気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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「いやぁ、めでたいな!俺からもささやかだが贈らせてくれ。
 誕生日おめでとう。アンタが生まれて、俺を知ってくれてありがとなっ!」




笑顔で昔の話を【蛇足】

 

 

 

 

 

 

 3月11日、一年程明かりがついてなかった家に明かりがついた。とある理由にて家主は不在ではあるが、ぞろぞろとリビングへと少女達·······いや、彼女達が上がっていく。

 

「んー、やっぱ所々埃被ってるわねぇ」

 

 ここに来る以前に買ってきた物が入っているエコバックをリビング中央に置いてある大きな机にドンッと置き、部屋を一望する。やはりと言うか部屋は少し埃っぽく、人が住んでいる家とは思えない。

 

「ちゃちゃっと掃除しちゃいますか」

 

「そうだね。シャルくん達が来ちゃう前にピカピカに磨いちゃおっか」

 

「任せて。最新鋭の掃除機を拝借·····見つけたわ」

 

 ということで掃除が始まった。時刻は8時を回ったが、いつも通りの遅さなため特に心配せず手を動かしていく。リビングを掃除した後は、ついでに他の部屋も順次綺麗にしていく。

 

「叡智な本は········ないわね」

 

「アンタは毎回確認しないといけないわけ?」

 

「シャルル君がどんなものに興奮するか気になるでしょ?」

 

「··········なる」

 

 あの誰からのスキンシップに耐えるシャルルが一体何に性的興奮をするのか。毎度毎度出てくる議題に一つ物申したい。

 いや、普通にアンタらのスキンシップ危ないからね?ただ単にシャルルが我慢してるだけでヤバイからね?控えてもろて。

 

 そんなこんなで掃除を終わらせ、初め通りリビングへと集合した。

 

「それじゃ、今日の主役いないけどボチボチ始めましょうか」

 

 エコバックから買ってきたお酒類、そして肴。後鍋の具材などなどをテーブルに広げ、それぞれ自身の好みである飲料を入れたコップを手にする。

 

「「「カンパーイ!!」」」

 

 夕飯より先に酒を飲む。んーこれは紛うことなき勇者ですね。

 酒で喉を潤しながら食材を食べやすい大きさに切りながら鍋へ放り込んでいく。肉はお高いため魚で代用。更に頭が良くなるな。

 

「また新しい子達が入ってくるわね〜」

 

「いうて11人ですけどね」

 

「サッカーできるねっ」

 

「もう酔ってる?」

 

 確かにサッカーはできる。だけど違う。そういうのじゃないんだ。決してサッカー同好会ではないのだ。ちゃんとした動機と力を持つ人を選別している。

 

「問題児がいなきゃいいんだけどね·········」

 

「止めなさい。思い出して寿命縮むわよ」

 

「なにがあったんスか?」

 

 そう、あれは一年前。初の後輩ということでヤヤウキであったが問題児、というよりは核の危険性を理解していない阿保が一人入ってきた。シャルルが普段通りの雰囲気で注意したのも悪かったとは思うが、まぁうん。放り出された。

 その場に居合わせていた花凜と風にとって冷や汗どころではない。心臓が跳ねたかと思わせる程に凄い圧だった。

 

「まっ、今じゃ肩組む仲なんだから、問題ないでしょ」

 

「ほんっと、いつの間にか仲良くなってたわよね」

 

「まぁそこはシャルだし」

 

「シャルくんだから」

 

「シャルルくんだもの」

 

 コミュ力Aのシャルルに死角はない。相手が誠心誠意込めて謝れば全て水に流して、次にいく奴だ。それに実害が一つもなかったし。

 

 そんなこんなで時計が9時を回り始めた頃。誰かの帰りを示すかのように玄関の方から数名の喋り声と扉が閉まる音がした。

 

「ただいまー!」

 

「ただいま〜」

 

「お邪魔します」

 

 本日の主役登場。9時になってようやく帰還とはブラック企業にも勤めているのだろうか。まぁ、実際のブラック企業は住み込みだが。

 

「ようやく来たわね」

 

「もう。あまり根を詰め過ぎちゃ駄目よ?」

 

「だってよ、園子」

 

「ごめんなさ〜い」

 

「シャルルくんもね」

 

「俺は多少寝なくてもいけるからな」

 

「そう言って壊れかけのブリキみたいになったのを忘れてないでしょうね?」

 

「·········面白いからヨシっ!」

 

「なにもヨシっ、じゃないでしょ」

 

 そんなやり取りをしながら空いている席に座り、鍋を囲む。日本酒である『澪』をコップに注ぐ。

 

「樹もついに20歳········一杯いっちゃう?」

 

「うんっ!」

 

 果たして甘酒で酔うほどだった樹が今現在どうなっているのか。そもそもアルコールの耐性って成長で変わるものなのだろうか。

 飲まないという選択肢もあるが、先輩であり、尊敬する人達と一緒に飲みたいという想いから飲酒を選択。どれを飲もうかと八種類ある瓶を見つめる。

 

「········シャル先輩はどれですか?」

 

「俺は青いの、澪ってヤツだな。飲むか?」

 

「はいっ」

 

 ということでシャルル同様青い瓶を選択。『澪』の特徴としてはジュースのように甘く、度数が少し高い。(作者は一度も飲酒したことがなく、お酒について一切知識なし)

 

「さてと。溜めてたヤツ見るかぁ」

 

 樹が隣で大きな瓶を持ち、恐る恐るコップに注いでる中、シャルルはテレビを起動し録画を再生する。再生されたものは平日の夜にあるような番組で、趣旨としてはローカルバス関連のものだ。

 

「あっ、樹ちゃん」

 

「は、はい?」

 

 唐突に呼ばれ、不思議に思い顔を上げると―――

 

「くぅーーー!!樹と樹を見ながら飲む酒は格別ね!」

 

「本人いるのに?!」

 

 テレビに樹、そして目前にも樹。樹大好きな風にとって楽園のような場所だろう。というか本人がいる時にその本人が出ているバラエティーを普通見るだろうか。

 

「おー、いっつん良い演技だね〜」

 

「おう。良いあたふたの仕方だ」

 

「あ、こ、コレはぁ·······ただあたふたしてるだけでェ········」

 

「これは心をガシッと掴まれちゃうぜぇ」

 

「だな。俺も心をガシッと掴まれたぜ」

 

「ぅ、ぅぅ······」

 

「やめたれ」

 

 まぁ、そんなこんなでシャルルが溜めていた樹登場会が流され続けるテレビが出来上がった所で、樹が初のお酒を飲み干した。

 

「んっ!ジュースみたい······」

 

「いいだろ?まっ、度数高いから気をつけてな」

 

 少し火照っているが、意識良好。一杯飲む程度であれば大丈夫なのだろう。これが二杯三杯続けば意識が朧気になるかもだが········ここで限界を知るのもいいかもしれない。

 

「樹が········一人で起きれなかった樹がお酒を嗜む大人に········くぅ、泣けるね!」

 

「今は一人でも起きれるから!」

 

「おじちゃんか」

 

「風先輩が段々おじさんになってる気がするんだが?」

 

「元からでしょ」

 

「それは、大丈夫なの?」

 

 風はお酒を飲むとおじさんっぽくなるというか、涙脆くなるというか·········悪いことではないが、異性がいる場でしていいものなのか。彼女の女子力的に。

 

「もう、ほんと·······勇者部サイコー!」

 

「急になに?·······たしかに最高だけど」

 

「いぇーい、勇者部サイコー!」

 

「サイコー!」

 

 もうほとんど呂律が回っていない頭から出てくる言葉がそれか。本当に彼、彼女らにとって最高だったのだろう。それは間違いなく。

 

「それじゃっ、シャルいっちゃってー!」

 

「今年も〜?」

 

「うん。シャルくんについてもっと知りたいな♪」

 

 ということで始まった毎年恒例の⬛⬛の昔話。と言っても、去年までは全員共通の話でワイワイしていたが、いつの間にか⬛⬛の自分語りとなってしまっていた。結構恥ずかしいためご遠慮したい所ではあるが、期待されているのも事実。あまり面白くない、という予防線を張って話し始める。

 

「え〜っと、どっからだっけな?」

 

「高校生からじゃない?」

 

「それ、アンタが寝てて聞いてないだけでしょ」

 

「たしか······高校で終わってなかった?」

 

「······そうね。クレープは覚えてるわ」

 

「あはは。クレープのインパクトが強すぎでしたよね」

 

 男子二人で遊びに行くとしたら、だいたいボーリングかカラオケ。それか何処にも行かずにゲーム。そんな所だろうと思っていたのにクレープ。確かに変だ。

 

「どうしてクレープだったの?」

 

「あぁ、アレは········二人で行けば一つ無料とかのキャンペーンだったけな」

 

「え、それじゃあシャルのなし?」

 

「流石にアイツでもそんなことしないさ。まっ、五つも頼んだ時には正気を疑ったけどな」

 

「五つも!?一人でその量食べるとか何もんよ、そいつ」

 

「自分用に一つ、俺に一つ、ナンパ用に二つ、妹に一つ·····アレは酷かった」

 

 今思い出してもアレは酷かった。一つをその場で一瞬で食べ、もう一つを可愛い子を見つけるまで食べながら移動していた。マジで学年一位かと疑った。

 

「ナンパぁ?誰が?」

 

「俺とアイツでだな。まぁ、結果は·········ノーコメントにしとく」

 

「ノーコメントはダメだよ〜。ね?」

 

「そうね。この場での黙秘権は一切認めません」

 

「俺の人権はよくなくなるなぁ·······」

 

 何度目かわからない人権消失。もうこれには諦めで返すしかない。

 

「まぁ、成功はしたんだが·······成功したんだがなぁ·······色々と想像外の出来事でヤバかった」

 

「具体的には?」

 

「自殺する予定だったらしくてな。鞄に縄が入ってた」

 

「んん?流れ変わった?」

 

「話しが45°変わりましたね」

 

「アタシ以上の巻き込まれ体質?」

 

 まぁ、それ以上に予想外なのはその時に回収した縄を自分で使ったことなのだが········そんなことは彼女達に言える筈がなく。

 

「んで、その後なんやかんやあって初の友達になったんだ」

 

 そのなんやかんやの間に親友との共同作業があったが、それは省く。本当にそれだけで一日が終わる程の濃密度だ。

 

「んーっと?その人、女性なんだよな?」

 

「そうだぞ?一応ナンパした人になるからな」

 

「むむっ、これは·······」

 

「風が吹いてるんよ」

 

「え、風?」

 

「はい、風よ」

 

「わぁ、涼しい〜」

 

 彼女達の何かに引っかかったのか風が吹き出す。これが風の神(エエカトル) 風の神(エエカトル) 夜の風(ヨワリ・エエカトル)のようだ。

 

「それでそれで?他には?」

 

「ん〜、そうだな·······あ、そうそう。二年の時の誕生日にあるゲームを貰ったんだよな」

 

「ゲーム?シャルの口からゲーム?」

 

「なにか悪い物でも食べました?」

 

「同じもん食ってるだろ。俺だってゲームの一つや二つ·········ないな。一つで終わってる」

 

 fate、というシリーズのみしか遊んだことがないシャルルにとって、ゲームの知識は有名どころの一部分しかない。例えば髭のおじさんが(スター)を取ると無敵になるとか。その程度の知識量しかシャルルにはない。

 

「まっ、いいや。fateさえあればいいや」

 

「フェイト········?聞いたことある?」

 

「ないかな〜。西暦のゲーム?」

 

「う〜ん、こっちにもあるんかな?多分ないと思うけど········まっ、簡単に言えば過去現在未来の英雄が戦うアクションゲームだよ」

 

 fateテラリンを見れば無双ゲーのカテゴリーに入るであろうが、fgoに視線を移せば········なんだっけ。なんのカテゴリーに入るっけ、アレ。まぁ、そこは然程問題ないからいいか。

 

「おっ、もしかして?」

 

「そう、俺はこれでシャルルマーニュに出会ったんだよ」

 

 正にアレは⬛⬛にとっての運命的な出会い。あれがなければ、今こうしてここにいないと思うほどに人生を変えた出会いだった。

 

「そのゲームじゃ、シャルルマーニュってどんな感じなの?」

 

「一言で言うなら、気持ちのいい馬鹿、だな!」

 

「あー、なんだか解るのが癪ね」

 

「でも、スッゲぇカッコいいんだ!誰にでも手を差し伸ばして、手を握る。もう、ほんとにカッコいい奴なんだ」

 

 瞳を子供のようにキラキラと輝かせながら語る彼を見ていると、如何に彼にとってシャルルマーニュという存在が特別かが伺い知れる。同時に、彼が偶にしている瞳の理由を知った。

 

「好きなんだね」

 

「おうともよ!まぁでも、結局憧れは憧れで終わっちまったけどな········顔向け出来そうにもない」

 

 首を吊った自身の姿が脳裏を過る。

 その行為が憧れに対する侮辱だと理解しているが故に自身を到底赦すことなど出来ず、憧れから遠ざかる。

 

「アンタの頑張りを見てるなら、良くやったぁー!って褒めてくれるでしょ。アンタが言う人物像そのものならね」

 

「········そうかな」

 

「そうそう。まっ、今はシメのことだけ考えようぜ」

 

「えっ、もうシメ?!」

 

「いっつん、寝ちゃったしね〜。そろそろ日跨いじゃうよ?」

 

「ほんとね。それじゃあ一回濾してくるわね」

 

「おう、頼んだ」

 

 これにて毎年恒例のシャルル誕生会を終了となった。些か規模が小さいと思われそうだが、有給を取らない限り滅多に休日が重ならない彼らにとって二日合わせるのは苦行の他ない。明日と明後日、彼らがどう過ごすかは知らないが········笑顔なら良し。

 

 

 

 

 

 






「―――良くやったぁー!
 ああ、知ってたさ。アンタがこれまでどんな道を歩んで、どんな末路を迎えたのか。最初っから全部な。
 だからこそ、アンタに力を託した。どんな選択を下してもアンタに咎はない。アンタが、アンタらしく生きて欲しくて·······押し付けるようでごめんな」

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