気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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 やっぱ、防人組は強いな。シャルルに勇士達を出させるとは·······てか、あれ出さなかったら普通に食らってたような········。



違和感

 

 

 

 

 剣山から家へと一直線に戻る。当然、霊体化した状態でだ。行った時同様、数十分で帰ってこれた。鍵を開け、家へと入る。

 入った瞬間、玄関があるべき状態ではないことに気づいた。靴が七――六足ある。しかも、通学用の

 

「まさかな·······」

 

 今の時間は授業があってる時間だ。銀と園子は既に学校に行って、授業を受けているだろう。

 その筈、なんだけど········うん、完全にいますね。楽しそうな話し声が聞こえるもん。この感じ、多分勇者部全員集合してますね。いや、なんで?

 

「今帰った」

 

「おっ、シャルじゃん。おかえり」

 

「おかえり〜」

 

「あっ、シャルくん。お邪魔してるね」

 

「お邪魔してます」

 

「不良部員が帰ってきたわねぇ·······あ、この煎餅中々良いわね」

 

「お邪魔してるわよ。この家、煮干しとサプリが置いてないけど栄養足りてんの?」

 

 前四人は丁寧に挨拶してきてんのに、後二人で台無しなんだが?

 

「風と夏凜は勝手に漁るな。」

 

「銀に許可貰ったんだからセーフでしょ」

 

「私はただ、必需品があんのか確認しただけよ」

 

「煮干しは必需品かもしれないが、サプリは必需品ではない。」

 

 家庭によっては煮干しを味噌汁作るときに使うかもだが、俺は使わない。うちは昆布とかつお節が主流だ。銀は使っていたようだがな。

 

「そんなことよりもだ。何故、学校に行かず俺の家で現を抜かしている?」

 

「学校に向かってる途中に銀先輩と園子先輩が集合、ってチャットで送ってきて······」

 

「それで、アタシ達は方向転換してここまで来たってこと」

 

「私もそんな感じね」

 

「私はそのちゃんに連れられてかな」

 

 なるほど、なるほど。つまり、銀と園子だな。

 

「弁解を述べよ」

 

「ぇ、え〜っと·······園子、頼んだ!」

 

「ふっふっ、任せ給えよミノさんくん。ということで、じゃじゃ〜ん!」

 

「ミノさんくん········?」

 

 多分、最近放送されてる探偵系に影響されたんかな?そんなことよりもだ。

 園子がじゃじゃーんとした方向に目を向ける。そこには一つのアタッシュケースが置かれている。

 

「私達が来たときからあるけど、中身はなんなの?」

 

「それじゃあ開けるね。」

 

 そう言い、園子がアタッシュケースについているロックを外していく。そして、遂に開かれる。その中身は―――

 

「ふうむ········」

 

「これって、私達のスマホ······だよね?」

 

「勇者システムが入ってるヤツね·······」

 

「これがあるってことは·······っ。」

 

「··········」

 

 七つつの窪みに俺達が以前使っていたスマホが置かれて·······ない。一つだけ既に抜き取られている。

 皆、それぞれの反応をしているが、銀一人だけは歯痒そうにスマホを見つめている。

 

「安芸先生に頼んで持ってきてもらったんだ〜」

 

「でも、なんか·······一つだけ空いてるわよ?設計ミス?」

 

「ん〜?私もこれはわからないかな〜」

 

 七個のスマホ。それは勇者システムが七個必要だったことを意味している。夏凜と銀で一つと考えると、勇者は八人いたということになる。

 

「今から名を呼び上げる。」

 

「急にどうしたのよ?」

 

「シャル先輩····?」

 

 この家に入ってきた時もそうだった。俺は六足の靴を見て、七足ではないと思った。それはつまり、普段は七人だったことを俺の深層心意が伝えようとしているということ。

 粗捜しになるかもだが、なにも行動しないよりは断然良い。

 

「風」

 

「え、えっ?なに、私試されてる?」

 

 いつもと変わらない。

 

「友奈」

 

「はいっ!」

 

 いつもと変わらない。つまり、いつも友奈は元気ということだな。

 

「っ、········樹」

 

「え、ぁ、はいっ!」

 

 言葉が詰まってから、樹の名前が出た。ここだな。

 友奈の隣に誰かいた筈なんだ。誰か······誰なんだ?

 

「神樹館組いくぞ」

 

「ばっちこーい!」

 

「間違い探しなら任せて」

 

 少しでも枠を狭める。にしても、この違和感······人がいないことに対してのものではない感じがする。

 もっと遠く······絶対に手が届かない位置から感じる。

 

「園子」

 

「は〜いっ!」

 

「銀」

 

「ちっす!」

 

「·········シャルルマーニュ」

 

 違和感は常にあった。神樹館組は四人の筈だ。

 遠く·······遠く·······オッケー、理解した。

 

「一旦俺から離れろ」

 

「?わかったわ」

 

 風先輩に続き、ドンドンと皆が離れていく。なんだか、俺が臭いみたいになっているが、決してそうではない。そうではない··········うん。

 

「―――聖なるかな、か」

 

「「「っ·····!?」」」

 

 全てのスキルを限界まで引き伸ばす。そう、全てだ。

 魔力放出、聖騎士帝、王道踏破は〜········上がってる感じはしないな。

 これで、天の神か神樹からの影響は―――ッ!?

 

「ッ·······!」

 

「「「シャル(くん)!?」」」

 

「ちょっとアンタ!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

 突如として頭に猛烈な痛みと共に記憶が流れる。

 あぁ―――そうだったな。ったく、カッコ悪いったらありゃしねぇぜ。

 

「東郷 美森、······鷲尾 須美·······!」

 

「「「「!!?」」」」

 

「あれっ、なんで······私·······っ」

 

 友達の名前を忘れるとは、俺も墜ちたもんだな。そしてようやく、あの写真について理解出来た。

 東郷に何かしやがったなぁ·······!!

 

「もう一度大赦に行ってくる。」

 

 今度は跡形もなく消し飛ばしてやる。芥のようにな。

 

「シャル、今はわっしーを探すことを優先しよう。そんなのに構ってる時間はないと思うよ」

 

「それもそうか。」

 

 確かに園子の言う通りだ。少し落ち着いて考えれば、時間の無駄だと理解出来る。ここで優先すべきは東郷を探すことだ。

 

「んじゃ、アタシは須美んち行ってくる!」

 

「待て、銀。」

 

 物凄いスピードで部屋から出ようとする銀の肩をなんとか掴む。

 

「うおっ、と。どうしたんだよ、シャル?今は一秒の無駄すら許されないんだろ?」

 

「一先ず落ち着け。友奈もなんとか立ち直ってくれ」

 

「う、うん········。」

 

「この煎餅食べて元気出しなさい」

 

「サプリもあるわよ」

 

「煎餅とサプリじゃ、流石の友奈さんでも·······」

 

「わぁー♪ありがとう!」

 

「え、えぇ〜······」

 

 時間がないかもしれないのは百も承知だが、ここで下手に動くと全員死ぬ可能性がある。もちろん、俺含めてだ。

 

「一先ず現状解ってることを話す。」

 

「東郷が私達の記憶から消えた·······人の手では出来ない芸当ね」

 

「あぁ、その通りだ。今回の原因は天の神か神樹にある。」

 

「もちろん、確証はあるのよね?」

 

「もちろんだ。俺が神からの影響を弾いたら、記憶が戻ってきた。そして、そこから伝播······きっかけを作ったことにより、この場の者は全員記憶が戻った。」

 

 神性への特防があって本当に良かった。今回は心底そう思うよ。

 

「天の神からの影響、ってことでいいのかな?」

 

「それはわからない。だが、もしこのまま東郷の探索に出て神々の怒りを買うと不味いことになる。」

 

「どうなるんですか·······?」

 

「·········惨たらしい結末が待っているだろう。」

 

 ここで一番に警戒すべきは天の神。今回の諸悪の根源に位置するなら、東郷の探索で最悪一人死ぬ。まぁ、もちろんその一人は俺なんだけどな。

 

「でも、シャルは行くんだよな?」

 

「当然だ。この場でなにもしないのは何よりもカッコ悪いからな。」

 

 この程度で東郷を見捨てるなら、俺はここまで来れてないだろう。

 

「それじゃあ、アタシ達もやらなくちゃね。後輩に格好良い所、全部持ってかれるのは先輩としては三流以下よ」

 

「それは誰目線なの、お姉ちゃん········あっ、もちろん私も東郷先輩を探しますっ!」

 

「とーぜん、私もよ。東郷が吹っ切れまくってることなんて皆知ってるわよ。どうせ、今回も私達が想像すら出来ない場所にいるんだろうし、人数多い方が手っ取り早いわよ。」

 

「もちろん、アタシも須美を探す。こんな形でのお別れはもうコリゴリだかんなっ!」

 

「わっしーは私のズッ友。神に怯えて、見捨てるなんてズッ友じゃない。それに、友達を助けるのは当たり前だもんね〜」

 

「守る、って約束したんだ。東郷さんとまた笑い合うんだ。だから、絶対に東郷さんを見つける!」

 

 ···········待って、待ってくれ。どうして、こんな皆は覚悟決まりまくってんだ?いや、気持ちはわかるよ。わかるんだけども·······風先輩はテヘペロすんな。

 

「ならば、東郷を捜索しに出よう。各自、勇者システムを手にしてくれ」

 

「うんっ。」

 

「いやぁ〜、久しぶりの再開ね·······戻って欲しいとは思ったことないけど」

 

「前と同じなんでしょうか?」

 

「そうじゃない?形とかも変わんないし」

 

「··········」

 

「あっ、安芸先生から説明書貰ってるよ〜」

 

「説明書?」

 

「アップデートか?」

 

 流石、安芸先生。他の大赦の奴らより百倍働いてる人は違うな。

 

「うん。それじゃあ、読むね」

 

 勇者システム変更点

・満開の際の代償を失くせるようにしましたが、エネルギーを全て消費することになります。

・エネルギーとは新たに勇者システムに蓄えられた神樹様の力であり、精霊の守りを発動させた際にも消費します。

・再度蓄えることは不可能です。

※シャルルマーニュの勇者システムは変化ありません。

 

「ようやく修整されたか······」

 

「また、シャルのは変わってないね」

 

「満開は一回限りってことね」

 

「精霊のアシストがなくなるのは結構な痛手ね······」

 

 まぁまぁ、代償がなくなったことに意味がある。これで悲劇が繰り返されることはなくなった。

 

「満開使用は各自の判断に任せる。使う使わないは個人の自由。精霊で自身を守るのも個人の自由。ただし、必ず生き残る方を選択するんだ。」

 

「うんっ。絶対に生きて帰ってくるんだ」

 

「わかりました。」

 

「誰に言ってんのよ」

 

 物語のゴールはここではない。必ず東郷は取り戻す。例え、神が邪魔しようともだ。

 天の神が出てきた場合、御影との作戦通りジュワユーズを放つ。そこからは御影が受け持ちだ。アイツなら終わらせてくれるだろう。

 

「········」

 

「銀」

 

 ぼーっとしている銀を呼びかけるが、反応がないため頬を伸ばす。ふむ、柔らかい。

 

「····あぇ、なっ、なに!?」

 

「銀、これを使うがいい。満開はないが、きっと助けになってくれるだろう。」

 

「こ、これってシャルの·······うん、わかった。この三ノ輪 銀に任せな」

 

 これは俺が持っていても必要ない。勇者システムなど俺には不似合いだ。それなら、勇者である銀に託すのがベストだろう。

 

「それでは征くぞ。皆は東郷が行きそうな場所を。俺は全国を探す。」

 

「勇者システムにあるレーダーを使えば、東郷のスマホの反応を拾ってくれるわ。活用していきましょ」

 

「了解ですっ!」

 

 各自、俺の家から飛び出し東郷の行きそうな場所へと駆ける。俺は最後に家を出て、鍵を閉める。

 霊体化し、屋根の上をつたって移動する。

 

 

 

 

 

 

 





 ここで予告します。次回は閑話です。それも結構本筋に関わってくるような内容です。
 ある男の最期·······そんな感じのです。

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