「……これで全部か?」
「うん、多分……」
皆が信じてくれると言ってくれた後、情報を整理するため、アタシが違和感を覚えた出来事を箇条書きにして書き出すことにした。
『苦しい時、お兄ちゃんが何かしてくれた→笑顔にしてくれた』
『体力が少ないから歩くのが遅い』
『教室で一人でいると不安になった』
『復学という言葉』
『授業に遅れている』
『病気という言葉』
『放課後、アタシたちはどこかへ行って、なにかをしていた』
『アタシたちがバラバラになった』
『皆の不安そうな顔』
他にも小さな違和感はあったが、印象に残っているのはこれぐらいだ。今朝の時点ではお兄ちゃんに対する違和感の正体はわからなかったが、部屋で話をした時に発覚した。
こうして、書き出してみるとたった一日でこれだけの違和感を覚えていたのだと自分のことながら驚いてしまう。皆もそうだったのか、深刻な顔でルーズリーフに刻まれたアタシの丸っこい字を見つめていた。
「色々あるみたいだけど……なにか関係性があるのかな」
「どうだろう。一歌たちのことだけかと思ったが、オレにも違和感を覚えているとなると咲希が気づいていないだけでこれからも増えていきそうだ」
重い沈黙が流れる中、いっちゃんがそう切り出す。それに答えたのは腕を組んで考え込んでいたお兄ちゃんだった。
「でも、咲希ちゃんは一歌ちゃんの言葉にも違和感を覚えたんだよね?」
「うん、この『バラバラになった』ってやつ。いっちゃんは気にしてなかったみたいだけど」
「もしかしたら、私たちでは違和感には気づけないのかもしれない」
トントン、とテーブルに置いたルーズリーフを指で叩く。これについてはさっきも伝えたのでしほちゃんの推測に皆は黙って頷くことで賛同した。
「……」
しかし、そこで全員が口を閉ざしてしまう。黙っているのは答えがわからないからじゃない。きっと、気づいている。すでに答えが書いてあるのだから。でも、実際に口にできない。
勘違いのはずだ。
そんなはずがない。
だって、『
「――病気、なんだよね」
「咲希ちゃん……」
「あはは、だって誰が見てもそう思うよ……」
病気をしていたからお兄ちゃんが励ましてくれた。
病気をしていたから体力がない。
病気をしていたから一人でいると不安になる。
病気をしていたから授業に遅れている。
病気をしていたからアタシたちはバラバラになってしまった。
病気をしていたから皆がアタシを不安そうに見つめる。
自然とアタシは答えを吐き出していた。勘違いだって期待しても、そんなはずがないと答えを変えようとしても、
『
「……」
シン、とリビングが重い空気に満ちていく。だが、すぐに顔を上げたのはしほちゃんだった。
「でも、私たちには咲希と学校生活を送った記憶がある。そこには違和感は覚えてないんだよね?」
「う、うん……放課後、なにかしていたと思うから」
「なら、咲希は病気を患っていただけ。過去形だよ。今は皆、一緒にいる」
病気は過去のことで現在や未来のアタシは皆と一緒にいる。だから、大丈夫。
しほちゃんは鋭い視線でアタシを見ながら訴えてくれた。その点に関してはアタシも異論はない。ない、と信じたい。
でも、どうしても信じ切れないアタシもいる。
だって、それだけこの違和感は頻繁に、強烈に、アタシという存在を否定する。
『
もし、皆と一緒にいることに違和感を覚えたら?
そんな未来が怖くて、そんな過去はなかったはずだと願ってしまう。
きっと、アタシが病気じゃなければ苦しむことも、悲しませることもなかったのだから。
「……咲希」
しほちゃんの言葉に頷けないでいるとお兄ちゃんが話しかけてきた。言うかどうか悩んでいる様子で数秒ほど経った頃になって続きを話す。
「この話、別の人に話すのは平気か?」
「え?」
「おそらく、オレたちは咲希に近すぎる」
「司さん、それはどういう……」
「咲希が仮に病気だったとして今の咲希は元気いっぱいだ。何故、そんな矛盾が生じているのか、その点に関しては置いておくとして……その矛盾にオレたちは違和感を覚えていない。つまり、意識を書き換えられている可能性が高い」
お兄ちゃんの発言にアタシたちは息を飲んでしまった。確かにお兄ちゃんたちは違和感に気付いていない。それはそれが事実だと認識していることに他ならない。だから、お兄ちゃんは間違っていない、のだけど。
「お、お兄ちゃんが頭良さそうなこと言ってる!?」
「おい、どういう意味だ!? 普段、ショーの脚本、書いているのはオレだぞ!」
「いや、普段の言動が……」
「し、志歩ちゃん……」
「ま、まぁまぁ」
我慢できずに叫ぶとお兄ちゃんが全力でツッコミを入れ、そこにしほちゃんが辛辣な一言を放り込む。それをほなちゃんといっちゃんが宥めた。
その光景に、違和感を覚えない。それだけでアタシは救われたような気がした。
「こほん……とにかく、咲希に近いオレたちはその意識の書き換えの影響を強く受けているということだ! これでは咲希がどれだけ違和感を訴えても意味がない!」
「つまり、咲希ちゃんのことをあまり知らない人に意見を聞けば何かわかるかもしれない、ということですか?」
「そうだ! そこで――」
確かめるようにほなちゃんが質問すると力強く頷いたお兄ちゃんは声高らかに言い放った。
「――オレの仲間たち、『ワンダーランズ×ショウタイム』の出番だ!」
使用楽曲コード:N01076799
プロセカ2周年おめでとうございます!
カラフェスも無事に300連してセルフピックアップ含めた全員をお出迎えすることができました!
そのおかげでミクのキャラクターランク80となり、ファン花称号獲得。
更に現時点でのミク、咲希、司のカードを全てコンプ!
運営さん、大盤振る舞いです。本当にありがとうございます。
現在、youtubeの配信でスタンプミッションクリアを目指してチアフル周回配信をしておりますので『りんご飴』の方はよければ遊びに来てください。