1※ちょっとリリーが嫌な感じになっているので読み飛ばしても大丈夫です。
「君が護衛とは心強いよ、本当に。クリストファーのお墨付きとはね! 」
そんな言葉がリリーの耳に飛び込んできたのは、ジェームズと魔法省に結婚届を出しに行った時のことだった。
「もったいないお言葉です、大臣。」
耳朶を打った声に聞き覚えがある気がして、リリーは思わずそちらに目をやった。仲違いして、直後ホグワーツを去ってしまった幼なじみ。別に未練があるわけでも何でもないが、目をやったのは反射だった。
「それにしてもセブルス、本当にクリストファーは見る目があるものだ。そして君という優秀な人材を我が国の寄越してくれるとは、イギリスも素晴らしいね。」
セブルス―――呼ばれていた名前は、同じだった。スーツを着こなし、黒髪をきっちりとセットして重役であろう人の傍に立つ姿は全くの別人に見えたが。
「大臣、お戯れを。」
「君は謙遜が得意なようだ。もっと自信を持っても良いのだがね。」
「大臣にそれほど評価していただけるなんて嬉しいものですよ。ですが、過度な自信は驕りと油断につながりますので。」
「それでこそ精鋭の闇祓いだ。私はいつ君に魔法大臣の座を明け渡すことになるのかな。」
精鋭の闇祓い―――大臣、と呼ばれている人は、どれほどの重役なのか。
「リリー、どうしたの? 」
「あ、ええ、ジェームズ……見慣れない方が、あそこにいるなと思って。」
「ああ、アメリカの魔法大臣が来るってシリウスが言ってた気がするな。」
「……そう。」
アメリカの魔法大臣に目をかけられている精鋭の闇祓い。そのフレーズが、ふと頭に浮かんだ。リリーがジェームズを選んだのは、間違っていたのだろうか。そんなことを、思ってしまうくらいには魅力的なフレーズだったのだろう。本人にそんな自覚はなかったが。
2ハーマイオニー→セブルス、未満。
ハーマイオニーはその日、アメリカの魔法大臣の案内の役目を拝命していた。マクーザと呼ばれるアメリカ魔法評議会のトップに立つ人物の案内を任せられるのは出世の道が一歩開けたということだろうか。
「失礼、あなたが今日の案内役か? 」
黒髪をきちんと固め、スーツを着こなした壮年の男性。思わず素敵、と思ってしまったハーマイオニーは心の中で慌てて首を振った。写真で見ていたものより、ずっと威厳と風格がある。セブルス・シスルウール、名前を頭の中で反芻した。
「はい、シスルウール閣下。案内を務めさせていただくグレンジャーと申します。」
「……やはりか。」
「はい? 何かおっしゃいましたか? 」
「……いや。ところで、ホグワーツを卒業してまだ幾ばくかも経たぬのでは? 」
その言い様に少しカチンときた。
「このような小娘の案内では安心できませんか。」
「そうではない。私も五年生まではホグワーツに通っていたもので、つい懐かしくてな。話が聞けたらと思ったまでだ。」
何だ、そんなこと。ハーマイオニーは思わず拍子抜けした。
「……ミス・グレンジャー。黙っていないで案内をしてくれ。」
その言葉でハーマイオニーは我に返った。つい見つめてしまっていたらしい。
「失礼しました、シスルウール閣下。シャックルボルトが待っています。」
軽く一礼し、ハーマイオニーは大臣を先導して歩き出す。歩き方も堂々としていて、やっぱりこの人素敵、と思ってしまうのをおさえられなかった。