周回逆行N回目   作:優鶴

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卒業と就職

イルヴァモーニーで過ごした二年間は、上級生下級生問わず週に一回は告白しに来る生徒がいるという他は概ね平和に過ごした。一生をリリーに捧げ続けた前科のあるセブルスは今さら他の女性を相手にする気にもなれず、クリストファーから渡された告白の手引きとやらを参考にしつつやたらと丁寧で紳士的な断り方をして余計に“誰にも靡かない王子様”として崇められることになっている。ちなみに、本人は無自覚である。質が悪い。卒業を目前にする頃にはソフィアもエドウィンも恋愛事方面でセブルスに話をするのは無駄だとわかったのか告白の断り方に気をつけることくらいしか言わなくなった。

「首席、セブルス・シスルウール。」

名前が読み上げられ、壇上に上がる。適当にそれらしく書いた卒業に際しての想いとやらを述べて終わりだ。それでも、生徒代表として立つというのはやはり新鮮なもので。そんなことを思いつつ卒業式を終えた。

「セヴィはどこに就職するのよ? 」

「闇祓いに決まっている。」

「なるほどこのファザコン。」

「黙れエド。」

懲りもせずにからかってくるエドウィンをセブルスは睨めつけた。

「そもそも養父上の後を継ぐためにイルヴァモーニーに転入したのだ。闇祓い以外の就職先があると? 養父上も闇祓いから魔法執行部部長になったのだろう。」

「セヴィは未来の魔法執行部部長様だものね。」

「順調に出世すればな。」

「学年首席だろ、出世街道驀進に決まってる。しかも背後にはシスルウール閣下と来てるからなあ。」

「ちなみにエドはどこに就職するんだ? 」

「ここ。イルヴァモーニーの教員だよ。魔法史の。」

「魔法史はトップレベルの成績だったな。そういえば魔法史の先生はご高齢だったか……。」

そういえば、とセブルスは魔法史の先生の顔を思い浮かべた。最初に授業を受けた時、“魔法史の教授が生きてる! ”と言ってエドウィンを盛大にひかせた過去を持っているセブルスとしては色々な意味で思い出深い授業だ。ビンズ先生ではない魔法史の授業は思いの外楽しかった。

「ちなみにソフィーは? 」

「魔法薬学研究会よ。セヴィもちょくちょく顔出してくれるんでしょ? 私より優秀な成績だったくせに魔法薬学研究会に行かないで闇祓いになるんですもの。もったいないわ。」

「あとで論文を預けてもいいか。」

「ええ、もちろんよ。興味深いわね、セヴィの論文。」

卒業とはこのようにも感慨深いものだっただろうか。空を仰ぎ、セブルスは就職先へと想いを馳せた。左腕に印はない。後見人は魔法執行部部長。想像したこともないほどに、良い意味で充実した学校生活であり、就職先だった。

 

******

 

「セクタム・センプラ。」

もはや十八番となったなじみ深い呪文だ。黒檀の杖を握り、的を切り裂いたその呪文にほうとどこからともなく感嘆の息が漏れた。

「聞きなれない呪文だな。」

「ええ、ゴールデンホール局長。私が開発した呪文ですので。」

「何と! 自分で術式を組み、呪文を編み出しているのか……いやはや、あのシスルウール閣下が手放しで褒めるだけのことはある。」

「身に余るお言葉です。」

一応これでも史上最悪の闇の魔法使いを欺きとおした過去を持っているのだからこれくらいはできて当たり前だが。そう思いつつもセブルスは局長に軽く頭を下げた。

闇祓いの滑り出しは順調である。

 

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