「セヴァ! 今日も可愛いね! 」
満面の笑みでステアフォールス邸を訪れたトムはそう言うなりセブルスを抱きしめた。義弟を溺愛する彼はいつまで経ってもセブルスに対して可愛いと言い続ける。
レティシアは仕事に出かけているので特に取り繕う必要もなく、セブルスは抱きしめられるがままになった。年々増しているような気がする義兄からの真っ直ぐな愛情表現は素直に嬉しいと思えるようになったので。たまに鬱陶しいこともあるが。
「トムは相変わらずセヴィが大好きね。」
「ソフィーも久しぶり。」
「ええ、いらっしゃい、トム。あなたの子どもたちも元気? 」
「うん、今度ルドミラのところに孫が生まれるからね、そろそろおじいちゃんだ。」
「おめでとうございます、トム義兄様。」
抱きしめられたままセブルスは祝福の言葉を贈った。レストレンジ夫妻の息子とルドミラの息子だ、トムに心酔しているレストレンジ夫妻は孫を溺愛するだろうしトムも家族へは溢れるほどの愛を注いでいる。シャーロットも言わずもがな愛情深い女性だ。生まれてくる子どもは両親と祖父母たちに愛されることだろう。――良いことだ。
「ありがとう、セヴァ。ああ、そうだ、本当はこれを一番先に言うべきだったんだ。セヴァ、誕生日おめでとう! 僕の可愛いセヴァが生まれてくれたこの日に感謝するよ。」
ぽん、と思い出したように手を打ったトムはようやくセブルスを解放してから杖を振った。途端にセブルスの腕に白蛇が巻きつく。赤い舌がちろちろと覗いた。
「プレゼントは蛇だよ。どうかい? 」
「可愛いですね。……名前は? 」
蛇語を習得して死因であるはずのナギニを飼いつつ可愛がるうちに、セブルスはどうにも蛇が可愛く思えるようになってきた。スリザリンの象徴でもあるしイルヴァモーニーでは角水蛇寮出身だ。蛇とは縁がある。
「ヴォルデモートだよ! 」
笑顔で言い切ったトムにセブルスは流石に少しばかり顔が引きつりそうになった。
「参考までにどうしてその名をつけたのかお伺いしても? 」
「闇の帝王は僕の黒歴史だけど、ヴォルデモートの名前は実は結構気に入ってる。だからセヴァにあげたくて……蛇も好きだしヴォルデモートの名前も気に入ってるしセヴァは可愛いから好きなものが三つ揃えばすごく可愛いんじゃないかって思い立って。」
何だそれは。足し算すればいいんじゃないかって何だその思考回路は、仮にも学年首席がそれでいいのか。そう思わないでもなかったが、セブルスは何だかんだこの義兄が大好きだったのでそう言われてしまえば断ることもできなかった。いいや、この機会にヴォルデモートの名前に耐性つけよう。そう思ってセブルスは腕に巻きついた白蛇を撫でた。
この水道管ホースみたいな触り心地は一度覚えると癖になる。ちろちろと赤い舌が覗くのにセブルスは思わず頬を緩めた。
「……可愛いですね。」
「可愛いだろう、ヴォルデモートは。」
「ヴォルデモートだと長すぎません? 」
意外と抵抗なくその名を口にできたセブルスは自分で自分に少し驚いた。これだけトムが危機感のないヴォルデモートという言葉を言うのだからその影響か。
「そうだね、長いと思うのならヴォルとでも呼んであげたらどうだい? 」
「……そうですね。ヴォル。」
なんて可愛いんだこの子は。優しく新しいペット――ヴォルデモートを撫でるセブルスにトムが破顔する。
「やっぱり可愛いね! 好きなものと好きなものと好きなものの組みあわせは最強だ! 」
どうにも頭の悪い気がしてならない結論を出したトムだったが、まあ幸せそうだからいいかとセブルスは適当に受け流したのだった。
――とはいえ、飼っている蛇の名前がナギニとヴォルデモートというのはあまりにも悪趣味が過ぎるな、とは思った。