疲······れ····た····ガクッ
ジリリリリリ
「静かに―――しろっ!」
鳴り響く目覚まし時計をいつもと同じように少し力を入れ、停止ボタンを押す。今度は鈍い音が部屋に響いた。
「ん、ん〜·····っ!」
布団から立ち上がり、体を伸ば―――そうとした瞬間足に痛みが走る。どうやら、足でナニかを踏んだようだ。足を上げ、踏んだナニかを確認する。
「機械の部品、か?」
地面に落ちている一つの欠片を拾い、目元まで運び観察する。見た感じ機械の部品······それも針というところから時計の部品だと推測する。
更に周りを見渡す。どうやら、この一つだけでなく何個も落ちているようだ。そして、発生元である一箇所を見つけた。
「時計がぶっ壊れてる·······」
推測通りこの部品達は時計の一部のようだ。このぶっ壊れた時計のな·······いや、なんで?
「俺が?いやいや、そんな力込めてないし······」
そもそもこの腕にそんな力ある訳、ない······俺の腕、ですよね?
いつものヘニョヘニョしている腕ではなく、がっちりしている腕がついている。時計を壊したと言われても納得出来るほどの力強さだ。
「········顔洗お」
しばらく壊れた時計を見て思考するが、どうすることも出来ないため、顔を洗うことを選択する。
そして、扉を開けて廊下に出て肝心なことに気づく。
「洗面所どこ?」
洗面所は寝てた部屋と同じ一階にあった。まだ確認はしていないが、この家には二階もあるようだ。
「······んっ?」
顔を洗おうと洗面台の前に立つ。洗面台には当然、鏡があって自分の顔を見ることになる。
明らかに違う。これは俺の顔ではない。
「シャルルマーニュ、だな······」
どういうことだ?なにが起こっている?
まずは状況を理解しよう。朝、目が覚めると体がシャルルマーニュになっていた·······字面やばいな。
「ん〜?··········んっ、これは」
歩きながら頭を唸らせていると、いつの間にかリビングのような場所に来ていた。そして、一通の手紙が机に置かれていることに気づく。
「んっと、どれどれ······」
封を開け、手紙に書かれている文字を読んでいく。
シャルルマーニュへ
急で悪いが、君にはその世界でシャルルマーニュとして頑張ってもらう。衣食住は心配せずとも、その家に全てがある。何処かのタンスに通帳もある。
今の君は神樹館に今日から転校する小学六年生だ。どのように生活しようとも私は構わない。存分に人生を謳歌してくれ。
偉大な者より
「色々聞きたいことあるけど········どうせ、質問出来ないんだろうな〜」
仕事押し付けて先に帰る上司みたいなことしやがって·······まぁ、俺にとっても得だし素直に受け止めよう。
俺が人生で後悔してること―――即ち、青春!
勉強尽くしの俺は高校まで親しい友達を作らず、恋人も出来なかった。出来ない、ではなく出来なかっただ。そうだと俺は信じてる。
第二の人生?である、この機会を無駄には出来ない!目一杯楽しむぞ!
「っとその前に」
神樹館とはなんだ?文面から小学校だということは理解出来る。だが、何処にあるのかは知らない。よって、迷子にならないために調べないといけない。
どうやって?そりゃあもちろん、スマホで·······スマホがないな。いや、そんな筈はない。こんな現代でスマホを所持してない訳がない。思い出せ、これまで歩いてきた経路にスマホがありそうな場所は·······!
「っ!」
寝室!そう、寝室だ!
寝室に置いてあったスマホを起動する。ロックはないようで、スライドするとホーム画面へと移る。
「神樹館、っと」
Googleで検索エンジンをかけ、神樹館への経路を探す。そんな中、不可解な一点を見つけてしまった。
「四国、だけ········?」
日本が四国以外存在しない。いや、もしかしたらそういう設定がなされているだけ·······だと思い込む。今は神樹館への経路を探すのが優先だ。
「おっ、こっから真っ直ぐでいけんのか」
最短十五分。一直線に進むだけの道を発見した。
この地域の土地勘がない俺にとって、一直線というのはとても有り難い。ここは近道をせず、一直線で神樹館へと向かうことにする。
道を決めた所で次だ。
朝起きて取ることと言えば········そう、朝ご飯だな。腹が減っては戦はできないと言うしな。まっ、俺はそこまでお腹減ってないけど
そんなことを思いつつ、リビングに隣接していたキッチンへと向かう。
「空·····だと·····!?」
キッチンに置いてある冷蔵庫の中身は空っぽだった。食料品に限らず、飲料水すらも置いてない。
「しょうがない、な。」
朝抜いただけじゃ、死にはしないし問題ないだろ。ここは制服を着て、早めに出発しよう。転校初日に遅刻なんて嫌だからな。
ガス栓オッケー。コンセントオッケー。鍵オッケー!指差し確認完了。それじゃ―――
「―――出発!」
ここから俺の新たな人生が幕を開ける。今度こそ、青春というものを謳歌してみせる。
次回、シャルル君学校に行くそうです。
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