ーーー都会から少し外れた街、そこはとても治安が悪いということで有名。めったなことでは近寄る人は少ない。いるのはそれに似あった者ばかり。
あまり人の出入りが少ない森。夜ということもあってか、不気味なほどに静かだ。
聞こえてくるのはこの時期もあり鈴虫の音、草木を踏む己の足音、たまに吹く柔らかな風はサワサワと木々を撫でる。
そんな暗闇の中で似使わない音が聞こえた
〜〜ッ・・・〜〜ゥッ
「・・・なんの音だ」
かすかに聞こえる小さな音、よくよく耳を澄ましてみるとそれは人の呻き声だと認識した。
ゆっくりとその方向に足を向けた。歩けば歩くほどその音は大きくなる。
「・・・あら」
歩いたその方向には小さく蹲る小さな子供がいた。さらに近寄ってみるとカタカタと小さく震え、傷だらけの少女
「君はどこから来たの?・・・」
そんな返答に少女は答えなかった。気を失っている様子だった。
夜は肌寒い、ましてや森のなかは町と違い温度差は多少なりともある。そして傷だらけで薄着の子供・・・一気に体力を奪われて死ぬだろう。
「ふ〜ん・・・可愛い子だね。僕の娘にしよう」
男はしゃがみ込み、少女を抱えて森の中を出て行った。まるで大きなおもちゃを見つけたように楽しげに消えていった・・・
暖かい・・・体も痛くない・・・人の話し声が聞こえる・・・誰だろう・・・・
ゆっくり目を開けると見覚えのない天井。
かけられた毛布、手首や頭には包帯が巻かれ手当てされていた。ユラユラと光るそれはだるまストーブ。その上には熱で温められたヤカンが口から白い煙を出していた。だんだんそれはピーーーッと甲高い音が鳴り、沸騰したことを伝えた。
ダンっと力強い足音が聞こえ、そこに視線だけ送った。音からして1人だけの音ではなかった。
「起きたんだね。
「そんな大きい声出さなくても分かりますよ。
狭い部屋に襖を開けて入ってきたのはタッパのある男2人。
1人は食事らしきものを手に持っていた。その匂いが一気に香り、少女のお腹を刺激した。
グルルぅ〜〜……
鳴った感覚に生きてるんだと実感した。
「さっ、まずはご飯にしようなー!体起こせる?」
犬埜は床にお盆を置き、少女の体をゆっくり起こした。
その男はまるでお世話を楽しむかのように笑顔で鼻歌を歌い始めている。
怜の手には小さい桶とタオルを持っていた。
「怖がらなくて大丈夫ですよ。色々気になることがあるとは思うけど、先ずはお粥を食べながらゆっくりお話しましょうか」
「ふーっ、ふーっ……はいっ!口開けて」
「………ぁっ」
小さい口を開け、お粥をゆっくり口に運んだ。黙々と食べる少女と楽しげな犬埜。まるで親鳥が雛に餌をやっているような光景だ。
「…君名前は?」
「……わか、りません……」
「年齢は5〜7歳くらいにみえるけど、わかるかな?」
「……わからない」
記憶がない様子に怜はニコッと笑い、「ありがとう」と一言伝えた。普通ならこの状態でパニックになる。尚更子供なら不安しかない状態なのに知らない家、知らない男2人に対し冷静に…いや、まるで意思がないような。まるで空虚、すべてを諦めたような…。しかし、今それを問い詰めたところで少女に応えられるとは思えなかった。
「うん、ぜーんぶ食べたね。えらいねー。じゃっ体拭こっか」
「ケン、変わります」
次は怜に代わり、桶に水が入ったとこにストーブに置いてあるヤカンで熱湯を少し注いだ。温度を調節しながらタオルを沈め、絞る。
「さっ、体拭かせてもらいますね」
「あったかい……」
「よかったです。さ、腕も拭いて包帯も新しいのにしましょう」
ボロボロな服を脱がせて背中・腕・足など丁寧に拭き上げる。
「さぁ、終わりました。これを着てください。今これしかないので我慢してくださいね。大人サイズの服なので大きいと思いますが」
そう渡されたのは大人サイズの白いTシャツ。大の大人の服を子供が切れば床に引きずるくらいにはなる。
「ハハッ…やっぱり大きいですね。今は我慢してくださいね。さっ、傷を癒すためにもゆっくり寝てくださいね」
そういって怜は少女をゆっくり寝かした。
少女は言われたようにもう一度寝直した