邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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14話 平穏

 事件が立て続けにあったということで、学園は調査のため休みとなった。

 手持ち無沙汰になったぼくは、アクアと遊ぶことにした。アクアとだけ1日を過ごすことは、アクアが進化してから全然なかったことだから、今日は楽しく過ごせそうだ。まずは何をしようかな。

 

「アクア、今日は何して遊ぶ?」

 

「なんでもいいけど。せっかくだし。抱きしめてくれる?」

 

 何だろう。今日はいきなり積極的だな。まあいいか。

 アクアがやってほしいというなら、人前でもないし、抵抗感はない。

 アクアを抱きしめると、冷たい感じがすると同時に、なんとなく温かいような気分を感じた。

 アクアの体温は低いし、何かアクアから出ているのだろうか。

 不快な感じはしないどころか、むしろ居心地はいいので、あまり気にすることもないか。

 

「ユーリ、人にするみたいに、優しくしなくてもいい。どうせ痛くない」

 

 もっと強く抱きしめろってことかな。

 痛くないというなら、アクアの言うように優しくしなくても大丈夫かな。物理攻撃はスライムには効かないようなものだし、人が全力で抱きしめるくらい、どうということはないのだろう。

 全力でアクアを抱きしめると、アクアは潰れることもなく、かといって強く押し返してくるわけでもなく、柔らかい感触がした。アクアはご満悦な様子だ。

 

「ふふ。ユーリ、楽しいね」

 

 そう言いながら、アクアは抱き返してくる。

 いつものことだけれど、アクアとくっついているとなんだか安心する。落ち着きたいときには、アクアと一緒にいるに限るな。

 それからしばらく抱き合っていると、アクアは満足した様子で離れていく。次は何をしようか。

 

「アクア、満足した? ぼくは結構楽しかったかな」

 

「アクアは満足。ユーリも嬉しいなら最高」

 

「なら最高だね。アクアとぼくは相性バッチリみたい」

 

 特に悩みもせずにそう言うと、アクアは胸を張って肯定する。

 

「当然。アクアはユーリにとって最高のペット。他のモンスターじゃこうはいかない」

 

「まあ、そうだね。たとえばレティとかと一緒だったとして、アクアほど相性がいいとは思えないよ」

 

「戦闘も性格も契約も、ユーリなら全部アクアが一番。アクアにとっても、ユーリが全部一番」

 

「アクアにとって一番なら嬉しいな。もちろん、ぼくにとっても、アクアが一番だよ」

 

 アクアと一緒にいられたことはぼくにとって望外の幸運だ。辛い時も、苦しい時も、アクアがいるから頑張ろうと思えた。

 他にもぼくを支えてくれた人はいるから、アクアだけでいいとまでは言わないけど、アクアがぼくの中で一番大きな存在であることは間違いないだろう。誰よりもずっと一緒にいたことだし。

 

 次はボードゲームをすることに決めた。これはアクアがただのスライムだったときには絶対できないことだったし、こういうのもいいだろう。

 

「アクア、これのルールは知ってる?」

 

「うん。でも、いいの? ユーリじゃ敵にならない」

 

「やってもいない内からそんなことを言っていいのかな? まあ、ぼろ負けするとしても、アクアとなら楽しいよ」

 

「そう。なら、遠慮はしない」

 

 それから、アクアと10戦したけど、良いところが一つもないまま10連敗した。

 アクアは初めてこのゲームをするはずなのに、なんでこんなに強いんだろう。

 負けたことをぼくは気にしていなかったけど、アクアの目がだんだん憐れみを持ち始めたので、単純な強さより、相手との読みあいが大事なルールの遊びに変えてみたけど、これもまた連敗した。的確にぼくの行動を読んでくるので、前のゲームよりも惨敗することになった。

 

 アクアがぼくのことを理解してくれているのだと思うと嬉しかったけど、そう考えると、ぼくはアクアのことを理解できていないんじゃないかと思ってしまい、少しだけ気分が沈んだ。

 

 その様子を見て、アクアは別のゲームを提案してきた。

 今度は運要素の強いゲームだ。ぼくはこういうゲームが得意だったので、アクアに対して、リベンジを宣言してみた。

 

「アクア、運のゲームなら、ぼくは負けないよ。覚悟しておくことだね」

 

「そう。たまにはユーリが勝つのもいい。手加減はしないから、がんばって」

 

 アクアは余裕綽々といった様子だ。まあ、あれだけ連勝していればそれも当然か。

 それからしばらくそのゲームを続けた。基本的にぼくが優勢だったけど、運に乗り切れないときに戦略でひっくり返されることもあり、7対3位の優勢にとどまった。

 これにはびっくりした。運の絡むゲームでほとんど負けたことがないだけに、ここまで負けるのは予想外だった。ただ、アクアは少し悔しそうだった。

 

「ユーリ、本当に強い。でも、これならユーリと勝負になる」

 

「あはは……アクア、本当に賢いんだね。ぼく、このゲームで負けたことはほとんどないのに」

 

「ユーリのペットは最高でしょ? これからはこういうことでも頼ってくれていい」

 

「そうだね。本当にぼくなんかと一緒にいて良いのかと思うくらい」

 

 ぼくがそう言うと、アクアは顔をしかめてしまう。それから少しだけ真剣みを増した顔と声で返してくる。

 

「アクアはユーリのペットなんだから、離れるようなことは言わなくていい。ユーリは頼りになるけれど、別にそうじゃなくても一緒にいる」

 

「あ……ごめんね、アクア。そうだよね。ぼくだって、アクアが頼りにならなくても、ずっと一緒にいるよ。それはそれとして、頼れる場面では頼らせてもらうけど」

 

「それでいい。ユーリはアクアとずっと一緒にいることだけ考えていればいい」

 

「わかった。ずっと一緒に居ようね、アクア」

 

 アクアが離れたくならない限り、なんて言うのはアクアに対して失礼だろうから、思いとどまった。

 アクアがぼくのことを好きでいてくれるのは間違いないから、それを否定するようなことは言うべきではない。反省するべきかな。

 さっきからの言葉や考えはアクアの好意を信じないようなものだ。他の誰が信じないとしても、ぼくだけはアクアのことを信じていないと。

 

 それからも、アクアと話したり、遊んだりしながら一日を過ごした。

 今日はアクアの新しい一面を知れたし、アクアとの絆を改めて感じることができた。楽しい一日だったといっていいかな。

 

 それからしばらくして、学園の活動が再開した。結局以上の原因は分からなかったので、警戒のための人員を配置するという方針に決まったようだ。

 

 ぼくはカタリナに、ステラ先生やアクアと出かける誘いを持ちかけようとした。

 

「おはよう、カタリナ。今日はぼくのあげた髪飾りをつけてくれてるんだ?」

 

「ま、あんたにしては悪くないものだったからね。たまにはいいでしょ」

 

「ありがとう、カタリナ。ところで、ステラ先生がぼくたちと一緒に出かけたいらしいんだけど、カタリナも来てほしいみたいなんだ。一緒にどうかな」

 

 ぼくがそう言うとカタリナは一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに元の顔に戻る。ちょっと機嫌を損ねちゃったかな。

 

「あんたね……ま、いいわ。ステラ先生なら、そんな変なところには連れて行かないでしょ。ついて行ってあげてもいいわ」

 

「よろしくね。それはそうと、体はもう大丈夫?」

 

「問題ないわ。でもね、あんた。そう言うのは最初に聞くことでしょうが。仕方ないわね。ま、あんたにデリカシーがないのは分かりきったことだし、寛大なあたしだから、許してあげるわ」

 

 カタリナは偉そうな言葉遣いだけど、ぼくに笑顔を向けてくれている。そこまで悪印象を与えたわけでは無いのかな。だけど、反省すべきだな。

 

「そうだね。ごめん、カタリナ。でも、問題なさそうでよかった。一応無事とは聞いていたけど、少し心配だったから」

 

「少しなの? あたしはあんな所でやられはしないけど、その言い方はうざったいわね。それはいいわ。それより、いつ出かけるつもりなの?」

 

 やっぱり聞かれるよね。先にステラ先生に確認しておいて良かった。

 

「今度の休日だって。つまり明日だね。軽い食事と、後は雑談する予定みたい」

 

「そ。じゃ、特に用意もしていかなくてよさそうね」

 

「そうだね。気軽な感じで良いらしいよ」

 

「ステラ先生らしい話だわ。じゃ、あたし、次の授業があるから」

 

 カタリナとは別の授業なので、ここで別れる。それからは、いつも通りの学園生活だった。

 それにしても、わざわざ4人で話すって何の話だろう。まあ、大事な話ならもっと別の形だろうし、そこまで気にすることもないか。

 

 そして次の休日。ぼくとアクアはステラ先生との待ち合わせ場所に向かった。そこには今のところ、カタリナだけが待っていた。

 

「おはよう、カタリナ。あれ、今日もぼくのあげた髪飾りをつけてるんだ? 毎日変えてるのに、めずらしいね」

 

「別にいいでしょ、何でも。あんたは本当にいつも似たような恰好ね。この機会に少しはおしゃれでも覚えたら?」

 

 ごまかされてるな。カタリナがそんなことをすることなんて今までなかったし、何か気分でも変わったのだろうか。

 追及したところで、カタリナが答えてくれるとは思えないので、とりあえず流されておこう。

 

「覚えてみたいとは思うんだけどね……なかなか難しくて」

 

「ま、あんたにそういうセンスがあるとは思ってないわ。でも、あんたの思うおしゃれは、普通の人の身だしなみ位だとは理解しておきなさい。あんたがだらしないと、一緒にいるあたしまで変な目で見られるんだからね。あたしに恥をかかせないようにしなさいよ」

 

「カタリナが恥ずかしいのは問題だよね。じゃあ、少しは頑張ってみるかな」

 

「期待しないで待ってるわ。どうせあんたのことだから、たいして身に着けられないんでしょうけど」

 

 ひどいことを言われているけど、あまり否定できるとは思えなかった。どうしても良くわからないんだよね。

 

 それからアクアも混ざって少し雑談をしていると、ステラ先生が到着する。

 

「すみません。お待たせしてしまったみたいですね。ユーリ君、カタリナさん、アクアちゃん。今日はよろしくお願いします」

 

「いえ、気にしないでください。時間より遅いというわけではないですし。今日は何の話をする予定なのでしょうか?」

 

「特に決めているわけではありませんが、最近の調子は聞いてみたいですね」

 

 特に決めていないのなら、本当に雑談と考えていいのかな。ステラ先生の顔はそこまで真剣という感じではないし、少なくとも今は大事な話ではないのかな。

 

「あたしは特に問題ないわ。ユーリは最近調子がいいみたいじゃない」

 

「そうだね。アクアが進化してから、トラブルもあったけど、調子自体はいいほうだと思う」

 

「アクア、ユーリの幸運の女神」

 

「アクアちゃんは、本当にユーリ君になついていますね。契約技使いは、契約モンスターとの仲がとても大事ですので、ユーリ君とアクアちゃんの関係は理想的なんですよ」

 

 ぼくとアクアの関係が理想的だとステラ先生が言ってくれると、本当に嬉しい。

 ぼくがアクアを大切にしていることも、アクアがぼくを信じてくれていることも、ステラ先生は感じてくれているのだろう。

 

「ふーん。アクアとあんたが仲良くすればあたしの役に立つなら、存分に仲良くすればいいわよ」

 

「そんなことのためにアクアと仲良くするつもりはないよ。いや、他の誰ともそういうつもりで仲良くしようとは思わないけど」

 

「別にユーリと仲良くできるなら何でもいい」

 

 ぼくたちの様子を見て、カタリナはあきれたような顔をする。とはいえ、これは不機嫌な顔ではないな。単純に心配しているという感じかもしれない。

 

「相変わらずあんたはお人好しね。そんなんで、冒険者になってやっていけるの?」

 

「少し心配にならなくもないですが、アクアちゃんもカタリナさんも、ユーリ君のそういうところに助けられていますよね? 私も含めて、周りの人が支えてあげればよろしいかと」

 

「アクア、何があってもユーリを支える」

 

「アクアも相変わらずね。ま、ユーリのお人好しは治るものじゃないでしょうし、仕方ないか」

 

 ぼくの助けになってくれる人がこんなにいるんだと思うと、嬉しくなってくる。みんなが支えてくれる分は、別の形でみんなに返したいな。

 

 それからしばらく経って、食事をとることに。今回は前みたいに高そうな店というわけではなかった。前の店は美味しかったけど緊張したし、今のところはこれくらいの方が良いかな。

 

 簡単に食事を済ませ、少し休憩する。今日は本当にただ雑談するだけの日みたいだ。ステラ先生に何か用事があってぼくたちを集めたわけではなさそうだし、もう気を緩めても大丈夫かな。

 

「ところで、ユーリ君たちはパーティを組んで冒険者になるつもりですよね? そこで、少し提案があります」

 

 駄目だった。それにしても、何だろう。ステラ先生のことだから、無茶を言ってくるはずはないけど、わざわざぼくたちだけに?

 

「ステラ先生からの提案でしたら、できるだけ聞き入れたいとは思いますけど……一体なんでしょう?」

 

「それはですね、カーレルの街で冒険者活動を始めてみないかということです」

 

 カーレルの街か。たしかアリシアとレティが活動拠点にしているところだよね。何かいいことでもあるんだろうか。

 

「カーレルの街ですか。特に行きたい場所があったわけでもないのでかまいませんけど、一体なぜ? あ、カタリナはそれでいい?」

 

「ステラ先生の話次第ね。厄介ごとを持ち込まれちゃかなわないわ」

 

「厄介ごとではないと思いますよ。実はですね、カーレルの街は私の故郷なんです。

 キラータイガーの発生があったときに、アリシアさんとレティさんを連れてこられたのも、その伝手があってのことなんです」

 

 そうだったのか。なら、アリシアとレティとステラ先生はすでに知り合いなのだろうか。それとも、カーレルの街に連絡したら、そこにいた彼女たちが来たということだろうか。

 

「それは知りませんでした。ということは、故郷に貢献してほしいとかでしょうか?」

 

「いえ、そうではありません。あなたたちにはいろいろと便宜を図ろうかと思いまして。これでも、あなたたちには期待しているんですよ?」

 

 ステラ先生に期待されていると言われると、気分が上がってくる。ぼくだけじゃなくて、カタリナやアクアの事も認められているような口ぶりだから、余計にかな。

 

「ま、当然でしょ。あたしたちが有望なんて、誰でもわかることでしょうしね」

 

「そうですね。それで、カーレルの街に私の屋敷があるんですが、それを貸し出そうと思いまして。他にも、アリシアさんやレティさんにあなたたちの面倒を見てもらおうかと」

 

 かなりの大盤振る舞いだな。いくらステラ先生が優しいといっても、ただの生徒にここまでするものなのだろうか。

 

「それで、何か対価などは必要なのでしょうか? さすがにただでそこまでしていただくわけには……」

 

「気になるというのでしたら、家賃程度の額を私に払っていただければ。生活を切り詰めてまでとは言いませんが。」

 

「それだけでは足りないような気がしますけど……」

 

「そうですか。実のところ、ユーリ君に贈った指輪を使いこなしてもらいたいんです。あれを使いこなせる人を見るために、私は教師になったので」

 

 それくらいなら何もなくてもするつもりだったんだけど。

 まあ、少し申し訳ないことを除けば、本当にいい話だ。強い冒険者の技術を学ぶこともできるし、しっかりした拠点もできる。ステラ先生との関係が切れてしまわないところも嬉しい。

 受けるだけ受けて、別の形で何か返せるように頑張ってみるか。

 

「カタリナ、ぼくは受けてみてもいいと思うんだけど、どうかな?」

 

「そうね。ユーリが目当てというのは腹立たしいけど、悪い話でもないし、ステラ先生がだまそうとするとは思わないわ。ま、いいんじゃない?」

 

「アクアはユーリのやりたいようにする。ユーリはステラの話を受けたいんだよね?」

 

 カタリナとアクアが反対しないなら、決まりだな。これからもステラ先生のお世話になることにしよう。

 

「そっか。ステラ先生、その話、受けたいと思います。よろしくお願いします」

 

「わかりました。では、準備を進めていきますね」

 

 それから、また雑談をしてから家に帰った。家でアクアといると、少し悲しそうな顔をしているのが気にかかる。

 

「アクア、何か気になることでもあった?」

 

「ううん。何でもない」

 

「そっか。ぼくには解決できないかもしれないけど、言うだけでも楽になることってあるから。気が向いたら教えてくれる?」

 

「……うん。ありがとう、ユーリ。でも、心配しなくても大丈夫」

 

 それから、アクアと一緒に寝ることに。これでアクアの気分が晴れてくれるといいんだけど。そう思いながら眠りについた。

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