「セブ、おはよう! 」
「うん、おはよう。リリー。」
グリフィンドールの制服はまだ着慣れていない様子で、入学直後の初々しさがあふれている。イルヴァモーニーで監督生として後輩を気にかけていた頃のことを思い出し、セブルスはなつかしさに思わず笑みをこぼした。
二度も娘を育てたあととあっては、この年頃の子に恋情など抱きようがない。だって精神年齢三桁に乗っかったところで11歳の女の子を好きだとか言ったらロリコンである。犯罪である。最愛の娘がそんな目で見られているかもしれないとか思ったら耐え切れないに決まっている。彼女の親御さんの気持ちになってみれば恋慕などどこかへ吹っ飛ぶものだ。そしてやっぱりレティシアが世界一可愛い。私のレティが一番大事。それがきちんと確認できたということは、上手く立ち回ればポッターとのリリーを巡る面倒な諸々が回避できるかもしれないということ。希望が見えた。それはそれとして、友人としては――今の自分にそれを名乗る資格があるのかはわからないが、現時点でリリーは自分をそう認識しているはずである――リリーをポッターの毒牙になどかけたくはない。しかしポッターはリリーをそう簡単にあきらめない。あいつ往生際もあきらめも悪いからな。なお偏見である。
ふむ、ならば――セブルスは答えを見出した。ポッターをリリーを預けるに値する人間にすればいいわけである。そうしたらすべてがうまくいくではないか。リリーと会って確信したが、今のセブルスは一生を共にする配偶者はソフィアしか考えられないのであるから。
「……男の子の子育ては、初めてだな……。」
「今なんて言ったの、セブ? 」
「何でもないよ、リリー。早くしないと朝食に遅れる。」
「もう、ぼうっとしていたのはセブでしょう! 急ぐわよ! 」
「あ、リリー、そんなに急いで走ったら転ぶかもしれないから気をつけて! 」
「セブったら心配性ね、チュニーみたいなこと言うんだから……。」
その言葉にセブルスは頭を抱えたくなった。そうだ。ペチュニア。彼女の方もちょっとどうにかしないといけないのだった。自分が幸せにしたいとも幸せにできるとも思っていないが、リリーには幸せでいてほしいのでそのためのお膳立てはするつもりである。姉妹仲が良いに越したことはないし、万一ヴォルデモートの襲撃とリリーの死、そしてダーズリー家にハリーが預けられるのを回避できないことがあるなら、対策として有効であるはずだ。そんな最悪など想定したくないが、常に最悪を考えて動くのが最良というものである。
「もう、セブ、またぼうっとして! 朝ごはんに遅れちゃうんじゃないの? 」
「うん、そろそろ危ない気がしてきた……行こう、リリー。」
「そうよ、わたし、お話ししてたらお腹が空いてきちゃった! 」
幼い子供の無邪気な笑顔が眩しい。可愛いレティが恋しいが、今生ではアメリカに逃げずにイギリスで踏ん張ってみることに決めたのだ。レティ恋しさに挫折などしているわけにはいかない、そんなことをしたらレティに恰好がつかない。お父様は頑張るからな。娘が生まれて以来、そこに娘がいなくともセブルスの世界は愛娘を中心に回っているのであった。