邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム 作:maricaみかん
ぼくはアクアと2人で遊んでいて、その中でアクアに食べちゃおうかと言われた。
そんなぼくは、ついアクアに食べられる想像をしてしまう。
アクアに取り込まれて、アクアの一部として存在するぼく。
魅力的に思えてしまって、つい我慢ができなくなって。ぼくは引き返せない一線を踏み越えたんだ。
「ねえ、アクアはぼくの意識を残したままにできる? なら、食べられたい。アクアと一緒になりたいよ」
「なら、ユーリを食べてあげるね。ユーリの心は、アクアの中に残しておくから」
そのまま、ぼくはアクアに取り込まれて、ゆっくりと溶かされていった。
本当ならきっと痛いのだろうけれど、全く苦しみのたぐいはなくて。
これからアクアとひとつになるんだと、嬉しさがあふれてしまったんだ。
そして、ぼくの体はなくなって、ぼくは何も動かせなくなってしまう。
それでも、アクアに直接思考を伝えられること、アクアの考えが流れてくること。
それらがとても心地よくて、だから、食べられてしまってよかったと。そう思えた。
(アクア、ぼくは美味しかった?)
(さあ。アクアは味がわからないから。でも、今は最高の気分。ユーリがアクアの中にあるって感じるから)
つまり、アクアも幸せでいてくれるってこと。
良かった。ぼくが勝手に先走って、アクアを悲しませていただけだとしたら。ぼくは後悔していただろうから。
(ユーリの意識が残っていないのなら、きっと寂しかった。でも、ユーリがいい方法を教えてくれた)
アクアにはぼくの考えがすべて伝わるみたいなんだ。だから、少し恥ずかしい気もする。
そして、アクアの考えはアクアがぼくに伝えたいと考えたことだけが流れてくる。
だから、ぼくはアクアの思うがままなんだろうな。でも、それが心地良いくらいだ。
(ふふ。やっぱりユーリはアクアが大好き。よく伝わってくる。アクアもユーリが大好き)
当たり前のことなんだけどね。ぼくがアクアを大好きなのは。
だって、これまでずっと一緒にいたから。そして、ずっと幸せだったから。
今ではこれまでのように、アクアと球遊びとかはできないけれど。
だとしても、今の新しい幸せの形が、とても素晴らしいと思えるんだ。
(ユーリが幸せならいい。後悔していたとしても、体は戻せないから)
そうだよね。取り返しがつかないと分かっていたのに、自分を抑えきれなかった。
でも、そうか。うっかりぼくが悔やんでいたら、アクアを悲しませていたのか。
うかつな行動だったかもしれないな。だけど、本当に幸せだから。
アクアとつながっていると思えるだけで、どうにかなりそうなくらい。
(アクアも似たような気持ち。ユーリをずっと感じていられる。ユーリの心を直接味わえる。とてもいい気分)
ぼくもアクアの心を直接感じてみたい気もするけど。
でも、アクアも隠したいこととかが有るのかもしれないからね。
無理にとは言わないし、言えない。
ぼくにとって、アクアの幸せが何よりも大切なことだから。
(ありがとう。ユーリがアクアを大切にしてくれて、とても嬉しい。ユーリには、なにか願いはある?)
どうだろうね。強いて言うなら、みんなと話せないことが寂しいくらいか。
でも、仕方のないことだから。ぼくはみんなよりアクアを選んだんだから。
ぼくがいなくなったと知ったら、みんな悲しんでくれるかな。
でも、悲しんでくれるよりも、幸せでいてくれる方が嬉しいかもね。
(そう。でも、他の人達に会わせることはできない。諦めてもらうしかない)
仕方のないことだよね。わかっているよ。
ただ、少しだけ感傷のようなものがあっただけだから。
結局、みんなと最高の冒険者になることはできなかったな。
でも、後悔はしていないんだ。みんなには悪いかもしれないけれど。
(カタリナは怒りそう。でも、きっと許してくれる)
そんな感じだよね。カタリナは態度は悪いかもしれないけど、優しいから。
ぼくだって何度助けられてきたことか。
でも、そうだよね。他の人とも、もうふれあえないんだ。
それに、アクアと手を繋いだり、体をアクアの中に入れて遊んだりすることもできないね。
(なら、スライムの体で良ければ用意するけど。でも、みんなとは会えないと思う)
だよね。スライムが現れてぼくだって言っても、誰が納得するのやら。
でも、アクアと触れ合えるのだと思うと、嬉しいな。
もちろん、いまアクアと心がつながっている感じも最高なんだけどね。
(全部アクアの体で、ユーリに動かせるようにするだけ。だからユーリ、お願いしてみて)
アクア、お願い。ぼくはアクアの感触や冷たさを、また感じてみたいんだ。
(分かった。なら、しばらくのあいだは体を貸してあげる)
そう言ったアクアはそのまま新しい体を増やしていく。
そして、すぐにぼくが動かす体はできあがった。
ぼくがいつものように体を動かそうとすると、そのまま動かせる。
ただ、スライム特有の動きはできないみたいだ。
(ユーリが慣れてきたのなら、そういうこともできる)
体が分かれても、アクアと思考はつながっているんだな。とっても嬉しいかも。
それにしても、なんというか、あまり違和感がないな。
スライムの体を動かすのだから、もっと変な感じがしてもおかしくないのに。
(ユーリに合わせて調整したから。ちゃんとアクアを感じられるように)
そっか。アクアの体温とか感触を感じたいって言ったもんね。
だとすると、アクアと手を繋いだら冷たいのかな。
そんな事を考えていると、ぼくが動くより先にアクアが手を差し出してきた。
その手をつなぐと、アクアのひんやりした温度がまず伝わって。
次に、弾力を兼ね備えた柔らかさを感じた。
やっぱり、アクアとふれあっていると落ち着く気がする。
アクアを大好きだという気持ちが、気持ちを和らげてくれるのかな。
(ふふ。大好きって思ってくれるのは嬉しい。アクアも大好き)
アクアから直接気持ちが伝わってくるこの感覚も素晴らしいけれど。
せっかくだから、アクアの声を耳から感じてみたいな。
平坦なようで、聞き心地の良いあの声を。
「ユーリ、アクアの全部が好きみたい。アクアも、ユーリの全部が大好きだけど」
そうかもね。声も姿も、表情も仕草も、能力も種族も。
きっと何もかもが大好きなんだと思う。
そんなアクアだからこそ、食べられてしまいたいとすら考えたのだろうね。
(ユーリの全部はアクアのものだけれど。せっかくだから、ユーリの初めてを奪いたい。ユーリ、キスしよう)
もう声を出すのをやめちゃったのか。名残惜しさがあるな。
でも、アクアがやりたいようにするのがいいか。
それにしても、キスか。まあ、どうせぼくに恋人ができることはないから。
未来の相手に不誠実だとか考える必要はない。
だから、アクアが欲しいものは全部あげていいと思う。
他にぼくの大切な初めては思い浮かばないけれど、アクアが望むのならば。
しかし、アクアにキスをするとなると、照れくさいな。
ぼくは恥ずかしさのようなものを振り払って、アクアに向かい合う。
そして、ゆっくりと顔を近づけていって。そして唇どうしが触れ合った。
アクアの唇はプルプルしていて、とても心地が良い。
何なら、何度でもキスをしたいと思えるほどに魅力的だった。
(ふふ。これで、今日のユーリの体はおしまい。次の機会は、いつにしようかな)
アクアの言葉通り、ぼくの体は動かせなくなってアクアに取り込まれていく。
そうか。これからはアクアの気分次第でしか、何もできないんだな。
まあ、アクアの手のひらの上だというのならば、嬉しいくらいだけれど。
それからもアクアとひとつの存在としてしばらく過ごして、ある日。
(ねえ、あんた。いなくなったと思っていたら、アクアに食べられていたのね。バカじゃないの? まあ、あたしも同じバカなんだけど)
こんな風に、急にカタリナが話しかけてきた。
つまり、カタリナもアクアに食べられちゃったってこと。
カタリナはそれで大丈夫だったのだろうか。
今伝わってくる思考からは、カタリナらしさは失われていないと思うけれど。
(ごめん。冒険者の頂点に立つって夢を捨てちゃって)
(まあ、文句はいっぱいあるけれどね。いいわ。あんたの心を直接感じられる。それも悪くはないから)
カタリナとはもう会えないと考えていたから、こうして会話と言うか、意思疎通ができることは嬉しい。
ただ、無理やり食べられていないかは心配だ。
アクアを信じていないわけじゃないけど、自分から食べられるなんて人はぼくくらいだろうし。
(ユーリがどこにいるのか教えてあげたら、カタリナはすぐに決めた)
(アクア、そんな事を言ったら……仕方ないわね。あんたと離れ離れになるより、こっちのほうがマシってだけよ)
カタリナはそこまでぼくのことを大切に感じてくれていたのか。
申し訳ないような、嬉しいような気持ちがあるな。
ぼくは結局、アクアに食べられることを我慢できなかったのに。
でも、カタリナとも一緒にいられるんだ。ありがたい限りだよね。
それから、カタリナとも思考を伝え合う関係になって。
しばらくの時間を過ごしていると、どんどんアクアに食べられた人が増えていった。
(ユーリ君、アクアちゃんに食べられちゃったんですね。でも、これも絆の形でしょうか)
(アクアに食べられても、案外自由は残っているね。何なら、私達と冒険してみる?)
(お姉さんに黙っていなくなるなんて、減点だよ。でも、また一緒にいられるね)
(ユーリさん、あなたがいなくて寂しかったんですよっ。だから、もう離れませんからっ)
(ユーリ様とひとつになる。悪くない気分ですわね。エルフィール家の発展も、アクア様の力ならきっと)
(……ユーリさん、あなたの傍にいられるのなら。どんな形でも構いません……)
色んな人がアクアに取り込まれていって、ぼくは大変なことをしでかしたんじゃないかと感じた。
だけど、もう後戻りはできないから。せめて、今の幸せが続くことを祈りたい。
ただ、みんなとひとつになる感覚は、すごくいい気分なんだ。
だから、後悔はしていないよ。
アクアはユーリに食べられたいと伝えられて、即座にユーリを食べることにした。
ユーリの体が失われることに一抹の寂しさがあったものの。
それでも、ユーリとひとつになる感覚はアクアにとってとても心地よいものだった。
ユーリはアクアに食べられて体を失ったが、アクアの思考が伝わる感覚を喜んでいて。
だから、アクアはユーリをもっと喜ばせたいと考えた。
ユーリの思考が直接伝わってくる幸せを、ユーリの幸福を感じる幸せを、もっと増幅させたくて。
そのために、ユーリにも動かせる体を生み出そうとした。
アクアにとっては初めての試みで。
だが、ユーリのことを考えるだけで気力がみなぎって、すぐに実現できていた。
ユーリは明らかにアクアとふれあうことを楽しんでいて。
ただ、ユーリをせっかく取り込んだ感覚はもっと味わいたい。
そう考えたアクアは、ユーリのための体をたまにしかユーリに使わせないと決めた。
ユーリは当然のことのように受け入れていて、アクアはまた楽しくなった。
それからもユーリと日常を過ごしているうちに、アクアはふとあることを思い立った。
ユーリ以外の大切な人も食べてしまえば楽しいのではないかと。
だから、まずアクアはカタリナを食べていった。
カタリナは混乱していたようだが、ユーリの状況を理解すると、諦めたように受け入れた。
アクアは念のため、カタリナがまずい思考をユーリに伝えようとしてもできないように処理していた。
まずアクアが思考を確認して、問題があるならユーリに伝えないというように。
アクアの思考速度と内心まで読めるという状況が重なり、時間差は生まれない形で。
カタリナを取り込むことがうまく行ったことを確認して、アクアは他の人達も食べていった。
アクアに取り込まれた人間は不満も抱えていたが、アクアが五感に心地よい感覚を与えることで、やがて堕ちていった。
そして、アクアの大切な人たちがアクアの中でひとつになっていく。
アクアが演じるだけだったユーリヤは新しく人格を生み出して。
ユーリと実際に会ったことのないフィーナはアクア自身が説得して。
それからのアクアはとても幸せな日々を送っていた。
だから、周囲に積極的に干渉することを止めて。
アクアの機嫌を損ねることがない限り、ただ生きるだけの人間はアクアに支配されることはないだろう。