邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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75話 進歩

 ぼくたちはいつものようにカーレルの街で依頼を受けながら過ごしていた。

 その中で、人型モンスターと戦う機会があった。幸いにも対処法が分かっているモンスターだったので、メルセデスたちの訓練としてオーバースカイみんなでそのモンスターと戦った。

 メルセデスたちは初めての人型モンスターとの戦いでも罠に引っかかったり、モンスターの言葉に惑わされたりする事なく戦えていた。

 ぼくのように人型モンスターを倒してしまった事で悩んでいなかった事もあり、安心して次からも一緒に人型モンスターと戦えるだろう。

 メルセデスたちの成長が実感できて、ぼくがうっかり泣きそうになった事しか問題はなかった。

 ノーラはモンスターと敵対することを何も気にしていない様子だし、オーバースカイはこれからも上手くやっていけそうだと思えた。

 

 それからは特に難しい依頼が来ることは無く、のんびりとまではいかないまでも、それなりに落ち着いて日々を過ごすことができていた。

 

 そんな中でミーナと戦う機会を何度も用意していたのだが、ある日の模擬戦の後にミーナからある提案を受ける。

 

「ユーリ、僕たちをオーバースカイの一員にしてくれないか? ヴァネアに相談したけど賛成してくれたから、後はオーバースカイ次第なんだ」

 

「坊やとミーナが勝負することも良いけど、協力して他のモンスターと戦うってのも悪くないと思ってね。どうかしら?」

 

 ミーナの提案にはびっくりしたけど、ぼくは乗り気でいた。ミーナやヴァネアと隣で戦えることはきっと楽しいし、2人とも頼れる戦力であることは間違いない。

 みんなが賛成してくれるかどうかだけど、ぼくは大丈夫だと感じていた。それでも、相談もせずにぼくが勝手に決めるわけにはいかないから、いったん持ち帰るか。

 

「みんなの意見を聞かない事にはちゃんとした返事は出来ないけど、ミーナたちと一緒に冒険が出来たら嬉しいよ」

 

 ミーナとヴァネアは明るい顔になってくれたけど、これがぬか喜びにならないといいな。きっと大丈夫だとは思うけど。

 

 みんなに相談した結果としてミーナたちをオーバースカイに迎え入れることが決まったので、2人にそれを伝えた後、一度依頼を受けてみることに決めた。

 ぼくとミーナたちならばきっとうまく連携できると思うけど、他のメンバーとの連携もしっかりしないといけないからね。

 まずはいつも使っている闘技場で最低限の動きを確認してから、マナナの森へと向かった。

 

 マナナの森には普段はあまり強いモンスターはいないので、異常がない事を確認しておけばいい練習場所なんだ。

 今回確認するのはミーナたちとの連携の確認だけど、大きく分けて2つの確認事項を用意していた。

 ノーラやユーリヤとの前衛どうしでの連携と、カタリナやフィーナとの後衛との連携だ。

 全員での連携をいきなり試すのは難しいと思うので、まずは小さいところから。順調に進んだら全員での連携も試してみるつもりだ。

 メルセデスやぼくみたいな立ち位置だと、個人との連携を考えるよりも全体の足りないところをフォローするのが良いから、しっかりと今回の練習を見ておくつもりだ。

 それで動きの癖なんかを確認しておいて、出来るだけ先回りして水刃などの契約技を撃てるようにするつもりだ。

 メルセデスは前衛としてはミーナたちと比べれば頼りないけど、契約技の運用はずいぶんうまくなった。

 なので、水の膜で上手いこと敵の動きを邪魔してくれるのだ。

 ぼくは前衛専門と比べてもそこまで引けを取らない位の実力はあると思うけど、オーバースカイに足りないのは前衛ではないので遊撃として立ち回るつもりだ。

 ユーリヤも遊撃は出来るんだけど、鉄の糸をうまく使おうとすると前衛が少ない方が良いので、今のメンバーなら前衛を任せた方が良いという判断をした。

 

 まずは前衛どうしの連携を試してみたけど、ミーナもヴァネアも視野が広いので上手く邪魔にならない立ち回りをできていた。

 みんなかなり素早いのでいきなりは難しいかと思っていたけど、そうでもなかった。

 上手くばらけて多方面の敵に対処したり、流れるような動きで次々に敵に攻撃を当てたりと、初めての実戦とは思えないほどの連携だった。

 この中ではノーラが一番速いんだけど、他のみんなもそう変わらない速さで動けているのでそれぞれが相手の動きに合わせられていた。

 ぼくがミア強化を手に入れた時に連携がうまく出来なかったのとは大違いだ。あの時とはみんなとの速さの差がだいぶ少なくなったから、今ならうまく出来るかも。

 まあ、それは今やるべきことじゃない。ミーナたちの連携をしっかりすることが先だ。

 

「ミーナさんたちはとっても強いんですねっ。安心して背中を任せられますよっ」

 

「まあ、悪くはないのではないか? うちの戦いの参考になるかもしれんな。うちは人間のような戦い方はまだ出来んからな」

 

 後衛とミーナたちとの連携は、カタリナとミーナたちに関してはすぐに上手く行った。

 ミーナたちはカタリナの射線には絶対に入らないようにしていたので、カタリナはいつでも好きなように弓を撃つことができていた。

 

 問題はフィーナの方で、ミーナたちにはフィーナの使う衝撃の範囲が分かりにくいので、フィーナがどこを狙っているのかうまく察する事ができていなかった。

 フィーナが手を狙った先に向けることで対処していたみたいだ。ミーナたちはフィーナの手を見ることでどこを撃つのか察していた。

 それではフィーナの強みである衝撃をどこにでも撃てるという事を生かしきれないので、対策を考えてみた。

 ただのモンスター相手なら今のままでも十分なんだけど、人型モンスターが相手だと狙いがバレバレだというのは危険だからね。

 その対策というのが声で合図する事なんだけど、勿論声でも人型モンスターはどこを狙っているか理解してくる。

 それに対処するために、声と腕の両方を使い分ける練習をして貰った。すると、すぐに上手く連携できるようになっていた。

 

「ミーナさんたちが前衛だと弓が撃ちやすいわね。あんただって慣れているから十分だけど、うかうかしてたら抜かされるんじゃないかしら?」

 

「わたしはもう少し慣れる必要があるかと……ユーリさんが相手だとやりやすいというのがよく分かりました……」

 

 ミーナとヴァネアもフィーナも信じられない位の成長速度で、ぼくも油断したら置いていかれてしまうと感じた。

 もちろん訓練を緩めるつもりはないけど、ちゃんと強くなっていかないとね。

 それはさておき、今後のために暗号で指示することを検討してもいいかもしれない。

 複雑な暗号なら戦闘中には使えないので、いくつか行動のパターンに相当した単語を作るつもりだ。

 それくらいなら出来ると思うんだよね。全力攻撃だとわかりやすいから代わりにエトナって単語にするみたいに。

 それだと何のつながりもなくて覚えにくいかもしれないな。略称くらいの方が良いのだろうか。

 今すぐに思いつくことでは無いだろうし、今後のアイデアの1つくらいの認識でいいか。

 

「どうだい、ユーリ? 僕も君たちの仲間として十分に活躍できるんじゃないかな」

 

「アタシだって役に立てるはずよ。ミーナともどもよろしくね」

 

 もともとミーナたちの実力については心配していなかったけれど、ここまでうまく連携できるようになるとはね。

 まだ空は十分に明るいから、みんなでの連携を試してみるのも良いかもしれない。

 でも、ちょうどいい敵がいるかが問題だよね。人型モンスターは今の状況では現れないだろうし、モンスターが多いところを探してみるか。

 いくつかの候補を回ってみると、いい感じの敵が見つかった。適度に分散しないと倒しにくい程度の数で、うまく連携すればすぐに倒せるだろう。

 

「あそこにいる敵で練習してみない? ぼくたちなら1人でも倒すだけならできるだろうけど、素早く倒すならちゃんと連携しないといけないよね」

 

「僕は賛成だよ。他の人と一緒に戦うのも良いけど、やっぱりユーリと一緒に戦ってみたいんだ」

 

「そうね。坊やと一緒なのが一番いいわよね。アタシも賛成ね」

 

「アクアも戦ってみたい。せっかくユーリと一緒に戦える機会なんだから」

 

「あたいも活躍したいっすよ! せっかくオーバースカイに入っても、あんまり活躍できないんじゃ寂しいっす」

 

「私も賛成よ~。アクアさんと協力することを試してみたいわ~」

 

 みんな戦ってみたいのかな。今のところ今日あまり戦っていない人が先に賛成しているし。まあ、弱い敵と戦えるうちに訓練しておきたいから、みんなが乗り気なのはありがたい。

 他の人たちも賛成してくれていたので、目の前にいる敵で連携の練習をすることに決めた。

 

 メルセデスと協力して水の壁を作って敵の逃げ場をふさいだ後、まずはフィーナとカタリナで攻撃して敵をこちらに誘導する。ついでにある程度敵の数も減らしてくれた。

 こちらに向かってきたモンスターをアクアとメーテルが足止めして、そこからあぶれた敵を前衛が一気に片付けていく。

 前衛から離れたところにはぐれている敵はぼくが水刃で仕留めていき、まとまっている敵はフィーナとカタリナが一掃する。

 ある程度敵が減ってしまえば後は前衛の独壇場で、ノーラは密度が高めの敵を素早く力強く倒し、ミーナとヴァネアは密度が低い敵を流れるように倒す。ユーリヤはどちらにも参加しつつうまく他の味方をサポートしていた。

 アクアとメーテルは念のために後衛を守ってもらっていたけど、後衛の方へ向かってくる敵は1体もいなかった。

 

 結局あっという間に敵を倒してしまって練習としては短い時間だったけど、ある程度の手ごたえはあった。人型モンスター相手でも十分に通じるくらいの連携だと思う。

 万が一人型モンスターが複数現れても、よほどの化け物がいない限りはどうにかなるだろう。

 

「うん、ミーナとヴァネアはオーバースカイでもうまくやっていけそうだね。改めて、よろしくお願いするね」

 

 ミーナもヴァネアも笑顔でうなずいてくれた。オーバースカイのメンバーも増えたけど、みんなでうまくやっていけると確信できた。

 

 次の日、いつものように組合へ向かうと、慌てた様子のサーシャさんに呼び止められた。

 

「オーバースカイの皆様、大変ですわ。王都の近くに強大なドラゴンが現れたようですわ。オーバースカイの皆様にも討伐に協力していただきたいのです」

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