草薙剣には次の伝説がある。
・十拳剣を欠けさせた。
・ヤマトタケルノミコトを危機から救った。
この他にもあと何個かあるが、ここではしまっておこう。だが、伝説には悪い話はつきもの。当然草薙剣にも·····
※この話での草薙剣はfgoとは関係はないです。
✕月✕日
今回も誰も欠けなかった。無傷とはいかなかったが、まぁ良しとしよう。タマと杏はもう戦えない。俺も以前のようには戦えない····。草薙剣はあと何回使用出来るのかは分からない。だが残り少ないと思う。これからは温存して天の神を倒すために使おう。例え、俺がそれで死んだとしても。
目前に広がる白い点々。数はわからないが凄まじい物量だ。大侵攻よりかは幾分マシだが、これに進化体が加わると話は別。死闘を覚悟しなければいけない。
「今回も多いな····」
「だな」
若葉のボヤキに頷きながら、いつもの抜き身刀を握る。刀身の輝きに一切の曇りはない。
「今回は切り札の使用を控えて戦う·····それでいいな杏?」
「はい。切り札の影響でどんな変化が起きてるか、今はわかりません······でも、何だか嫌な感じがするんです」
「変化か。·····そういえば、士郎は最初の頃から大分変わってるような気がするな」
「俺か?」
俺は切り札使った事ないんだけどな。そもそも精霊もいないし。もしかして勇者システム壊れてる?
そんな事を思いつつ過去を振り返る。が、自分としては変化はないように思える。
「うん。最初は『ハッ!』『セイッ!』って感じだったのが『おらぁ!』みたいな叫んでる····怒ってる感じがするな。」
「う〜ん····そういうのは意識しねぇからなぁ」
高嶋の答えを聞き、戦闘中を思い出そうとするが、あまり記憶はない。我武者羅にしていると中々記憶は残らないものだ。
「たしかに戦ってる時の士郎は近寄りにくいぞ」
「すまんが、慣れてくれ」
そんな風に見られてたのか······諏訪の時みたいに上がったら駄目だな、こりゃあ。
「話しはここまでにしておくか」
「そうだな。――っ、構えろ!」
意識を切り替える時間など与えないとばかりの星屑による一斉攻撃。一心不乱に突撃していき、神樹へと走る。
「ッ――!」
「言われなくとも····っ!」
星屑共がラッシュをかけてくるか·····同タイミングで仕掛ける量は過去一だな。
正面から来る星屑を刀で仕留める。限界になってしまった刀は地面に突き刺し、次を取り出す。
「一匹も通さない····っ!」
「うじゃうじゃと、気色わりぃな」
通り過ぎていったものは無視しろ。前だけに集中しなければ終わる。杏とタマを信じ、そして負担を減らすために正面からの星屑を潰せ。
「うぉっ!」
「きゃっ!」
「寒っ····!」
「この冷気は····!」
「あんず!?」
「みなさん!あまり動かないで下さいね!」
吹き荒れる風―――いや、最早これは吹雪。星屑を氷像とし、地面へと落下させる。もちろん脆い氷が落下の衝撃に耐えれる訳がなく砕け散ってしまう。
杏の切り札か······使わないようにって言った本人が使うとは·····だが、これで数を減らせればいいんだが。
「使ってよかったのか!?」
「これが初めての切り札なのでみなさんより危険は少ない······筈です」
「それなら良いんだが·····」
視界を確保出来ないからあまり使い勝手がいいとは言えないな。だが、これで今来てる星屑共は―――
「よし、これで·····っ!!?」
吹雪が明けた先には進化体が三体。吹雪から身を守るため、同族達で一つの塊として形を成したのだろう。何たる生命の尊さ。でも、それはお前達が魅せるものではない。
「進化体か」
「それも三体·······っ、切り札を使うぞ!」
「あっ!待ってく―――」
「私も!」
「····殲滅する」
進化体、それも三体いるというのに切り札を使わない。それは自殺行為である。なら、明日を迎えるためにも切るしかない。それで、例え何かを失ったとしても。
「短期決戦でいくぞ」
「私に続け!―――ハァーッ!」
「うん!」
「―――ッ!」
全員で進化体へと攻撃を仕掛けていく。向こうでタマも切り札を使用し、進化体へと向かっている。この調子なら―――
ドゴッ
―――堕ちた。タマの輪入道が落とされた。コレは不味い。どうする!?俺が援助に向かってこっちが負けたら?
―――考えろ。最善の手、最善、最善を·····!!
<シロー!!刀ぁぁ!!!!
「破却、―――収束」
全てはこのために。たった一刀、だがそれは全てを裂く一撃を放つ至高の一刀である。即ち、―――
「さっさと、くたばりやがれぇぇ!!」
ドガァッ
「俺がタマの方に行く!若葉達もそいつ倒したらすぐに来てくれ!」
「わかった!無理するなよっ!」
「わーってる!」
あの一撃じゃあ完全に倒しきれないだろう。そこは若葉達が何とかすると思うから····あと二体。タマ達が危険だ。どちらか片方が受け身が取れない状態で落ちている。速く向かわないと―――――!
「タマーーっ!杏ーーっ!」
見えた!あれが···タマ達を落としたヤツか···!こっちに狙いを変えさせねぇと···!
「―――うおぉらあぁ!!!」
手に俺の身長程の大剣を出し、奥歯が砕けるぐらに噛み締めて振るう。これで終わればいいんだが····無理だよな。
一分やそこらを稼げる程の損害を与えることは出来た。だが、それまでだ。仕留めるには届かなかった。
「タマ!杏!無事か!?」
「あぁ。タマは無事だ。でも···杏が気を失ってる」
「良し。それなら、タマは杏を抱えて後退するんだ。分かったな?」
「····無理だ。足がもう·····士郎が杏を抱えて逃げてくれ····」
「はぁぁ!?何言ってんだ!??意地で走れ!!杏を守るんだろ!?」
いつも言っている言葉は結局口だけなのか。いや、違う。あの言葉はタマの全てだ。例え、自身が骨になったとしてもやり遂げる。
「······ッ····」
「タマ!!」
ヤバい···!そろそろ進化体が起き上がってくる···!
もう時間はない。ここで三人死ぬか、それともタマと杏が逃げ切り······俺が―――
「ゆっくりでいい···這ってでもいい···杏を連れて逃げるんだ·····タマ。俺が絶対に時間を稼ぐからさぁ!!」
少女は知ってしまった。元から知っていたのかもしれない。目の前で叫ぶ少年が誰よりもバカであることに。
ここで二人を逃がすために一人で足止めをする。その行為が意味することなど誰にとっても明白。必ず彼は死に絶える。
「······っ゛、士郎あの棘には毒がある。絶対に当たるなよ。」
「···あぁ!――あぁ!!あんなヤツに俺が負ける訳ないだろっ!」
「···頼んだ、士郎」
少年は決断した。自身の失敗の代償を彼に預ける。たった一欠片であっても、彼が生き残ることにかけることを。
杏を肩に抱え、右足を引き摺りながらもゆっくり進んでいる。――――後は俺もいい感じに離脱するだけだな。
「――――?」
ようやく、体を起こしきれた進化体へと目を向ける。
·····何か違和感がある。何か矛盾点があるような、何か――――――――くそったれ!!!
「ッ!」
間に合え、間に合え!!もっと足を回せ!!
タマの近くの地面がボコッと盛り上がっている。まるで何かが突き破ろとしているような。―――――進化体の一部、1mm掠るだけでも麻痺させる猛毒の棘が少女達へ迫る。確実にタマと杏の命を奪う軌道だ。
「タマァァァぁ゛゛!!」
叫んだとしても距離は埋まらない。足を動かさなければ距離は埋まらない。―――知ってる。だから間に合ったんだ。
「――――うっ!」
よし!これでタマと杏は無事だな。後は俺が腕を引っ込めるだけ―――あぁ、間に合うわけもねぇか。
「ぐぅ゛う゛あ゛ぁ゛!!――――う゛、あぁあ゛ぁ!!」
棘が左腕を貫通する。この棘には毒がある。この接する面積からして致死量の毒が入る。
―――ここで俺がすべきは、毒が回る前に腕を落とすッ、〜〜〜〜〜っ!!!
自身の手によって切り離された腕が宙を舞い、地面へと落ちる。たったそれだけの動作だったと言うのに永遠にも思える時間が流れたような気がした。
「ハァー····ハァー····っ゛!」
痛みで視界が揺れる。疲れる筈のない肉体が酸素を欲する。考えるまでもなく異常事態。これが欠損による痛みなのだろうか。
「士郎!!」
「なにやってる!!!さっさと杏を連れてけ!!」
「でも―――!」
「いいからっ!」
「ッッ·····うぁあぁああ!!」
それでいい······左腕は肘から先を失ったが、まだ右腕がある。負けているが、まだ負けちゃいねぇ···!
右腕の裾を破り左腕の出血口を口と右腕を使って強く縛っていく。これで失血死の心配はなくなった。だが長くは持たない···なら一瞬で終わらせる。
―――胸の内から取り出す。
「この剣で死ねる事、誇りに思えよ―――怪物」
草薙剣―――出した瞬間、俺の勝利が決定した。
「はいっ逆転――――」
この剣の真価は負けてる時に発揮する。特性は逆転。――どんなに負けてようが勝ちになる。どうして勝ったとかどうして負けたのか。そんな原因はいらない。逆転する。それだけだ。
「俺の――勝ち―····――だ·―な」
後は――――若葉――達が―――なんとか――して―くれ――る。
「―――――――――」
「――――はっ!」
一定間隔を刻むピッピッという音が聞こえる。病院か···俺は意識を落としてたのか·····。
「!――士郎、起きたか。···痛い所はあるか?」
「タマと杏は!?」
「二人共無事です。今は寝ています。」
「そりゃあ良かった·····」
「こんな時でも変わらないな。まずは自分の心配をしてくれ·····」
「ん?····あぁ、左腕ね····まぁ利き腕じゃないからセーフの部類だろ」
「欠損にセーフもアウトもありあますか?」
「はぁー·····何か必要な物はあるか?」
「そうだな····俺の部屋から勇者御記を持ってきてくれないか?机の上に置いてるからさ。···あっ、中身は絶対に読まないでくれよ·····。」
「それぐらいはお安い御用だ。すぐ戻る」
「おう。気をつけてな」
···········
「さて·····タマと杏の状態は?」
「タマさんの右足は複雑骨折です。完治するかはわかりません。·····もし、完治したとしても元のように歩けるかどうかは本人の覚悟次第です。」
「じゃあタマは大丈夫だな。杏は?」
「ほとんど無傷です。ですが精神面が·····」
「そこはタマがいるから大丈夫だな。」
「······何で、大丈夫だと言えるんですか····?」
何で·····か、そんなもん決まってんだろうに····
「――アイツらが勇者で····最高に格好いい奴らだからに決まってんだろ?」
「····そうでしたね。それなら大丈夫ですね」
「それで?ここにいない友奈と千景はどうした?」
「千景さんは検査を受けた後、寮に戻りました。友奈さんはその付き添いです。····大分衰弱してたように見えたので·····」
「それはいい判断だな。」
千景は恐怖に勝てるだろうか····いや、大丈夫だ。
「――――戻ったぞ!」
「···速いな···あと、病院では静かにな····」
「あぁ。すまない····つい···そしてこれが頼まれた品だ。」
「おっ、助かるよ。ありがとな」
さて、今日の分を書くとするか。
「····覗かないでくれよ?」
「わかった。」
「もちろんです。」
片腕で書くの初めてだからな····こりゃ時間がかかる。ゆっくりと書いていくしかないな····。
「よし·····それで若葉は俺に何か用があるのか?」
「―――――」
「あれ?」
「若葉ちゃん····寝ちゃいましたよ。」
「Zz〜〜、Zz〜〜――――。」
デジャブを感じる。
「なんか用があったとかじゃないのか·····何のために俺が起きるのを待てたんだ?」
「心配だったんですよ····」
ひなたがそっと若葉に毛布をかける。
「それだけの理由でか····?」
「そうですよ。·····嫉妬しちゃいそうです。」
「······そうか。」
仲間思いだな。流石、勇者のリーダーだな。
「あっ。そうだひなた、一つ頼めるか?」
「はい。なんですか?」
「もし、俺が死んだら――――」
「嫌です。」
「―――まだ、何も言ってないんだが?」
「冗談でもそんな事、言わないで下さいね。」
「········冗談じゃねぇんだけどなー」
「いいですね?」
「あ、あぁ。わかった····」
「士郎さん、今は体を休めるべきです。すぐに寝て下さい。」
「·····そうだな。じゃ俺は寝るから····おやすみ。」
「はい。おやすみなさい。」
動けるようにまで早く回復しねぇとな。よく食って、よく食べる。これが一番の近道だ―――
補足
・草薙剣の真価は完全にオリジナルです。あまり深く考えないで下さい。
悪い伝説にはこんな話がある。見ると祟り殺されという―――――まぁ、誰も見てないんですけどね。
100話記念はなにがいいですか?
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天の神打倒RTA[御影、⬛⬛、シャルル]
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のわゆの後日談[西暦勇者、知らん奴]
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誰かとの√[シャルル、誰か]
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その他(感想へゴー!)