気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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 オラァ!起きろ!朝だぞ!



決断

 

 

 

 

 夢から醒める。

 使い魔(サーヴァント)は夢を見ないと言った手前、こんな高頻度で夢を見るなんてな。正直、予想外だった。一度目のような悪夢は一生見たくない。

 

 ありえん、ありんえん。あれは俺ではないと確信している。精神的苦痛があのような形で出たもの、ただそれだけだ。

 

「むっ·······」

 

 なんか部屋の外が騒がしいな。今日はこの家にいるのは俺とクロだけなんだけどな。

 布団を退け、立ち上がる。寝巻きからいつもの外用の服に着替え部屋を出る。出力を最大にすることを忘れずに

 

「あっ、おはよー」

 

「シャル先輩、お邪魔してます」

 

「お邪魔してるわよー」

 

「煮干し置いとくわね」

 

 このデジャヴ感は·········いや、関係ないな。それよりもだ。

 この四人はふわ〜っとしているが、残りの三人が凄く険しい顔をしている。特に東郷。なんか悪いことしただろうか?友奈はそんな思い詰めんな。

 

「シャルル君、そこに正座」

 

「ふむ·······まぁ、いいか」

 

 素直にここは東郷の前に正座する。次の瞬間には園子が俺の膝に頭を乗っけて寝始めた。

 さっきまで結構離れた位置にいたような気がすんだけどな·········これが巷で聞く瞬間移動というものだろうか。

 

「今から何個か質問するわ。素直に答えて」

 

「答えれる範囲で········わかった」

 

 怖い········東郷さん、怖いです。

 ハムスター顔をして、東郷と相対する。へけっ······あ、コラ写真撮らない。

 

「シャルル君は一人で天の神を倒すつもりなの?」

 

「一人ではない。御影 士郎との共闘によって堕とす」

 

 この助っ人心強すぎだろ。今ん所は俺より瞬間火力ありそうだな。

 

「作戦概要は?」

 

「俺がジュワユーズを放ち、天の神の視線をこちらに向ける。その後、御影 士郎が仕留める。」

 

 多分、無間の剣製みたいなことをするんだろう。詳しくは聞いていないが、俺がジュワユーズで良い感じにすれば勝ちだ。そして、決まらなければ敗北········ふぅ、プレッシャーヤバイな。

 

「その後·······っ。」

 

 東郷がその続きを言う前に口を閉じる。なにか、言い難くしている。そんな東郷を見かねてか風先輩が口を開く。

 

「アンタ、消えるの?」

 

 ··········園子か。

 膝で寝ている園子を見る。流石、愚者の考えなんてお見通しか。本当に勝てないな·······。

 

「あぁ、消えるとも。」

 

 俺はジュワユーズを放ったら退去するだろう。天の神の祟りなど関係なしにな。なんせ、全てを賭けるのだ。

 魔力、だけではない。全身を動力としてジュワユーズを放つ。それでようやく、天の神の目を釘付けに出来るだろう。御影 士郎から目を離す程に

 

「私たちが、その囮役をするとしたら?」

 

「·······片手間に対処されるだろう。もし、成功したとしても御影の一撃が決まるどうかの瀬戸際だな」

 

 あれには結構時間がいる。だいたい一分ぐらいか?つまり、囮役は一分間天の神の視線を向けさせる程の継続火力が必要になる。

 

「他の策は?」

 

「ないな。この戦いは一度切りだ·······これで成功しなければ、人類に未来はない。であれば、俺一人の犠牲で――」

 

 頬にじんわりと痛みが走る。

 目の前には顔を真っ赤にして、腕を振り切った東郷がいる。誰が平手打ちしたかなんていう疑問はない。

 

「ちょっ、須―――」

 

「いつもそうやって、一人で、我武者羅に走って······人の心配なんて考えないで·······っ!」

 

「東郷、さん·······」

 

 誰かが言ったな。強くて正しくて、世界創造の大偉業を成そうとした男が。

 終わりが決定する物語は不要だと。この世界は間違っていると。狂っているとも。

 

 正にその通りだ。このような結末しか迎えられない世界は全くの無意味で無価値だ。頑張った報酬すらない。

 それでも俺は守る。大好きな奴らが生きていけるならそれで問題はない。ほんの少し、ほんの少しだけ贅沢を言うなら―――

 

「俺だってお前らと生きていたいさ。馬鹿みたいに大笑いしたいさ。でもな、そんな幻想はないんだ。それに俺はもういっーぱい貰った。それで十分―――」

 

 全てはこの中に。宝物はこの中に。決して忘れることのない思い出はしっかりと俺を作っている。

 

「じゃ、アンタは諦めるのね」

 

 頭から冷水をぶっかけられた感覚がした。

 

 ―――俺が、諦める········?

『強大な力には大きな責任が伴う。そんな俺に無抵抗など赦されていない。なにより、抵抗する俺はカッコイイ!』

 シャルルマーニュの言葉が脳裏でフラッシュバックする。

 

 そうだとも。いつだってシャルルマーニュは最高にカッコよくて、俺の憧れだとも。

 俺もこうあれたら―――そんな幻想を夢見る程に好きだったよ。だから、愚直にも俺はアンタに成り切ろうとした。まっ、本人から怒られたけどな。

 

「俺には無抵抗なんて赦されない。全力で最後まで抵抗してやる。それが、きっと―――“生きる”ってことなんだ。」 

 

 終わりがあるとわかっていても馬鹿みたいに足掻くのが人間だ。それでこそ人間だ。 

 ―――なら、俺も最後まで足掻かせて貰おう。

 

「シャルル君、それって·······!」

 

「俺は絶対に生きる。だから、一緒に模索してくれ」

 

 俺では無理かもしれないが、皆とならきっと思いつく。そう思えるぐらい勇者部の皆はカッコイイからな!

 

「それじゃっ、作戦会議始めるよ〜!」

 

「園子さん、その服と眼鏡は一体······?」

 

「ん〜、雰囲気?」

 

 てか、いつの間に起きてたんだよ。全く気づかなかったんだけど········。

 

「やっぱ、最初は情報共有からだよなっ!てことでシャル!」

 

「わかった。俺が知り得る限りの情報を話そう」 

 

 話していけない内容は祟りのみ。それ以外は全て話そう。本当に全てだ。

 大赦から入手した情報。俺という存在について。抑止力について。御影 士郎との邂逅すらも。あらゆる内容を伝えよう。

 

 俺は生きる。なんとしても生きる。そして、皆といつもの日常に戻る。必ずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、夕方になるまでみんなで頭を悩ました。でも、絶対成功するという作戦は出なかった。

 

 絶対にシャルくんは死なせない。

 

 この気持ちはみんな同じだ。シャルくんは勇者部の一員で、学校の人気者で、·······そんなの関係なしにカッコイイ。

 もし、シャルくんが消える理由に私が移してしまった祟りのことが入ってたらと思うと私は······私は·····ッ!

 

 一人、ベットに横たわり天井を眺める。

 

 明日は勇者部部室に集合となり、今日と同じようにみんなで知恵を振り絞る。私は頭良くないけど······頑張る。

 

 そんな時だった。不意にインターホンが鳴る。

 両親が帰ってきてないことを思い出して、すぐベットから飛び起き、階段を降っていく。そして、扉を開ける。

 

「結城 友奈様、ですね。」

 

 白装束を着て、仮面を着けている。大赦関係の人だとすぐ思い至った。

 

「あっ、はい。結城 友奈、です······?えっと、今日はどんな用件で来、お越しになったんですか?」

 

 学校で習った丁寧語?だったろうか。それを思い出しながら質問する。

 ※謙譲語です。

 

「話しやすい口調で構いません。此度は結城様に御用がありまして伺った次第です。」

 

「ぁ、はい。それだったら·······どうぞ····」

 

 家に上げるか一瞬迷うが、声質から女性だとわかるので家に上げる。玄関の前で長話はよくないと思ったからでもある。

 

「すいません、お茶しかなくて·····」

 

「いえ、お構いせず。無理を言ってしまい申し訳ありません。」

 

「あっ、頭を上げて下さい·····!」

 

 人に頭を下げられるなんて人生初めて。しかも、こんな深々とされるのはちょっと······なにか悪いことしてるみたいで落ち着かない。

 

「えっと、その御用というのは?」

 

「“神婚”についてで御座います」

 

「しん、こん········?」

 

 話された神婚という儀式。それは御姿である私が神樹様と結婚するとことで人類を神の位に押し上げるというものだった。

 これをするだけで、天の神を怯えて過ごすこともせず、安心して暮らすことが出来るみたい·······でも、そこに自由意志はない。ただ生きるという結果のみしか残らないらしい。

 

 私はその内容を聞いて―――頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。勇者部の部室へ向かうため、東郷さんと一緒に通学路を進む。

 

「あと四日で夏休みね。友奈ちゃんは何処かに行くの?」

 

「―――」

 

 東郷さんの声が遠い。全く内容が頭に入らない。

 私の頭の中には昨日の出来事が駆け巡っている。自分で頷いた神婚という儀式について

 これをすればみんな無事······誰も傷つかない。でも、みんなと会えなくなる········。

 

 思わず歩を進めていた足が止まる。

 

「友奈ちゃん?」

 

 東郷さんが立ち止まって、心配そうに私を見てる。

 言わなくちゃ、お別れを·········せめて、お別れだけでも―――

 

「私、結婚するんだ」

 

 

 

 

 

 





 誰かメフィスト流しといて〜!
 

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