気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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 私達は最強なんだ。
 ということで今現在200話記念で暴れてる彼とその親友がいたら?もっと言うなら彼らの世界とゆゆゆ世界が地続きだったら?の話です。
※都合上型月の物語がない世界です。
 では、どうぞ。



舞台崩れの役者達【エイプリルフール】

 

 

 

 

 

 

 

 2015年7月30日、星が落ちてきた日。

 白い怪物が人を喰らい、地を蹂躙していくその様は多くの人々に絶望を抱かせ明日を消していった。

 そんな中彼は―――

 

「うおぉぉぉぉお!!!」

 

 少年を今まさに食べようとしていた星屑に全身全霊のタックルをかます。これにより、星屑を押し退けることができ食事の妨害は成功した。

 

「はっ、はっ·····!さっさと避難所に逃げろ!」

 

「う、うんっ!」

 

 息を切らしながら、捲し立てるように少年へ叫ぶ。次いで自分も民家の中へと入り、塀に体を預ける。

 息を整えるため、その場にへたり込み夜中の空を見上げる。星空が星屑によって埋め尽くされている。

 

「くそっ、どうしてこんな事になってんだよ·······!」

 

 今年で18になった彼は図書館での受験勉強を終え、下校途中に地震に見舞われた。その地震では特に被害はなかったものの、何故かそこら中から挙がる悲鳴。何かと見渡せばこの蹂躙である。一瞬正気を失ったかと思ったが、全て現実。嗅いだこともない程濃ゆい血の匂いが証拠だ。

 

「アイツらは大丈夫かな·······」

 

 息を整えた彼は思い出しかのように、親友、そしてその家族の安否が気になり出したようだ。

 もし、道端に彼らの死体が転がっていた時自分は果たして正気を保つことができるのか。ただ、今は最悪な事態の覚悟をすることしかできない。

 

「よし、確認し――――――うごッ!!?」

 

 自身の背を預けていた塀が砕け散る。どうやら反対側から星屑がタックルを仕掛けたようだ。

 衝撃で吹き飛び、民家の縁側から窓を突き破り、リビングへ転がる。その際にテーブルにぶつからなかったのは運が良かったとしか言いようがない。

 

「つぅ·····。なんてヤツだよ、ちくしょう······!」

 

 モロに衝撃を受けた背中がジンジンと痛むが、このまま倒れていては無抵抗に食われるだけだ。歯を食いしばって立ち上がる。

 

 ボヤける視界がようやく見えるようになった時、目の前にいたのは大きく口を開けた怪物の姿だった。

 

「―――――――――」

 

 口から漂う血の匂い、人をやすやすと砕くその歯には髪や血肉がこびりついている。そんな光景に声すら出ず、動くことすら出来ない。

 今から喰われた誰かと同じ末路になると考えると恐怖で頭が回らない。

 

「勇斗ッ!!」

 

 ダンっ、と一本の直剣が星屑と彼の間に入るように突き刺さる。装飾剣かと思わせる程煌びやかな一本だ。

 しかし、彼はそんな剣に目もくれず声のした方に声を向ける。誰かが二階への階段からひょっこり顔を出している。

 

「宗全·········?」

 

 消え入りそうな声で親友の名を口にする。それを聞き、親友はニッと笑って見せる。

 

「フランスから持ってきてやたぜ!お前の、―――お前だけの剣だ!」

 

 その言葉を聞いて、再度剣に目線を戻す。

 

「さあ手に取れ!その剣の名は―――」

 

 指示に従うように、刺さったままの剣の柄に手を充てがう。そして、力の限り引き抜き―――その名を口にする。

 

「「ジュワユーズ」」

 

 言葉に呼応してか装飾剣であったかの剣が真の姿を露わにしていく。

 何の変哲もない直剣であったものが、波を打つような刀身に変わり、柄が黄金から空色がベースとなったものへと変わる。

 

「早速チュートリアルだぜ、気張れよ勇斗」

 

「わかってる」

 

 色変わりの聖剣と謳われたジュワユーズを両手で持ち、切っ先を星屑へと向ける。まるで聖剣そのものが星屑を切りたがっているようだ。

 呼吸を整え、地を蹴る。

 

「ッ―――!!」

 

 大きく口を開く星屑を一閃。

 上下に切り裂かれた星屑は断末魔を挙げることなく塵となって風と共に消えた。

 

「ふぅ·······っ······」

 

 緊張が解けたことにより、ほんの少し蹌踉めくがジュワユーズを地面に刺して支えとすることで何とか耐える。

 たった一匹、倒した所で何の役にも立たない。もっと倒さなければと思い、千鳥足で民家から出る。

 

「ハッ!」

 

 我先にと歯を突き立てようと迫ってきた星屑を叩き斬る。次も、また次も、その次も斬り捨てていく。

 もう誰も殺されないように、もう誰も人間性を捨てないようにするため振るう。―――先に底が見えたのは彼の方だった。

 

「っ、――やべ」

 

 唐突な背中の痛みで隙を晒してしまった。それすらも乗り越え剣を振るうが、そんな中途半端な一撃など避けられてしまい死が迫る。

 

「勇斗さん!!」

 

 目前まで近づいていた星屑が切り裂かれた。

 自身の行動による結果ではないこと、そして聞いた事がある声に目を点にして体勢を整える。が、最早限界なのか体がブレる。そして遂には立つこともままならず、倒れそうになる。

 

「っ······」

 

「勇斗さん!」

 

 それを見てか少女がすぐさま彼の脇下に入り、彼の左腕を自身の首に回して支える。

 

「すまん、助かった。琴葉は大丈夫だったか?」

 

 自身を支えてくれた少女、もとい親友の妹である琴葉に問いかける。何故剣を手にして戦っているのかを聞きたかったが、まずは安否確認だ。

 そんな話をする彼らは傍から見れば隙だらけだ。当然人食いの化物共が逃す訳がない。背後から襲おうと近づくが自身の影によって前後に裂かれた。

 

「よっと。お前ら一先ず避難所に行くぞ。話は後だ」

 

 何事もなく飄々とした雰囲気で隣に並んだ親友が目的地を決め、急かしてくる。俺達はそれに頷き、早足で避難所に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩き続けて10分程度で避難所である近場の小学校に辿り着いたのだが、既に手遅れだったようだ。

 数百年後の荒廃した光景かと見過うまでの崩れ方だ。避難所であった体育館はなんで倒壊してないのが不思議な穴が空いている。

 

「これは、どうなってやがる········」

 

「まあ妥当だな。コンクリの塀壊せるなら、ここも壊せるだろうさ」

 

「これではもう生存者はいなそうですね」

 

 人外共が成した光景に固唾を呑む。これがもし、武器を持っていない状態の自分が逃げ込んだ先だったのなら、と思うと鳥肌ものだ。

 

「まあ保険は作ってる。行くぞ、ついてこい」

 

「保険?」

 

 そう言い宗全は体育館の方へと歩を進める。それに俺達もついていく。

 

 瓦礫が体育館の床一面に落ちている。終いにはしきりに頭に粉状の何かが降り注いでいる。どうやら、今か今かと崩壊の時を持っているようだ。

 

「今にも崩壊しそうだな」

 

「危険極まりないですね。早々に立ち去った方がいいと思いますよ、兄さん」

 

「待て待て、そう急ぐなって。確かここら辺に·······おっ、あったあった」

 

 瓦礫を片手でひょいひょいと退かしながら何かを探していた宗全が目当ての物を見つけたようだ。こちらに手招きしている。

 手招きに従い、瓦礫に足を取られないように気をつけながら早足で向かう。宗全が覗き込むそこには地下への階段があった。若干瓦礫が流れ込んでいるがギリギリ通れる幅はあるだろう。

 

「地下への階段、って初めて見るな」

 

「ですね」

 

「なにしてる。ささっと下るぞ」

 

 宗全に続き体を半身にして瓦礫の横をくぐり抜ける。俺の後ろに続き琴葉もなにも引っかかることなくくぐり抜けた。

 

「貧乳は希少価値ですから」

 

「?」

 

 後ろで気を落としたような声色で呟いた言葉を無視して、さらに下っていく。

 1分程下っていると階段も終わり平坦な道となった。ここからは進んでいくようだ。無言というのもあれなので疑問を宗全にぶつけてみる。

 

「ここはお前が作ったのか?」

 

「ああ。一年前ちょいちょいのちょいでな。

 いやぁ、やっぱこういうのはロマンだよな。綺麗に階段作って、重そうな扉取り付けて―――」

 

 平坦な道が終わり、目の前に重厚な鉄の扉が現れた。高さは2mぐらいだろうか、頭をぶつけず通ることができた。

 

「こうやって巨大シェルターを作る。秘密基地って感じで男心を擽るな」

 

「マジでか······!?」

 

「地盤大丈夫ですか、これ?」

 

 目の前に突如として巨大な空間が出現した。大きさは地上にあった小学校が丸々入るであろう大きさだ。

 天井や床には光源、四隅には通気孔がつけられている。そして目測役300人の避難者が息を潜めていた。

 

「あっ、勇斗くん!」

 

 あまりのデカさに口を半開きで驚いていると前方の方から見知った女性が走ってくる。その際に大きく実ったお胸が揺れ動いて、―――いてっ。誰かが俺の足を踏んづけたようだ。

 

「久し振りです、綾華さん。ご無事そうで何よりです」

 

 彼女は二年前とある事情で出会い、とある事情で仲良くなった人である。とある事情がナンパと自殺未遂なんて他人には言えないのでよくからかわれるが至って健全な関係を維持してると思う。

 

「勇斗くんこそ無事で良かった。怪我してない?」

 

「はい、元気一杯です」

 

「嘘つくな、背中強打してんだろ」

 

「え?大丈夫なの?」

 

「だ、大丈夫ですよ。こんぐらいはへっちゃ―――」

 

「死にかけてましたよね、勇斗さん?」

 

「ええ!?早くお医者さんに見せなきゃ!」

 

「い、いえ、状況が状況ですしまずは安全確認からですね··········」

 

 くそぅ、悉く見栄が消されていった。この兄妹は俺に何かの怨みでみあるのか。思春期男子の虚栄心舐めんなよ。

 

「そうです。勇斗さんはこれから私達と未来の展望についての話し合いがあるので部外者である綾華さんとの触れ合いはここまでです」

 

「そうだそうだー」

 

「·········そうなの?」

 

「ええまぁ·······はい。聞きたい事が山程あるので」

 

「そうなんだ··········それじゃあ、また後でね勇斗くん。琴葉ちゃんも」

 

 手を振りながら離れていく綾華さんを見送り、三人で円になるように座る。話の内容はもちろん先程の出来事についてだ。

 

「お前の未来予知みたいなのはいつも通りとして、この武器は何なんだ?琴葉も持ってるみたいだが」

 

「今回の事態へのカウンターだ。勇斗の剣はジュワユーズ、琴葉のは草薙剣だな。ちな俺が渡した」

 

 ジュワユーズ·······朧げだが確か9世紀あたりでフランク国を統治していたカール大帝か振るった剣の名だな。シャルルマーニュ十二勇士の物語でも語られていたっけな。

 そして琴葉が手にしている··········?

 

「琴葉は剣どうしたんだ?」

 

 俺のジュワユーズが腰に巻かれた鞘に収納されているのに対して琴葉の草薙剣は何処にも見当たらない。

 

「私のはここです」

 

 手をお腹辺りに持ってきたと思うと、突如として剣の柄がお腹から生えてきて手に収まった。そして、そのまま剣を引き抜くと刀身が露わとなった。

 

「尾から出ずる、って聞くだろ。だからか、草薙剣は体内収納可能って訳だ」

 

「なるほど、逸話に関連してるのか。ということはこのジュワユーズも1日に30度色を変えるのか?」

 

「そんな騒がしい剣あるんですか?」

 

「物語でならあるが、どうやらその剣はないらしいな。ただ切れ味がいい、今はそんだけだ」

 

「そうか」

 

 これで疑問点は消化された。後は天から降ってきた化け物共をどうするかだ。ここにずっと籠もっていては遅かれ早かれ食糧が尽きて殺し合いが始まるだけだ。

 

「さて、こっからどうするかだな」

 

「次の行動はもう決まってるぞ。

 俺、勇斗、琴葉の三人を要として四国に移動する」

 

「なんで四国なんだ?」

 

「ここから一番近い安全圏だからだ」

 

「移動手段はどうするんですか?歩きだと日を跨ぎますよ」

 

「そこは心配しないでいい。準備してある」

 

「ほんと手際いいな」

 

 準備している物を見せるためか人混みを掻き分け、前へ前へと進んでいく宗全の後をついていく。その道中知り合いが何人かいたがどいつも死人のような顔をしていた。

 

「てことで、これが俺達の足だ」

 

 地上に上がれるであろう坂の前に止められた大型バス6台が整列していた。運転席には運転手さんが座っており、こちらに一礼してきた。こちらも一礼する。

 

「つーわけで、勇斗演説しろ」

 

「········なんで?」

 

 どういった経緯でそうなるのか堪らず聞き返す。

 

「お前ならわかる筈だ。英雄偶像というものがどれだけの希望になるのか」

 

「···········」

 

 それは、まあ解る。

 この暗い雰囲気は好ましくない。どうにかして晴らしてやりたいとは思う。だが、俺が演説してどうにかなる確証がない。誰も彼もが同じ心理とは限らない。

 

「しかし兄さん、それでは勇斗さんの―――」

 

「よしわかった、やろう。俺が希望になってやる」

 

 俺の言葉に宗全は口角を上げる。琴葉はなにか言いたげな表情だが、今は目を逸らすしかない。

 と言っても、希望になるのはほんの少しの期間だけだ。四国に辿り着いた後は忘れられるだけだろう。

 

「ほれ、マイク。あそこの台がお前の晴れ舞台だ」

 

 マイクを受け取り、宗全が指差す台に上がる。

 照明が消え、次に着いた時には全ての照明が俺に向いていた。

 やはりと言うか、ちょっと緊張する。だがやるしかない。俺の本心をぶち撒けなければいけない。

 

「すぅ、はぁ········」

 

 深呼吸、マイクに拾われたがどうでもいい。

 第一声は決まってる。いつだってこれは欠かせない。

 しっかり前を向いて、言葉を紡ぐ。

 

「どうも、はじめまして黒耀 勇斗です」

 

 名前を知ってもらう、これが一番重要だ。俺を既に知っている者から戸惑いの声が漏れ、少しどよめいているが続ける。

 

「結論から言います。―――地上を歩いている人はいません。ほとんどの人があの化け物に殺されました」

 

 この言葉に、どよめきも悲鳴も何一つ上がらなかった。静寂だけがこの場にある。絶望が押し寄せる。

 

「だけど、俺達は生きてる。

 頭も腕も足も、まだついてる。まだ戦える。まだ何かできる事がある。まだ―――足掻ける」

 

 死に物狂いで生きてきたこの三年間。初めての事の連続で失敗続きだった。それが今度はちょっと規模がデカいってだけだ。まだいける。

 そんな俺の言葉に対して否定の声がいくつも上がりだす。

 

「戦えば喰われるだけ、確かにそうだ。

 死ぬしかない、―――なら死ぬのか?違う、違うだろ········死にたくないのに死ぬんだよ、俺達は」

 

 いつもそうだ。

 死にたくないのに死んで、誰かが涙を流す。これ以上の悲劇が何処にある。叶うなら、誰も泣かないで欲しい。笑顔でいて欲しい。この願いが叶うならなんだってする。

 

「なら、命賭けようぜ。自分の命が助からないなら、近くで窮地に陥った大切な誰かを助けるために。その想いが誰かのためになるなら」

 

 胸に手を当て、心臓の鼓動を確かめる。

 ああ、―――まだ暖かい。母さんから引き継いだこの鼓動はまだ鼓動している。まだ生きてる。

 

「だから諦めるな!まだ絶望するには早い、早過ぎる!!

 希望を持て!持てない奴には分けてやれ!絶望してる奴ほ分けて貰え!だけど、絶対に後で返せよ!相手の名前と顔、覚えとけ!!」

 

 その言葉を最後に照明が落ち、全体を照らすようにして再度照明がつく。それを皮切りに活気ある話し声が聞こえ始める。

 笑い声であったり、泣き声であったり、どれも先程の声とは桁違いの生気を感じれる。

 無事演説を終われたのを確認し、台を降りる。

 

「ふぅ········」

 

 台を背にして、座り込む。

 リラックスした体勢にしてから緊張を解く。これ以上の緊張はないだろうなと思いながら、大きくを息を吐く。

 

「お疲れ様です、勇斗さん」

 

「乙、やっぱ適任はお前だったな」

 

「それなら、いいんだけどな」

 

 琴葉から水のペットボトルを受け取り、枯れそうな喉を潤す。ついでに緊張で流した汗の分も補給しておく。

 半分ほど飲み干し、ペットボトルの蓋を締める。

 

「これから十分後に全体に向けて作戦説明をする」

 

「おっ、作戦説明はお前がすんのか」

 

「わかるように言ってくださいね」

 

「わかってるわかってる。子供でもわかるよう説明してやる」

 

 という事で暫し休憩。

 俺は未だ時々痛む腰よりちょっと上辺りにサロンパスを琴葉に貼ってもらい、時間が来るまで座っていた。その間宗全と琴葉の両親が挨拶に来ていたが、俺には挨拶だけして兄妹と話していた。

 

「よし時間だ。父さんと母さんは戻ってな」

 

「頑張ってな、宗全。琴葉はあまり無理するな」

 

「はい」

 

「私達の事は気にしないでいいからね、二人共。自分達の事だけ考えるのよ」

 

「わかってる」

 

 短く話して兄妹と別れ、人混みに戻っていった。琴葉はその姿を視線で見送っていたが、宗全は目もくれず台上に上がった。

 

「ども、天才の赤松 宗全です。今からの行動を説明する」

 

 照明は変わらず、全体を照らしいてる。

 真顔で自身の事を天才と紹介する宗全に、人々は怪訝そうな顔をするが事実なため俺達はどうすることも出来ない。というか、アイツがいなければ俺は死んでいたため感謝しかないが、絶対に本人には言ってやらん。

 

「俺の後ろに見えているだろうが、このバスにこれから乗って安全圏である四国に移動する。

 要する時間4時間弱。山口、広島を通って愛媛に入る。その間の護衛はさっき演説をした俺の親友の勇斗、家の妹の琴葉、そして俺がやる」

 

 宗全の紹介に頬を掻きながら立ち上がり、琴葉と並んで顔を見せる。

 

「あの化け物共には普通の兵器は通じない。だが、勇斗や琴葉が持つ神聖を秘める武器は有効だ。ただし、担い手を選ぶという我が儘な武器だが········まあ簡単な話、この二人と例外な俺しか戦えないってことだ」

 

 例外な、の説明に関して言えば宗全だからと言えない。本当の本当にアイツは不思議な存在ではあるが、良い奴だ。疑う必要はない。

 

「出発は五分後。それまでにトイレは済ましておくように。前に携帯トイレあるからしたい奴は取りに来い。移動中にしたくなっても止めないからな。漏らしてもらう」

 

 その言葉は説明会は終わり、宗全も台から降りる。そして、こちらの方を見て一言。

 

「な?わかりやすかったろ?」

 

「珍しくわかりやすかったな」

 

「そうですね。稀に見るわかりやすい説明でした」

 

「拳骨落とすぞ、お前ら」

 

 そんないつものような会話を最後に切り替える。ここからは踏ん張りどころだ。気を引き締めていかないといけない。

 

「さてと、俺達は出口の掃除に行くぞ。トイレしたいなら今の内にしとけ」

 

「俺は大丈夫だぞ。琴葉は大丈夫そうか?」

 

「デリカシー!何処に落としたんですか、ほんとに·········大丈夫です」

 

「よし、上がるぞ」

 

 運転手に5分後全員を乗せて上がってくるように言い、三人で坂を上がる。緩い傾斜で滑るということはないが、中々に疲れる。それを5分間歩き続けているとシャッターが見えてきた。

 

「人一人分しか開けないからな」

 

 化け物共が入れないようにするため、匍匐前進でようやく通れるぐらいの隙間が開けられる。

 そこを宗全、俺、琴葉の順番でくぐり抜ける。運良く出待ちはされていないようだ。

 

「20······だいぶ減ったな」

 

「そりゃお前が100も切ったからだろ」

 

「え、そんな切ったか?」

 

「なんならもっと多かったかもな」

 

「なに怪我した体で無理してるんですか?」

 

「無我夢中だったし·······はい、すんません」

 

 ジト目に負け、素直に謝る。てか、なんで俺は謝罪してんだ。何も悪いことしてないと思うんだけど。

 と、会話もそこそこに構える。

 遥か高くを浮遊していた化け物共が俺達に口を大きく開け接近する。

 

「ッ―――!」

 

 ジュワユーズを抜刀、口ごと切るように振り上げる。目論見通り十字のように裂けて、消えていった。

 続けざまに迫る化け物も斬り捨てる。

 

「ふんっ!」

 

 横目で琴葉の方を確認するが、 難なく処理できているようだ。

 というか草薙剣って、とんでもないネームバリューだな。日本人であれば100人に聞けば100人が知ってると答えそうだ。

 次に宗全の方を横目で確認する。

 

「随分楽勝そうだな、勇斗」

 

 片手間に素手で処理しながらこちらの行動を把握している宗全に余計な心配だったと思い、視線を正面に戻す。

 

「ん?引いて········おうマジか」

 

 突然化け物共が引いたかと思えば、漂っていた化け物が1箇所に集まりゴネゴネと混ざり合っていく。それはまるで新たな何かが産まれようとしていた。

 

「粘土でしたか」

 

「まあ、あのままやっても俺達には勝てないしな。いい判断だと思うぜ」

 

「言ってる場合か。明らか種としての進化だろ、アレ」

 

 そんな会話をしていると整形が終わったのか、元の化け物の10倍程の大きさになった。しかも、マシュマロのような形から変わり、天秤の片方がないような形になっている。

 

「まだまだ不完全って訳か。

 勇斗、隙を作れ。俺が砕く」

 

「OK」

 

 地を蹴る。

 それに合わせて片方の分銅を振り回して攻撃しようとするが、俺はそれを横に飛んで避け分銅と繋がる細長い糸のようなものを断ち切る。

 

「今だ!」

 

「ライダーキック」

 

 俺の合図で高く飛び上がった宗全は謎加速でドロップキックを繰り出し、天秤の支点となる場所を砕いた。

 支点を壊された天秤は体がバラバラになり、元の化け物が溢れ出した。

 

「完全に融合した訳じゃないのか!?」

 

「まとめて倒せる訳ではないみたいですね」

 

「だるいな」 

 

 溢れ出してくる化け物を斬って、斬って、殴って潰していく。2分程続けていると溢れてきた化け物全て倒しきり、一先ずの安全圏を作ることができた。

 

 一息ついていると後ろのシャッターが大きな音を出しながら上がっていく。上がると共に光が漏れ出てくる。

 

「本番はここからだな」

 

 シャッターが上がり切った先には予定通り、エンジンを吹かすバスが出発の準備を万端にしていた。

 

「宗全様方はお乗りになりますかー?」

 

 先頭車両の運転手が窓から顔を出し、こちらに問いかけてくる。

 そう言えば俺達はどの車両に乗るのかを聞いてなかった。作戦立案の宗全に視線が集まる。

 

「俺達はバスの上に乗るから大丈夫だ!」

 

「え?」

 

「は?」

 

「わかりました!」

 

 運転手は宗全の言葉に頷き、窓から出していた頭を戻して窓を閉めた。

 今、宗全はなんて言った?バスの上?時速40kmで走行するバスの上に立って護衛すんの、俺達?

 

「さっさと上がれ。時間ないぞ」

 

「〜っ、だあもう仕方ねえ!」

 

「正気を疑います」

 

 1分1秒が惜しい現状なため疑問や怒りを抑えて一番に昇り、琴葉の手を握って上に引き揚げる。最後に宗全が一飛びで上がった。

 

「出発していいぞー」

 

 宗全が運転席の窓を叩いて、指でOKを作って合図を送る。すると、俺達に慣性の法則による一撃が入れられた。

 まあ、初めてバスの上に乗る体験にワクワクしてる俺がいる。

 

 楽しみつつ周りに警戒していこう。

 

 

 

 

 

 

 

 





 以上!2日遅れのエイプリルフールを終わります!続きません!好評だったら続くかも?
 次回は200話記念上げる予定です。

補足
・勇斗はカリスマCを自前で持ってます。

人気投票をしようっ!←バカに付き合って下さい。お願いしますっ!

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