邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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87話 火急

 カーレルの街が大勢のモンスターに襲われている。ぼくは慌ててステラさんとサーシャさんの無事を確かめようとする。

 

「2手に分かれよう! アリシアさん、サーシャさんの事をお願いできますか?」

 

「任せておいて。レティ、そしてミーナさん達も行こう。私が道を切り開くから、着いてきて」

 

「分かった、アリシア。全速力で行くから、ミーナさんたちは遅れないようにね」

 

「了解したよ。ユーリ、こちらは任せてくれていいから、ステラさんを守ってあげてね」

 

「坊や、無理はしないようにね。いざとなったらみんなで逃げましょう」

 

 アリシアさんの言葉通りに、アリシアさんとレティさん、ミーナとヴァネアの4人にサーシャさんのもとへと向かってもらい、残りはステラさんの家へと急行した。

 ステラさんは特に戦闘能力を持たない人なので、ぼくがアクアを抱えて先行し、他の人たちにはモンスターを倒していざという時の退路を確保してもらう事にした。

 

「アクア、行こう。みんなはモンスターを間引きながら来てほしい。ステラさんが危なそうなら逃げるつもりだから、その時のために逃げ道が欲しいんだ」

 

「ユーリ、急ごう。ステラはアクアが守ってあげるから、ユーリは全力で走って」

 

「あたしたちに任せておきなさい。ステラさんの事、ちゃんと守るのよ」

 

「ご主人、武運を祈るぞ。後でうちを目いっぱい構ってくれよ」

 

「ユーリさん、任せてほしいっす。あたいとメーテルでこっちの人を守るっすからね」

 

「そうね~。また皆で楽しい時間を過ごすためにも、負けられないわ~」

 

「フィーナさん、出来るだけすぐにユーリさんに追いつきましょうねっ」

 

「そうですね……ユーリさんなら大丈夫でしょうが、手間取ってはいられません……」

 

 みんなしっかりした顔をしていて、任せても大丈夫だと信じられた。ぼくはぼくの仕事を果たすぞ。

 ぼくはアクアをお姫様抱っこしてミア強化とアクア水をまとって全力でステラさんの家へと駆け抜けていく。

 道中のモンスターは進行方向に居るものだけを水刃で切り裂いていった。

 すぐにステラさんの家に着いたけど、まだステラさんの家は無事なようだった。

 急いで家の中へと入り、ステラさんを探す。ステラさんは自分の部屋に居て、ぼくの顔を見ると明るい顔になってくれる。

 良かった。ステラさんの無事が確認できて。でも、ここからどうするのが良いだろう。

 

「ユーリ君、街の様子はどうですか? 混乱していることは分かるのですが、家にいては様子が分かりづらくて」

 

「ぼくも今来たばかりで詳しいことは分からないんですけど、街の中にも結構モンスターが入り込んでいます。いざという時に逃げられる準備をお願いします」

 

 ステラさんはぼくの言葉を受けて少し思案しているようだったけど、すぐにうなずく。

 ステラさんが逃げてくれるのなら、最悪この街を放棄する事ができる。そうならない方が良い事ではあるけれど、選択肢が増えたのは大きい。

 

「ユーリ、ステラの事はアクアが守るから、ユーリは他の人たちを助けに行って。1人を守る事くらい簡単だから、みんなを助けてあげて」

 

「分かった。アクア、任せたよ。さて、みんなはどのあたりに居るかな」

 

 ぼくはアクア水を霧状に広げて、みんなの居場所を探ることにする。

 契約技を使っているらしき人の反応がいっぱいあって、なかなかあたりを付けることが難しかった。

 ただ、オーバースカイのメンバーとは比較にならない弱さの技がほとんどの様なので、そういう場所はハズレと判断していく。

 しばらく探していると、大勢のモンスターの傍にみんなの反応があった。苦戦はしていないようだけど、すぐに合流したかったので急いで向かう。

 

「契約技があればモンスターなんて簡単に倒せるんじゃなかったのかよ。……ぎゃあぁあ!」

 

「なんで俺の技が使えなくなってるんだよ!? た、助けてくれぇ……」

 

 なんだか結構苦戦している人たちが多いみたいだけど、冒険者の様なので通り道に居るモンスターを倒すくらいで干渉はそこまでしない。

 一般市民を助けないとこれからの生活に困るだろうけど、冒険者は自己責任だし、何より最近流入してきた人なので、戦力として重要ではない。

 みんなと合流した後で、余裕があれば助けようとは思うけれど、まずはサーシャさんの安全が第一だ。

 ここで関係ない人を助けようとしてサーシャさんに何かあるような事は絶対に避けたい。

 全く心が痛まないわけでは無いけど、ここで優先順位を見誤るわけにはいかない。

 ぼくは冒険者たちから見つかっていないので、見捨てたという評判が足を引っ張ることもないはずだ。

 

 まずは退路を確保していたみんなと合流する。その後、モンスターを減らしながらサーシャさんのもとへと向かう。

 モンスターを蹴散らしながら進んでいくと、勝手に助けられた人たちがお礼を言ってくる。

 

「助かったぜ。オーバースカイは評判通りに強ぇんだな」

 

「モンスターがこんなに強いのなら、冒険者なんて目指すんじゃなかった。ありがとう、おかげで助かりました」

 

 別に助けるつもりはなかったけれど、助かってくれたのならそれでいい。死ぬ人が少ないに越したことは無いからね。

 ただ、こちらに強く構ってこようとする人はどいてもらう事にする。

 

「急いでいるので、道を空けてください。逃げるのならさっさと逃げた方が良いですよ」

 

「あ、ああ。もうこの街はおしまいだ。俺は逃げるとするよ」

 

 それからもぼくたちはモンスターを討伐しつつサーシャさんのもとへと向かう。

 冒険者組合にたどり着くと、そこには大勢の人がいた。どうやら避難場所になっているのかな?

 アリシアさんたちと共にサーシャさんがいるのを見つける。ぼくは若干安心するけど、まだ終わったわけじゃ無い。

 サーシャさんも組合の外に立って戦っていて、武器こそ使わないものの、後ろで守られながら契約技でモンスターを仕留めていた。

 ミーナやヴァネアがうまくサーシャさんに敵を寄せ付けないでいるので、サーシャさんは契約技を使う事に専念できている。

 アリシアさんとレティさんは素早くサーシャさんの攻撃範囲から外れた敵を倒しているようだ。

 それにしても、サーシャさんの契約技はとても強いな。モンスターが一気に枯れ果てていってるように見える。

 ハイディのように圧倒的な力というほどでは無いけど、並のモンスターは数秒も耐えていない。

 いつかサーシャさんはそこらの冒険者など相手にならないと言っていたが、それがよく分かる光景だった。

 

 サーシャさんはこちらを見つけると、ぼくたちに指示を出してくる。

 

「オーバースカイの皆様、こちらはわたくし達で何とか致しますので、この街のモンスターを一掃してくださいな」

 

「私達もサーシャさんと一緒に戦うから、ユーリ君たちでこの街を救ってくれ。ミーナさんたちはユーリ君に着いて行っていいよ」

 

「分かりました。ユーリ、一緒にこの異変を乗り切ろう!」

 

 アリシアさんとレティさんがいるのなら、十分にサーシャさんを守り切ってくれるだろう。

 だから、ぼくは素直にサーシャさんたちの言う事に従う事を決めた。

 だけど、その指示に従うのなら、まとめて動いていていいのだろうか。いや、ぼくが一番優先すべきは仲間の安全だ。

 それでも、バラバラになるほどでも無い分かれ方なら大丈夫だろう。ぼくはミーナとヴァネアとともに行動して、残りのメンバーに別方向に行ってもらう事にする。

 

「ぼくとミーナとヴァネアで素早く回っていくから、他のみんなはモンスターをしっかり倒していってくれる?」

 

「仕方ないわね。あたし達でさっさと片付けるとしましょうか」

 

「またご主人と離れ離れか……仕方がないとはいえ、腹立たしいな」

 

「ノーラちゃん、わたしがいますからっ。美味しいご飯を後で用意してあげますっ」

 

「ユーリさんの頼み、絶対に 達成してみせます……」

 

「あたい達がちゃんと防御してみせるっすから、ユーリさんは自分の仕事に集中してください」

 

「まかせて~。ちゃんと皆でユーリちゃんのところへ帰ってくるわ~」

 

 みんなの顔を少しだけ見た後、ぼくとミーナとヴァネアは急いで街を回っていく。

 他のみんなも頼もしい顔をしていたから、きっと大丈夫。ぼくは落ち着いて厄介そうなモンスターから順に仕留める。

 ただ、モンスターを倒すこと自体は簡単なんだけど、街を守ることはとても大変だ。

 周りの人や家を巻き込まないように攻撃すること自体は、水刃が通じる相手ばかりだからどうという事はない。

 でも、逃げる人とかが邪魔で上手く全力で動き回る事ができない。近接攻撃はかなり制限されていると言っていい。

 他にも、ぼくたちじゃなくて他の人ばかり狙われるから被害が増えないように立ち回ることが難しい。

 ぼくや仲間が危なくなるような事は無いと確信できるけど、どうにも大変な状況ではある。

 

「た、助けてくれ」

 

「どうしてこんな事に! 冒険者たちは何をしていたのよ!」

 

 ぼく達がモンスターと戦っているにもかかわらず詰め寄ろうとしてくる人までいて、見捨てる考えが頭に浮かんだ。

 でも、サーシャさんの顔に泥を塗らなくていいように、出来るだけ優しく対応していく。

 ぼく達で守らなきゃいけない足手まといがどんどん増えていって、だんだん立ち回りが制限されていく。

 人々から離れようとするとヒステリックになる人が多いので、水刃が主な攻撃手段になってしまう。

 ミーナやヴァネアはもっと大変そうで、強みである素早さを奪われているに等しい。

 それでも目いっぱい敵を倒そうとするけど、守りながら戦うという事の難しさをずいぶん知ることになっていた。

 

 だけど、それからもぼくたちの目の前では犠牲者を出すことなく進めていた。すでに手遅れな人も何人かいたけど、それはどうしようもない事だからね。

 ただ、やるせなさは残っている。ぼくたちの動き方次第では助けられたかもしれない人たちだからだ。

 でも、人型モンスターを何度も倒す中で、こういう時に精神を落ち着かせることが出来るようにはなっていた。

 

 そのままずっとモンスターを倒し続けて、ぼくたちはまだ大丈夫だったけど、ぼくたちが守っている人たちは限界を迎えていた。

 そのままだと犠牲が出る状況が近づいていたころ、突如として歓声が沸く。

 モンスターの気配もそれと同時にものすごい勢いで減っていたので、ぼくはアクア水で周囲を探る。

 すると、ハイディ達がこちらに来ている事が分かった。ハイディの契約技はとても繊細に扱えるみたいだ。

 そうじゃなければ、モンスターだけでなく、人も犠牲になっているはずだからね。

 とんでもない勢いでモンスターが減っている理由も分かったので、人々を鼓舞することにする。

 

「頼もしい援軍がやってきたみたいだ。モンスターを倒しきる道筋は見えたぞ!」

 

 ぼくの言葉だけでは信じられなかっただろうけど、実際にぼくたちの前に現れるモンスターは減っていたし、歓声という状況証拠もある。

 諦めかけていた人々も力を取り戻して、それからはずいぶん楽にモンスターを倒しきる事ができた。

 

 そして、モンスターを完全に倒しきることに成功したようだ。伝令らしき人がその旨を叫んでいる。

 大変な危機だったけど、何とか乗り切る事ができたみたいだ。

 

 それから仲間たちと合流して、みんなの無事を確認した。みんなに特に大きなケガは無く、ぼくは一息ついた。

 この異変の原因が何だったのかは分からない。でも、根っこを断つことは絶対に必要だ。ぼくは新たな決意を抱いた。

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