1月3日、新年3日目となった今日。
園子と銀は朝早くから里帰りのため出ていったため、シャルル以外家におらず、絶好の掃除日和となっている。流石に彼女達の部屋は掃除出来ないが、それ以外の細やかな場所を掃除した。
「ふぅ·······」
ありもしない疲労感と共にソファーに体重を預ける。それを見てか、飼い猫であるクロが体をシャルルの太腿に寄せ丸まってしまった。
「········」
クロの艶々な毛を手の甲で撫でながら時計に目をやる。
時刻は11:37分。もう時期昼時になるが、そもそも食事が必要ではない肉体だ。園子と銀がいないのであれば作る必要もないが······花凜ように作ろうか。そう思い、立ち上がろうとした時だった。
呼び鈴が鳴った。
「?」
来客の予定はなかった筈だと思いながら玄関へと足を運ぶ。最近物騒であるため警戒こそすれど、神秘が籠っていなければダメージは受けないため警戒のみに抑える。
まぁ、全て杞憂に終わるのだが
「どちら様で―――」
「こ、こんにちは······」
「おっ、友奈じゃんか。どうした?」
当然の訪問者は以外にも友奈だった。普段ならチャットでアポを取ってくる良い子ちゃんだと言うのに、今回はどうしたのだろうか。
「冬休みの宿題で解らない所があって·······教えてくれないかな?」
「おう。ささっ、上がってくれ」
勉強関連だから少し様子が変だったのかと納得し、リビングへと上げる。一先ず、冷え切っている友奈のためにもココアを淹れて横に置いておく。
「何処が解らないんだ?」
「えっと、(3)の比率を求める問題が解らなくって······」
「ああ、コレは∠Aから垂線を―――」
垂線を作り出す問題は控えめに言ってクソです。それを頭良い人はささっと引くから更にクソです。どうやって見つけ出すんだよ。(作者談)
そんなこんなで無事理解し、答えに辿り着いた。このやり方を他の問題でも応用出来るかは友奈次第ではあるが、数を熟せばいつか出来るようになるだろう。ちなみに私は一生引ける所に引く策戦を取ってました。
「ありがとう、シャルくん」
「いいっていいって。てあれ?帰るのか?」
やるべき事はやったとばかりにそそくさと片付けを行っている友奈に首を傾げる。明らか帰る準備をしている。
「? うん、残りは私だけで―――」
「また解らない所で出てきたらどうするんだ?」
「うっ、それは·····」
「終わるまで面倒見るぜ?俺は迷惑じゃないぞ」
「それなら········よろしくね、シャルくん」
その後、解ける問題は友奈に任せて、その間俺はクロと戯れる。解けない問題が出れば理解出来るまでつきっきりで教えた。
集中していると流れる時間がとてつもなく速い。勉強始めたのが10:40頃であったのに、時計を見ればあら不思議12時を過ぎていた。
「あっという間だったね」
「いい集中力だったぞ。後はー·······うん、友奈なら出来る問題だと思うし、頑張ってな」
「うん、頑張るっ」
とりあえず机を片付け、残りのページをパラパラと捲って確認する。この程度であれば教えた内容を使えばいけるだろう。
「さっ、お腹空いたし飯にしようぜ」
「私もお腹ペコペコだよ〜」
「待っててなー。すぐ作るから」
「ん、あれ?私も一緒していいの?」
「もちろん。昼飯一人は寂しいしな」
今日の献立は友奈大好き肉ぶっかけうどん。やっぱり勉強頑張った後は好きなもん、甘いもんを食うに限る。疲れ切った脳が回復するのを感じる。
「そこまでしてもらったら図々しいような·······」
「図々しくないさ。寧ろ、俺としては友奈と昼一緒できて嬉しいぞ」
「そっかぁ〜」
恥ずかしそうに頬を赤くしている友奈を見つつ、うどんの上にタレを絡ませた牛肉をドン。肉ぶっかけうどんの完成である。
盛り付けが終わったうどんを二つ机へと運ぶ。一つは友奈の前に、もう一つは俺が座った時友奈と対面するように置いておく。
「おぉ〜!」
「クロはちょっち待っててな〜」
猫球で足をペシペシされながら、猫缶を餌皿に載せる。それをクロの前に置くとすぐさまペシペシを止め、齧り付く。やはり食欲を抑える力はないようだ。
「いただきますっ!」
「いただきます」
元気一杯ないただきますに続き、俺もうどんを肉と共に啜る。肉に絡ませていたタレがうどんの汁に落ちており、若干ではあるがうどんからも甘味を感じる。
うむ、丁度いい甘さだ。目分量でさっさと作ったが、結果オーライ。
「おいふいね!」
「よく噛むんだぞ?」
「う゛んっ!」
まさかの呑み込みながらの返事に驚きを隠せないが、そこはまぁ友奈だし。うどんをこよなく愛す彼女の箸を止める者はいない。
その後も凄いスピードで食べていき、遂には皿の中を空にしてしまった。時間としては一分弱。風先輩に迫る速さだ。
「美味しかったぁ·······毎日食べたいぐらいだよ〜」
「毎日·····?」
この量のうどんを毎日········?
俺はこの量であれば週に一回で充分だと言うのに毎日だと?いや、香川県民としては正常なのか?
「あっ、今の『毎日』は、その違くて·····いや、違わないけど······えっと······」
「? 友奈が毎日して欲しいなら飽きるまで作るぞ」
食費がどうなるか、から目を逸らしながら宣言する。あの食べっぷりが見れるならいつでも作ります。見れなくても友奈が幸せなら作る。
「··········迷惑、じゃない?」
「迷惑じゃないって」
友奈が幸せなら俺にとって迷惑であってもどうでもいい。友が自分として生きているのに、それを邪魔するのは無粋だ。
「我慢してない?」
「してない。友奈こそ我慢すんなって。誰かを害さない限りは突っ走っていいんだから。もしもの時は皆で殴りにいくしな」
勇者部が俺にしたように、俺もそうする。殴るのは絶対にしないが絶対に止める。望まないことをやらせるぐらいなら、―――考えるのはよそう。
「シャルくんは·······殴らないの?」
「なんで?」
「だって、私のせいでシャルくんは·······っ」
「?········ああ、アレか」
一瞬どれかわからなかったが、ついこの前まであった赤い紋様のことだろう。天の神の祟りと断定しているが、実の所あまりわかってない。ただ神からの祟りだとしか判明していない。本当にアレは何だったのだろうか。
「アレは友奈が望んで背負った物じゃないんだろ?」
「うん。·······でも――」
「じゃあ友奈のせいじゃない。天の神の仕業だ。だから責めるべきは友奈じゃない。絶対にな」
一旦、全ての責任を天の神に投げておく。実際元の元の元を辿ると人類を滅ぼそうとした天の神が悪い。お前、犯人だろ。
「それに、辛かったのはお互い様だろ?」
「私はへっちゃらだったけど、シャルくんは長く·······」
「痛みは痛みだ。そこに大小関係なんてない」
痛みは·········うん、
「じゃあやっぱり、シャルくんの方が痛かったんだ」
「――えっ。あいや、そういう意味じゃなくてだな。ほら、痛みは痛みだし、な?」
「そう、かな?」
痛い所を突かれて思わず慌ててしまったが、なんとか屁理屈っぽいが返す。だが、痛みに優劣がないのは確かだ。
「まっ、友奈のためならなんだってするさ。俺は死ぬ間際までカッコよく在りたいからな!」
「嫌だよ、そんなの―――」
本音が聞きたい。
迷惑なんてものは考えなくていい。自分らしく迷惑をかけて怒られればいい。褒められればいい。だから、自分の意志で生きていて欲しい。
「お別れも言えないままさよならなんて、·······絶対に嫌だっ!!―――だから、いなくならいで········私が、私が全部抱えるから········」
大きく息を吸ってー、吐いて―――
「誰もいなくなったりしない。皆、友奈が大好きで、大切で、―――愛しているんだ。
友奈が抱えて苦しいのなら、どれだけ傷つこうが絶対に支える。きっと皆ならどんな苦行も地獄も笑いながら歩いて行けるさ」
「嫌だ嫌だ!みんながっ、私のせいで傷つくなんて絶対に―――」
「友奈、わかってくれ。そうやって苦しいように、俺達も苦しいんだ。友達が一人ぼっちで傷ついている姿を見るのは」
あまりにも優しすぎるが故に自身の傷を見ず、ただ進み続けるロボットになって欲しくない。
多数決で押し切ってはいけない。また、前回のように押し潰してしまう。だからこそ、俺が―――俺が······なんだ?
今、俺はなにをしようとした?友奈の生き方を捻じ曲げようとしたのか?―――それは違う。それはカッコよくない。なら、することは決まった。
「みんな、苦しいのに私だけ、こんな―――」
「好きだ、友奈」
「·······えっ?!」
唐突すぎる告白。感情を露出していたが故に、いや、そうでもなくてもこれは驚く。それもシャルルからという事態も相まって更に混沌と化している。
「俺は間違っていた。友奈のしたいことを否定するなんて頭がどうにかなってた。
友奈がしたいことなら、俺はなんだって応援する。だから、俺は友奈を救う」
友奈に立ちはだかる全ての障害は俺が壊す。どのような困難であろうが、俺の命尽きるまで悉くを障害なり得ぬ物体としよう。
「す、すすっ、好きというのは何でしょうか······?」
「そのまんまの意味だぞ」
「〜〜〜〜っ!!」
友奈の顔が茹で蛸のように真っ赤となってしまった。
いや、つい流れで告白をしてしまったが本音を言っただけなのでセーフ。断われられたとしてもいい。ただこれは友奈の生き方を曲げようとした自身への訣別だ。
「え、えっと·······よろしくお願いします·······?」
「おう。これからドンドン頼ってくれ!」
まさかの承諾で驚いている自分がいるが、これによって友奈のしたいことを後押し出来る。それにコレは俺の王道にも沿うしな。
まっ、頑張っていこー!
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