誰だって醒めた夢を見続けようとするもんだよ。
「········」
何もない空間でぼーっと空を見上げる。空と言っても、変な模様の天井のようなものであり、いつも見る空とは決定的に違う。
「俺·····勇者じゃないんだけどなー·····」
此処に来るのは三回目だ。一度目はこの世界に来た時。二度目は⬛⬛ ⬛⬛に会った時。
⬛⬛が言うには、死後の勇者が来る場所のようだ。
「·········」
自分の体を見る。前回は確認していないからわからないが、今回はシャルルマーニュとして来たようだ。
まぁ、体はスケスケだけどな。
「この、音······鳥か?」
翼が羽ばたく音がする。集中して聞くと、どうやらこちらに近づいて来ているようだ。
「········」
なんか······俺の頭上辺りでくるくる回転し始めたんだが?仲間に餌があることでも伝えてんのか?
「―――!」
突如として目の前に魔法陣のようなものが表れ、青く光り輝く。妙な既視感を覚える。
「この感じ······まさか?!」
生前、俺が何度も見た輝きだ。いつも俺にドキドキとワクワクを与えてくれた。虹回転ですり抜けた時の絶望感を今だに覚えている。
「ぐっ―――!」
目を開けれない程の輝きがこの空間を満たす。
「―――いやぁ、なんとか来れたな。」
「·········。」
この声、この姿·······間違いない。
「アンタがシャルルマーニュつぅー奴で間違いねぇか?」
「そういうアンタは御影 士郎で合ってるか?」
「おっ、俺を知ってるか。なら、話しは早ぇ。ちょいと着いてきて貰うぜ。」
四国の大英雄、御影 士郎。写真で見た通りだ。生前の俺、だいたい中学三年の時の体格だな。違うところと言うと、服装だろうか。袴のようなものを着ている。
「っと、その前に······おーい!降りてきてくれ!」
空を飛んでいる青い鳥へと叫ぶ。人の言葉がわかるのか素直に下降し、御影の肩に停まる。
「ん〜?なんか、どっかで見たような······」
青い鳥をじっと見つめ頭を悩ませる。それを見た鳥がクチバシを使い御影を攻撃する。
「嘘!嘘!冗談だって!だからツンツンすんな!地味にいてぇから·······ったく。久しぶり、若葉。いつの間にかちっこくなってんな。」
「!?」
若葉!?乃木 若葉のことだろうか······いや、俺が知る乃木 若葉は人間だ。鳥じゃない。
園子の先祖は鳥だった······っと。メモメモ
「幸せな人生を送れたか?······それは結構。ん?友奈が·········まぁ、友奈の性格だしな。じっとは出来ねぇだろ。その後、千景は大丈夫だったか?·······そりゃあ良かった。」
どうやって鳥と意思疎通してるのか気になるが······ここは割り込まないようにしよう。きっと、三百年ぶりの再開なのだろう。積もる話がたくさんあるだろうしな。
「へぇ〜、ひなたが·······アイツはお前のためならなんだってするしな。いつも通り、いつも通り。タマと杏はどうだ?」
上里 ひなた。あの上里 柚葉の先祖か。なにをした人なのかイマイチわからない。情報が隠されたかのように見つからない。わかるのは一点のみ。巫女だった、それだけだ。
「······ハハっ!やっぱ、俺より大きくならなかったか!おっと、タマに怒られちまうから笑ったのは黙っといてくれよ?」
········神樹の内部、それか英霊の座に勇者の魂でも集められんてのか?そんな感じの言い回しが多いな。
「杏は変わりなし、っと········まっ、杏らしいな。次会ったら外に引っ張り出してやるよ。そう伝えといてくれ」
本当に········楽しそうだな。
「おぉー!そいつはめでたいな!······いやいや!俺じゃないって!そんな仲じゃなかったし·······神樹がなんか細工したんじゃねぇか?」
今度はなんの話しをしてるのだろうか。神樹関連についてだとは思うが········
「······二本か。これからも若葉が管理しといてくれ。まっ、どうせ使えるのは、そこのシャルルマーニュぐらいだろうがな。」
「·······?」
俺が使う·······?なんかの武器か?
「よし、話しはこれぐらいにして········すまねぇ、待たせたな。」
「俺は大丈夫だぞ。いくらでも喋っといてくれ」
「そうはいかねぇよ。俺は一時的に顕現してるだけだからな。さっさと要件片付けて戻んねぇと。」
まさかこれ······単独顕現じゃね?いや、今考えるのはよそう。
「このままバビュンとアンタを連れて戻りたいところだが·········どうやら、迷子の奴がいるみてぇだな。まずはそこに行くぞ。」
「わかった。」
こんな場所で迷子するって·······どういう奴だよ。
「やっぱ、そっくりだな。土台が同じってだけでここまで似るもんかねぇ·······」
「迷子って······友奈かよ。」
まだこちらには気づいていない。俺みたいにすけすけではないが·········なんか、フヨフヨしてんな。
「アンタはあっちからは見えない。だからって、変なことはすんなよ。」
「りょうか―――えっ?」
ちょっと待て·······なんで、俺は見えないんだ?
「アンタは完璧に死人だが、あの友奈は言わば幽体離脱してる状態だ。体が生きてるにも関わらず、死んだと誤認して魂がここに来た。だから、本当の死人であるアンタは見えない。」
「そういやー、死んでたな·······俺。」
完全に忘れてた。ついつい、夫婦漫才で和んであやふやにしちまってたな。
「おーい!そこの友奈ッ!」
「えっ―――あ、はいっ!」
高嶋 友奈と結城友奈。名前が同じという共通点しかわからないが·······土台が同じのようだ。土台がなにかわからんけど······。
「ここはお前みたいな生きてる奴が来る場所じゃねぇよ。さっさと帰りな。」
「私も帰りたいんですけど········どうやって帰るかがわからなくて·······」
「この青い鳥が道案内してくれるってよ。帰りたかったら、必死についていくんだな。」
そう言うと、青い鳥は御影の肩から羽ばたき、俺達が来た道を戻っていく。
「あっ、待って!」
青い鳥を追い、俺の横を走り抜けていく。
「よしっ。これで此処での要件は済んだ。次に行くぞ。」
「次······?」
場所を変えるのか?でも、ここ以外に俺が行ける場所って·······
「手を」
「おう。」
差し出された手を掴む。
「――――!」
景色が一変する。
先程いた殺風景が王宮かのような場所に変わる。
「おっ、それがアンタの本当の姿か。聞いてた通り俺にそっくりだな〜」
「······いつものに戻ってる。」
自身の格好を見ると、シャルルマーニュの霊基ではなくなり生前の姿になっている。身長は俺の方が何cmか高い。と言っても2、3cm程度だが······グスン。
「てかここは何処なんだよ?」
「天の神の中だ。又はガイアとか言う、よくわかんねぇヤツの英霊の座?っていう場所らしい。俺はあんまここには詳しくねぇよ。多分、アンタの方が知ってんだろ。」
「あ〜·······オッケー。だいたい把握した。」
俺の推測は正解だったな。
此処は多分、カール大帝の座なんだろう。そして、此処に俺を呼んだ理由は·······
「んじゃ、こっからは一人で進んでくれ。」
「わかった。」
「餞別になるかもだが·······この一刀を持っていってくれ。献上品にしてもよし、戦闘に使ってもよしの最高品だぜ。俺の自信作だ。」
何処からか刀を取り出し、手に握られている。エミヤの投影魔術が頭に浮かぶが·······違う類いのものだ。
「ありがたく使わせて貰う」
「健闘を祈るぜ」
御影に背を向け、一人で黄金に輝く扉の前に立つ。これを開けた先にはあの人がいる。考えるまでない。
「―――」
両手に力を込め、扉をゆっくりと開けていく。
「っ·····!」
一歩踏みしめると同時に重圧がかかる。だが、負けじと歩を進める。
誰か立っている。黄金の肩当。たなびく白髪。そして、この王たる風格。やはり―――
「―――カール大帝······っ。」
ゆっくりとこちらに振り向く。それだけのちょっとした動きなのに目が引き寄せられる。
「いかにも。余がカール大帝である。」
対面すると、先程の数十倍の圧がのしかかる。目線を反らしそうそうになるが、なんとか維持する。
「我が栄光の前に膝を屈せ、歓喜の涙を流せ。それとも、恐れをなして逃げるか?」
「いやだね。俺は屈服するために此処に来たんじゃない。そして、俺はアンタに恐怖なんてない。」
「ほう······それではなにがあると言うのだ?」
「敬意と尊敬、それだけだよ。」
それ以上もそれ以下もない。
カール大帝の栄光を前にして、目を細めることはあっても、それに恐怖を抱くことはない。俺は心の底から凄い人·······いや、これでも表せないな。言うならば······俺が目指すべき星、ってところか?
「フッ―――ハッハッハ!!」
「なんか笑えるところでもあったか?」
急に笑い始めたんだけど·······情緒不安定か?
「いや、すまない。少々勘違いしていたようだ。」
「勘違い······?」
「
「あー······まぁ、実際そうだしな。」
カール大帝の言ってることは正しい。
「いいや、違う。貴様は
「でも、此処に来るには多くの出会いと奇跡がなければ不可能だった。」
「奇跡と出会いは、その者が正しき道を歩んだ証拠である。全て貴様の行動あってのものだ。」
「正しき道········例え、俺が間違っても皆が戻してくれる。だから俺は正しい道を選べたんだ。」
「ふむ。良い仲間、良い友人に恵まれたようだな。」
「あぁ·······ほんとうに、そう思うよ。」
ニ年間とは思えない程の人生だったな。後悔はあれど、間違いとは思わない。そんな幸せな人生だった。
「戯れはここまでにしておこう。さぁ、述べよ。貴様が此処に立つ理由を」
「―――」
立つ理由。今話すには曖昧だ。意思を固めなければ、即座に見抜かれる。それだけは阻止しなければいけない。
「カール大帝······アンタはこの世界についてどう思う?」
「
「それを、良しとするのか?」
カール大帝の言葉からは悔しみや怒りを感じられない。王、故の言動かもしれないが、俺は本心が知りたい。
「元より戦争に良いも悪いもない。そも、結界の中でのうのうと暮らしている人々を見たか?誰一人として、救済を求める者はいない。」
「維持のために俺達より一回りも小さい子達が命をかけて戦ってるのにか?」
「誰かが強制しているのか?誰かを人質にされているのか?········違うだろう。あの力を使えば結界を壊すなど容易い。事実、此度の戦いの要因は勇者による壁破壊が原因だろう?」
「·········」
カール大帝の言ってることは全て正しい。だけど·····なにか足りない。本当に大切なナニかが·····
「貴様は最初から全て理解しているだろう。人類に未来はない。生贄を出し続け、早三百年。成長せず、ただ衰退していくのみだ。」
「勇者は、人間なんだ······凹むし、泣くし、怒るんだ。でも、大切な人のために、いつも、全力、···なんだよ。」
「御影 士郎という勇者を超える者は今だ誕生していない。そればかりか、人々は自身が助かるために御影 士郎を火の海へと落とした。貴様はコレを看過出来るか?」
「看過する。」
「ほう。」
「三百年前のことなんて俺は知らない。今を生きる俺には一切関係ないことだ。」
そんなこと考えてる暇あったら、違うことについて考えてたほうが有意義だろう。
悲劇だと思うし、感謝もする。だが、それとこれとは話しは別だ。
「そもそも、カール大帝も知ってんだろ。人間は善悪両方を孕むものだと。どちらか片方に吹っ切れてる奴、どっちもどっちの奴······様々な奴がいる。だからこそ、戦い続けるんだよ。いつの時代もな。」
「········ああ、そのとおりだ。だが、人間は脆弱で悪に染まりやすい。いつの時代も善人が地獄を見る。世界はそのように出来ている。」
「俺はそれを認めない。努力したのに報われないなんて悲しすぎるだろ?」
「尊い志だな。しかし、貴様の手が届く距離は限られている。」
「そこが問題だよな〜。俺一人じゃなにも出来ないし、行動出来ない。完全に力不足だ。」
「であればどうする?」
「そんなの決まってる。」
俺一人で無理ならば、言うことは一つ。
「俺に力を貸してくれ、カール大帝」
カール大帝、あるいはシャルルマーニュ。神聖ローマ帝国初代皇帝。ヨーロッパの父。もう、ほんっっと凄い人です。テストに出るので覚えて帰って下さい。
100話記念はなにがいいですか?
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天の神打倒RTA[御影、⬛⬛、シャルル]
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のわゆの後日談[西暦勇者、知らん奴]
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誰かとの√[シャルル、誰か]
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その他(感想へゴー!)