とある科学の超人『リミットブレイク』   作:はらしょ、。

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嵐の前の静けさ

 そうして翌日。場所は第六学区。

 

俺は映画館へと向かって歩いていた。

 

第六学区は学区全体が巨大なアミューズメント施設のようなもので、正直友達がいない俺は来るのも久しぶりだ。

 

勿論、一人で遊びに来てる訳じゃないぜ?

 

そもそも一人で来れるほどメンタルが強くないから久しぶりなんだし。

 

昨日の今日で呑気なやつだと思われるかもしれないが、俺にとっては大事なことだ。

 

第一、ここは少年漫画の世界じゃないし、俺は主人公でもない。

 

今から必死に準備しても意味ねぇんだ、時間は有意義に使わせてもらおうと思う。

 

勘のいいやつならもう気が付いてるんじゃないか?

 

そう、今日は人と待ち合わせているんだ。

 

この俺が、人と、第六学区で、待ち合わせ。

 

気持ちは分かるが落ち着いてくれ。

 

一体誰なんだって?

 

まぁすぐ分かるから見といてくれよ。

 

 

 

 待ち合わせ時間の15分前、映画館の前に着くと、

 

待ち合わせの相手がぽつん、と佇んでいた。

 

「……早えな」

 

それは俺もなんだけど。

 

この街じゃ有名なお嬢様学校である常盤台の制服に身を包んだその少女は、特に何をする訳でもない。

 

遮る術がない日光を浴びながらも、怯むことなく堂々と立ちつくす姿は悔しいが絵になると思った。

 

しかしそんな白井様は、機嫌が頗る悪いらしい。

 

ピクリと彼女が俺の視線に気付く。

 

彼女は身体は動かさず顔だけを俺に向け、心底不満そうな視線を送りながら言った。

 

「遅かったですわね」

 

「すまん」

 

待ち合わせ時間の15分前ということを考えると、まあまあ理不尽なことを言われているような気がするが、俺は特に口答えすることもせずに素直に謝った。

 

昨日は悪いことをしちまったからな。何を隠そう今日はその埋め合わせとしてわざわざ来てもらったのである。

 

それにそんな俺との約束でも、こうして時間の15分前から待ち合わせ場所に来てくれていることが嬉しかった。

 

勿論、俺との約束だから……って訳じゃないのは分かってる。

 

元々こういう性格なんだろう。

 

そして俺は白井のそういうところを尊敬しているのだ。

 

本人には絶対に言わない分、心の中では素直に言っておこう。

 

「それで今日はどこ行く?」

 

「……はぁ?」

 

早速俺は何かを間違えてしまったようだ。

 

「今日はあなたのお誘いを受けて、こうして集まった訳ですが」

 

「は、はい」

 

「あなたが何を思ってわたくしをこんなところに呼び出したのかは大旨察しがつきます。でしたら今日の流れくらいは考えてくるものではなくて?」

 

仰る通りです、本当に。

 

しかし俺にそれを期待するのは間違っている。

 

何故なら友達がいないからな!

 

……当たり前だが、馬鹿正直にそう言うわけにもいかない。

 

「か、勘違いするな白井。勿論考えてきてるぜ。一応お前の意見も聞いておきたいと思ってな」

 

「でしたらあなたの考えてきたものを聞かせて頂きますか?」

 

「お、おう」

 

……困ったことになったな。

 

中学生が好きなものなんてよく分かんねーぞ。

 

 

 

……………………………、

 

教室には男女問わずに大人数が集まって楽しげに談笑していた。

 

それだけでこのクラスのメンバーは仲が良いことが窺える。

 

……おっとすまん。これじゃあ何がなんだか分かんねぇよな。

 

これは俺の中学生の頃の記憶。

 

お嬢様といえど白井も所詮は中学生。

 

だったら何かヒントがあるんじゃねーかと頭の片隅から記憶を引っ張り出してきたところだ。

 

説明も済んだし記憶の発掘作業に戻るぜ。

 

ふと、グループの内の一人が何かを指差した。

 

それを見て、周りのクラスメイトも楽しそうに笑みを溢す。

 

その光景はどこからどう見ても素晴らしいクラスの休み時間でしかなかった。

 

一体その先には何があるのだろうか。

 

そう、その先にはー、

 

周りの音を完全に遮断して、涙目になりながら机に突っ伏して寝たふりをしている俺の姿があった。

 

いじめられてんじゃねぇか!

 

クソッ!辛すぎて封印してた時期の記憶を思い出しちまった!

 

「お腹が空きましたわ」

 

「え?」

 

「だから!お腹が!空きましたわ!」

 

白井が助け舟を出してくれていることは流石の俺にも分かった。

 

白井、お前ってやつは……!

 

「任せろ白井!とびっきり美味い店に連れってやるからな!」

 

「そ、それは楽しみですわ。ちなみに何屋さんに連れて行ってくれるのか聞いてもよろしくて?」

 

ふっ、興味津々じゃねぇか。

 

しょうがねぇな。こいつは俺のとっておき、白井も食べたら空いた口が塞がらねぇのが想像できるぜ。

 

「超美味いラーメン屋だ!」

 

「……はぁぁ?」

 

「え、え?」

 

なんか思ってた反応と違う。

 

いや、空いた口は塞がってないんだけど。

 

また何か間違ってしまったのかと情けなく狼狽えている俺を見た白井は、ハッとした後、慌てて俺に言葉を捲し立てた。

 

「い、いえ!決してラーメンが有り得ないとかそういうことではないんですのよ!ただ、制服に匂いが移ってしまっては困りますし、もう少しさっぱりした物が食べたいなー、なんて〜」

 

「……」

 

確かに!

 

言われてみれば……いや、こんなの言われる前から分かって当然だ。

なのにその場で安易に自分が食べたいものを提案するなんて。

 

すまねぇ白井、不甲斐ない俺を許してくれ。

 

白井は少し不安そうに俺を見つめていた。

 

己の失態に気付いた俺が自分の愚かさに落ち込んでいないか心配してくれているんだろう。

 

だが安心してくれ。同じ失敗をする俺じゃない。

 

「うどんはどうだ?」

 

「麺類は絶対に譲らないのですわね……、別に良いですけど」

 

よし、今度は大丈夫だったようだ。

 

しかし、昼飯を決めるだけでこんなに時間がかかって大丈夫だろうか……?

 

 

 

 

 

「美味かったな!」

 

「そうですわね」

 

うどんは勿論、天ぷらなどのサイドメニューも充実していた。

 

今まで麺類の中ではラーメンに及ばない永遠の二番手と読んでいたことは謝ろう。

 

腹ごしらえを済ませて店を出た俺たちは、食事中に白井が気になると漏らしていた店へと向かうために歩いていた。

 

「ちなみに何を買いに行くんだ?」

 

「服ですの」

 

「常盤台って外出る時も制服着用なんだろ?まじで卒業まで私服は着ちゃいけねぇのか?」

 

「流石に帰省の際などは目が届かないのですが、それ以外では制服ですわね」

 

「ふーん。やっぱり厳しいんだな」

 

それは白井も分かって入学したはずだし、不満は無いんだろうけど。

 

わざわざこうして服を見に行くってことはやっぱり興味があるものかもな。

 

俺みたいな人間からしたら楽そうで羨ましいが。

 

「ですがただ見るだけ、というのもなかなか楽しいものですわよ?」

 

うーん。それは何となく分かる気がする。

 

「まあ、お前が楽しいっていうならそれでいいよ」

 

「ふふっ、そうですわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして俺たちは白井の先導のもと、デパートの中にある洋服店へとやって来た。

 

この階には女性向けの店しかないんだから当たり前だが、周りに男が一人もいねぇ。

 

男子トイレすらないなんて、どれだけ男を拒絶した空間なんだ!

 

今は白井が隣にいてくれているから良いが、下手したらまた通報されるんじゃねぇか⁉︎

 

とりあえず白井から離れないようにしねぇと。

 

「何をそわそわしているんですの?」

 

「いや、ちょっと慣れなくてな。こんなとこ来たことねーし」

 

「気持ちは分かりますが、そう気にすることないですわ。今どき普通ですわよ普通」

 

「うーん。というかそれより良いのあったか?」

 

さっきから白井は店にある大量の服を、まるで漫画編集者がページを捲るようなスピードで見て回っていた。

 

「うーん。正直どれもイマイチですわねー」

 

おい!せめてそういうことは小さい声で言え!

 

店員さんの目が怖いから!

 

「あ、あれは!」

 

何か良いものを見つけたのか、白井はさっきとは打って変わって目を輝かせている。

 

気になった俺は、白井の視線を辿ってその先にあるものを確認した。

 

「何だありゃ⁉︎」

 

白井の視線の先……今俺たちがいる店の向かいにある店は、この階にあるどの店と比べても明らかに異質だった。

 

「ちょっ、走るなって!」

 

俺が呆気に取られていると、白井が一目散にその店へと駆け出した。

 

慌てて俺も追いかける。

 

俺と白井が入った店は、どうやら女性用の下着をメインに取り扱っているようだった。

 

問題はその下着のデザイン。

 

何と表現すれば良いのか分からんが、少なくとも白井より10くらい年が上なお姉さんじゃないと似合わないような過激なデザインだ。

 

なんでこんな店がこんなとこにあんだ?

 

白井はそんな店内を嬉しそうに回っている。

 

「素敵なお店ですわ〜!」

 

「本気かよ……」

 

店内を見回すが、俺たち以外に客がいる気配はない。

 

「お客様ァ!ご来店ありがとうございますゥ!」

 

店員さんもめちゃくちゃ必死じゃん。

 

相手はどう見たって中学生なんだから止めてくれよ……。

 

「白井!ここで出るぞ!」

 

「あ、ちょっと!せめてこれだけでもお姉さまにぃッ!」

 

「殺されるぞ⁉︎」

 

その後なかなか引かない白井を引きずって、俺は急いで店から離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「せっかく良いお店でしたのに……」

 

白井は本気で落ち込んでいるようで、可愛らしくほっぺを膨らましながらジト目で俺に抗議の視線を送る。

 

「悪かったって」

 

確かにこいつの趣味に俺が口出す権利はなかったな、と素直に反省した。

 

しかし、

 

「御坂さんに買ってやるのはやめたほうがいいと思うぞ……」

 

「お姉さまの趣味は幼稚すぎますの。もう少し常盤台のエースとしての自覚を持つべきですわ」

 

「お前の趣味が大人すぎんだよ」

 

お前からしたら年上だし、ただの先輩以上の存在なんだろうけど。

 

中学2年生なんてまだまだガキだし、俺からしたら御坂さんの方がまだ年相応だと思うけどな。

 

 

……うーん。

 

「なあ、そういえば御坂さんてどんな人なんだ?」

 

「いきなりなんですの?」

 

「……ちょっと気になってな」

 

「ちょっと、ですか」

 

ああ。ちょっと。

 

本当にちょっと気になっただけだ。

 

「お姉さまは……」

 

白井は少し不思議そうに俺を見た後、少し迷って口を開いた。

 

「とても強い人ですわ。守る必要がないと思った決まりは平気で破るくせに、自分が守ると決めたものは絶対に貫き通す強さがある」

 

白井は、普段とは違い真剣な口調で語る。

 

「とても優しい人ですわ。他人……、時には敵となった人間にだって手を差し伸べる優しさをもっています」

 

「そして」

 

一呼吸置いて白井は口を開く。

 

「少しだけ、弱い人ですわ」

 

「……弱い?」

 

俺が聞き返すと、白井はまるでここにいない誰かに怒りを向けるように続けた。

 

「自分は困ってる人がいたら見過ごせないくせに、自分が困っている姿は誰にも見せない。こんなにお姉さまを思っているわたくしにも……、いえ、わたくしだからでしょうか。それはお姉さまの強さであり、弱さでもありますの」

 

「……お前」

 

知っているのか、とは聞かなかった。

 

御坂さんが白井の言う通りの人間なのだとしたら、彼女は決して他人にはこの実験のことを口外しない。

 

白井が御坂さんの異変に勘づいていたとしても、自力でこの件に辿り着くのは限りなく不可能なはずだ。

 

もっとも、本人にそのつもりはないようだが。

 

もちろん俺も話すつもりはない。

 

白井をこの件に巻き込みたくない。というか、話したら御坂さんに殺されちまうかもな。

 

それに、白井にとっても御坂さん自身の口から聞くことに意味がある。

 

だったら、今俺にできることは何もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

繁華街を無言で歩いていく俺たち。

 

機嫌が悪いわけでも、喧嘩しているわけでもないが、さっきの話題からどうも空気が重くなってしまっていた。

 

無言の気まずさに耐えられなくなった俺は、たまらず目に入った洋服店を指差した。

 

「白井、あそこ入ろうぜ」

 

先ほどの店とは違い、清楚系のお淑やかな女の子が好みそうなラインナップを揃えた店だった。

 

「あのようなジャンルがお好みなのですね」

 

そう言うと、白井は俺の返答を待たずに俺が指差した店へと歩き出す。

 

特別好みかと言われればそうでもないが、白井には似合うと思う。

 

こいつ、見てくれは良いからな。

 

無言で店内を見て回る白井と斜め後ろから着いていく俺。

 

やる事がなく、ついつい覗いた白井の横顔には、心なしか明るさが戻っていた。

 

「うーん、貴船さんはどれが似合うと思いますか?」

 

「お、俺か?」

 

いきなり振り向いて聞く白井から慌てて顔を逸らして、辺りを見回す。

 

うーん。

 

そして白井に似合いそうな服を自分なりに選ぶと、彼女に手渡した。

 

あくまで俺の好みなので、白井には少し大人っぽ過ぎるかもしれないが、サイズが合いさえすれば何とかなるだろう。

 

「せっかくなんだし着てみろよ」

 

そう言って俺が試着室へと促すと、白井は俺が渡した服を大事そうに抱えて素直に試着室へと歩いて行った。

 

「わ、分かりましたわ」

 

試着室と店内を仕切るカーテンがピシャッと閉められると同時にふう、と息を吐く。

 

こうしていると何だかデートみたいだな。相手が中学生っていうのは問題だが、ちょっと前までそんな機会すらなかった俺にとっては贅沢な悩みだろう。

 

勿論、白井に対して何か特別な感情を抱いているとかそういうのじゃねーぞ?

 

 

 少し待つと、試着室から声を掛けられた。

 

「着替え終わりましたわ」

 

「おーう」

 

試着室のカーテンがゆっくりと開かれる。

 

そして白井が少し気恥ずかしいそうに試着室から出てきた。

 

「……どうですの?」

 

実際、どうだったのかというと。

 

ものすごく似合っていた。

 

どれくらい似合っていたかというと。

 

「……ふふ……、ぐへへ……」

あまりの可愛さに、紳士的な笑みを漏らすほどだった。

 

改めてこいつの容姿の良さを実感したよ。

 

いや、そりゃ元から知ってたんだけど。

 

御坂さんに対しての態度を見ちまってからはどうしてもド変態のイメージが抜けきれなかったからよ。

 

なんか変に感動しちまってる俺がいる。

 

「あの……感想は?」

 

「おっふぅ……」

 

めちゃくちゃ似合ってるぜ、と。

 

俺は凛々しい声で白井に素直な感想を伝えた。

 

「……気持ち悪いですわね」

 

どうやら白井も照れてしまっているようだ。

 

「しかしここまで似合ってると益々あの校則がうっとおしいぜ」

 

「まあ、そればっかりは仕方がありませんわね」

 

では、と白井はさっさと試着室へと戻ってしまった。

 

……。

 

髪飾りとかだったら大丈夫かな?

 

なんて、今俺が考えていることは、白井にとってはお節介以外の何物でもないんだろうな。

 

けど、お前らも良く知っているように、俺は自分にとってどうでもいいことはとことんどうでもいい分、やりたいと一度でも思ってしまえば止まらない男なのだ。

 

そうと決まれば、白井が着替えてるうちにさっさと買っちまうか。

 

辺りを見回し、小物などが置いてあるコーナーを見つけると、チラチラと試着室の方の様子を気にしつつ、限られた時間の中で満足のいくものを選び、レジへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 店を出ると、空はすっかり赤く染まっていた。

 

携帯電話の時間を確認すると時刻は18時54分。

 

「常盤台の門限っていつまでだっけ?」

 

「20時20分までですわ」

 

もうちょい連れ回しても大丈夫そうだな。

 

一応、俺のが年上だし気を付けておこう。

 

「だったら飯食って帰らねぇか?」

 

「別に構いませんわ」

 

「よし!どこ行く?……あ」

 

口に出した瞬間にしまった、と思った。

 

そういえば最初に怒らればっかだったな。

 

急いで俺が訂正しようとしたところ、

 

「ラーメン」

 

「え?」

 

「ラーメンが食べたいですわ」

 

「え、でも……」

 

「今はそういう気分ですの。早くしないと気が変わりますわよ?」

 

ニヤリとしながら白井が言う。

 

知り合ってからそこそこ経つが、未だによく分からない奴である。

 

まあ、そう言うことなら俺も大歓迎だけどよ。

 

「よし!だったらとっておきの所に連れて行ってやるよ!」

 

「ふふっ。期待してますわ」

 

 

 

 

「うぅっ……、もう当分ラーメンは食いたくねぇな」

 

なんて言っても明日にはまた食べたくなっているので、不思議である。

 

呼吸をするだけでラーメンの味がするし、少し動くだけで腹の中に残っているものが揺れているような不快な感覚が俺を襲う。

 

「調子に乗って食べ過ぎですの。見てるこっちまで、うっぷ……」

 

「でも美味かったろ?」

 

「たまになら、悪くないですわね」

 

素直じゃないやつめ。

 

その後は、二人並んでくだらない話をしながら帰り道を歩いていた。

 

楽しい時間はあっという間、なんて言うけど、今日はそれを初めて実感した気がする。

 

こんなに時間が経つのが早いと感じたのは今日が初めてだ。

 

最初に会った時はうざいガキと思ってたけど、こうして仲良くやれてんだから人生ってのは分からねぇ。

 

「それでは、わたくしはこちらですので」

 

ありゃ、もうそんなに経っちまったのか。

 

「白井」

 

「どうかしましたか?」

 

「これ」

 

さっき立ち寄った洋服店で購入した小さな紙袋を白井に差し出した。

 

可愛くラッピングされたそれを見て、当の本人はぽかんとしている。

 

「わたくしに?」

 

「ああ」

 

「……開けて良いんですの?」

 

「好きにしろ」

 

照れ隠しで自然と口調が悪くなっちまう。

 

綺麗な夕焼け空に、帰り道の別れ際。

 

漫画とかでよく見る告白のシーンみたいでなんか緊張すんな。

 

白井は包装をゆっくり、丁寧に取っていく。

 

「シュシュ?」

 

「あ、ああ。それなら流石に校則も大丈夫だろ?」

 

「……ありがとうございます」

 

夕焼けのせいか、白井の頬は少しだけ赤く染まって見えた。

 

「付けてもよろしいでしょうか?」

 

「勿論だ」

 

俺の答えを待ってから、白井は髪を解く。

 

解いた髪が躍るように方に流れ、髪型が違うだけだってのに、俺は思わず見惚れちまっていた。

 

「どうですの?」

 

「……似合ってる」

 

「……そうですか」

 

精一杯の褒め言葉を考えたが、結局気の利いた言葉なんてのは出てくることもなく。

 

これじゃあどっちが中学生か分かんねぇな。

 

 

 

 

 

 

 

 白井と別れた俺は、一人で黙々と歩いている。

 

明日は俺に取っての正念場。早く帰って休みてえってのに。

 

足取りがやけに重いのは、腹に残ったラーメンのせいか、それとも……、

 

いや、やめておこう。

 




今回もお読みいただきありがとうございます!
自分の不注意で一度データを保存する前に消してしまったので、時間がかかってしまいました。
あーゆー状況はほんと心臓に悪いですね笑
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