気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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排斥された者

 

 

 

 

 目を開ける。どうやら、無事柚葉も樹海に入り込めたようだ。

 いやぁ〜、久しぶりだな。だいたい一ヶ月ぶりぐらいだろうか。まぁ、嬉しくないけどな。

 

「シャルル君、スマホに」

 

「ふむ、この先にか」

 

 東郷のスマホを柚葉と共に覗く。そこには、友奈のスマホのGPSを拾っている。丁度、このまま直進······即ち、神樹周辺だ。

 

「時間が迫っているかもしれん。ここは、全速力で向かうぞ」

 

「わかったわ」

 

 っと、ここで問題があるな。俺達二人は人間の身体能力を超えているが、柚葉は人間だ。このまま走れば置いてけぼりにしてしまうだろう。

 そんなことを考えていると、柚葉が俺のマントを引っ張ってきた。

 

「シャル君、お姫様抱っこでお願いします」

 

「シャルル君はもしもの時に手を開けてた方がいいです。ですから、私がお姫様抱っこしてあげますね?」

 

「········はい、お願いします」

 

「話は済んだな。であれば、征くぞ」

 

 渋々といった感じだが、これで移動面の心配事はなくなった。後ろは気にせず、全力で走り切ろう。

 

「――――――。」

 

「――――――ッ!」

 

 このスピードで移動すれば、二、三分程で友奈に追いつける。だが、警戒は怠らない。いつでも応戦出来るように右手は構えとく。

 

 ここは樹海。言うなれば、神樹の結界内。つまり、神樹の胃の中という認識で違いない。俺達がすることはお見通し········まっ、邪魔しないっていう選択肢はないな。

 

「―――ッ、甘い!」

 

 東郷と俺の足目掛けて射出された刀をジュワユーズを以て折る。神秘が宿っていない武器ならば、いとも容易くジュワユーズで折れる。

 体勢を整える為に、近場の根のような物に降り立つ。東郷も辺りを警戒するために降り立ち、抱えていた柚葉を降ろす。

 

「―――二人だと聞いてたんだがな········通達ミスか?」

 

 一人目のイレギュラー、⬛⬛ ⬛⬛。

 やはり来たか。神樹の一部になった、と言っていたからな。このような状況になれば、当然あちらの戦力として俺と相対することなど誰でも予測出来る。

 

「貴方は·····御影、士郎········?」

 

「いや、違うぞ。というか、御影について知ってんのか········あぁ、なるほどな。お前が上里の子孫か。そりゃあ通達ミスが起きるもんだ」

 

 柚葉の姿を見て、一人納得したようにうんうんと頷く。

 それにしても、何故かコイツからは敵意が微塵も感じられない。そういう戦法なのか、はたまた本当に敵意がないのか。全く読めない。

 

 東郷の手にスナイパーライフルが握られる。スコープを覗き込み、確実に命を奪おうとしている。そんな東郷を手で制する。

 

「貴様は傍観者だと思っていたが違ったようだな。」

 

「俺も最後まで傍観者だと思ってたんだがなぁ·······神樹から鬼のように招集がかかったからな。嫌でも来ないといけなくなっちまった」

 

「ならば通せ。貴様に用などない」

 

 こんな奴に構ってる時間はない。一刻も速く友奈の元へ行かなければいけない。

 

「お前こそさっさと持ち場に戻れ。結城 友奈を今のまま奪還することは諦めろ。」

 

「なんですって······っ!」

 

 引き金に指を置く東郷をまた手で制する。今、気になる単語を吐いたコイツをここで殺すのは駄目だ。

 

「持ち場に戻れ、と言ったのか?」

 

「あぁ。もうそろそろ来るんじゃねぇか··········おっ、噂をすればってヤツか」

 

 ―――真っ黒だった空が紅く染まる。

 

「ほら、お出ましだぜ。コレが人類史滅亡へと追いやった元地球の防衛システム、天の神だ」

 

「ぐッ―――!」

 

 抑えていた祟りが神性への特防などなかったように俺の体を蝕み始める。それに伴い全身に耐え難い痛みが奔る。

 

「シャル君、大丈夫ですか?」

 

「シャルル、君·······?」

 

 倒れそうな体を意地で立たせる。今は倒れるなど論外だ。絶対に維持してみせるとも。

 

「最悪の状態に陥っちゃいるが、ジュワユーズぐらいは撃てるだろ。それ撃って、さっさと御影に託しな。それで人の時代がまた訪れる。」

 

 まぁ、それが最善策なことはわかっている。わかっている·······が、それが出来ないのが俺クオリティー。

 

「東郷、は皆の所に、柚葉、は安全だと、思える程に、離れていろ·······っ!」

 

「〜〜っ゛········、わかったわ。シャルル君、これを」

 

「十二勇士達も、頼んだぞ·····っ!」

 

 東郷の手には、東郷の武器である二丁拳銃、その一丁が俺へと差し出されている。迷わずそれを受け取る。きっとなにか意味がある筈だ。

 長い思考があったが、納得してくれたみたいだ。東郷に十二勇士をくっつけ戦闘場所まで運んで貰おう。その間に柚葉はこの場から走り去っていく。

 

「身一つで俺とやるのか········まぁいいか。」

 

 奴は刀を。俺はジュワユーズを構え相対する。どのような戦法をするかはわからない。だが、ここで怖じ気づくつもりはない。攻めきるとも。

 

 自分自身との戦い。

 一見とても魅力的な勝負ではあるが、この勝負は前哨戦な要素が強い。

 

 祟りによって本来の力の半分も出せないシャルルマーニュ。それに対するは汚れが落ちた⬛⬛。どちらが最高のコンディションかと言われれば、⬛⬛だろう。だが、そんな状況であったとしても実力はシャルルマーニュが上だ。

 

 どのような戦法、策を用いようが実力差は埋まらない。それ程までに圧倒的な差がこの二人にはある。つまり、この勝負は―――

 

「裁断の時であるッ!」

 

「がふッ―――」

 

 シャルルマーニュの勝ちだ。

 肩から引き裂かれた胴体から止めどなく血が流れ落ちる。それと同時に⬛⬛の体が粒子となって消えていく。

 

「やっぱ、シャルルマーニュには勝てねぇなぁ―――」

 

 負けたとは思えないような表情で消えていく。彼の心には確かに満足感があった。 

 自身が憧れた者、ではなくともその力を宿した者に真っ向勝負仕掛けて負けたのだ。それだけで俺とアイツは満足だ。

 

「次、だ·······!」

 

 死に体である筈の体を前へ前へと運ぶ。俺にはまだやることがある。こんな所では倒れていられない。早く、友奈の所に―――

 

 あれからどれ程歩いただろうか。意識朦朧としているせいか、どれだけ神樹に近づいたのかわからない。距離感覚が全くと言って使えない。だが、確かに俺は近づいている。その証拠にあそこに誰か座って―――

 

「―――第二グラウンドだ、シャルルマーニュ」

 

 何故だ。コイツはさっき俺が殺した筈だ。なのに、何故·······コイツがこの場で座っている。

 先程は感じなかった敵意を感じる。明らかに俺を殺しに来ている。

 東郷から受け取った銃に五大元素を圧縮―――

 

「貴様に、最早、興味など―――ないッ!」

 

 ―――放出する。

 奴の頭蓋を貫通、破裂させ脳髄を········なんだ、コレは?脳髄では断じて違う。この黒く、ドス黒いドロドロした液体は·········まさか、貴様。

 

「貴様は、誰だ······?」

 

「何を言っている?俺は俺だとも。今から貴様を殺す者だ。無様に地へ這いつくらばせる者―――ダッ!!」

 

「ッ······!」 

 

 俺の首目掛けて振るわれる刀をジュワユーズで受ける。

 奴の頭部を見ると泥によって修復されていっている。まだ修復しきれていないのか、泥がうねりながら頭部へと収まっていく。

 

「くっ、―――ハッ!」

 

 泥に触れないように足で蹴り飛ばし、距離を取る。

 

「ハァ·····ッ、ハァ·······ッ!」

 

 はっきり言ってこの状況は不味い。祟りによる痛みもそうだが、あの泥が更に俺の状況を悪くしている。

 シャルルマーニュは秩序に寄っているサーヴァントだ。もし、そんな彼があの泥に触れてしまえば激痛は免れない。つまり、今の俺はあれに触れたらゲームオーバーだ。

 

 一触したら死ぬ········これ、なんっていうクソゲーム?

 まぁいい。触れさえしなければ無害だ。ならば、俺はとことん遠距離から奴を削る。そうすれば、いつかは殺せる筈だ。

 

「今度は銃撃戦かぁ?いいぞ、とことん殺し合おう。どっちかが絶望に満ちるまでなぁ!」

 

「一人で満ちていろ」

 

 東郷の銃に様々な五大元素を込めながら、場合によって使い分ける。そして、ヤバイと思ったら五大元素全てを圧縮した弾丸で弾き飛ばす。

 何度も、何度も、何度も―――

 

「痛い、痛イ、イタイなぁ·······酷いなぁ、悲しいなぁ、苦しいなぁ······こんな一方的に、蹂躙的に痛めつけられるなんて」

 

「であれば、潔く、死ぬが、いい······ッ!」

 

 殺すたび泥によって傷を治し、立ち上がってくる。コイツはどうやったら倒せるんだ?泥の際限はないのか?

 

 ―――突如として突風が吹き荒れる。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する」

 

 なっ、召喚陣もマスター権もないままやるというのか!?やっぱ、アイツ無茶苦茶だな!だが、それでこそだ!

 

「なんだ、コレは······女の声だ。めそめそと隠れ潜んでいる女の声だぁ!」

 

「行かせると、思っているのか!」

 

 俺から標的を変え、柚葉へと奴が迫る。それを俺が赦すとでも思ったのか。全く、ただ再生力だけあるバケモンが。

 

「―――告げる。」

 

「邪魔だ、邪魔だッ!」

 

「貴様が、邪魔なのだ―――ッ、我が栄光の輝きを!!」

 

 俺の半径8m程が光に満ちる。ただの光ではなく、超圧縮された五大元素だ。これを受けて、その場に立ってられた者は未だいない。それは人外であっても同じだ。

 

 ボロボロになった体で神樹の幹に叩きつけられる。次の瞬間には泥によって体は修復されている。だが、いい時間稼ぎになった。召喚は終了した。

 

 静かにその場に立っている。武人のような形姿。使用された触媒は草薙剣の欠片。つまり、この英霊は―――

 

「貴様、―――キサマはァァァァァァ!!!!」

 

 突如として奴は怒り狂い、立ち上がり、柚葉へ迫ろうとするがナニかに阻まれる。よく見ると、奴の足に鞭のような物が巻き付かれている。

 

「ッ―――、我々の恩情を忘れたか!白鳥 歌野!」

 

「下卑た声でその名を語るな」

 

 何故か無性に腹が立つ。今すぐ奴の喉を裂きたいと思う程に

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。」

 

 召喚は未だ終わっていなかったのか!?ならば、あそこに立っているのは―――

 

「貴様もそうだ!何故、貴様は生きている?何故、現界を赦されている?―――そうだ!全て!全て!!我々の恩情あっての―――」

 

「貴様のではない。人々を愛し、可能性を信じた神々の恩情だ。断じて―――断じて、貴様のではないッ!」

 

 銀直伝の根性で自身を奮い立たせる。まだ、勝負の行方はわからない。

 あそこに立っている正体不明の英霊が何を目的としているのかがわからない。どういった召喚なのかもわからない。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 その言葉が放たれた瞬間、この空間全てが圧倒的な重圧によって支配される。シャルルマーニュの霊基である俺でさえも身動ぎ一つも満足に出来ない。

 

「―――セイバー、日本武尊(ヤマトタケル)。嘗て、打ち損ねた悪神の首を頂戴しに参った。」

 

 

 

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