 

 

「ッ―――!?」

 

 

 護燕剣・雷を振るうと共に雷が空気を伝い、⬛⬛の顔面目掛けて走る。電気の速さはほぼ光と同じ速さではあるが、放たれた雷はそれ程の速さではない。何とかのけ反ることで回避するも―――

 

 

「隙だらけだ、ぞっ!」

 

 

 無防備な腹を勇者によって強化されている力をフルに利用し、殴る。そんな一撃を受け声を発する暇もなく樹海の根へと叩きつけられる。感触からしてクリーンヒットだ。

 

 

「―――あー゛、くっっ、そ痛ぇな······!」

 

 

(綺麗に決まったと思ったが·······駄目か)

 

 

 衝撃で根の木片が散る中、いつもと変わらずの表情で現れる⬛⬛。その姿に決まっていないと思うだろうが、実際は⬛⬛の内蔵はズタズタだ。何故立てているのかすら不思議な程に。

 

 

「炎と雷か········勝ち目なさそうだな」

 

 

「降参か?」

 

 

「ハッ、寝言は寝て言いやがれ。こっからだ」

 

 

 

 痛む、を通り越し軋む腸を無視し優斗へと一目散に駆ける。

 手には何の変哲もない抜き身刀。一見無策突っ込んできてるように見えるが、あの眼からはそんな気合いは感じない。故に全力で迎え撃つ。

 

 

「ハッ――!」

 

 

 黒炎を前方へと解き放つが如く放つ。視界全てを黒炎で呑み込むが、黒炎が晴れたそこには⬛⬛の姿はない。であれば、何処に行ったのか。それは―――

 

 

「後ろか?!」

 

 

 すぐさま背後からの攻撃に備え、二振りの大剣を構えるが一向に衝撃は来ない。そもそも⬛⬛などいない。

 

 

「―――後ろとは限んねぇだろ」

 

 

「は―――、ぐっ·····ッ!!」

 

 

 声が聞こえた時すでに遅し。横腹へと強烈な横蹴りを喰らい、体を浮かしながら弾き飛ばされる。だが、この程度の一撃では決定打には届かない。すぐ体勢を整えれば―――

 

 

「うおっ、らぁぁぁぁ!!」

 

 

「チっ·····!」

 

 

 先程まで握っていた抜き身刀とは全くの別物である刀。⬛⬛の身長を優に超えるだろう大刀。それを質量と力に任せ飛び切る。

 そんな一撃を負けじと大剣を重ねて受け止めるも未だ足場がない優斗が不利。徐々に押されていき、遂には突発し浅いながらも胴体を斬りつける。

 

 

「かっ、は·······ッ゛!」

 

 

 根へと落下し、その衝撃で肺にあった酸素を吐き出す。当然、そんなチャンスを逃す訳がなく

 

 

「トドメだ」

 

 

 目前には刀、迫りくる死、共に飯を食べた男とは思えない冷たい瞳。

 バーテックスを仲間と共に殺し、星屑を倒したとて彼は英雄になったのではない。ただの中学生なのである。殺し合いなど初めての経験であり、食卓を囲んだ相手に刃を向けるなど·······だが、死にたくない。故に殺す。

 

 ―――箍を外す。

 

 

「〜ッ、凪咲あぁぁ゛!!!」

 

 

「デジャ、――ブ――――」

 

 

 絶対零度、その名に相応しい冷気が突如として現れた刀から漏れ出る。ここにいれば凍る、と瞬時に悟り優斗の上から飛び去るがもう遅い。氷像の出来上がりだ。

 

 

「      」

 

 

「はぁ·····、はぁ·······っ!」

 

 

 氷漬けになったというのに脱出を試み揺れ動く氷像。一切の油断はなく近づき、優斗の身長程の刀を狙いを定めるかのように⬛⬛の首へと当てる。

 

 

「········怨むなよ」

 

 

 謝罪にも似た何かを告げ、氷像の首を降ろすべく刀を振るう。

 対象者は氷漬け。腕も首も動かすことは出来ず、防御も回避も不可能だ。こんな状態であれば誰もがそう思う。だが、この戦いを観戦していたシャルルと御影は一ミリたりともそのようなことは思っていなかった。

 

 

 

氷が砕け散った

 

 

「は―――?」

 

 

「··········」

 

 

 確実に決まったと思った刀が受け止められたから素っ頓狂な声を出したのではない。その可能性も含め全力で振るった。だと言うのに受け止められた。片手でだ。

 ここまでの戦いで村正は筋力も俊敏も俺より劣っていることは把握している。だが、この村正は俺の全てを抜き去っている。氷漬け中になにが········。

 

 

――マスター!すぐ逃げて!それか鳳凰!

 

 

(っ、なんだってんだこの異様な感じは?········瞳が青い·····)

 

 

 警戒を促す凪咲。しかし、ここで何の情報も得れず逃げるのは悪手だ。アレに対して後手に回るのは不味い。よって、今の最善手はとっておきを使う、それしかない。

 

 優斗の体が黒炎に覆われ、徐々に炎が鳥の形へと―――

 

 

「降参だ」

 

 

「―――、は?今、なんて······?」

 

 

「人の戦いにこれ出しちゃ負けを認めるしかない。まだやりたい、って言うなら続けてやるぜ」

 

 

「·········いや、いい」

 

 

 優斗の言葉を聞き届け、青い瞳から本来の金色へと戻る。それに伴い感じていた異様な雰囲気も消え去っていく。これにて本当に初戦は終了。勝者は井嵩 優斗となった。

 

 その後、シャルと御影が到着。怒ってはおらず、いつもの雰囲気で来たため少し気味が悪い。

 

 

「ナイス敗北だ。これで俺も戦える」

 

 

「御影も負けたら結局戦えないからな?」

 

 

「わかっている。御影、絶対に負けるなよ」

 

 

「プレッシャーかけてくんな。········まぁ、負けるつもりはないが」

 

 

 世界が滅びるから負けるな、ではなく自身が不完全燃焼にならないことを第一としている彼らはやはり可笑しい。自分達の世界の行く末が決まるというのに何故―――

 

 

「笑っていられるんだ?」

 

 

 思わず口から溢れる。

 いや、そもそもどうして俺は殺す相手の事情を、心の内を知ろうとしている?さっきの村正みたく殺せばいいだけだというのに、自分は。

 どうしてもこうも感情的になっているのか。

 

 

「ん?あぁ········そりゃあお前、全力だったからだろ。俺達は死力を尽くし、俺が負けた。それだけだ」

 

 

「死力を、尽くした·······だぁ?ふざけんのも大概にしろよ、村正―――ッ!!」

 

 

 黒く燃え上がる炎。自身を火種にするかのように勢いを増していき、遂には個として離れていき形容が鳥へと成されていく。

 

 

「········負けは覆らないが、良いぜ。お望み通り俺の全力を受けやがれ」

 

 

「おいおい、また記憶消す気か?誰が代わりにパフェ作ると思ってんだ」 

 

 

「俺だが?いや、そこはあまり関係ないな·······やるのらば一、二分だ。それ以上は許可しない」

 

 

 本筋から逸れるが、⬛⬛はとっておき中のとっておき。又の名は切り札というが、ここでは別の意味となってしまうためとっておきと記す。

 これまでの使用は一度のみ。その際の使用時間は五分にも満たない時間ではあったが、代償なしの世界だと言うのに彼にとって二番目に大切なものを奪い去った。

 

 そんな代償を含んだ⬛⬛のとっておき。その真意とは―――

 

 

「あい了解。てことで優斗、聞いての通り一分で終わらせる」

 

 

「俺の勝利でか?」

 

 

「ああ、俺の敗北でな」

 

 

 海原を統治す、天上の暴れん坊。即ち、建速須佐之男命――――――その代理者としての君臨である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――第6章【光芒】―――

 

 

 建速須佐之男命。伊耶那美命が黄泉の国から戻ってきた際に行った禊にて鼻を濯いだときに産まれた神であり、後に英雄として名を馳せた者でもある。何十もある英雄譚の中で最たるものとしては八岐大蛇討伐であろう。

 泣きじゃくる子であり、天照大御神を恐れさせ天の岩戸に引き籠もらせる程凶暴であるが一方高天原を降りると一転し英雄としての側面を持つ。

 

 あまりにも多彩。あまりにも自由。そんな彼だが、此度の召喚は一側面のみの現界。即ち、彼は正真正銘の英雄、八岐大蛇を打倒し英傑である。

 

 

「櫛名田比売を髪に挿し」

 

 

 その一言によって霊基が再臨していく。

 元の原型など一切残らず衣袴のような霊基へと変わる。その姿は正に武人·······いや、武神。擬似サーヴァントと比較すると桁外れの霊基出力。元来の神格に届き得るだろう。

 

 となると、ただの勇者には相手など務まる訳がない。であればどうするか·········単純だ。ただの勇者でなければいい。

 

 

「我が身に降りよ、鳳凰!」

 

 

 黒炎によって形作られた鳥が優斗の体の一部になるかのように入り込んでいく。

 ―――黒炎が吹き荒れる

 それに伴いロングコート風だった勇者服は和風騎士のように換装され、背中からは黒炎によって成された両翼が羽ばたいている。

 

 

「切り札、それがお前のとっておきか」

 

 

 切り札、とは西暦勇者が使用する劣化版満開のようなものだ。精霊という枠に収めた神霊、悪霊の類を自身の肉体へと降ろす。使用者は多大な恩恵を得れるもののそれ相応の代書を背負わなければいけない。

 

 

(鳳凰········ただの瑞鳥を身につけるとはな。特性は炎纏いとみて良さそうだな)

 

 

 切り札発動と共に叫んだ真名、そしてあの形態。そこから効力を察するにとてもシンプルな能力。郡 千景の玉藻前のような変幻自在な幻術系統ではない。それならば、攻略法は至って簡単。ただ切り刻むのみ

 

 

「―――」

 

 

 予備動作などなくその場から突如として姿を消す。

 身体強化された優斗であってもその予備動作、ましてや何処に行ったのかすらも見えなかった。この際優斗が取れる行動は防御のみだが―――

 

 

「―――ッ?!」

 

 

 ―――血飛沫が上がる

 出血部位は優斗の胸。心臓には達していないとはいえ、その傷は深く出血が止まる気配は一切ない。だと言うのに次の瞬間には血飛沫おろか傷すら塞がっている。俗に言う完全回復だ。

 

 

(鳳凰じゃない?いや、これは世界(テクスチャ)が違うからか········はたまた火の鳥と混合されたか········まぁ、いい。傷が治るだけで不死ではない筈だ。こっからも殺さないようにしなくちゃな)

 

 

(なんだ今の速さ?!この状態で見えないなんて初だぞ!ますか、一瞬にして全てを抜き去られるとは········相当手加減してたな、アイツ)

 

 

 互いに互いのとっておきについて考察する。どちらも少し観点がズレているものの本質は見抜いており、もう時期真実を知るだろう。

 

 そんな沈黙を破り、先に動き出したのは優斗。黒炎によって形成されている羽を⬛⬛へと叩きつけようと接近する。

 

 

「喰らっとけっ!」

 

 

「お断りだ」

 

 

 ⬛⬛が握る抜き身刀によって両翼は切断。樹海へと落ちるもその寸前に消失し、新たな両翼が優斗の背中から生えるようにして燃え上がる。

 

 

「生憎不死なんでな、お前が死ぬまで戦い続けてやるよ」

 

 

「不死?不死たぁ、また······デカく出たもんだ―――ッ!」

 

 

 振るう、たったそれだけの動作で刀が砕け散る。

 ⬛⬛の間合いに斬るものなどおらず、空振りかと思えた。が―――

 

 

「ぁ、――あ、―――ッ゛!」

 

 

 ずり落ちる胴体。

 丁度鳩尾あたりから横に切断され、胴体と泣き別れしようとずれ落ち始めるも優斗の言語にもならない叫びで両断された肉体は再開を果たす。

 

 

「ッ、はぁ·······はぁ·······!」

 

 

(不死という言葉に偽りはないようだな。やっぱ、火の鳥と混合していると見て良さそうだ)

 

 

 今の一撃は心臓を斬り、更には胴体分離まで果たしていた。だと言うのに優斗は未だ健在。このことから不死である、という発言は虚偽ではないようだ。

 

 

「ハァ、ァァァ·······―――ッ!!」

 

 

 翼を用いて推進力を盛ましし、⬛⬛へと接近する。そして勢いそのままに凪咲を振るう。氷塊を生成すると共に叩き斬る算段だったが、⬛⬛は既にいない。

 

 

「甘ぇ」

 

 

 飛翔、縦に半回転。空中で逆さまの状態で二刀、着地ざまに一刀投擲し、全て優斗へ命中する。

 横腹、太腿、右上腕。どれも出血しているものの再生する気配はない。

 

 

「異物があれば再生不可、ようやっと攻略法がわかってきた」

 

 

「異物なんて抜けば問題な―――」

 

 

 凪咲を一度元々置いておいた異空間に戻し、太腿に刺さっている刀に手をかけるも抜くことは叶わず視界が暗転する。

 

 

「やらせねぇよ?」

 

 

「ッ―――!?」

 

 

 顔を片手で鷲掴みにされ、そのままの状態で根へと叩きつけられる。すぐさま両手で⬛⬛の片手を外そうと藻掻くもピクリともしない。明らかに腕力で負けている。

 

 

「··········はぁ」

 

 

「―――っ、ぷはぁ!」

 

 

 ピクリとも動かなかった⬛⬛の手が外され、閉ざされていた呼吸を再開する。その間に刺さっていた刀は粒子となり、消えていた。当然傷は完治していく。

 

 

「一分経ったか········少し考察に時間かけ過ぎたな」

 

 

 実際は残り二十秒残っていたがあのまま続けば優斗が死んでいた可能性があるため断念。一番後味が良い終わり方としてはここで切るのが最善であるという⬛⬛の判断だ。

 

 

「くそっ!お前、手加減してやがったな?!」

 

 

「手加減も何もなぁ·········コレは人同士の戦いで使っちゃいけねぇんだよ。須佐之男の一時顕現みたいなもんだ」

 

 

 それに昨日の夜、須佐之男にカッコつけたしな、と心の内でボヤきながら霊基を最初のものへと戻す。瞳も水色から金色へと変わる。

 

 

「使えるもん全部出し切ってから死力を尽くしたと言いやがれ」

 

 

「へいへい。ほら、残り十八分残ってんだからシャル達と合流するぞ」

 

 

 樹海化が解けるまで残り十八分。流石にこの二人で会話保たせるのは不可能。なら陽気な二人を巻き込むしかないて。

 と、言うことで合流。何故か刀と西洋剣の談義で盛り上がっていたがカット。そこは本題ではない。

 

 

「おっ、戻ってきたな」

 

 

「無事一分で終わったようで何よりだ」

 

 

「ああ。てことで残りは駄弁ってようぜ」

 

 

「駄弁る、って何を話すんだよ········」

 

 

「さぁ?」

 

 

 この無計画さに流石の優斗も呆れ顔。にしても男四人とは········毎度毎度男女比が狂っている部室にいるよりかは心が落ち着く。現にシャルはいつもより少し口角が高い。

 

 

「あ〜·······そんじゃ、お前らの世界線について教えろよ」

 

 

「御影頼んだ」

 

 

「時系列考えんならお前が一番先だろ!?」

 

 

「俺は農作業しかしてないから面白味ねぇだろ」

 

 

「じゃあシャル!」

 

 

「嫌だ」

 

 

「シンプルな拒絶だな!」

 

 

 これが普段のテンションであればこの世界の勇者は大丈夫なのだろうか、と一人思う優斗であったとさ。

 

 

「あー、もうしょうがねぇな。ザックリだが話してやる」

 

 

 てことで始まった御影が語部の昔話。こういうのはひなたの方が向いているが生憎ここにはいない。残り二名はそもそも拒否と話にならない。

 

 淡々と記憶喪失後、訓練、遠征、勇者王決定戦、左腕チョンパ、不祥事、草薙剣。という順に語っていき最後にこの世界でのことで締め括る。

 

 

「········バーテックスって同じのが何体もいんのか?」

 

 

「そりゃあな。星屑が這い出てくるなら当然バーテックスもいる」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「星屑が御魂へと集まり、肉がついていく。そして御魂に基づきバーテックスは黄道十二星座を冠する生物へと変わる」

 

 

 話題は転じバーテックスへと。どうやら、御影の話に出てきた二体の蠍座、スコーピオン・バーテックスが引っ掛かった様子。

 

 

「なぁ、もしかしてこっちのバーテックスは人型じゃないのか?」

 

 

「·········マジか。そっちじゃバーテックスは人型なのか」

 

 

 そう、優斗の世界線ではバーテックスは人型であり―――

 

 

「確か········“ゲイ・ボルク”って言ってたような気がする」

 

 

「「は?」」

 

 

「必殺技もあんのか。凄ぇなそっちのバーテックスは」

 

 

 ―――英霊である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――第7章【唯我】―――

 

 

 

「ふむふむ········クーフーリン、エミヤ、ギャラハッド、乙女座は·······わからん。だがまぁ、ギャラハッドがただ単に人類を殺す者になるとは思えんな」

 

 

「どうやら、そっちの天の神はガラクタいじりが趣味みたいだな」

 

 

 シャルが優斗の会話から真名を考察するも、人類の敵になり得ない聖人が挙げられる。そこから察するに天の神の干渉或いはシャドウサーヴァントの可能性が高い。

 

 

「英霊?ってのを相手してたのか。そりゃあ強い訳だ」

 

 

「良く五体満足で生還してんな」

 

 

「圧倒されるか圧倒するかのどちらかだがな」

 

 

「英霊を圧倒········魔境だな、そちらの世界は」

 

 

 YAMA育ち、それかNOUMINのようだ。きっといつか全員多重次元屈折現象を棒切れ一本で可能にするのだろう。というか御影ならやり方すら見せて貰えればやれそうだ。

 

 

「シャルと御影を派遣したいが無理そうだよなぁ·····」

 

 

「当然のように自分を除外してんじゃねぇよ」

 

 

「おいおい、何もわかってねぇな。もしも、俺を英霊同士の戦いに投げ込んでみろ。二秒後には俺の首が飛ぶぞ」

 

 

「村正が無理なら俺も無理そうなんだが?」

 

 

「お前は戦いで強くなるパターンの奴だから問題ない」

 

 

 実際シャルと御影を派遣するとすぐさま死ぬのはシャルだろう。究極の一から程遠い場所に位置する彼が戦ったとしても勝機はない。真名開放する間もなく退去だ。と言っても、それは英霊が本物である場合の話だ。ガラクタならば良い勝負はすると思う。

 

 

 夜空が輝き始める。

 どうやら駄弁っている間に十八分潰せたようだ。ということで一回戦目の勝者は井嵩 優斗。⬛⬛は生存、という甘ったるい結果に終わった。

 

 

「次は士郎とか」

 

 

「おう。隻腕だからと言って甘く見てたら痛い目見るぜ?」

 

 

「ん〜········優斗、一分間耐えた対価だ。

 “御影 士郎との戦闘の際、すぐさま切り札を使用しろ”覚えたな?後は知らん」

 

 

「おいコラ、なに俺の作戦潰してんだ」

 

 

「どうせゴリ押しだろ。そんな作戦に潰れるもなにもあるものか」

 

 

「········わかった」

 

 

 自身の切り札を実際に体験した村正が言っているのだ。御影の強さはそういう次元だと察し、頭の片隅において置く。素直に聞かないあたり思春期真っ只中のようだ、間違いない。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 樹海化が終わり、恙無く夕方5時頃へ。授業は終わり部活動が盛んに活動している時期だろう。だが優斗はそんな事気にもとめず村正宅にてゴロゴロ·······出来ず、何故か御影と共に海岸掃除をしていた。

 

 

「いい働きぶりね、助っ人くん!」

 

 

「鍛えている」

 

 

 御影によって引っ張り出されここまで連れてこられた挙げ句、助っ人連れてきた、と紹介された時は隣で笑っていた御影を殴り飛ばしたかったがグッと堪え、黙々とゴミを分別しながら回収していく。その姿に部長も好評の様子。

 

 

「まさか士郎さんにシャルルマーニュさん以外に男子の友達がいるとは········」

 

 

「昼休みぼっちのアレに·······?」

 

 

「聞こえてるぞ、お前ら」

 

 

 御影に対して散々な言い様なひなたと千景。これには御影も苦言を呈するがさっと作業へと戻る。はぁ、と溜め息を一つ落とし優斗へ近づく。

 

 

「丁度人手が足りなくてな。助かった」

 

 

「助かったのはいいが、村正とシャルルマーニュはどこに行った?」

 

 

「村正は成人だから今日はパフェ作り。シャルはサバゲーの対戦で忙しいらしい」

 

 

「サバゲー·······?実質サボりか?」

 

 

「正式な依頼だしなぁ······まぁ、サボりに分類されるな」

 

 

 この場にいない者は軒並みサバゲーしに行っている。人員はシャル、園子、東郷、友奈、神樹館組が抜けている。ちなみに余談ではあるが今回の対戦相手は一度シャルと園子の二人によって逆転負けしている。今回はリベンジマッチというものだ。

 

 

「士郎が楽しげに話しているだと·······!?」

 

 

「確かに妙ね········」

 

 

「お前らマジで、俺を何だと思ってやがる」

 

 

 自分から話しかけていき楽しげな雰囲気など滅多に出さない御影のこの雰囲気に驚愕する若葉とにぼっしー。どうやら、フレンドリーな御影など見たことないようだ。

 

 

「勇者部以外に友達がいない士郎」

 

 

「士郎さんですしね······」

 

 

「ソロキャン似合いそう」

 

 

「あー、わかる。哀愁漂ってそうな背中してそうだもんな」

 

 

「大乱闘起こしてやろうか、テメェら·····!」

 

 

 御影に辛辣なタマ、杏、赤嶺、中銀。これには流石の御影も半ギレ状態。そんな茶番を尻目に黙々と作業を熟していく優斗。どうやら、彼はさっさと終わらせてこの場を去りたいようだ。

 

 と、言うことで海岸掃除は日が暮れる前に完遂された。これで夏休みに大勢の人々が来ようとも恥ずかしくない。そんな結果の手伝いをしてくれた助っ人へ改めて礼を―――

 

 

「いない·······帰ったのかしら」

 

 

「彼も帰宅部のようね」

 

 

「寡黙な人だったけど優しそうな人だったね」

 

 

 何故か帰宅部と断定する千景、優斗の人なりを判断する高嶋。きっと御影同様仲良くしたら良い人パターンのヤツだと思う。

 そんな感じで撤収しようとするも御影探知機を有しているひなたが異変を感じ取る。

 

 

「士郎さんがいませんね」

 

 

「え?·······ほんとだ。ま、どうせ石焼き芋のトラック追いかけて行ったんでしょ」

 

 

「それならいいのですが······」

 

 

 ひなたの言葉ににぼっしーが反応し、周りを見渡すとその言葉通り御影の姿はない。だが、御影がパッと消えるのはよくある。そのだいたいの原因が石焼き芋買いに行くというためあまり心配はない。そもそも御影を誘拐出来るのは一人も········いや、一人いるな。

 

 

 一方その頃、帰宅部である優斗と石焼き芋齧りながら歩いている御影。目指すはもちろん村正宅、皆の推理通り帰宅している。

 

 

「やっぱ石焼きが一番だな。あっ、お前もいるんだったか?」

 

 

「いや、いい。そんなに腹は減ってない」

 

 

「そうか」

 

 

 短く返し、一息で残りの芋を口へ放り込む。ほくほく顔で食べているため行儀が悪いなどはあまり口に出来ず、ただ黙って帰路を歩く。

 

 

「んっく。ずっと気になって、たんだが·······優斗はどうしてそこまで強くなったんだ?」

 

 

「········なんだよ、その質問」

 

 

「単なる興味心だ。俺はそういうの持たずに強くなっちまってな。なんと言おうか········あれだ。俺と同じ時代を違う視点で駆けた奴はなにを思ったのか知りたいんだ」

 

 

 もし、この場に村正がいれば笑いながら御影の背中をバシバシ叩いていることだろう。シャルは知らん。

 全く御影の経緯を知らない優斗にとっては不思議でしかないが、答えたところで何も減らないということで口を開く。

 

 

「目の前で誰かが死ぬのを見たくなかった、それだけだ」

 

 

「おぉ·······なんだか深いな」

 

 

「なんも深くない。単純なことだ」

 

 

 単純=最難関、とシャルに教えられている御影はその理由がどれだけ険しい道のりなのか理解する。それと同時にどれだけ自分が意味のない時間を過ごしてきたのかを悟る。

 

 

「それに········誰かを救うために誰かを見捨てる。そんな矛盾を抱えてすらいる」

 

 

「?······それは普通のことじゃないのか?」

 

 

「普通······ああ、そうなのかもな」

 

 

 きっと目の前の彼は自身が見捨てられる誰かが自分であると思っていないのだろう。だから、こうやってなんの駆け引きもなく隣を歩いている。そうでなければ、そうでないのならば―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――彼は何なのだ?

 

 

「我が身に降り、―――ッ!」

 

 

「フッ!!」

 

 

 高速移動からの横腹への強烈な蹴り。初速から一切の減速なく根へと衝突するもそれでも尚止まることは出来ず、四つ目でようやく止まる。

 

 ―――黒炎が吹き荒れる

 

 

「駄目か。村正め、俺の作戦潰しやがって······」

 

 

 何故、彼はこうも昨日帰路を共にした俺を殺す程の一撃を入れれるのか。

 情は、友情は、迷いはないのか。返ってくるのは殺意でもなく、ただ楽しいという昂りのみ。村正は殺意を感じたというのにこの異様さ。

 彼が手にする抜き身刀が怪しく光る。俺を殺すべく刃は研ぎ澄まされており、血に飢えているかのように見える。

 

 

「お前は、狂ってんのか!?」

 

 

「ああ、俺は狂っている」

 

 

 予想とは違い答えは肯定。

 彼は狂っているからこの状態を楽しんでいるのか。狂っていると悲願しながらこの状態を楽しんでいるのか。いや、もういい。これ以上の詮索は無理、と言うよりしない方がいいと直感が告げている。

 

 故に、一切の躊躇なく殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 下で終わらせるっ!!

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