とある科学の超人『リミットブレイク』   作:はらしょ、。

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遠くなる存在

 「それじゃ!歓迎会を始めるぞー!海翔、ようこそジンクスへ!」

 

ようこそー!、とその場にいた全員は手に持っているコップを掲げた。

 

乾杯の音頭をとったのは、我らジンクスのリーダー司である。

 

今俺たちがいるのは、俺の部屋。

 

しかし見慣れたいつもの殺風景な部屋は司たちの手によってパーティー仕様に飾り付けられており、テーブルの上には串焼きやパスタ、寿司にピザ、後は何故か異常に種類が多いスイーツ等々、数多くの料理が並んでいる。

 

 

……いや、言いたいことは分かる。

 

正直俺も困惑してるんだ。

 

昼頃にいきなり電話がかかってきたと思えば、住所も教えていないはずの俺の部屋に司たちが乗り込んできやがって、夕方にはこの状態になっていた。

 

……正直、俺はこいつらに余り良い印象を持っていない。

 

あの後、暗部の具体的な活動内容について聞いたんだけど、そりゃひでーもんでよ。

 

加入することになった俺が言えたことじゃないかもしれないが、そんな仕事をこなしてるってのに平気な顔してるこいつらがちょっと怖かったんだ。

 

まあ、人見知りってのもあんだけど。

 

それに何より、白井を利用したのは気に食わねーからな。

 

……しかし。

 

こうして歓迎会を開いてくれるのは、悪い気がしねーな。

 

……というか、めちゃくちゃ嬉しい。

 

こいつらが変わってるだけかもしれないが、暗部ってのはもうちょいドライなもんだと思ってたぜ。

 

今までまともに友達がいなかった俺にとって、こんな風に他人に祝ってもらう経験は初めてだった。

 

正直、早くもコロッといっちまい……ごほん、ちっとは仲間として信頼してやっても良いかもな。

 

まあとにかく、乾杯を済ませ早速目の前のご馳走を頂こうとしたその時。

 

——ピンポーン。

 

タイミングの悪いインターホンによって、手が止まる。

 

「チッ、タイミングわりーな」

 

「まあ無視してたらそのうち諦めんだろ」

 

無視無視。今は俺のために開かれたこの歓迎会を存分に楽しむべきだ。

 

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。

 

……躊躇なく連打してきやがる。

 

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピ——

 

いやしつけえよ!

 

こうまで連打されると流石に気が散ってしまう。

 

「うるせーな〜。海翔、アタシがガツンと言ってやんよ」

 

そう言って意気揚々と立ち上がる鐘湖(しょうこ)

 

そんな鐘湖を片手で制す。

 

「いや、俺が出るよ。お前らは気にせず食っててくれ」

 

一応こいつらも客人だしな。

 

「よっこらせっと」

 

「……気を付けなさい。敵かもしれないわ」

 

笹咲は無駄に警戒している様子。

 

この厨二病も最初はウザかったが、慣れれば微笑ましい。

 

そうこうしている間も、インターホンは俺を急かし続けるので急いで玄関へと向かう。

 

誰だか知らんがテキトーに相手してさっさと帰ってもらおう。

 

なんたってこの歓迎会の主役は俺なんだからな、ふふふっ。

 

ガチャリ、とドアを開く。

 

「はーい」

 

「あら、随分待たせてくれましたわね。家に大量の女性を連れ込んで、さぞお楽しみだったのでしょうか?」

 

「あ、あはは……」

 

突然の訪問者の正体はどうやらご立腹な様子の車椅子に座った白井と、車椅子のハンドグリップに手をかけて苦笑いしている御坂さんだった。

 

「説明——」

 

白井が喋り終わる前にバタァンッ!、と俺は半ば叩きつけるようにしてドアを閉めた。

 

後ろを振り返ると、司たちが箸を止め驚いたようにこちらを見ている。

 

「どうした?すげー汗だけど」

 

「もしかして、本当に敵だったの?」

 

「……何でお前は嬉しそうなんだよ」

 

「い、いや、何でもない」

 

……非常に不味い。

 

「……何でもないようには見えないけれど?」

 

「は、はははは……」

 

暗部と聞いたら殆どの人間が、その活動と犯罪を結びつけるだろう。

 

そんな組織に入ったことを、風紀委員(ジャッジメント)の中でも特に正義感の強い白井に知られたらどう思われるか……。

 

まあ暗部の存在は公表されていないし、もし本当に実在すると話してもしょうもない噂話だと一蹴されるのがオチだ。

 

しかし、問題は御坂さん。

 

唯衣の話では彼女は以前、その能力を使って実験に関する情報を調べ上げ、関連施設を潰し回っていたらしい。

 

当然、学園都市がそれを黙って見ていただけとは思えない。

 

そして、司たちもあの実験のことを知っていた。

 

この前司に聞いた仕事内容を考えると、ジンクスが施設の警護に駆り出されていても不思議ではない。

 

考え過ぎかもしれないが、万が一のことを考えるとこいつらと御坂さんを合わせたくなかった。

 

なのでどうにかにしてお帰り頂きたいのだが……。

 

「一体何をしておりますの!早く開けなさい!」

 

「ちょ、黒子⁉︎」

 

バンバンバンッ!

 

……どうやらそれは難しいらしい。

 

となると、司たちをどうにかしないといけないんだが。

 

この部屋の出入り口は現在白井たちが待ち構えている玄関一つのみ。

 

人間二人が隠れられるスペースはないし、何故か白井はこいつらがいるのを知っている様子だった。

 

……ん、二人?

 

慌てて部屋にいる人間を数える。

 

しかし、何度数えても司と笹咲の二人……俺を含めても三人しかいない。

 

ガチ、ガチ——ガチャ。

 

鐘湖のやつ、こんな時に一体どこに行きやがったんだ⁉︎

 

「おいコラお前!一体うちの海翔(かいしょう)に何しやがった!見てみろ、酷く怯えちまってるだろうが!」

 

「いきなり大声を出して何ですの?小学生を相手にしてる暇はありませんの。会話ができるお、と、な、を呼んで来てくださる?」

 

チッ!探している暇はねえ。鐘湖は後回しだ!

 

とにかく司たちに隠れてもらって、この場は白井の見間違いってことで強引にやり過ごす!

 

「テメエぶっ殺すぞ!」

 

「はっ!あなたに出来るとは思えませんが?」

 

料理と飾り付けのせいで違和感が半端ないが、友達がいなさすぎて一人でパーティーを開くのが趣味だとかテキトーかましとけば何とかなるだろう。

 

その後に浴びせられるであろう哀れみの視線を想像すればこの手は取りたくなかったが、この際そうも言っていられない。

 

「まあまあ。黒子、あんたちょっと大人気ないわよ?あなたもこのお姉さんが酷いこと言っちゃってごめんね。知らない人がいきなり訪ねてきて怖かったのよね?大丈夫!あたしたちはちょっと貴船さんに用事があるだけだから。ね?」

 

「子供扱いすんじゃねえクソババア!大体今、アタシはこの勘違いツインテババアと話してんだ!出しゃばってくんじゃねえよブス!」

 

「「なっ⁉︎」」

 

流石鐘湖パイセン。

 

この世で一番可愛いのは自分だと信じきっていないと、あの二人にブスだのババアだのといった悪口は出てこねーぞ。

 

————って、

 

何してくれてんだこいつ⁉︎

 

小学生みたいな悪口をぶつけられた御坂さんは、さっきまで子供扱いしていた相手からの悪口を華麗にスルーするかと思いきや、額に血管を浮かび上がらせている。

 

何とか笑顔を保ってはいるが、それもすぐに崩れ去ってしまいそうだった。

 

もし、鐘湖がまともな頭の持ち主であったなら、自分が今どれほど危険な状況に置かれているのかを理解出来ただろう。

 

だが……、

 

「へっ!オイお前、デコにデッカいシワが出来てんぞ?もうちょい化粧濃くした方がいいんじゃね?お、ば、さ、ん?」

 

こいつはとびっきりの馬鹿らしい。

 

このバカがとんでもない台詞を言い放った瞬間、ここが俺の家じゃなかったら俺は全力で逃走を図っていただろう。

 

今なら見える気がする。

 

……御坂さんの中の何かが、プツンと千切れ飛ぶ瞬間が。

 

司と笹咲がどんな表情をしているのかここからは見えないが、少なくともこの状況の危険さは理解しているはずだ。

 

御坂さんの隣にいる白井もすっかり怯えてしまっている。

 

そう。この場にいる人間の中で、鐘湖だけが気づいていない。

 

それどころかこの瞬間有利なのは自分だと確信しているようで、更に追い討ちをかけようとしている。

 

「あれれー?なんで黙っちゃうのー?あ!もしかして気にしてた?老け顔なの気にしてた?www

ごめんねー?アタシって可愛すぎてさー。ブスの気持ち分かんないんだよねーwwwww」

 

チャレンジャーだなこいつ⁉︎

 

というか、何でこいつは他者に対してこんなにも攻撃的になれるんだ⁉︎

 

「……」

 

黙り込んでいる御坂さんを指差し、踊るように体を揺らしながら、絶妙にイラつく表情で更に鐘湖は御坂さんをおちょくっていく。

 

「てかそれって常盤台の制服じゃね?何でババアが着てんの?wwwwwオイオイ流石にそれは無理があるんじゃねーの?コスプレして浮かれてるババアにしか見えねーってのwwwww」

 

なんて恐れを知らねえやつなんだ。

 

お前の目の前に立っている人間にそんな口を聞いたらどんな目に遭うかなんて、考えれば分かるっていうのに。

 

いや……分かんねえのか。

 

馬鹿だもんな、お前。

 

 

 

 

 

「……あんた、名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ということで現在、御坂さんと白井を加えた六人でテーブルを囲んでいる。

 

「あばばばっ、あばばばば」

 

約一名、床に倒れてリズミカルに痙攣しているやつがいるが……。

 

助けてやろうにも痺れを取るには時間経過を待つしかないし、何より見ていて面白いので放っておくことにした。

 

「そういえば、お前ら何で俺んちに?」

 

当然の疑問。そもそも、俺は白井に住所を教えた覚えはない。

 

「あなたが入院している病院に足を運んだところ、あなたが行方不明になっていると聞きまして。少々躊躇いましたが緊急事態と思いお姉さまに事情を説明して、書庫にアクセスしてあなたの住所を特定しましたの」

 

「あー」

 

……すっかり忘れていた。

 

「黒子、心配してたんですよー。そりゃあ凄い剣幕で私に迫ってきて」

 

「お姉さま!余計なことは言わなくていいんですの!……まあ、否定はしませんが」

 

御坂さんの茶化しに若干頬を染める白井。

 

そんな白井を見て、罪悪感が芽生えてしまう。

 

あの白井が、俺を心配して書庫に不正アクセスをしてまでこうして駆けつけてくれるとは。

 

嬉しいが、悪いことしちまったな。

 

でも、暗部だったらそこんところもうちょい何とかならなかったんですかね司さん?

 

俺は静かに司を睨む。

 

俺の視線に気づいた司は、てへっ(๑´ڡ`๑)、と舌を出して軽く自分の頭を小突いた。

 

くっ、可愛いじゃねーか——じゃなくて!

 

……まったく、一応上司だってのに。

 

今後の仕事が不安になるぜ。

 

「しかし、到着した時は自分の目を疑いましたわ。あなたが大量の女性を部屋に招き入れていたんですもの」

 

「言い方悪りーな」

 

「事実ですの」

 

一応、司たちのことは高校のクラスメイトということで何とか誤魔化した。

 

友達が退院したなら、こうして集まって祝うのも珍しくないだろ?

 

まあ、俺以外のメンツが女しかいないのはまたあらぬ誤解を受けてしまいそうだが、この状況を切り抜けられるなら必要な犠牲だと思うことにした。

 

「うん、美味い」

 

俺は大きめに切り取られたピザを頬張り、そのデンジャラスな味付けに満足する。

 

俺の嫌いな言葉に、「人と食う飯は美味い」というのがあるんだが、今なら何となく分かるかもな。

 

……どうやら自分で思っている以上に浮かれちまってるらしい。

 

そして浮かれているのは俺だけじゃないらしく、隣をちらりと見ると俺以外のジンクスのメンバーも御坂さんとの会話を楽しんでいるようだった。

 

「……超電磁砲(レールガン)、もう一度貴方の能力を見せてくれないかしら?」

 

目を輝かせながら聞く笹咲。

 

「いや、危ないしやらないに決まってるじゃないの」

 

彼女の厨二心に刺さったらしい御坂さんの能力と普段から揶揄われている宿敵、鐘湖を瞬殺した彼女の強さを目の当たりにした笹咲は、御坂さんに妙に懐いているようだった。

 

「的ならそこにあるぜ?」

 

司が意地の悪い笑顔を浮かべながら指差したその先には、某国民的ゲームのモンスターのようにその場で跳ねている鐘湖。

 

……躊躇なく指差しやがったなあいつ。

 

「ばべばばべべばば!」

 

言語になっていない声で必死に抗議する鐘湖。

 

「自業自得とはいえ容赦ないですわね……」

 

「……ああ」

 

俺は、無様に命乞いをする鐘湖を切なく見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 ……まあそんな感じで、不安混じりの状況で始まった歓迎パーティーだったが、心配してたよりも盛り上がっているようで何よりだ。

 

しばらくの間会っていなかった白井と御坂さんは元気そうだったし、思ったより司たちとも打ち解けている。

 

……なんか良いよな、こういうの。

 

何たってこいつらは今日、俺のために集まってくれたんだ。

 

ほんの1ヶ月前までには考えられなかった光景。

 

幸せもんだよな。

 

一方通行にボコられて、怪我が治ったと思ったら追い討ちをかけるように暗部加入とここ最近特に俺の状況は目まぐるしく変わっていたが、そんな気疲れ軽く吹っ飛んじまうくらいにはテンションが上がっちまってる。

 

思い返せば、色々あった。

 

白井に厄介ごとに巻き込まれたのが始まりで、そっから色んな出会いがあり……。

 

そりゃあ、良いことばかりじゃなかったさ。

 

それでも今では、思い出として記憶にしっかりと刻まれている。

 

 

 

 

 

 パーティーが始まって2時間ほどが過ぎ、そろそろお開きとなったころ。

 

俺は車椅子を押し、白井を寮に送っていた。

 

ちなみに御坂さんは現在司たちと一緒に俺の部屋で後片付けを手伝ってくれている。

 

普通に考えて俺と御坂さんは逆じゃねーとおかしいんだが、何故か御坂さんに押し切られて今こうしてるって訳だ。

 

近所の住宅街を抜け、白井が住んでいる常盤台中学の外部寮へと向かう。

 

「ずっと気になっていたんですが、一体何をやらかしたんですの?全身ボロボロ……おまけに両腕骨折というのは尋常ではないですわ」

 

「あー……」

 

確かに改めて人から聞かされると酷いな。しかし、一体どう説明すれば良いんだろうか。

 

間違っても実験のことは話せねーし。

 

困ったな、なんて答えたら良いんだ?

 

「そ、それよりお前の方こそ、その怪我どうしたんだよ?」

 

結局上手い言い訳が思いつかなかったので、話を逸らすことにした。

 

「わたくしは風紀委員の方で少し。……まあ、つまらないミスですわ」

 

「へえー。お前ほどのやつでもそんな怪我しちまうなんて、風紀委員も大変なんだな」

 

ま、当然こいつも本当のこと話すわけねーよな。

 

「それであなたは、何故あんな大怪我を?」

 

「……」

 

マジで何も思いつかねー。

 

そんな俺を見て、白井の純粋な心配の目は次第に訝しむようなものへと変わっていく。

 

「何か言えない事情でも?」

 

「……うーん」

 

「まさか⁉︎最近警備員の間で話題になっている美人局(つつもたせ)に……」

 

「はっ倒すぞテメェ⁉︎」

 

ませてんじゃねえぞこのクソガキが!

 

チッ、黙ってて勝手に妙な早合点されたら敵わねえ。

 

言い訳も思いつかねーし、ここはもう実験の要素を抜いた上で真実を話してしまうことにした。

 

「女の子が変態に絡まれてたから助けに入ったら、返り討ちに遭ってボコボコにされた。あ、女の子は無事だから安心してくれ」

 

うん、嘘は言ってない。あいつも十分変態だろ。

 

まあとりあえずこれで何とか誤魔化せただろ、と思っていた俺だったが、どうやら白井はその理由に納得していないようだった。

 

「……それは感心しませんわね。もしあなたが今後もそういった行動を取るようでしたら、次会う時、わたくしはあなたに風紀委員としての対応を取らなければなりません」

 

白井の口調は普段と何も変わりない。

 

しかしその声色と表情は驚くほど冷たいもので、その迫力に思わず気圧される。

 

久々に見る、本気で怒った白井だった。

 

そんな白井の様子と中学生に本気で説教されているという情けない状況も相まって、俺は結構凹んでしまったよ。

 

なんつーか、今日は白井に迷惑かけてばっかだな……。

 

「ふふっ、反省は出来ましたか?」

 

そんな落ち込んだ俺を見て、悪戯っぽく笑う白井。

 

「さっきまでのは風紀委員としての忠告。ここからは一人の友人として言わせてもらいますが……」

 

白井は微笑み、優しい声色で言葉を続けた。

 

「人助けをすること自体は素晴らしいと思いますわ。しかし、誰かを助けるということは誰かを見捨てるということ。そこで自分を見捨てられる人間は尊敬いたします。けれど、友人にそんな生き方はして欲しくありません」

 

これ以上ないくらいに優しい説教と我儘に、少し噴き出してしまう。

 

お前が残骸(レムナント)の件で取った行動なんて、今言った行動に完璧に当て嵌まってるじゃねえかよ。

 

「何だよそれ」

 

「あなたが傷付けば、悲しむ人間は大勢いるってことですわ」

 

白井のやつ……、恥ずかしい台詞をこうも簡単に言いやがって。

 

「よーく分かったよ」

 

白井の言葉は素直に嬉しかった。

 

——けど。

 

「だったら、お前も無茶な真似はもうすんなよ」

 

「別に無茶などしてませんわ。言ったでしょう、つまらないミスをしたと」

 

……………。

 

そんな白井の反応に、少し不安を抱いてしまった。

 

きっと白井には白井の理想の正義があって、それがさっきの説教に出てきた自分を見捨ててでも誰かを助けるってやつなんだろう。

 

白井の言う通りカッケーし、尊敬できると思うよ。

 

俺には出来ない生き方だからな。

 

しかし、理解出来ない生き方だからこそ分かることもある。

 

人間ってのは見返りがあって初めて動くもの。

 

俺風に言うなら、俺のためになるか、ならないか。

 

それはきっと白井も変わらない。

 

問題はその見返りが、『誰かを助けること』になってしまっているんじゃないかと言うことだ。

 

一見素晴らしい正義観のように思えるが、そんな正義は脆く儚い。

 

そんな正義を信じていればどんな結末を迎えるのかを、俺は()()()()()

 

だからここは、一人の友人として一言言わせてもらおう。

 

「お前が傷付けば俺が悲しい」

 

白井が驚いたように目を大きくする。

 

「……口説いてるんですの?」

 

「いやそのままの意味だけど。お前もさっきほぼ同じようなこと言ってたじゃん」

 

白井は俺の指摘に、思い切り動揺している。

 

「べっべべべべ別にさっきのはわたくしのことではありませんの!」

 

そこまで否定しなくても良いじゃねえか。

 

……傷つくぜ。

 

しかし、俺の意見は変わらない。

 

越権行為は平気で行うくせに、真面目すぎるんだよこいつは。

 

「と、とにかく!今後はこのことを念頭に置いておいてくださいまし!」

 

「へーい」

 

まあ、今更俺がどうこう言ったところで変わるようなやつじゃないってのも知ってんだけどな。

 

らしくないってのは分かってんだけど、何故かこいつに対してはついつい言いたくなっちまう。

 

 

 

 

 

 白井を無事に寮に送り届けた後。

 

「あいつら帰っててくれねーかなー」

 

頭をポリポリとかきながら帰途につく俺。

 

部屋に着き、いつもの癖で鍵を出そうとしてやめた。

 

そのまま扉を開けて中に入る。

 

「ただいまー」

 

「おかえり〜」

 

俺の挨拶に、司が出迎えに玄関までやってきた。

 

「他のみんなはいないのか?」

 

部屋には俺と司以外の姿はない。

 

「ああ。超電磁砲を送ってもらってる」

 

そう答える司の顔はやけにニヤニヤしていた。

 

いつもの悪戯好きの悪ガキみたいな顔だ。

 

「仕事だぜ、新人(ルーキー)

 

……遂に来たか。

 

脳裏に白井の顔が浮かぶ。

 

……よりによってこのタイミングかよ。

 

 

 

 




今回もお読みいただき有難うございます!
更新遅くなってしましすみません。
インフルエンザになって体調を崩してしまっていました。
この時期、コロナじゃなかったのは運が良いのか悪いのか……笑
コロナのせいで存在が霞みがちですが、めちゃくちゃきついのでみなさんも体調管理には気をつけてください。
ではまた次回!
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