邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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84話 戦い

 ぼくたちの前に人型モンスターが6体現れた。どれも見たことのあるモンスターだけど、今回の異変と関係があるとするなら、同じ強さだと考えるべきではない。

 現れたモンスターはハイスライム、ドリアード、リザードマン、セイレーン、ワーウルフ、スキュラに見える。

 ぼくがどう戦おうか考えようとする前に、みんながモンスターを分断していった。

 カタリナとノーラがドリアードと、ミーナとヴァネアがリザードマンと、アリシアさんとレティさんがセイレーンと、ユーリヤとフィーナがワーウルフと、メルセデスとメーテルとアクアがスキュラと戦っていた。

 

 ぼくはみんなを助けようとするけど、ハイスライムらしきモンスターに妨害される。

 アクア水と似たような技を使ってきたので、みんなのところに手出しされると厄介だと考えたぼくは、すぐにこのモンスターを倒そうと決意する。

 試しにまず水刃を目の前のスライムに撃ってみるけど、案の定大したダメージを与えられているように見えない。

 やはりただのハイスライムではないな。ぼくは目の前の相手に警戒を深めながらみんなを心配していた。

 だけど、目の前の相手を倒さない事にはみんなのサポートをうまく出来ないと確信できたので、今はハイスライムに集中する。

 

「さっさとこいつを倒して、次に向かいたいよね。でも、どうしようか? まあ、まずは戦ってみるか」

 

 ハイスライムはこちらに素早く走ってくるけど、ぼくのスピードよりははるかに遅い。ただ、それでハイスライムに優位に立てるわけでは無くて、ハイスライムの防御をどうにか破る手段が必要だろう。

 剣で切りつけてみるけど、ハイスライムの体を通過して終わった。単なる物理攻撃が通じないスライムは、アクア以外で初めて見たかもしれない。

 メーテルは頑丈なだけで、ダメージを一切受けないわけでは無いみたいだからね。それでも、そこらの剣士くらいなら無力化できるんだけど。

 それよりも、このハイスライムにどうやって攻撃を与えるかだ。殴り合いの様な事を仕掛けても分が悪いだけだから、どうにかハイスライムを倒す手段を見つけないといけない。

 ぼくの知識の中でこういう時の対応法は、バラバラになるくらいまで吹き飛ばすこと、完全に蒸発させること、全体を凍らせること。

 

「なかなか強いハイスライムだね。でも、この程度でぼくは倒せないよ」

 

 蒸発させることは現状では難しいので、まずは凍らせることを試してみる。

 アクア水をハイスライムにくっつけてそれを凍らせてみる。上手く行けばハイスライムを凍らせられるはず。

 そう考えて実行してみたのだけど、アクア水だけが凍ってハイスライムには影響は出ていないように見える。

 次は何とかバラバラにするしかないけれど、水刃では威力が足りないので、何か別の手段が必要だ。

 幸いにもハイスライムの速度はぼくほどではないので、避けに徹するだけなら簡単だ。

 でも、ぼくの中には焦りがあったので、なんとか出来ないかといろいろと攻撃を試してみた。

 鉄の破片をぶつけてみても普通に飲み込まれて駄目だった。水刃を凍らせてみても単にハイスライムの体を通り抜けるだけ。

 何とかバラバラにできないかと考えるけど、手は思いつかない。

 ハイスライムはアクア水のようなものでこちらに攻撃を仕掛けてくるけど、それはアクア水で簡単に防ぐ事ができた。

 水鉄砲のように水を撃ってきてもアクア水で壁を作ればいいし、上から水を落としてきてもぼくは簡単に避けられる。

 この状況なら時間を稼いで対策を考えるのがいつものやり方だけど、ぼくは早くみんなを手助けしたいので、時間を稼ぐ気にはならなかった。

 

「どうしたものかな。このままじゃすぐに倒せないけど、どういう手が通じるかな?」

 

 ハイスライムをバラバラにする手段が使えないとなると、残りはハイスライムを蒸発させる手段だけど、どうやってその高温を用意する? アクア水を蒸発させるのは高温になるとはいえ、それだけでこのハイスライムを蒸発させられるか?

 いや、アクア水だけを蒸発させればいいんじゃないか? 確か、水を急激に蒸発させると爆発するよね。

 でも、単にハイスライムの目の前で爆発させてもこいつをバラバラにできるか?

 それを考えている時に、ハイスライムの中に入った鉄の破片を見つけた。

 さっき水刃を凍らせたら、ハイスライムの中を通過したよね。なら、いけるはず!

 

「よし、頑張っていこう! みんなならきっと大丈夫だから、ぼくがまず勝ってみせるよ!」

 

 ハイスライムを倒す手段を思いついたぼくは水刃を凍らせてハイスライムに放つ。

 ハイスライムは避けようともしないから、凍らせた水刃をいくつも潜り込ませることができた。

 そのまま十分な数の水刃を取り込ませることに成功したぼくは、凍った水刃を一気に蒸発させる。

 念のためハイスライムの周りをアクア水でドーム状に覆って、みんなに被害がいかないように守っておいた。

 それでも、蒸発した水刃の爆発はとても大きな衝撃をこちらに伝えてきた。ただ、ダメージを受けるほどじゃない。

 ぼくは身を守りながらハイスライムの様子を見る。ハイスライムの体はバラバラになっていて、特に動く様子はない。

 念のためにアクア水を使って剣を遠くから突き立ててみるけど、それでも動きはない。

 

 ハイスライムを倒せたと判断したぼくは、みんなの様子を見に向かう。すぐに手助けしようとしたけど、なにかここで手を出すなという意思を感じた気がした。

 その感覚に従う訳じゃないけど、みんなはある程度優勢に見えたので、危なくなるまでは見ていることにする。

 みんなが危なそうなら、みんなの意思がどうであれ、ぼくが手助けするつもりでいた。

 そういえば、さっきのハイスライムは全くこちらに話しかけてこなかったな。これも異変の一部なのだろうか。

 まあいい。みんなの様子を確認しておいて、アクア水をすぐに放てるようにするか。

 

 方針を決めたぼくはみんなの様子を見守る。まずは一番心配なメルセデスたちを見ることに。

 メルセデスたちは上手くスキュラの相手を出来ているように思える。スキュラは触手のような足を振り回して攻撃しているけど、メルセデスが水の膜で防いだり、メーテルがうまくメルセデスをかばったりして、攻撃を受けないようにできている。

 アクアはメルセデスにもメーテルにもすぐに近寄れる位置をキープしながらスキュラの前で動きを邪魔している。

 

「ユーリさんにあたい達だってやれるって事を教えてあげるっすよ! メーテル、合わせて!」

 

「わかったわ~。アクアさんがいるから安心だものね。全力で行くわよ~」

 

 メルセデスが水の膜を垂直に敵に当ててスキュラの足を切り裂く。バランスを崩したスキュラにメーテルが力をためて殴り掛かる。

 スキュラは大きなダメージを受けているようだけど、すぐに足を再生してしまった。

 それでも、メルセデスは水の膜を増やしてスキュラの足をどんどん切り裂いていき、メーテルが何度も殴りかかる。

 しばらくすると、スキュラの動きがだんだん鈍くなっていって、最後には動かなくなる。

 アクアのサポートがあったとはいえ、メルセデスたちが中心になって人型モンスターを倒すことができるなんて。

 スキュラは人型モンスターの中で弱いようには感じなかった。メルセデスたちは人型モンスターを相手にしても十分にやっていけるかもしれない。

 

 メルセデスたちの成長は嬉しいけど、メルセデスたちは勝てたので、他の人の様子に集中する事にする。

 一応メルセデスたちを見ながらでも警戒を払っておいたけど、危なくなっている人たちはいない。

 

 次に大きな動きがあったのはミーナたちだった。リザードマンの鱗は固いみたいで、ヴァネアは有効打を与えられていない。

 そこで、ヴァネアはミーナが剣を当てるためのサポートだけをすると割り切ったみたいだ。

 ミーナの剣をよけようとするリザードマンの動きを妨害するようにしている。

 ミーナが剣を縦に振れば横から妨害して左右に避けられなくして、横に振れば後ろから下がることや飛ぶことを邪魔する。

 どんどんミーナの剣が当たるようになっていき、徐々にリザードマンの体から血が流れ出ていく。

 随分このリザードマンは頑丈なものだ。ミーナの剣をまともに受けて両断されないだけでも結構硬いと思うけど、何度も剣を受けてまだ倒れていないんだからね。

 

「そろそろ終わりだね。頑丈なだけのモンスターは僕の敵じゃなかったみたいだね」

 

「相手が死ぬまで油断しないのよ、ミーナ。でも、あと少しなのは確かみたいだわ」

 

 そのまま先ほどより鋭い剣を振るっていくミーナ。ついに胴体に鱗が全くない部分ができたリザードマンに対してミーナが思い切り剣をぶつけると、リザードマンは半ばまで切り裂かれた。

 それでもリザードマンは反撃しようとするが、即座にヴァネアが手と尻尾で攻撃して妨害する。

 そのままミーナは何度も同じところに剣を振るっていき、ついにリザードマンは真っ二つになった。

 ミーナたちも勝てたみたいだ。それにしても、どの人型モンスターも言葉を話さなくて、スキュラ以外は妙に強い。

 スキュラにもぼくが気づいていなかっただけで何かあったのだろうか。そういえば、スキュラの足はあんなに早く再生するのだろうか。

 前に王都で戦ったアルラウネの触手はすぐに再生したからスキュラの足が治るのも当然だと思っていたけど、ぼくが試したことは無かった。

 まあ、考察は後でいい。それよりも、他の人たちの戦いを見ておかないと。

 

 アリシアさんとレティさんは落ち着いて戦っているように見える。

 セイレーンとともに空中に浮かびあがり、お互いが空を高速で移動しながら戦っていた。

 アリシアさんやレティさんの動きが乱れる瞬間が何度かあり、その様子を詳しく見るとセイレーンが何か声を発したらアリシアさんたちの動きがおかしくなっていた。

 つまり、音波のようなものでアリシアさんたちを妨害しているのだろう。でも、アリシアさんたちは全くセイレーンの蹴りなどの攻撃は受けていなかった。

 心配しなくても2人は大丈夫だとは感じながらも様子を見ていると、2人の雰囲気が変わった。

 

「ただのセイレーンではないみたいだね。ちょっとだけ手こずったけど、もうおしまいだよ。風刃の強さを見せてあげよう」

 

「そうだね、アリシア。もうこのセイレーンの限界は見えた。わたしだけでも倒せるかもしれないけど、しっかりやろうか」

 

 アリシアさんたちの動きが見るからに変わり、セイレーンは次第に追いつけなくなっていく。

 セイレーンは音波でアリシアさんたちの動きを妨害しようとするけど、全くアリシアさんたちの動きは乱れない。

 よく観察していると、空気の動きがちょっとおかしい気がする。これはきっとアリシアさんの風だ。

 ぼくが以前にアリシアさんに提案した、音を消すという事を実行しているのだろう。

 それで、セイレーンの音波が全く通じなくなった。そのままアリシアさんたちはものすごいスピードで移動してセイレーンを切り刻んでいく。

 短剣で攻撃する分以上の傷があるので、風刃も使っているのだろう。あっという間にセイレーンは倒れていった。

 やっぱりアリシアさんたちはすごい。ぼくの尊敬する師匠としての強さはここにあるんだと感じられた。

 

 次はユーリヤとフィーナがワーウルフと戦っている姿に注目する。

 ワーウルフは素早く力強い動きをしているけれど、ユーリヤとフィーナはどちらもその動きにしっかりと着いていけている。

 最近はフィーナに後衛に専念してもらう事が多かったけれど、フィーナの身体能力はものすごいのだ。

 ただ、ユーリヤの鉄の糸での攻撃をワーウルフは物ともしていない。ユーリヤに他の攻撃手段があるとはいえ、ワーウルフはよく耐えているな。

 ユーリヤは鉄の糸を足止めと割り切ったみたいで、フィーナに攻撃が向かわないようにワーウルフの動きを妨害している。

 

「ワーウルフにしてはずいぶん強いみたいですけど、わたしとフィーナさんに敵うほどでは無いでしょうね。そろそろ決めちゃいましょうか」

 

「そうですね……ユーリさんにあまり心配をかけてもいけませんから……」

 

 ユーリヤが鉄の糸でワーウルフの動きを妨害して、その隙にフィーナが衝撃の力をぶつける。

 たたらを踏んだワーウルフにユーリヤは手に持った針状の武器と蹴りでさらに傷を与えていく。

 ワーウルフは大暴れするけど、ユーリヤもフィーナも危なげなく攻撃を回避していく。

 どんどんワーウルフの動きはゆっくりになっていく。どうやら最後のあがきだったのかな。

 ユーリヤが足を攻撃してワーウルフを動けなくすると、フィーナがワーウルフに向かって衝撃の力を放つ。

 ワーウルフは見るも無残な姿へと変わっていった。さすがにこれでは命はないな。

 ユーリヤとフィーナは上手くコンビとしてやっていけるみたいだ。2人で一緒に居る姿をあまり見てこなかったけど、ぼくの知らないところで仲良くやっているのかな。

 

 いよいよ最後に残ったカタリナとノーラの戦う姿を見る。

 相手のドリアードは根や枝を伸ばしてカタリナたちに攻撃するけど、ノーラがカタリナに向かう攻撃を妨害して、妨害し切れなかった分はカタリナが避けていく。

 ノーラが殴ったり蹴ったりするけど、ドリアードはそれでも全く攻撃の手を緩めない。

 効いているのか効いていないのか、よく分からないけれど、カタリナたちは全然攻撃を食らっていないので、やりようはあるのだろう。

 

「ノーラのおかげで相手の頑丈さは分かったわ。いつでも決められるわよ」

 

「分かったぞ、カタリナ。ご主人もこちらを見ているみたいだし、さっさと片付けるとするか」

 

 カタリナは弓を構えてドリアードに射かけようとする。ドリアードはそれを見てカタリナに攻撃を仕掛けるけれど、ノーラが根も枝も叩き折ってしまう。

 先ほどまでダメージをあまり与えられているように見えなかったのは、ドリアードの耐久を計っていたのだろうか。

 そのままカタリナはドリアードに矢を放ち、ドリアードを貫く。それでも、ドリアードはまだ生きていて、カタリナに根や枝を伸ばして全力で攻撃していく。

 ノーラが攻撃を妨害して、カタリナは攻撃を避けながらドリアードを射抜いていく。

 カタリナとノーラの息はぴったりで、絶対にノーラはカタリナの射線に入らないし、それでもカタリナへの攻撃を防いでいる。

 そのまま何度も矢を受けていったドリアードは次第に勢いを失い、ついに息絶える。

 カタリナとノーラも勝ったみたいだ。これでぼくたちの前に現れた人型モンスターはすべて倒せた。

 

 それからは他にモンスターが現れることは無く、ぼくたちはカーレルの街へと帰っていった。

 人型モンスターが異変の原因だったのだろうか。でも、ぼくはこれで終わりだという実感を得られなかった。

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