邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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89話 ステラと

 サーシャさんたちが今回の異変について調査してくれている。

 けど、結果が出るまでに時間がかかるという事と、今のところ強いモンスターは現れないという事から、オーバースカイには休むように指示が出された。

 異変の原因がはっきりした際にすぐに動けるようにとの事だ。

 ぼく達も調査しなくて良いのかとも思ったけど、人や物の流れを調査することが主になるからと遠慮された。

 つまり、今回の異変は人為的なものであると見ているのだろう。だから、そういう所を調査する必要がある。

 ぼくは異変の原因が人である可能性が高い事に強い怒りを覚えた。人が原因だというのなら、犠牲が出ると言うことも分かってやっていたはずだ。

 そんなやり方をする人たちを許すことは出来そうにない。まあ、今のうちにできる事はほとんどないから、サーシャさんの言うように英気を養っておくのが良いかな。

 

 みんなが思い思いに休んでいる中で、ぼくはステラさんと2人になっていた。

 カーレルの街への襲撃で一番心配したのがステラさんだったので、ステラさんと一緒に居ることで安心したいという事があり、ステラさんと過ごすことにした。

 ステラさんもそれを受け入れてくれたので、今日はステラさんと1日過ごすことになる。

 ステラさんと2人で過ごすのはとても久しぶりな気がするので、しっかりと楽しんでいこう。

 

「ユーリ君、今日はゆっくりと過ごしましょうね。私の事を心配してくれたのは嬉しいですが、私は大丈夫ですから。アクアちゃんがしっかりと私を守ってくれましたからね」

 

 街が襲われたときにはアクアにステラさんを任せておいたから安心だとは思っていたけれど、ステラさんがそう言うってことは色々あったのだろうか。

 何にせよ、アクアにステラさんを任せておいて良かった。そのおかげで、ステラさんとまたこうして過ごせるんだからね。

 

「そうなんですね。なら、後でアクアをうんと褒めてあげないといけませんね。アクアにはいつも助けられていますけど、今回も助けられちゃったみたいです」

 

「それが良いでしょうね。アクアちゃんはユーリ君に褒められることが嬉しいみたいですから、ユーリ君が褒めてあげれば張り切るでしょうし」

 

 ステラさんが言う事はよく分かる。アクアはぼくが構えばなんだって嬉しいと思ってくれている様子だけれど、ぼくに褒められると気合が入っているみたいだからね。

 アクアを褒め倒して便利に使うつもりは無いとはいえ、頑張った分は褒めてやる気になってもらいたい。

 アクアがやる気でいてくれると、ぼくはとても心強い気持ちでいられる。アクアはぼくの心の大きな支えになっているよね。

 アクアにとってのぼくはどうだろう。アクアがぼくを大好きでいてくれる事くらいはさすがに分かる。

 でも、ぼくはアクアの希望になれているだろうか。アクアはぼくにとって色々なものをくれた存在だから、出来る限り返していきたい。

 ぼくはアクアを何よりも信じているけど、寄りかかるだけならアクアの負担になりかねないからね。

 アクアならそれでも良いって言ってくれそうだけど、ぼくはアクアには誰よりも幸せを感じていてほしい。

 まあ、ぼくにできることはアクアの事を肯定してあげる事くらいかな。遊んだりする時間を作ることもできるけど、それはぼくがやりたくてやっている事でもあるし。

 

 アクアの事はゆっくりと考えていくことにしよう。今日はせっかくステラさんと過ごすんだから、ステラさんの事をしっかりと考えたい。

 そういえば、ぼくはステラさんの好みをあまり知らない気がするな。ステラさんはぼくの好みをよく知ってくれているのに、それでいいんだろうか。

 考えても仕方のない事だから、まずは聞いてみるか。

 

「ステラさんは何か趣味とかあるんですか? ステラさんと一緒に過ごしているのにステラさんの事にぼくは詳しくないですよね」

 

 ステラさんはぼくの言葉を受けて苦笑している。やっぱり呆れられているのかな。これだけ一緒に過ごしていて趣味の1つも知らないとかおかしいよね。

 

「私から話したことはありませんから。知らなくても無理はありませんよ。ここではっきり説明しておくと、私の趣味は仲の良い人とモンスターを見ることです。だから、今のこの環境はとても楽しいんです」

 

 なるほど。ぼくとアクア、アリシアさんとレティさん、カタリナとノーラ、ミーナとヴァネア、メルセデスとメーテル。

 みんなどれも仲がいい人とモンスターだと思うから、確かにそういう趣味なら大変楽しいのではないだろうか。

 ぼくに指輪をくれたのも、ぼくをステラさんの家に住まわせたのも、その趣味が関係しているのだろうか。

 

 指輪と言えば、まだ意思を送りあう事には成功していないんだよな。契約技を強くすることはかなり出来ているんだけど。

 ステラさんはぼくがこの指輪を使いこなすことに期待しているのは間違いないんだし、早く意思を送りあえるようになりたいものだ。

 ただ、正直行き詰ってはいるんだよね。ステラさんも条件には詳しくないみたいだし。失伝しちゃったのだろうか。

 ステラさんのユルグ家はハイディも知っているような家なんだから、結構長い歴史がありそうだよね。

 それは考えて分かることでは無いだろうけど、指輪を使いこなすにはぼくとアクアの信頼関係が大事らしいとは以前に聞いたはず。

 ぼくとアクアがお互いに信頼できていないとなると、ぼくは何を信じていいのか分からなくなりそうだ。

 その可能性は考えたくないので、別の可能性を考えることにしよう。

 

 単純に錬度が足りない可能性。それならば練習しかないけど、今は伸び悩んでいる。そういう時期というだけだろうか。

 ユルグ家の人間でなくては使いこなせない可能性。ステラさんが使えないのはモンスターをテイムできなかったからなはず。だとすると、ステラさんに指輪を返すべきなのか? でも、ステラさんは諦めているような雰囲気があるのに、その選択で良いのだろうか。ステラさんにいらぬ負担をかけてしまうだけでは?

 モンスターの種族が限定されている可能性。そうだとすると他の人に試してもらうと良いのかもしれないけど、ステラさんに断りなくというのはあり得ないからね。

 結局ステラさんがどうしたいのか次第か。でも、せっかく貰ったものにそんな扱いをして良いのかな。

 返すと言ってみたり、他の人に使わせると言ってみたりするのはステラさんに失礼ではないかという気がする。

 素直に使いこなせていない事を相談するくらいならいいと思うし、その方向性で行こう。

 

「だから、仲のいいぼくとアクアに指輪を託してくれたんですか? だとすると、指輪を使いこなせていない今の状態は申し訳ないです」

 

 ステラさんは穏やかに微笑みながらぼくの話を聞いていた。ステラさんは優しい人だから、嫌な顔をしている姿を見たことがない。

 でも、今のステラさんの顔はいつもより優しいように見える。気にしなくても良いってことなのかな。

 

「私にできない事を任せているわけですから、すぐに結果が出ないからと言って悲観する必要はありません。それに、ユーリ君とアクアちゃんの関係が私は大好きなんです。だから、無理をして使いこなそうとしないでください。ユーリ君とアクアちゃんは自然体で良いんですよ」

 

 ステラさんにそう言われると救われるような気持ちだ。ぼくとアクアの関係が好きって言ってくれるのはとっても嬉しい。

 ぼくもアクアとの関係は最高だと思っているけれど、尊敬するステラさんに肯定してもらえると背中を押されたような気分になれる。

 指輪の問題は悩んでどうにかなる問題ではないだろうし、ステラさんの言うように自然体でいるのが良いかな。

 ぼくはアクアを信頼しているし、アクアだってぼくを信頼してくれているのは間違いない。信頼関係が大事だというのなら、そこは大丈夫なんだから、時間をかければどうにかなるかもね。

 まあ、楽観視は危険だけれど、急ぎ過ぎてアクアとの関係が壊れることが一番まずいと言うのはステラさんの言葉で気づけた。

 やっぱりステラさんはぼくの尊敬できる先生だ。いつもぼくを的確に導いてくれる。

 

「そうだ、今日はユーリ君が休む日なんですから、私が料理を作ってあげますね。ユーリ君の好物は魚料理でしたよね。楽しみにしていてください」

 

 そう言ってステラさんはここから離れていく。台所に向かったのだろう。

 ステラさんの料理を食べることは久しぶりだけれど、とっても楽しみだ。何だったらまずくても嬉しいだろうけど、ステラさんの料理は前も美味しかったから期待してしまう。

 湧き上がるワクワクを抑えきれないまま待っていると、ステラさんが料理を持ってやってくる。

 匂いだけでも美味しいってわかる。ぼくはすでに期待でいっぱいだった。

 

「ユーリ君、随分とわたしの料理を楽しみにしていてくれたんですね。私も腕の振るい甲斐があります。さあ、存分に召し上がってくださいね」

 

 ステラさんは料理を並べるとすぐに食べることを促してくる。ステラさんが配膳している時間さえ待ち遠しいと思っていたので、ぼくはすぐに食べ始める。

 魚を根菜と共に煮た料理は味が良く染みていておいしいし、それでいて素材の味を生かせていると思う。

 ぼくが普段食べる料理より味付けが薄いけれど、それでも全く問題にならない位しっかりとした味だった。

 他には魚をすりつぶして団子状にした料理や、魚の骨から出汁を取ったであろう汁物なんかもあった。

 どれもぼくの好物ばかりだけれど、手間のかかりそうな料理ばかりだったので、ステラさんに対する感謝はとても大きかった。

 勢いよく食べ進めていると、ステラさんの笑ったような音が聞こえてきた。声というほどでは無いけど、確かに笑ったような気がする。

 

「ユーリ君は本当に美味しそうに食べてくれて、料理を作る嬉しさというのがよく分かります。また食べたくなったらいつでも言ってくださいね。ユーリ君ならいつでも構いませんから」

 

 そんなに顔に出ちゃってたのか。少し恥ずかしい気もするけど、ステラさんが喜んでくれているのならそれでいいか。

 ステラさんの料理がいつでも食べられるというのはとっても魅力的だけれど、ここまで手間のかかった料理だと大変じゃないかな?

 ぼくはステラさんにこれまで貰った分を返せているのかな。やっぱり指輪を使いこなしたいな。

 そうすれば、ステラさんはきっと喜んでくれる。恩返しがしたいということもあるけれど、ステラさんの喜ぶ顔はきっと魅力的だから、それが見たいというのもある。

 

「ステラさん、今日は色々とありがとうございました。ステラさんからもらった恩に報いられるように、頑張っていきますね」

 

「無理はしないでくださいね、ユーリ君。ユーリ君は私にとって大切な存在ですから、元気でいてくれることが一番なんですからね」

 

 ステラさんは柔らかい笑顔でそう言ってくれる。もちろん、アクアやみんなのためにぼくは無事でいるつもりだ。

 でも、ステラさんが待ってくれていると思うと、窮地でも力が湧いてくると思う。

 改めて、ステラさんと出会えて良かったな。ステラさんは今でも最高の先生だよ。

 そう遠くないうちにやってくるであろう異変の解決のための戦いに向けて、ぼくはしっかりと気合を入れなおした。

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