とある科学の超人『リミットブレイク』   作:はらしょ、。

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絶対能力進化計画編
邂逅


 

 

8月19日。

 

俺は今、第2学区にやって来ている。

 

学園都市は全23の学区で構成されており、第2学区ってのは兵器や爆発物、自動車関連の学校の

ための実験サーキットなど、とにかく騒音が多い施設が集まっている学区だ。

 

好きなやつにはとことん刺さるんだろうが、俺はそういう類のものには全く興味がねぇからなー。

 

用がなかったらこんな場所には近付きすらしねぇよ。

 

じゃあその用事が何なのかというと。

 

今日はこの第2学区にある風紀委員《ジャッジメント》の訓練施設にやって来たのだ。

 

いつまでも悩んでてもしょうがねぇしな。

 

わざわざ白井に頼んで時間を取ってもらって見学に付き合ってもらう事にした。

 

白井は何も言わなかったが、高校生が中学生の女の子に見学に付き添ってもらうのを頼むのはすげぇ恥ずかしかった。

 

だが仕方ない。だって俺はものすごい人見知りなのだから。

 

しかしここどこだ?

 

多分ここら辺にあるはずだんだけど。

 

近くの目立つ建物といえばこのやけにボロっちぃ工場1つだけ。

 

「誰もいねぇな」

 

道を聞こうと思ったが、中には誰もいない。

 

設備は定期的に整備されている痕跡もなく、あたりには何かの部品と見られる細かな物が中途半端に散らばっている始末。

 

もう随分前から動いてねぇんだろうな。

 

チッ、早くしねぇと遅れちまう。

 

ガサ……。

 

あれ、なんか今物音が。

 

「あのー、誰かいるんですかー?」

 

返答はなし。

 

しかし、確かにこの耳で聞いた。

 

ごく……、と喉を鳴らす。

 

気付けば物音がしたであろう方向へと一歩踏み出していた。

 

 散らばってる部品が風に吹かれでもしたんだろ。

 

 こんな汚ねぇところだから鼠なんかが住み着いてんじゃねぇのか?

 

最もらしい理由をいくつも並べるが、何故かどれも違う気がする。

 

1歩ずつゆっくり、確実に進む。

 

無意識に足音を抑え、息を殺し、自分の体から発せられる音全てに注意を払った。

 

何故こんなことをしているのか自分でも分からない。

 

見えない何かに見つからないように、その何かが待つであろう場所まで進む。

 

「嘘……だろ……?」

 

その先はまるで血の海だった。

 

その中心には誰かが倒れている。

 

どう考えても普通じゃない。

 

意図的に狙ってヤラねぇと有り得ない出血量であることは俺にも明らかだった。

 

つまり、こいつは誰かに殺されたってことだ。

 

呼吸するのが億劫になるほど濃い血の匂いに思わず吐きそうになる。

 

正直もう限界だった。

 

今すぐ引き返したい。何事もなかったように日常に戻りたいと内なる自分が叫んでいる。

 

なのに何故、脚が止まらないのだろう。

 

そうして死体の顔がハッキリと見えるところまで近づいたところで、頭が真っ白になった。

 

この顔を見間違えるはずがない。

 

そこには、御坂美琴が眠るように倒れていた。

 

「何でよりによってこの子が……」

 

身に付けている制服はまるで元からそういうデザインだったかのように赤黒い血に染まっていた。

 

余りの非日常に目を逸らしそうになるが、視線を止めて制服を凝視する。

 

どうなってんだ?

 

これだけ制服に血が滲んでいるというのに、制服には傷ひとつすら付いていない。

 

袖やスカートなどから露出している部分はズタボロに引き裂かれているというのに。

 

手足は数10センチ先の地面にわざわざ捨てられたように転がっている。

 

切断、とは明らかに次元が違う。

 

断面はまるで掴んだ手足をそのまま物凄い力で引っ張ったかのようにグチャグチャで、肉と脂肪が飛び散り、さけるチーズのようになった筋繊維が飛び出していた。

 

今まで何とか理性で抑えていたが、我慢の限界だ。

 

一度迫り上がり始めた胃液は止まることがなく、

 

「おえぇぇ……」

 

鼻の奥に酸っぱい匂いが広がったと思った瞬間、俺は腹の中を全部地面にぶち撒けた。

 

吐瀉物は勢いよく地面にこぼれ落ち、血と混ざり合って奇妙な模様を作り上げた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

すぐに俺を罪悪感が襲った。

 

気分は最悪だが、お陰で冷静さを取り戻せたようだ。

 

血が乾いていない。

 

つまりこれをやったやつがまだ近くにいる可能性が高いということだ。

 

冷静に考えればなかなかヤバい状況だけど、不思議と恐怖はなかった。

 

別に、御坂さんの仇を取ろうなんて思っちゃいない。

 

正直、そこまで仲良いわけでもないからな。残念だとは思うけど、怒りで我を忘れてしまう……なんてことはない。

 

ただ。

 

ただひとつ。そんな非情と言われても仕方のない俺にも気になることがある。

 

白井は御坂さんが死んだことを知ったらどうなっちまうのか想像もつかねぇんだ。

 

絶望しようと、怒りを燃やし復讐を決心しようと。

 

それでも彼女が深く傷つくという結末は変わらない。

 

当たり前だが死んだ人間は生き帰らねぇ。

 

だったら、もう俺にできることは何もないのかもしれない。

 

というか、何をすれば良いのかも分からない。

 

「遅かったですか……」

 

「ッ⁉︎」

 

突然背後から声を掛けられた俺は、勢いよく振り返る。

 

……は?

 

目の前に広がる光景に理解が追いつかない。

 

まさかと思い後ろを振り返ってみるが、やはりそこには御坂さんの死体がある。

 

意味が分からない。分からないのだが……。

 

それは。目の前に立っている声の主は。

 

「御坂さん、なのか?」

 

間違いなく御坂さんだった。

 

「何をとぼけているんですか?」

 

俺の質問に対する彼女の回答はどうも要領を得ないものだった。

 

「いやいや、見てみろよこの状況を」

 

体を一歩横にズラして後ろの死体を目の前の彼女に見せつけながら訴える。

 

「だからしらばっくれてんじゃないわよッ!」

 

そんな俺の態度が彼女の癇に障ったのだろうか。

 

こちらの訴えには耳を貸さず、電撃を俺に浴びせかけてきた。

 

「どうして避けるんですか?」

 

「俺はテメェのサンドバックじゃねぇんだぞ」

 

取り敢えず目の前のこいつが俺の知ってる御坂さんじゃないってことは間違いない。

 

その事実は余計に俺を混乱させた。

 

だが俺には考える時間すらないらしい。

 

更に数多の電撃の槍がもの凄いスピードで俺に迫ってくる。

 

「訳わかんねぇ」

 

体を深く沈める。

 

まるで縮んだバネが一気に元の状態に戻るように、俺の体が地面を跳ねた。

 

電撃の槍は何とか避けたものの、俺の体は勢い余ってコンクリートの壁に叩きつけられ体からは嫌な音がする。

 

こいつから繰り出される電撃はとてもじゃないが目で追える速度じゃない。

 

つまり避けられたとしても、光の速度の雷撃を避けられるスピードを手に入れた体はその瞬間、俺の制御下を外れてしまうのだ。

 

今まで通りの運動エネルギーを操作した擬似的な身体強化はこいつの前ではあまりにも無力すぎる。

 

「……」

 

突然だが俺の能力は、超人<リミットブレイク>なんて呼ばれていたりする。

 

それは体内のエネルギーを様々なエネルギーに変換して自在に扱えるという能力だ。

 

だが、おかしいと思わないか?

 

リミットブレイク、直訳すると限界突破だぜ。

 

能力の内容と名前が微妙にズレてんだろ?

 

つまり、この能力には名前の由来となった使い方があるんだ。

 

有名な話だが、人間の脳にはリミッターが掛けられている。

 

電気エネルギーによる電気信号の操作、熱エネルギーによる適切な体温コントロール等、この世に存在するエネルギーを駆使してリミッターを解除するための環境を体内で擬似的に構成することで俺は脳のリミッターを解除することができるんだ。

 

これが結構しんどいからあんまり使いたくねぇんだけど。

 

「本当に私たちのこと舐めてんのね、あんた」

 

奴さんは俺のことを殺すまで止まる気がないらしい。

 

「死ねぇッ‼︎」

 

まぁ、こりゃしゃーないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……」

 

終わってみればあっけないもので、地面に倒れている御坂さん(仮)を俺はただただ見下ろしていた。

 

結構痛めつけてやったってのに彼女が折れる気配は全くない。

 

むしろ更に燃え上がった殺意をその瞳に宿し、俺を睨みつけていた。

 

一体何が彼女をここまで動かしているんだろうか。

 

「お前は誰だ?」

 

取り敢えずそれが分からねぇと話が始まらねぇ。

 

「……」

 

シカトかよ。

 

まぁ普通に考えるんなら双子の姉妹ってとこが妥当だよな。

 

ここまで見分けが付かないのは珍しいが、双子だったら全く有り得ないという訳でもないだろう。

 

妹か姉かまでは知らねぇけど、俺が御坂さんを殺したと思って襲いかかってきたのか?

 

うーん。

 

仮に俺を襲う動機がそうだったとしても、色々おかしいぞ。

 

さっきも確認したが、御坂さんが殺されてから時間はあまり経過していない。

 

そしてここは第2学区の今では使われていない工場だ。

 

俺は正直御坂美琴という人間をあまり知らないが、それでもこんなところに女子中学生が1人で立ち寄るとは思えない。

 

何らかの理由で御坂さんの異変を察知した瞬間に動き出したとしても、こんなに早くに場所を特定して駆けつけることができるのだろうか?

 

いや、例え御坂さんのプロフェッショナル(笑)である白井ですらそれは無理だ。

 

……多分。

 

今思えば、初めて会った時のこいつのリアクションも妙だった。

 

『遅かったですか……』

 

御坂さんの死を目にして悲しんでいる様子はあったものの、驚く様子もなく俺に襲いかかってきた。

 

まるで最初から全てを知っていたように。

 

「訳がわからん」

 

ん、白井……?

 

「ヤベェッ!」

 

急いで携帯電話の画面を確認する。

 

デフォルトのままの飾り気のない液晶に映し出された数字は既に待ち合わせ時間を過ぎていることを示していた。

 

着信履歴を確認すると待ち合わせ時間から5分の間隔で掛かってきていた電話も10分前から途切れている。

 

今頃呆れ果てた白井が、こっちの方が手っ取り早いと自身の能力で第2学区を飛び回っているんじゃないだろうか。

 

だとすると非常にまずい。

 

俺は急いで携帯電話を操作して白井に電話をかけた。

 

「「……もしもし。何か言うことは?」」

 

当たり前だが、すげぇ怒ってんな。

 

「すまんが今日の見学はキャンセルにして欲しいんだ」

 

「「はぁ?」」

 

これもまぁ当然の反応だ。

 

「ちょっと外せない用事が入っちまった。切るぞ」

 

「「こら!お待ちなさ、」」

 

「よし」

 

悪いな白井。

 

うっかり余計なことまで喋っちまう前に一方的に切らせてもらった。

 

白井には今度あった時に土下座するとして……。

 

今は目の前の問題を片付けないといけない。

 

俺は再び御坂さん(仮)とコミュニケーションを図ろうと、彼女がいる方へと向き直ったんだが……。

 

「ありゃ?」

 

さっきまでそこにいた御坂さん(仮)は跡形もなく姿を消していた。

 

逃げられたか。

 

結構しんどそうだったから今ならまだ見つかりそうではある、が。

 

この死体ってそのまま放っておいてもいいのか?

 

そもそも死体の片付け方なんて知らねぇけども。

 

「はぁー」

 

どうすりゃいいんだよまったく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは殺人現場で近くにはまだ犯人が潜んでいる可能性が高い。

 

しかもその犯人は特別にイカれてるときた。

 

どんなに間抜けなやつでも、こんな状況に出くわせば周囲への警戒は怠らない。

 

しかし、この短時間で起きた一連の出来後のせいで俺の小さな脳みそはパンク寸前だった。

 

側から見たらこんなに間抜けなやつはいないだろう。

 

何せこんな危険地帯のど真ん中で周囲には目もくれずに考え事をしているのだから。

 

当然、そんな間抜けなやつがすぐ後ろに近づいている人影に気が付くわけもなく。

 

「ごふっ!」

 

気が付いた時には相手のドロップキックを後頭部にくらって地面に体を叩きつけられていた。

 

「何すんだこら!」

 

急いで顔を上げるとそこには御坂さん(仮)が立っていた。

 

「あ、あれ?」

 

何故だか御坂さん(仮)は突然後頭部にドロップキックをくらった俺よりも困惑しているようだった。

 

その顔は心なしかどんどん青ざめて、強い意志を感じさせていたキリッとした表情はふにゃふにゃになっている。

 

「何すんだって聞いてんだよ⁉︎」

 

俺にも何が起きてんのか分からなかったが、こいつとのコミュニケーションとるチャンスには違いない。

 

俺が再三問いかけると、御坂さん(仮)は気が付いたように表情に力を入れて、さっきとは打って変わって堂々とした態度を取る。

 

「どうやらあなたは違うようですね」

 

「はぁっ⁉︎」

 

こいつに会ってからまだ一回も会話が成立してねぇぞ。

 

1人で勝手に解決しやがって。

 

「おい!お前なんか知ってんなら全部説明しろ。そこに転がってる死体のことも、お前が一体何者なのかも!何が起こってんのかお前が知ってること全部だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして現在、俺は彼女に連れられて彼女の住処へと案内された。

 

「私の仲間は少し個性的というか……とにかく繊細なので扱いには十分気を付けるように!」

 

テメェも大概だけどな。

 

「あと、絶対騒がないこと。隣の中谷さんは良い人だけど怒らせたらすごく怖いので」

 

「あ、あぁ」

 

しかし随分ボロいアパートだな。もちろん口にはださねぇが。

 

「ちゃんと靴は揃える!」

 

「へいへい。お邪魔しまーす」

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさぁーい、ってヒイィィ!誰ですかその人⁉︎」

 

俺は彼女の言っていた同居人の姿を見て驚いた。

 

彼女も御坂さん(仮)、つまり御坂美琴と瓜二つの外見をしていたのだ。

 

流石に最初ほどではないけども。しかし本当に似てんなぁ。

 

「ちょ、落ち着きなさい。協力者よ」

 

「貴船海翔だ」

 

「は、はい!あ、あの、よろしくお願いします……」

 

「お、おう。よろしく」

 

その顔でおどおどされるとなんかちょっと変な感じだな。

 

「協力者と言うことは話したんですか?」

 

「いえ、今からよ」

 

そう、ここに来た理由は一つ。

 

今起きている不可解な出来事を当事者らしい彼女から聞き出しに来たのだ。

 

最初は拒まれていたが、御坂さんとは知り合いでこのまま放っておくわけにはいかないと話したら最後には首を縦に振ってくれた。

 

「最初に言っておきますけど、あそこで死んでいたのは御坂美琴本人ではありません」

 

そう聞いて正直俺は安堵した。

 

御坂さんが無事だということは、俺にとって最悪の事態……つまり白井が傷付いてしまうことはないからだ。

 

仮に本人が既に死んでいたとしたら、もう俺にはどうしようもない。

 

死んだ人間は生き返らないのだから。

 

「じゃあ一体あれは誰なんだ?」

 

「御坂美琴をオリジナルとして製造された2万人のクローンのうちの1人です」

 

「クローン?」

 

もちろんクローンという言葉の意味が分からない訳ではない。

 

御坂さんのクローンを2万人も製造する理由、しかもそのクローンがあのように殺されていた理由が分からないのだ。

 

まだ御坂さん本人を狙う理由なら分かる。

 

研究者にとってレベル5の体はとても興味深い研究材料となるだろう。

 

彼女を狙うような研究者、もしくは研究機関があっても今更おかしくはない。

 

しかし殺す必要はない。

 

むしろ研究材料にするために死なれては困るはずだ。

 

研究者にとって価値があるのはあくまで御坂さんの能力であって御坂さんという人間にはあまり興味がない。

 

それはオリジナルだろうがクローンだろうが関係ないだろう。

 

それにあの殺し方。

 

殺しという行為を、苦しむ相手の反応を、心の底から楽しむための殺し方。

 

能力にしか興味がないような研究者たちがわざわざそんな無駄なことをする筈がねぇ。

 

「一体何が起こってるんだよ?」

 

「今起きていることは、絶対能力進化計画《レベル6シフト計画》という計画の一部です」

 

「レベル6?」

 

「簡単に言えば超能力者《レベル5》の更に上、絶対能力者《レベル6》を生み出すための実験です」

 

「おぉー」

 

確かにレベル5の上のレベル6を目指すのは学園都市としては当然っちゃ当然だよな。

 

そりゃ是非とも頑張って頂きたいもんだが。

 

「勿論、そう簡単にレベル5になれる訳ではありません。学園都市が誇る世界最高のスーパーコンピューター、樹形図の設計者《ツリーダイアグラム》を用いて予測演算を行った結果、レベル6へと到達できる人間の名前とその方法が分かりました」

 

「良いなぁそいつ」

 

しかし俺はまだ一度もそんな話を聞いたことがない、

 

研究は相当難航しているのだろうか。

 

「そんなに良いものでもないですよ。何せそれは不可能と言われているのと同じようなものでしたから」

 

「その内容って?」

 

「何と通常の時間割《カリキュラム》を250年間組み込むことによって彼はレベル6になることができるという演算結果が出たのです」

 

そりゃ確かに不可能だな。

 

「そうして一度は保留となった計画ですが、再び演算を行ったところ超電磁砲《レールガン》を128通りの戦闘で128回殺害することで同様の結果を得ることが分かりました」

 

うーん。何というか。

 

「そのスーパーコンピューターも研究者供もどっちも馬鹿じゃねぇの?」

 

「私もそう思います。そして当然ですが、超電磁砲を128人も用意することは出来ないので再び計画は保留となりました」

 

「……」

 

まるで用意できたら御坂さんを殺しても良いって言ってるように聞こえるんだが。

 

ここまで聞くともう何となく分かっちまったぜ。

 

「話は逸れますが、学園都市では本来偶発的にしか誕生することのないレベル5を計画的に生み出すことを目的とした実験を行なっていました」

 

「ほう」

 

ちなみに超能力って聞くと、所謂SF作品なんかで出てくるものをイメージすると思う。

 

実際そう考えて差し支えないのだが、結局はフィクション。

 

この現実世界での扱いとは若干異なる。

 

超能力には先天的なものは存在せず、科学の力で後天的に本人が持っている才能を開花させることで能力の発現させ、更に才能のあるものはそのレベルを上げていく。

 

つまり、結局は才能がものを言うのだ。

 

実際学園都市の人口230万人の内、能力開発を受けている学生は184万人程度だがその内約6割がレベル0となっている。

 

勿論レベルが上がるほど人数は減っていき、レベル5ともなると僅か7人。上位0.0004%である。

 

正直7人もいるのが出来過ぎなくらいだ。

 

研究者が躍起になってそういう研究に取り組むことも当然だろう。

 

「超電磁砲の遺伝子から同等の能力を持ったクローンを量産しようと考えたのです。しかし、実際にはクローンの能力はオリジナルの1%に満たないという結果となり、計画は凍結されることになりました」

 

「それで目をつけられたお前らが御坂さんの代わりに、殺されてるってわけか」

 

二万人クローンが製造されているのも、能力が劣る分数で経験値を補うためだろう。

 

「そういうことです」

 

まぁ、研究者の気持ちも分かるけど、褒められたもんではねぇな。

 

「このこと、御坂さんは知ってんの?」

 

「ええ。一応お姉様の名誉のために言って言っておきますけど、この実験を良く思っていません。私たちのために今も1人で戦ってくれています」

 

「そうか……」

 

正直、この実験に対して御坂さんがどう思っていようとどうでも良かった。

 

例え御坂さんがこの実験に協力的だったとしても、それを悪く言う権利など俺にはない。

 

ただ、一つ確認しておきたいことがあったのだ。

 

「そんなに強いのか、そのレベル6候補のやつは」

 

俺は御坂さんがどんな人間かなんて知らない。

 

けれど、何となく想像はできる。

 

なんせあの白井があそこまで崇拝するような人物だからだ。

 

そりゃあ御坂さんは見た目もスッゲェ可愛いけどよ。

 

一目惚れとは考えにくい。

 

この実験を良く思ってないんだったら、自分の危険も顧みずに出来ることは全てやってきたはずだ。

 

そしてこの実験を終わらせるのに一番確実な方法は。

 

実験の柱、レベル6候補を殺せばいい。

 

「あなたの考えてる通り。しかし計画は今も順調に進んでいます。彼は……一方通行《アクセラレータ》はあまりにも強すぎるんです」

 

まあ、さすがレベル6にたった一人なれる言われてるわけだな。

 

「最後に一つだけ確認させてくれ。お前らはどうするつもりなんだ?」

 

「この実験を辞めさせる」

 

「どうやって?御坂さんでもその一方通行ってやつは倒せねぇんだろ。それにお前らや御坂さんもやれることは全部やってきたはずだ。正直詰んでるようにしか思えねぇ」

 

相手の目を見据えて淡々と事実を突き付ける。

 

それでも御坂さん(仮)の決意は揺るがない。

 

「それでも、よ。誰かに作られて生き方を決められて、死に方すら選べない人生なんてごめんだわ」

 

御坂さん(仮)の斜め後ろに正座している御坂さん(仮)……ややこしいな。

 

まあいい。

 

今度は彼女の方を見る

 

「君は?」

 

いきなり話題を振られて驚いたのだろう。

 

挨拶以外一度も声を出していなかった彼女は一度上を向いて大きく深呼吸をした後、俺に向き直って真剣な表情を見せた。

 

こうしてみると本当に見分けがつかねぇな。

 

「わ、わたしは正直死ぬのは怖いです……」

 

「だったらなんで……」

 

「け、けど。この子や、お姉さまが悲しむのはもっと嫌なんです!」

 

彼女が抱える不安や恐怖は俺なんかには到底想像もできないものだろう。

 

それでも、目の前の少女は腹の奥底にそれを抑え込み俺に話を聞いてもらおうと必死に馴れない大声を張り上げていた。

 

御坂さん(仮)はそんな彼女を労るように頭に手を乗せて優しく撫でた。

 

この後は私に任せて。

 

そう言うように続けて言葉を紡ぐ。

 

「私たちも元々あの子たちと一緒だった。感情も希薄で、自分の扱いに不満を持つどころかそれ正しい扱いだと信じて疑っていなかった。それでもある人のお陰で変われたの。悲しい時は泣くし、嬉しい時は笑える。自分の生き方は自分で選べる。それはあの子たちも一緒のはずよ。だったら今度は、私がそのきっかけになりたい」

 

「そうか……」

 

俺は、誰かが悲しんでいようと無闇に手を差し伸べるような人間ではない。

 

自分には関係ないし、こっちが本気で助けようと差し伸べた手が、そいつにとっては止めとなってそいつを傷つけてしまうかもしれない。

 

せっかく人のためにと思ったのに、恨まれるなんてのは良い気分じゃないだろ?

 

結局俺は自分が一番可愛いし、何事も判断基準は自分にとってプラスかマイナスかだ。

 

だから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の場所は分かってんのか?」

 

俺は俺のために、こいつらに手を貸すことにした。

 

 

 

 




今回は書いてて色々反省点が浮かび上がってきた回でした。
展開が急だったり、説明が長かったり、まあ色々です笑
今後に活かしていこうと思います。
今回もお読み頂きありがとうございました。
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