気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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Q.大社(御影生存)を潰しに行くのですが、必ず成功する策戦はありますか?あったら教えてください。

A.回れぇー、右ッ!!!




絶対的【若葉√】

 

 

 

 

 

 西暦から神世紀へと移り早6年。勇者として戦った者達が軒並み二十歳となった。これには時の流れる早さに涙するしかない。

 まぁ、そんなことはさて置き。

 

 新年である正月を超え、寒さが最低音を迎えた冬の日。淡々と雪が落ちる中、二人の男女が人外染みた動きで技を繰り広げていた。

 

 無論、西暦の風雲児こと乃木 若葉と四国の大英雄と称される御影 士郎である。

 

「ハッッッ!!!」

 

「ッ―――、また速くなりやがっな!!?」

 

 以前までは防ぐ止まりであったと言うのに、今となっては回避以外の選択肢を潰すカウンターを繰り出してくる。なんという成長スピードだろうか。

 

「まだまだ行くぞッ!!」

 

「はっ、ぁ?」

 

 横一文字、と思わせての逆手持ちでの振り降ろし。

 

 あまりの切り替えの早さに思わず素っ頓狂な声を上げ、形にならない構えで受け止める。当然、そのようなもので防げる訳がなく、防御を崩されてしまった。

 

「そこ、――――なにッ!!?!」

 

 下へとズラされた得物につられて持ち手が下がる前に破棄。

 ほんの少し腰を降ろし、―――放たれた。

 左足を軸とし、右脚の踵を標的へと叩き込む。即ち、一回転による回し蹴りである。

 

「っ········!」

 

 見事、御影が放った回し蹴りは木刀の側面を打ち抜き、一直線上にあった木へと突き刺さった。

 互いに無手となったまま数秒見つめ合い、肩の力を抜いた。

 

「ここまでだな」

 

「今回はいけると思ったのだがな·········」

 

「ああ、俺も今回ばかりは本当に負けるかと思った」

 

 自身の手から離れてしまった木刀を回収し、隣合って近場のベンチに座る。その際、少し積もっている雪を退けるのを忘れず。

 

「にしても先程の蹴りはなんだ?毛色が違う一撃だったが·········」

 

「ああ、アレは白崎のじいさんに教わってな。まぁ、武器がなくなった時用の奴だ」

 

「なるほど、白崎さんか。納得だ」

 

 ただ、御影は武器を即座に取り出すことができるため、実戦で使うことはないだろう。念の為にと教わった次第である。

 白崎のじいさんの教え方が上手かったためか、それとも御影の飲み込みが早いのか、どの高さにも対応している。

 

「そんじゃ、俺は帰るぞ。若葉も風邪引かないうちに切り上げろよ」

 

「ああ」

 

 自身に積もった雪を払い、寮への道に着く。ちなみに打ち合いをしていた広場は寮付属のものである。

 

 大赦本部まとめて位置関係を説明するなら、左から大社、駐車場、寮、広場となっている。うん、デカイね。

 ひなたが設計の大基を書いた時は金足りるかと心配になったが、どうやら俺の貯金から出てるらしい。いやまぁ、確かにいろんな所から金貰うけどさ、相談なしってのはちょっと、なあ。使い道ないからいいけども。

 

 

 そんなことを思い出しているうちに自室に着いた。

 一先ず、道着代わりの袴を脱いで折り畳み、洗濯ネットに入れてから洗濯機へと入れる。洗剤を適量入れ、スイッチオン。 

 痛むことなどを考えると手洗いをした方がいいが、如何せん時間がない(めんどくさい)

 

 さて、次の予定だが·······

 9時から11時までひなたの所だから、軽食挟んでから行くことにしよう。

 カロリーメイトをボリボリ。歯ゴシゴシ。

 上白、下薄い黒の袴を着て、いざ出陣。

 

 

 

 

 

 

 

 8:50、御影士郎 現着

 断りを入れることなく執務室の扉を開き、入室する。

 

「来たぞ」

 

「今日もぴったり十分前ですね」

 

「5分前行動の5分前行動を意識しろ、って言われたからな」

 

 5分前行動のそもそもの意味は余裕を持って行動することだ。だが、その5分前に急いで行くのは違う。なら、その5分前の5分前辺りに余裕を持って行けばいいんですよ。

 と、白崎さんが言っていた。

 御影はその言葉を理解するのに三十分かかったが、結論5分前の5分前に集合することだと理解するのでした。

 

「んで、その手紙はなんだ?」

 

「縁談関連ですね」

 

「ほへぇ。やっぱ、組織のトップとなるとそういう話もくんのか」

 

「いえ、士郎さんへの縁談申し込みです」

 

「···········何故に俺?」

 

 ひなたとか若葉ならわかる。別嬪さんだし。だが、何故そこで俺なのか。全く意味がわからない。思わず、思ったことが口に出る程だ。

 

「士郎さんを後ろ盾にすることで、やりたい放題できますからね」

 

「そんな力あるかねぇ、俺に」

 

「士郎さんは仮にも四国の大英雄なのですから。無闇に話し合いの場で冗談などは言わないでくださいね?」

 

「俺が政治関連の話についていける筈ないだろ」

 

 毎度ひなたの護衛で出席するものの、どうしてその案が出るのか意味不明である。

 話の内容は理解できる。だが、即座に返答を作れと言われると無理なのである。頭の回転が遅いのとそういった知識は全く持ってないからと言うのもある。

 

「では、そろそろ行きましょうか」

 

「おう」

 

 お口チャックを心がけてひなたの後ろに着く。もちろん、何が来ようが守り通すために右手は開けている。

 

 

 

 

 

 

 

 予定より長引いた会議が終わり、昼飯を摂るために自室へと戻ってきた。

 時刻は12:24、次の予定である1:00からの警備交代があるため本格的なご飯は食べれない。また、軽食で済ませるしかないようだ。

 

 綺麗に積み立てられている一番上の箱を取り、中身から―――着信音が鳴り響く。

 

 手をかけていた箱を机に投げ、すぐさま携帯電話を開く。画面に映る通話ボタンを押し、通話状態にする。

 

『―――頭から血がぁ!床が赤いんです!!』

 

「落ち着け、星見。すぐに患部を何の布でもいいから強く縛りつけるんだ」

 

 電話をかけてきたのは今年2年目の星見。どうやら、何かしらの事故現場に出くわしたようだ。

 緊急事態と判断し、すぐに自室の扉を開き、部屋を後に·········

 

 大赦役員の正装を身に纏った男が立っている。手には段ボールの箱。察するに荷物を届けに来たのだろう。

 

「悪い、今急いでる。そこらに置いといてくれ」

 

『土居さんが――――――』

「御影 士郎様宛にお荷物です」

 

 タマがいるのは大社の関所

 この男は大赦の役員ではない

―――コイツは敵だ

 

 両腕を切断。心臓を通るように肩から袈裟斬り。切り別れた上体と共に段ボールが床へ―――

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

―――――――――――――――

 

―――――――――

 

―――

 

 

 

 

 

 轟轟と未だ燃え続ける瓦礫の山。元々寮だったそれは幾重にも仕掛けられた爆弾により、吹き飛ばされたものとなる。

 起爆当時に寮にいた者達は良くて即死、最悪の結果としては瓦礫に押し潰され生きたまま燃やされただろう。

 

 無論、相手の計画通り全滅―――な訳がない。

 

「············」

 

 やった事は単純。ただ、瓦礫を力の限りに上へ押し出しただけである。

 一般人が同じ事をしたとしてもびくともしない。だが、彼にとっては容易。幾分か時間はかかるものの脱出可能だ。

 

 体内から草薙剣を取り出し、一振るい。

 

 すると、先程まで燃えていたのが嘘のように全て沈静化。消防隊涙目の出来事である。

 役目を終えた草薙剣を体内に仕舞う。

 

 状況把握のために周りを見渡す。

 絶叫、悲鳴、泣き叫ぶ声、乱射音、爆発音。そこかしこに人が倒れている。生死は不明。

 現時点での最優先を考えていると、とある老人が御影の元へ駆けつけた。

 

「ご無事でなによりです」

 

「じいさんも無事、そうじゃねぇが生きてて良かった」

 

「この程度は掠り傷ですので」

 

 掠り傷、と言うには痛々しい火傷。左腕の外側はレベルⅡの火傷を負っているようだ。そんな左腕でも使い熟せているあたり只者ではない。

 

「端的に申し上げますと、ややこちらが押されています。非武装の方々はほとんど殺されました。願わくばご助力を」

 

「わかった」

 

「ありがとうございます」

 

 断る必要は何一つない。と言うよりは、こんな状況でなければ既に助けに入っていた。

 流石に全裸で行くのはちょっと·······。

 

「てことで、腰に巻ける布くれ」

 

「どうぞ」

 

 何故か用意されている端の方が少し焦げた白い布を受け取り、腰に回す。

 よし、これで秘部は隠せた。

 

「じいさんは裏口付近の安全確保。俺が襲撃者の始末」

 

「わかりました」

 

 承認すると共にその場からスナイパーライフル片手に走り去っていた。仕事への移行が早くて助かる。

 俺も動くべく、発砲音が聞こえる方向へと向かう。

 

「―――なっ、御影 し   」

 

 両腕を切断。

 即死にならないよう首の付け根あたりに手刀を捩じ込む。

 こうすると長い間苦しんで死んでくれる。

 

 物言わぬ人間となった者を適当に蹴り飛ばし、乱射していた方向に目を向ける。

 死体が二つ。何発も撃ち込まれたことで大きな穴がいくつも空いている。

 

「死体撃ちか·········」

 

 ぐちゃぐちゃなため認識が難しいが、新婚夫婦の河上だ。祝言を挙げたのを覚えている。

 怒りを呑み込み、次に行く。

 

 刀で障害物を切り裂き、一直線で発砲音の元へと走る。

 

「なっなんで········!?」

 

 三枚程壁をブチ抜いて行ってようやくエンカウント。引き金を引く指が止まっている所を上下に一刀両断。

 支えを失くした上半身が臓器をはみ出しながら焦げた床に落ちる。

 

「あ、あぁぁ·······」

 

 何かを掴もうとしている両腕を刀で刺し、床に磔とする。

 痛みでショック死していない所を見ると訓練された暴徒のようだ。だがまぁ、数秒もあれば泣き叫ぶだろう。

 

「御影様········?」

 

 物陰から恐る恐る顔を出した者が声をかけてきた。物言わぬ死体同然のものから顔を上げ、そちらへと視線を移す。

 

「ッ·······!」

 

「走れるか?」

 

 俺に声をかけたのは法務部の西岡さんだった。どうやら、相当の間命の危機に陥っていたのか精神的疲労が半端ないようだ。

 一先ず、逃れるかどうかを確認しておこう。

 

「はっ、ハイ!」

 

「んじゃ、裏口まで行ってくれ。道中は俺が安全にしとく」

 

 了承を聞かず、裏口まで一目散に駆ける。その際見つけた武装者は死なない程度に切り刻み無力化していく。

 そんなことを十分程行い、ようやく裏口が視えるようになった所で俺は―――

 

 ―――防いだにも関わらずぶっ飛ばされた

 

「··········?」

 

 防いだ際の音からして、今しがた攻撃してきた相手の得物は俺と同じく刀または剣。だが、これまで無力化してきた武装者は軒並み銃のみの武装だった。

 明らか可笑しい。しかも、今の剣の冴えは何処かで······

 

「―――ッッ!!?」

 

 世界が裂けた。

 そう錯覚してしまう程の斬撃が俺の顔があった所を通過していった。

 言わずもがな当たれば即死だった。よく避けたと自分を褒めてやりたいぐらいだ。

 だが、今ので大分視界がクリアになった。敵の姿もこれで―――

 

「若葉·········?」

 

 ありえない。そんな筈ない。

 今の斬撃は、絶対に若葉じゃ出せない。そもそも、細工なしの斬撃なんて人間が出せる訳がない。

 ―――いや、やめよう。

 俺を攻撃したのは若葉だ。それは覆しようがない事実。つまり、俺の敵········ああ、くそ。酷い悪夢だ。

 

「       」

 

「ッッ―――!!!」

 

 言葉はない。代わりにあるものは無慈悲にも繰り出される神の御業。

 一瞬でも気を抜けば死ぬ。考えずともわかる。

 これは模擬戦ではない。使う得物も木刀ではない。真剣なのだ。

 それも彼女が永くに使用している生太刀。銃弾など目でもない一撃が毎秒打ち込まれるのだ。

 

 遂に片手では威力を殺し切れず、三階から弾き出される。

 

「腕力どうこうじゃねぇな、くそったれ!!」

 

 壁を突き破ってなお止まらない勢いのまま、後退しながら重力と自重により落下していく最中叫ぶ。

 若葉の腕力は到底俺には敵わない。腕相撲をすれば十回中十回全て勝つと自信満々に言えるほど。だが、それを以てしても敵わない。

 なんだ?俺が這い上がる数十分の間になにがあった?

 飛躍的な技術の発展。最早別人かと疑う程のものである。

 

 落下中の俺目掛けて若葉が飛翔する。

 

 どうやら、殺すまで攻撃をしかけてくるようだ。

 ありがたい話だ。

 こんな化け物みたいな奴が生存者が逃げ迷っている場所を徘徊するよりかは、俺に付きっきりで着いている方がいい。

 幸い、襲撃者は軒並み無力化した。後はじいさんが安全確保をやっているかどうかだが、その心配は必要ない。あのじいさんならやってくれる。

 

 なら俺は、若葉を止めるだけだ。

 

「ハッッ!!!!!」

 

 袈裟斬りをすると共に刀が砕け散る。

 誰にも当たらない。刀を当てる必要のない一撃。即ち、細工ありの斬撃だ。

 空中、それも自分から飛んできたのであれば回避は不可能。防御など、斬撃をどう防御するかなどわかる筈が――――――弾かれた。

 

「弾けんのかよ!?」

 

 弾かれるは予想外。

 軽症に抑えられるとは思ったが、まさか無傷で進み続けるとは。だが、いい手本だ。これで斬撃の対処は俺も可能になった。

 

 そんなこんなで大地に帰還。が、安心する暇もなく若葉が襲い掛かる。

 

「っ·······!」

 

 頭蓋を一刀両断せんとばかりの大振りな一撃。

 受け止めからのカウンター。そんなことをすれば、引っ掛かったなと横一文字で真っ二つにされる可能性があるため横へ回避。

 

「      」

 

「ぐぅ········!!?」

 

 それすらも読まれていたのか、振り下ろした状態からの振り上げによる追撃が叩き込まれる。辛うじて刀で受けることは出来たが、衝撃により後退させられる事となった。

 

 そんな隙を作った俺を若葉が見逃す訳がなく、生太刀を振るい斬撃を飛ばしてきた。

 

「こうだろ」

 

 斬撃を若葉が先程やったように弾き飛ばす。

 イメージとしては切っ先で斬撃の側面を打ち、斜めにすることだ。人外の技だ。

 

 その間に若葉が俺に迫る。

 

「     」

 

 若葉が地を蹴る。一寸の差もなく、俺も地を蹴る。

 刀を投擲、難なく弾かれた。

 弾かれるのは承知の上。再度、手に抜き身刀を握り、若葉が繰り出す連撃と打ち合う。

 何度も何度も何度も、―――――手を離す。

 

 支えがなくなった刀は若葉の一撃によって何処へと弾き飛ばされていった。

 

 手を離した瞬間には準備は完了していた。

 

「フッ!!!!」

 

 今日二度目の回し蹴りっ!!

 刀だけで無理と言うのなら肉体を使用するまでだ。

 

 俺が繰り出した回し蹴りは朝同様側面を打ち抜き、若葉の手から生太刀を手放させることに成功した。

 が、そこからは朝とは違う。

 神経通っているのかと疑いたくなる程の速さで自身の刀に手を伸ばす若葉。邪魔がなければ取れるだろう。それ程までに反応が速い。

 

 手を伸ばし、無防備な若葉を押し倒す。そのまま馬乗りとなり、右手で若葉の利き腕である右腕を抑える。

 

「     !」

 

「落ち着け、若葉。敵じゃない」

 

 ジタバタと子供のように足を動かし、左手を使って俺を退かそうとする若葉に言い聞かせる。

 絵面が最悪だが、非常事態だ。見逃してもらおう。

 

「   !!!」

 

「若葉、乃木 若葉」

 

「   !!!!!」

 

「―――乃木 若葉ァ!!!!!」

 

「   !!!!!!!」

 

 駄目だ。一向に目覚める気配がしない。

 もう、このまま一生目覚めることはないのか?このまま人を殺し続けるだけの機械に成り下がるのか?

 それなら、いっそ―――

 

「〜〜っ゛·······誰か、·····誰でもいい。誰か、―――」

 

 どうすればいいんだ?どうすれば若葉を助ける事ができる?―――俺に、なにが········

 ポタポタと雨が振り始める。

 

「―――士郎さんっ!!」

 

 はっと顔を上げる。

 顔を上げた先には若葉のことならお任せのひなたが立っていた。

 もし見つかれば真っ先に命を狙われる筈のひなたが何故、という疑問なかった。ただ希望が見えたことによる安堵しかなかった。

 

「キスです!!」

 

 その言葉を聞き、雨で濡れた目元を右腕で拭う。

 普段の彼であれば、なに馬鹿なこと言ってんだと一蹴するようか助言だが、今はそんなこと考えられる余裕は彼にはない。

 

 殴る蹴るなどの抵抗を受けながら、右手を若葉の頬に添え、唇を重ねる。

 

「!!?!?!!」

 

 こんな状況でなければ写真撮りたかったなぁ、と想っているひなたを蚊帳の外にし、若葉を落ち着かせる事だけを考える。

 絵面は犯罪臭が物凄くするが、至って真面目である。何よりも真面目である。

 

「―――――っ、·······」

 

 若葉が呼吸困難になり始めたため、重ねていた唇を外す。

 一旦頭を上げ、若葉の顔を見る。

 これで駄目なら本当に手詰まりだ。その時は―――

 

「〜〜〜〜〜〜っ!」

 

 抵抗もなくなり、残ったのは顔を林檎みたく真っ赤にした彼女のみ。

 起きたら意中の相手とキスをしていたのだ。気持ちもわかる。

 

「若葉·······?」

 

 そんな気持ちもわからない朴念仁が顔を真っ赤にしている若葉に呼びかける。

 抵抗がなくなったという所から、普段の若葉に戻ったのは理解している。だが、一向に俺の顔を見てくれない。何か訳があるのだろうか。

 

「·········退いてくれ、頼む」

 

「お、おう」

 

 どうやら、彼女もゆっくり出来ないことを理解しているのか、公私を別け、事態の改善に進もうと決めたようだ。

 

「動けるか?」

 

「······ああ」

 

「なら問題ねぇな。俺は大元潰しに行く。その間、諸々任せた」

 

「任された」

 

 大元らしき人影は落下中に確認済みだ。違う時はそん時に決めよう。幸い、若葉とじいさんとで非武装者の安全は確保されている。

 俺はただ大元に全ての責任を負わせることだけを考えればいい。

 

 

 

 踏み躙られ、蹂躙され、穢された砂利道を歩く。

 右を向けば瓦礫。左を向けば瓦礫。通ってきた道を思い返せば死体。

 沢山の物が壊れ、沢山の人が亡くなった。

 悍ましき光景、赦されざる行為だ。

 

 この地獄を成した人物と相対する。

 

「目的はなんだ?」

 

 至って平凡な青年へと声をかける。

 見たところ三十やそこらの歳だ。いや、歳は関係ない。コイツがした事、それが全てだ。

 

「なぜ·········、何故生きてる?何百個仕掛けたと思ってる?」

 

 質問の返答は質問。

 どうやら、入念に準備した計画がおじゃんになって気が動転しているようだ。

 意図せず口が開く。

 

「神秘もクソもねぇ爆弾で俺を殺せるとでも思ってんのか?」

 

「シンピ········?なんだ、ソレは」

 

「·········さあ?なんだろうな」

 

 神秘とはなんだ?今喋ったのは俺だったのか?

 まぁ、いいか。今はそんなこと考えている暇はない。

 

「で、襲撃してきた理由は?」

 

「無論、この組織を潰しにだ」

 

「潰してなにすんだ?」

 

「人々の救済」

 

「は?????」

 

 聞き間違いだろうか。

 これまで色んな奴らが襲撃してきた。

 神を侮辱するなだの、人殺しは楽しいだの、天皇でもなき奴らが日本を統治するなだの。

 まぁ、理解できる。

 人の営みというのはそういうもんだ。万人が頷くというのは難しい。

 

「英雄を殺し、神樹を燃やし、壁を壊す」

 

「その過程で何人死のうがお構いなしか」

 

「何を言う。お前が、お前らが殺した人数はこの倍だろ?俺から言わせてみれば、お前らが悪だ」

 

 それを言われると反論できない。

 腐りきった奴らを殺し、ひなたを殺そうとする者を殺し、害そうとした者を殺し、邪魔な奴らを殺し、今もまた殺した。きっと、これからも殺していく。

 割り切るしかない。俺達は正しいのだと思うしかない。

 

「英雄とは名ばかりの大虐殺者だ、お前は」

 

「···········そうだな」

 

 全くその通りだ。

 俺が死んだ時には地獄行きだろう。それ程のことを今までしてきた。

 怖い。が、そんな事を考える暇はない。せめて天の神を殺してから死のう。そうすれば、意味ある歩みだったと言える筈だ。

 

「·········そして、またお前は一人殺す」

 

「自衛しないのか」

 

「はっ、俺が何をしようがお前には通じない。勝てる訳がない」

 

 嘲笑するかのように肩を竦める。

 死に際だとわかっていながら、恐れのないこの男は何者かと問いたい気持ちはあるが答えないだろうな。彼もまた悪であるのだから。

 

 青年は、ポケットから取り出した起爆装置を英雄に視えるように右手で掲げる。

 

「何故か爆破しなかった本部に仕掛けた爆弾の起爆装置だ。今から手動で爆破する」

 

「っ········!?」

 

 ここに来るまで一分程度。孤立していた者達が逃げ延びるには心許ない時間だ。もし、そんな中起爆でもされたのなら···········考えたくもない。

 

「例え、お前が俺を即座に殺したとて手遅れだ。ドカーンだろうな」

 

「ッ―――!!!」

 

 すぐさま本部へと駆ける。

 この際、首謀者である青年は無視。人命救助を優先とする。

 全員掛け替えのない仲間なのだ。見捨てるというのは英雄(少年)には無理な話である。

 

「···········」

 

 その場に一人残された青年は、傷だらけの背中を眺めていた。右手の親指は起爆装置に置いてはいるが、押す気配は一向にない。

 

 予想外だったのだ。

 英雄が悪を滅さず、人命救助を優先するなど全くの予想外だった。それ故、起爆装置を押すのを忘れてしまっていた。

 気づいたのは英雄が本部内に入り、我武者羅に人を探していた頃だった。

 

 ―――本部が内部から爆発した。

 

 これでも英雄は死なない。最初ので死なないのであれば、彼が言った通り爆弾では殺せないのだ。どういう理屈かは知らないが。

 起爆装置を投げ捨て、使う気のなかった拳銃の銃口を自身の喉に突きつける。

 

「みんな、嘘つきだなぁ―――」

 

 脳味噌が弾け飛んだ。

 

 

 

 

 爆発によって木片、これまでの思い出諸々が吹き飛ぶ。それと同時に数名の一塊が弾き出されるように地面を転がっていた。

 特徴的な赤髪を土で汚すもすぐさま体勢を整え、ジワジワと燃え広がりながら崩壊していく建造物だったものを見上げる。

 

「士郎くんっ!!」

 

 咄嗟の判断で自分達を放り投げた者の名前を叫ぶ。

 届いているかはどうでもいい。ただ叫ばずにはいられない。決して、この叫びで何かが変わる訳ではないというのに―――

 

 ―――斬撃が八度。

 崩れ落ちる瓦礫を斬り飛ばす。

 抜け道をほんの一瞬確保するだけの連撃。その、ほんの一瞬さえあれば逃げることは容易だ。彼だからこそ出来る芸当。

 

 轟音と土埃を立たせながら着地。

 

「―――――――――」

 

 金色の瞳が高嶋へと向けられる。炎に照らされてか若干橙色のようにも見えた。

 そのまま高嶋へと近づき、息を吸う。

 

「危うく死ぬ所だったんだぞっ!!なに考えてやがる!?」

 

「ごめんなさい·········。で、でもっ!士郎くんだって突っ込んできたじゃん!!」

 

「俺は良いんだよ!!」

 

「良くないですぅー!!!」

 

 無鉄砲なのはお互い様だろうに。

 絶望だろうが何だろうが駆け込んでくる性分なのだ。だが、片方は英雄でもう片方はただの人間である。どちらが死ぬ可能性が高いかと問われれば、それはもちろん後者であろう。

 

「·········はぁ。一先ず俺は正面出口ら辺に行く。友奈はそいつら連れて裏口に向かってくれ」

 

「正面出口········うん、お願い」

 

 今は喧嘩よりも優先する事があるため、早々に切り上げ背を向ける。

 正面出口·······首謀者であったあの青年はいるだろうか。いれば殺すが、まぁ逃げているだろうな。

 

 

 

 

 

 先程までいた場所に、頭部が砕け散った死体が倒れていた。

 中身が頭の天辺から流れているのを見ると、顎辺りからの上撃ち。この場合、大抵自殺だ。

 

「なにがしたかったんだよ、お前は」

 

 自身が生き残るために本部を爆発したんじゃないのか?自殺するために時間を稼ぐような奴には見えなかった。

 そもそも、トチ狂った輩は自殺しない。

 何故か。自身を絶対の正義として生きている奴だからだ。だから、自殺する必要がない。周りを害している感覚がないのだから。

 

 死体の横を通り、関所へと向かう。

 

 道中少数ではあったが何人かの死体が落ちていた。死因はどれも銃殺。足と頭が撃たれていた。察するに動きを止めてからの死刑方式での射殺だろう。

 罪が誰にあるのか問われれば俺にある。死刑方式で射殺するのであれば、俺が受けるのが義務だろうに。

 

 死屍累々とした砂利道を歩き、検問所に到着した。だが、他とは毛色が違う死体が三体入り口にある。

 

「撲殺········?」

 

 他の射殺とは違う撲殺による死体。それも大社役員ではない者達の。

 全大社の役員内で一番力が強いのは星見だ。だが、この跡は技術込みでの一撃。星見では出来ない。

 肋骨を砕きながら心臓を破るなど、どれだけの研鑽があれば出来るようになるのか。甚だ疑問である。

 

 そんな死体を跨ぎ、関所付随の一室に入る。

 関所の人を暑さ寒さ雨から守るようにと言うことでひなたが作らせた物だ。そして俺の貯金はまた減った。

 

 俺の瞳に映る―――赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤

 

「·············」

 

 一歩踏み込む度に素足から赤い液体が滴る。

 窓から差し込む太陽の光を反射して赤い液体が輝く。

 

 足にナニかぶつかった。恐る恐るそちらに視線を移す。

 丸くて、赤黒くて·········

 

「·········星見?」

 

 ()()()()を拾い上げる。

 頭部に損傷はない。射殺ではない。切断面を見るからに斬れ味の悪い刃物による切断だ。それも生きたまま······

 

「お疲れ様、星見」

 

 何も映さなくなった瞳に瞼を降ろし、近くに横たわっていた星見の体と共に右手左肘で抱える。

 こんな場所に星見を置いておくのは嫌だ。一旦外に出て―――

 

「タマ········」

 

 入り口のすぐ側の壁に凭れている。

 頭部には包帯のような白い布が巻かれている。

 

 すぐさま駆け寄りたい気持ちを抑え込み、星見を抱えて外に出る。

 砂利道にそっと星見の体を置き、本来あるべき所に頭部を置く。やはり、体に銃痕などはない。

 

 再度関所付随の一室に入り、死角にいたタマの状態を確認する。

 

「脈あり、呼吸あり········ふぅ」

 

 頭部に怪我があるが、幸いタマは生きている。それだけわかれば良い。

 タマを抱えて外に出る。

 明るい場所で見ると、明ら様に肌が白い。血を流し過ぎたのだろう。

 すぐさま裏口へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 19:00。陽が落ち、辺りが暗くなった頃。

 一人、瓦礫を掘り返す者がいた。言わずもがな御影 士郎である。

 

「··········おっ」

 

 人の体らしきものが見えたことにより、そこの瓦礫を重点的に掘り返す。

 瓦礫という障害物が失くなったことにより、全身真っ黒に焦げた人体が出てきた。

 

 死体としか認識できないソレの手であったろう部分を握る。

 

「岩下········藍沢になんて言えばいいんだよ」

 

 瓦礫だらけの場所から離れ、砂利道に置いておいたブルーシートの上にそっと置く。そして、端の方を上にすることでブルーシートで包み込む。

 

 また、瓦礫を掘り返す。

 かれこれ五時間。何度も掘り返し、何人もの欄にチェックをつけたか。先程のように体が繋がっている人達ばかりではない。時には腕だけ、足だけ、上半身だけ。

 地獄を見せられている。

 

「···········」

 

 ただ我武者羅に掘り返す。

 彼は至って普通の青年だ。慣れることなんてない。吐き気を、叫びたい口を強く抑えているだけだ。

 我慢強い、では済まされない。その忍耐力をどう言えばいいのかわからない。

 

 また一人、また一人と行方不明者が死者へと変わっていく。その度に顔を歪ませ、心を押し潰す。

 

「―――――――」

 

 誰が、彼を冷酷だと薄情だと言えるのか。いいや、誰も言うまい。

 彼にここまでさせた者達が悪なのだ。四国の大英雄と評した者達が悪なのだ。

 

 

 

 

 死者178名、身元不明者0名、重症9名、軽症者115名。

 大赦役員の約三分の二が残職という結果となり、この戦いは幕を降ろした。

 ちなみに襲撃者の数は27名。内27名は斬殺。殆ど御影の手によって卸された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見渡す限りの雄大な山―――の空が見えるような突き抜けの空洞にある大赦本部。

 鳥の囀りが聞こえる程自然が近い。秘境と言われるのも頷ける。

 

「ようやっと一段落だな········」

 

「そうですね」

 

 縁側のような場所で二人して滅多にない落ち着いた時間を過ごす。

 ひなたは余程キツイスケジュールを熟してきたのだろう。御影も御影でそのスケジュールに付き合わされてクタクタだ。

 

「この場所なら蛮族でない限り襲撃はしてこないと思います」

 

「ほとんど蛮族だったろ」

 

「それもそうでしたね」

 

 最後の奴だけは他とは違ったなと思いつつ、ひなたの頭に乗った葉っぱを取る。

 そう言えばとひなたに聞きたかったことを思い出し、問いかけてみる。

 

「あの日の若葉は鬼神めいた強さだった。何か知ってるか?」

 

 アレは若葉が出来るような動きじゃなかった。俺でも無理だ。

 一手しくじれば死んでいたと言えるまでの強さ。正しく究極の一。どのような状況であれ、勝利を我が物とする御業だ。本当に楽しかった

 

「私もわかりません。私が目を覚ました時にはああなっていました」

 

「んー··········まぁ、いいか」

 

 アレは一生の迷宮入りということで。

 若林が俺みたく記憶喪失したとかは今の所ないし問題ないだろう。

 

「それよりも士郎さん、どうするんですか?」

 

「なにがだ?」

 

 心当たりがなさすぎて思わず聞き返した。

 

「若葉ちゃんにキスしましたよね?」

 

「ああ、したな」

 

「責任、取るんですよね?」

 

 キス········そういやぁ、恋仲の二人がする行為だったな。そして、俺はソレを了承なく若葉としたと。

 ···········なるほどな。

 

「自首してくる」

 

 署に出向くため腰を上げる。

 

「確かにそれも責任の取り方ですが違いますよ」

 

「他になんかあるのか?」

 

 引き留めてきたひなたの方へと視線を向ける。

 俺の中では犯罪行為は自首、あいや、人殺ししてんだから今更か。とっくの昔に犯罪者だったわ。

 

「若葉ちゃんのことは好きですよね?」

 

「好きだが」

 

「私のことは?」

 

「好きだが」

 

「私もです。ではなく」

 

「?」

 

 今のはノリツッコミなのか。笑うべきだったかな。次からは笑うようにしよう。

 

「本来、恋人同士でもない二人がああいった行為をしたら、責任を取るとして恋人になるんです。もちろん両者が了承した場合ですが」

 

「なるほど。つまり、俺は若葉に恋人にならないかと聞けばいいのか」

 

「そうです」

 

 端から見れば、どんな会話してんだよと思われる内容ではあるが当事者は真面目である。

 真面目さがボケになることは良くある。御影は一週間に一回はボケている。

 

「今の時間帯なら········確か、隣部屋の縁側に」

 

「おっ、ほんとにいるな」

 

 そう言い、木板で区切られた隣の縁側を見るべく身を乗り出す。彼女が予想した通り若葉が縁側であたふたしている。

 

「あっ、若葉ちゃん。今、お時間空いてますか?」

 

「ひなた、なんで私の行動を把握しているんだ?」

 

「聞こえてましたか」

 

「最初の団欒から責任云々の話までもな」

 

「全部じゃねぇか」

 

 そんな大声で話していたつもりはないが、縁側での会話は近隣の縁側にいる人にも聞こえるようだ。今後は気をつけねば。

 

「それなら話は早いですね」

 

「··········士郎、責任は考えなくていい。あれは私の弱さが招いた結果だ」

 

「葛藤がありましたね」

 

「やっぱ嫌だったよな」

 

 やはりと言うか上半身裸の奴からいきなりキスをされたら誰だって嫌だろう。字面が半端ないもん。

 ここは腹を切って謝罪するのが一番だ。

 

「嫌じゃない。嫌じゃないが·········こういった形で付き合うというのは、どうなのかと思っただけだ」

 

「うーん、じゃあ―――」

 

「じゃあ、私が士郎さんを貰いますね」

 

「っ·······!?」

 

 俺の言葉を遮るようにしてひなたが放った言葉によって何故か若葉が狼狽えている。それもう目に見えて。

 

「まっ待て、士郎の了承もなしでそんなこと·······」

 

「士郎さんは私のこと好きだと言ってくれましたよ?」

 

「友人としての好きだろ!?」

 

「好きに区別はないと思いますが」

 

「それは、そうだが···········」

 

 ひなたとの口論に負けてか今にも泣きそうな顔になってしまった。最早反論の余地もないんだろう。

 待ったをかけるためにひなたの肩に右手を置く。

 

「ひなた、若葉をからかうのもそこまでにしとけよ」

 

「···························································はい」

 

 何だろう、今の間は。なにか触れてはいけない何かに触れたような気分だ。

 触れてはいけないと思うのであれば触れないで行こう。

 ひなたの肩から右手を降ろし、若葉に向き直る。

 

「正式な形での申し出ならいいんだろ?」

 

「········ああ。だが、士郎。士郎は友達への愛情と異性への愛情の区別はできるのか?」

 

「できやしねぇが、ひなたの言う通り愛に区別はない。なら、それでいいだろ」

 

「だが、それでは·········」

 

 恋人になったとしても関係は今のまま平行線となるだろう。ただ恋人という名の友達同士。具体的に言うなら友達以上恋人未満。

 そんな関係性が死ぬまでずっと。いや、そういう生き方であっても一生一緒に過ごせるのだ。それだけでも幸せものだが··········

 

「若葉の愛はどっちなんだ?友人に対してか。それとも異性に対してのか?」

 

「もちろん異性にだ」

 

 ―――物凄く嬉しかった。

 自分でも意味がわからない。何故、自分がこれ程嬉しがっているのか。ちっとも解りはしない。

 だけど、これだけは言える。

 

「ああ、俺も好きだ」

 

 その場にいた若葉とひなたは驚愕した。

 この青年の満面の笑みに対してか。はたまた自分/親友への返し言葉にか。まぁ、どちらにもだろう。

 ということでパシャリ。スマホはこういう際便利である。

 

「良いですね·············」

 

「私にも見せてくれ」

 

「送りますね」

 

「助かる」

 

 先程まで喧嘩していたのが嘘のように写真を共有し合う二人を眺めながら縁側に腰を降ろす。

 

「あぁ、これが好きってヤツか」

 

 一人納得したように息を落とす。

 これまで疑問しかなかった物だが、ようやく腑に落ちた。難しく考え過ぎだったのだ。理由も探す必要もない。ただ好きだと思えたら、それは好きなのだ。

 

「最後に行き着くのが感情論、ってのは何処も一緒か」

 

 さて、こっからどうするかな。まずは恋人同士が何をするのか白崎のじいさんにでも聞きに―――

 

「式はいつ頃ですか?」

 

「··········じいさん、ちとそれは早すぎないか?」

 

 疑問は一杯だが、なんとか呑み込み気が早すぎると返した。

 

「いえいえ。乃木様と御影様は七年もの付き合いなのですから、逆に遅すぎる程です」

 

「そういうもんか··········若葉ー!式、どうするー!?」

 

「―――しっ、式!?早すぎないか!!?」

 

「やっぱ早いんじゃないか?」

 

「落ち着いている今が絶好のタイミングだと私は思いますよ」

 

「なるほど·········」

 

 確かに普段は会議てかひなたの護衛で時間があまり取れない。それなら、移転で会議とかない今が絶好のタイミングなのか。

 

「若葉ー!式場決めようぜー!」

 

 ということで若葉を手招く。先程は反対していたが、小走りでこちらに駆け寄ってきてくれた。どうやら、式を挙げるのには賛成のようだ。

 

「どうぞ、リストアップしたものです」

 

「手際いいな、じいさん」

 

 差し出されたタブレットを受け取り、若葉と隣合って式場を見ていく。どれが良いかは全くわからないが、とりあえず若葉の反応が良いのを選ぼう。

 

「祝言は私が挙げるのでご心配なさらず」

 

「はい?私が挙げますよ?」

 

「いえいえ。宗主様が手を煩わせる事ではありませんので」

 

「では、宗主として命令します。祝言は私が挙げますので」

 

「来年定年退職の私には効かない命令ですね」

 

「「············」」

 

 なんだか後ろで喧嘩しているような雰囲気が来るが大丈夫だろうか。

 というか白崎のじいさんは六十代なのか。ずっと七十代だと思ってたわ。すまん。

 

「士郎士郎」

 

「んー?」

 

「こことかどうだろう?」

 

「··········いいんじゃないか」

 

 左側の裾を引っ張られ誘導された先にあったのは以前河上達が式を挙げた式場だった。

 

 ―――死んだ奴らに申し訳ないと思わないのか?

 誰かが俺に問いかけてくる。ずっと目を背けてきた言葉が今更になって背中に突き刺さる。

 虫がいい話だ。これまで何百と殺してきたというのに、今更自分だけ―――

 

「士郎、私たちで幸せになろうな」

 

 全てがぶっ飛んだ。

 

「―――ああ、なろう」

 

 

 

 

 

 

 

 






 長え!!!!!!!
 過去最長の14000文字というね。うんまぁ、本当はこの後あるひなた妊娠だとか書きたかったけど入らなかったよね。

 というか御影生存の方が良くないか?シャルルマーニュ要素なしで御影要素だけで書いた方が良くない?個人的にはこっちの方がシャルル(偽)より面白いんだけど············なにやってたんだろ、俺の二年間。

 いつか、我慢しきれずにこの話の続き書くかもです。そん時は許してください。
 赦されよ赦されよ、我らが罪を赦されよ

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