邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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86話 危機

 最近、カーレルの街で契約者の存在が増えているらしい。サーシャさんからの情報だ。

 それなのに、契約モンスターが見当たらない事すらあるのだとか。フィーナの同類かもしれないと考えたけど、契約の証自体はあるらしい。

 一体どういう事なんだろうか。モンスターと契約しているのに別々に行動しているとか?

 いや、考えていてわかる事でもないか。ぼくは考えを放棄していつものようにマナナの森へ向かう。

 

 マナナの森では、もうこれまでとはずいぶん生態系が変わっているように思える。

 これまでにいたモンスターに見かけなくなった物がいたり、これまでいなかったけど今ではよく現れるモンスターもいる。

 異変が収まって定着したという考え方もできるらしいけど、ぼくには異変がまだ続いているように思えた。

 

 ぼくたちは慣れた様子でモンスターを倒していくことができている。

 これまでよりモンスターが強くなったことで、一般的な冒険者は廃業した人や死んだ人も多いみたいだけど、新たに契約技を覚えた人や、別の場所から来た契約者も増えている。

 でも、このまま進んでいて大丈夫なのだろうか。少し不安になった。

 

「みんなはこれから、この異変がどう進んでいくと思う? 契約者の数が増えている事も関係があるのかな?」

 

「そんなことを言われたって分かんないわよ。あたし達が考えても仕方ないんじゃないかしら? それよりも、モンスターの倒し方を考えた方が良いんじゃない?」

 

 カタリナの言う事はよく分かる話ではあるんだけど、受け身のままでいると対応が後手に回りがちだから、できる事ならば先手を取りたい。

 学者ではないぼくたちが考えても仕方のない事かもしれないけれど、何か分かってくれればという思いは消えない。

 みんなが無事でいられるために、できる事があるならしたいんだ。

 

「モンスターは今のところある程度どういう強化かはすぐに分かるからね。大事なことではあるけれど、基本を守っていれば良いようにも思うかな」

 

「ま、分からない話じゃないわね。固いモンスターは固いだけだし、動きが良いモンスターはそれだけ。特殊な力を持っているなら身体能力はいつもと同じ。例外があるなら危険ではあるけれど、今は見つかっていないものね」

 

 今まで現れた特殊なモンスターはどれもある特定の能力だけが強化されているものが多かった。

 見た目が明らかに違うモンスターは強いけれど、それは新種に出会ったときと同じ対応をするだけだ。

 カタリナの言う例外には気を付けたいところだけど、できることならば根っこを断ちたいのだ。

 

「どんな敵が現れたとしても、僕たちならきっと勝てる。何せ僕に勝ったユーリがいるんだからね」

 

「言いたいことは分かるけれど、油断は禁物よ。まあ、アタシのような人型モンスターを超えるモンスターは今のところ同じ人型モンスターだけ。数に気を付けさえすれば大丈夫なはずだけど」

 

 実際問題今のところは苦戦らしい苦戦はしていないから、ミーナたちの言う事にも納得は出来る。

 でも、何か大きな問題の断片が今の異変なのではないかという感覚がぼくの中にある。

 根拠は説明できないのだけど、何か大変な事が起こってしまうのではないかと思えてならないのだ。

 それでぼくの大切な人に何かが起こってしまう事は絶対に避けたいので、警戒をしているんだよね。

 

「弱いモンスター相手でも、油断は禁物だよ。弱さを装うモンスターがいないとは限らないからね。それに、簡単に勝てると思い込んでしまうと、手を抜く事になりかねないからね」

 

「そこは安心してくれていいよ、ユーリ。僕だってこれまで冒険者をやってきたんだから、敵を甘く見たりはしない。ちゃんと本気で戦うよ」

 

「いざとなったらアタシがいるから、ミーナの事は任せておいて。ミーナは坊やに良いところを見せたいのよ」

 

 2人が噓を言っている感じはしないから、そこまで心配はしなくても大丈夫かな。ミーナたちに傷ついてほしくないから、つい余計なことを言ってしまったかもしれない。

 でも、ぼくだって油断しないようにしないとね。今のところ異変で現れたモンスターはどうとでもできる存在ばかりだった。

 けど、ブラックドラゴンやハイディと一緒に戦った亀型モンスターみたいな存在が現れたら大変だ。

 ブラックドラゴンは種族名がはっきりしているのに、戦力を見誤ったとしか思えないメンバーで討伐に向かう事になっていた。

 もしかしたら、今回の異変と同じようなことが起きていたのかもしれない。ハイディたちは何も言わなかったけれど、その可能性だってあるはず。

 だから、あんなに苦戦することになった。そう考えれば納得のいく話ではある。

 その仮説が正しいとすると、とてつもなく大きな何かが動いていることになってしまう。ぼくは改めて気を引き締めなおした。

 

「ユーリさん、転移装置ってモンスターの一部を利用して作られてるっすよね。似たような何かがカーレルの街にあって、それの影響って可能性はどうっすか?」

 

「メルちゃん、えらいわ~。ちゃんとユーリちゃんの言う事を考えたのね~」

 

 確かに転移装置はモンスターの能力を利用して作られているらしい。モンスターの素材から上手くモンスターの能力を引き出しているそうなんだ。

 そうなると、サーシャさんに以前聞いた、強大なモンスターがいると周囲のモンスターが活性化するという話。それと関係があるかもしれない。

 それにしても、今の言葉でメルセデスがよく勉強しているというのがとてもわかる。メルセデスの成長を改めて感じられて、ぼくは嬉しい。

 でも、実際のところはどうなんだろう。カーレルの街の周りで起こっているのは事実だけど、カーレルの街が中心とは限らない。

 他の街の情報はぼくは知らないので、正しいかどうかの判断ができないでいた。

 実際にモンスターの死体を利用した装置が原因の場合、転移装置がきっかけの可能性もあり得るかもしれない。

 そうだとすると、転移装置をどうにかしないといけない。ハイディたちと気軽に会えなくなってしまうけど、カーレルの街を守らないと。

 まあ、今の仮説が正しいとは限らないから、まずは情報を集めるところからだ。他の街ではどうなのかとか、サーシャさんに聞いてみる必要があるかもね。

 

「メルセデス、とてもいい考えだよ。正しいかどうかは分からないけど、仮説の一つとしてちゃんと考えられている。立派になってくれて嬉しいよ」

 

「ユーリさんに褒められたっす! いや~メルセデスちゃんの成長は著しいっすね! これもユーリさんに弟子入りしたおかげっす! ユーリさんはスケベっすけど、立派な師匠っすよ!」

 

「スケベは余計よ~。でも、ユーリちゃんがいなければ今のメルちゃんは絶対にいない事は間違いないわ~。メルちゃんも私も、ユーリちゃんには感謝してるのよ~」

 

 ぼくが良い師匠でいられたのだとすると、アリシアさんとレティさんのおかげなのは間違いないし、メルセデスたちが良い弟子だったことも大切な要因だ。

 メルセデスたちは素直に言う事を聞いてくれるし、目いっぱい努力をしている。そうじゃなかったら、絶対に彼女たちはここまで成長できなかった。

 メルセデスたちと出会えたことは本当に嬉しい出来事だった。だからこそ、今のこの時間を守りたいんだ。

 

「ユーリ君、念のために言っておきたいことがある。この異変が人為的なものである可能性だ。モンスターを生み出す手段を生み出した人間が、それを利用して強いモンスターを発生させているというのはどうかな?」

 

「ありえない話じゃないね、アリシア。モンスターがどうやって生まれるかなんて、わたしたちにも分からない。だけど、それが絶対に分からない事を意味するわけじゃ無いからね。気を付けておいて損はないかもしれないよ、ユーリ君」

 

 アリシアさんたちの言うことが事実だとすると、悪意を持ってカーレルの街を危険にさらしている誰かがいるという事だ。

 それが正しいのならば、ぼくはその人たちを絶対に許すことはできない。ぼくにとって大切な人たちを傷つける可能性を生んだことを、身をもって後悔させてやる。

 まあ、まだ仮説の段階だ。誰とも分からない人を恨むことは優先するべきことでは無いかな。

 もし本当の事だったならば、殺してでも止める必要があるだろうけれど、自然現象や偶然の可能性だって否定はできない。

 安易に犯人探しをするべきではないだろうから、慎重な行動が必要だ。

 

「ユーリさん、怖い顔をしちゃってますよっ。落ち着きましょうね。怒りは冷静さを奪うものです。わたしはユーリさんの明るい顔が見たいですよっ」

 

「そうですね……ユーリさんが抱え込む必要はありません。わたしたちだって、ユーリさんの支えになる事が出来るんですから……」

 

 ユーリヤたちの言葉がぼくを落ち着かせてくれた。そうだよね。アクア水の強みは取れる手段の豊富さだ。

 怒りに目をくらませてしまうと、アクア水を生かしきる事ができない。それはアクアの契約者として、ぼくがやってはいけない事だ。

 それに、今はみんなが無事なんだから、怒りでみんなを危険にさらす可能性を増やすわけにはいかない。

 みんなが大切だからこそ、簡単にみんなの事で怒ってはいけないんだ。

 

「ユーリ、安心して。何があってもアクアが皆を守ってあげる。アクアなら、ユーリたちを守る事なんて簡単」

 

「そうだぞ、ご主人。うちだっているし、そこまで心配しなくても良いぞ。ご主人を悲しませるような事には絶対にさせん。お礼は甘えさせてくれることでいいぞ」

 

 アクアたちがみんなを守ってくれるなら安心だ。アクアがこれまでみんなを守ってくれていたから、ぼくたちはこれまでの戦いを乗り越えてこられた。

 ノーラだってとっても頼りになる。そうだよね。ぼくはもう1人じゃないんだ。みんなでこの問題を乗り越えていけばいいんだ。

 

「ユーリ、嬉しそう。大丈夫。ユーリと一緒に居る幸せを奪う事なんて絶対に許さない。ユーリはこれからもアクアと幸せに過ごす」

 

 アクアもぼくと同じ気持ちでいてくれているみたいだ。アクアやみんなとずっと一緒に過ごすために、ぼくとみんなで頑張っていくんだ。

 

 ぼくは改めてみんなと幸せに過ごす決意を固めて、今日依頼されたモンスターを倒していった。

 そしてカーレルの街へ戻ると、街がモンスターに襲われていた。街の中にモンスターたちが入り込んでいる。サーシャさんとステラさんは大丈夫なのか!?

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