邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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4章 プロジェクトU:Re
82話 兆候


 ハイディの件があってからは特に大きな事件が起こることは無く、ぼくたちはカーレルの町周辺で冒険者としての活動を行っていた。

 時々ハイディ達がやってきてぼくたちの冒険に混ざっていく事もあり、ぼくは楽しく毎日を過ごすことができていた。

 ただ、いつもは現れないようなモンスターがカーレルの街の周りにいることが多くなって、若干の違和感を持っていた。

 

 今日は少しだけ遠くへ来て、いつもより多く発生したモンスターを退治する事になっていた。

 多く発生したとは言っても弱いモンスターばかりなので、オーバースカイにとっては容易い依頼だった。

 とはいえ、油断は禁物なのでしっかりと警戒しながらモンスターと戦っていく。

 すると、ただのホーンラビットの見た目をしているのにダブルホーンラビット並みに強い個体がいた。

 どちらにせよぼく達にとって強いモンスターではなかったが、これが人型モンスターであれば一大事だ。

 なので、改めて気を引き締めてモンスター討伐を行う事にした。

 

 そうして依頼にあったモンスターの討伐を終える事ができたが、その中には強さがおかしいモンスターが何度かいて、ぼくは少し警戒していた。

 でも、その日は他に異常はなく、人型モンスターのような危険な異常はなかった。

 

「アリシアさん、こういう妙に強いモンスターと戦ったことはありますか? 種族の割には不自然なくらいでしたよね」

 

「私たちには無いかな。ただ、ユーリ君が警戒するのはきっと正しい。何もない事が一番ではあるけど、いつもと違うというのは冒険者にとって危険の前兆であることは多いかな」

 

 アリシアさんも違和感を覚えているみたいで、かなり真剣にぼくの質問に答えてくれた。

 やっぱりおかしいよね。こういう時に人型モンスターが発生したりするものだけど、今日は出てきていない。

 この辺に注意してもらうようにサーシャさんに言っておこうかな。そうすれば、何かあったときにすぐに発見してもらえるはずだ。

 

「あんた、警戒するのはいいけど、目の前の相手から気を逸らすんじゃないわよ。あんたは案外目の前の事しか見えてないんだからね」

 

 カタリナはぼくを心配してくれているように思える。声が柔らかいし、目つきもいつもより優しい。

 アクア水を複数使うぼくなのに目の前の事しか見えてないはずは無いと思いたいけど、カタリナは結構周りが見えているからな。

 何かある前に注意して貰えたことをありがたいと思って、問題が起こらないように気を付けておこう。

 

「ありがとう、カタリナ。カタリナがいるからぼくは安心して背中を預けられるんだ。これからもいろいろアドバイスしてね」

 

「当然よね。あたしがいたから、あんたは冒険者としてやってこられたのよ。でも、ユーリだって見違えるほど頼りになるようになったわ。今のあんたになら、あたしの命を預けてもいいわ」

 

 カタリナのその言葉は、ぼくにとって本当に嬉しい物だった。ミストの町の学園に居た頃のぼくとカタリナは、チームとは名ばかりの、カタリナにぼくが頼っているだけの関係だった。

 学園でのモンスターの異常発生でカタリナの事を助ける事ができたけど、ぼくがカタリナに貰っているものをあの程度で返せたとは思えない。

 だから、カタリナと対等な関係になれているだろう今が最高なんだ。

 ぼくはカタリナの助けになりたいし、カタリナとチームとして支え合いたい。その思いが現実のものとなったように思えた。

 

「うん。カタリナが危ない時にはぼくがきっと助けてみせる。それがこれまで助けてもらった恩返しだよ」

 

「ま、あたしが窮地に陥るなんて滅多なことでは無いでしょうけど。これまで通り、あんたが危ない時にはあたしが助けてあげるわ」

 

 カタリナが危険な目に合うなんて事は無いに越したことはない。それでも、今のぼくにはカタリナを助けられる力があるはず。

 それを考えると心の底から勇気が湧いてきた。アクアにも、ミアさんにも、これまで支えてくれたみんなにも感謝したい。

 ぼくはもう誰かの足を引っ張るだけの人間じゃない。そうなる事ができたのはみんなのおかげだ。

 

「そういえば最初はユーリ君とカタリナさんとアクアだけだったね。それが今ではこんなメンバーになった。それに、ユーリ君たちはずっと遠いところに居た私たちに追いつけたんだから、これからも大丈夫」

 

「そうだね、アリシア。ユーリ君たちがここまで来るなんて想像していなかった。ユーリ君たちとなら、どんな奇跡でも起こせる気がするよ」

 

 アリシアさんたちはとっても楽しそうな顔をしている。オーバースカイのメンバーでいることを嬉しく思ってくれているんだな。

 初めて出会ったときには手の届かないほど遠い存在だったアリシアさんたちが、今ではオーバースカイの仲間になってくれている。

 アリシアさんたちが親身に面倒を見てくれたからこそ、アリシアさんたちに追いつく事ができた。

 今は大切な仲間であるアリシアさんたちだけど、ぼくの中ではずっと尊敬する師匠だ。

 そんなアリシアさんたちが仲間になってくれたんだから、それは心強いよね。

 

「アリシアさん達がそう言ってくれるなら、きっとぼくは何だってできます。アリシアさんたちが師匠で本当に良かった」

 

「私たちにとってもユーリ君たちが弟子で本当に良かったから、お互い様だね。これからもよろしくね」

 

「ユーリさんがあたいたちの師匠になってくれた事も本当に良かったっすよ。ユーリさんじゃなかったら、きっとあたいは諦めてたっす」

 

「そうね~。ユーリちゃんはとっても良い師匠だったわ~。わざわざカーレルの街まで来たのは大正解だったわよね~」

 

 メルセデスたちは感慨深そうだ。ぼくやカタリナも相当強くなれたけど、メルセデスたちの成長はものすごかった。

 メルセデスたちが弟子になってくれたおかげで、ぼくはさらに強くなることができたと思う。

 スライム使いであるメルセデスの契約技は、ぼくに新たな考えをもたらしてくれた。

 それだけではなく、弟子という存在があったからこそ頑張る事ができた事はいっぱいある。

 メルセデスたちと出会えて良かった。アクアとの絆を深めるきっかけにもなったと思う。

 

「メルセデスたちが弟子になってくれて嬉しいのはぼくもだよ。ありがとう、ぼくに会いに来てくれて」

 

「ユーリさんに会いに来たのはわたしもですよっ。あれは間違いなく運命なんですからっ」

 

「それを言うならわたしもです……ユーリさんと出会えたことは、わたしの人生を変えてくれましたから……」

 

 ユーリヤもフィーナも偶然の出会いだと思うけど、今ではぼくにとって大切な仲間であり、幸せになってほしい人だ。

 ユーリヤを失うかと思ったときは本当につらかったし、だからフィーナが危険に陥ったぼく達を助けてくれた事はずっと感謝し続けると思う。

 フィーナにしろユーリヤにしろ暗い過去があるように思えるけど、今はそれを感じさせない明るさを持っている。

 2人がぼくと出会ったことを後悔しないように、これからずっと幸せでいて貰おう。

 

「運命と言えば僕は外せないよね、ユーリ。あの出会いから僕の剣は本当に意味で始まったんだ」

 

「その運命にはアタシも感謝しているわ。坊ややミーナと出会えたからこそ、今の楽しさを感じていられるんだもの」

 

 ミーナとの出会いは本当に運命を感じてもおかしくはない。1度目だけならよくある話だろうけど、2度目の出会いは本当にびっくりした。

 ミーナやヴァネアのおかげで訓練を楽しいと思える時間が増えたから、ぼくが強くなれた一因としてこの2人は外せないよね。

 今は少し差ができちゃったけど、ミーナならきっともっと強くなってくれる。

 そうでなくとも大切な人だけど、競い合う楽しみを教えてくれたのはミーナだから、また切磋琢磨したいな。

 

「ユーリとアクアの出会いが一番。でも、みんなと出会えたことも嬉しい」

 

「ご主人と出会えたから、うちは今が楽しいぞ。ご主人は世界一の飼い主だな」

 

「当然。そしてアクアは世界一のペット」

 

 アクアとノーラという可愛いペットに出会えた事はぼくの人生の中でもそう多くない喜びだろうな。

 というか、アクアとの出会いは憶えていないとはいえ、アクアと出会えた以上の喜びは無いと思う。

 アクアがいたからぼくは生きることの楽しさを知る事ができたんだ。アクアが世界一のペットだという事は誰にも否定はさせない。

 アクアが一番なのは絶対だけど、ノーラは二番だよね。こんなに可愛くて強くて賢いペットなんて、どこを探してもいないだろう。アクアは除くけど。

 可愛いペットと一緒に居られることの幸せは絶対にこれからも続くものにするよ。みんなとならきっとできるはず。

 

 ぼくはみんなと出会えたことに改めて感謝を深めていた。だからこそ、何かの始まりを感じるこの異変を、絶対に乗り越えて見せると決意した。

 

 いったんカーレルの街へと帰ってサーシャさんに状況を報告する。

 ぼくは単なる人型モンスターではない驚異の予感を感じていたので、サーシャさんに注意をしっかり呼びかけることにした。

 

「サーシャさん、今回の依頼で、種族からは想像できない強さを持つモンスターが現れたんです。弱いモンスターだと思って油断していると事故が起こる程度には強くて。それで、ここからは単なる勘なんですけど、今回の異変は何か大変なことの始まりな気がするんです。サーシャさんも気を付けてくださいね」

 

「そうですのね。個人の勘を根拠として動くことは組合としては出来ませんが、状況を注視していきたいと思いますわ。何かありましたら、エルフィール家の力を使うかもしれませんわね」

 

 サーシャさんはぼくの事を信じてくれているみたいだ。でも、大きく動くことは難しそうだ。

 まあ、その判断は当然と言えば当然だけれど、もしカーレルの街に何かあればサーシャさんやステラさんも危ない。

 ぼくは何とかして事態を未然に防げるようにしよう。この街自体はぼくにとってそこまで大切じゃないかもしれないけど、サーシャさんとステラさんの故郷だ。

 ぼくはこの街を守ることを心に誓った。

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