邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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110話 回顧

 今日はミーナとヴァネアと一緒に過ごすことになった。この3人で過ごすのは久しぶりな気がする。

 いつもなら一緒に剣の訓練をするんだけど、今日はただゆっくり過ごす予定だ。

 ミーナにしろ、ヴァネアにしろ、戦いはかなり好きなようだから、珍しくはある。

 この3人で最後にゆっくり過ごしたのって、ひょっとして王都での大会の後じゃないか?

 まあ、そこを気にしても仕方ない。めったにない機会を楽しめばいいか。

 

「ミーナもヴァネアも、今日は珍しいね。まあ、毎回戦っていても疲れちゃうか」

 

「それもあるけど、僕としては君とゆっくり話したかったんだ。大事件が終わった後だし、また戦うための英気を養うとでも思ってくれ」

 

「坊やを誘うって決めてからずっとソワソワしていたのよ、ミーナは。可愛らしいものよね」

 

「ヴァネア! 余計なことは言わなくていいよ。とはいえ、本当に君とこうするのを楽しみにしていたんだよ、ユーリ」

 

 ミーナは戦っている時以外はだいたい笑顔だけど、今日は普段より楽しそうに見える。

 その顔の原因がぼくだというのなら、光栄な話だ。ぼくだって同じくらい楽しんでいるとは思うけれどね。

 ミーナと初めて会った時には、ここまでの関係になるとは思っていなかった。

 あそこでおしまいの関係だと思うよね、普通。

 エンブラの町での大会は得られたものが多かったけど、今となってはミーナとの出会いが一番かな。

 ミーナのおかげで色々と強くなれたという面もあるけれど、こうして仲良くできる相手になってくれたことが嬉しい。

 今では対等とは言い難い実力差になってしまったけれど、ミーナと競い合うことは本当に楽しかった。

 それもこれも、ミーナが人間的にも好きになれる相手だからだ。

 ただ強いだけの相手ならば、競い合いたいとは思わないからね。

 

「それは嬉しいな。でも、ぼくだって同じ状況なら似たようなことになると思うよ」

 

「ユーリなら本気で楽しみにしてくれると思うけど、そこまでかな?」

 

「ミーナ……それは言ってしまって良いことだったのかしら?」

 

「あっ……いや、違うんだ、ユーリ。僕がそんな子供みたいな……」

 

 これは、ミーナ自身も自覚しているくらいソワソワしていたってこと?

 それは嬉しいけど、恥ずかしい気もするな。

 まあ、この話題にはこれ以上触れない方向で行こう。ぼくが同じ立場だったらそうしてほしいからね。

 

「それで、何の話がしたいのかな? 2人となら何だって楽しいとは思うけどね」

 

「坊やったら嬉しいことを言ってくれるわね。まあ、思い出話かしらね。アタシたちには色々とあったでしょう?」

 

「折角の機会だから、時間の許す限り話をしたいところだよ。僕とユーリで話をする機会って、あまりなかったからね」

 

 そういえばそうかもしれない。出会ってからの期間の割には、一緒にいる時間は少なかったからね。

 それでもミーナとここまで親しくなれたのはありがたいことだ。

 かなり偶然の重なった関係だけれど、出会えて良かったってはっきり言える相手だからね。

 

「それなら、どこから話そうか?」

 

「アタシはミーナとの初めての出会いから聞いてみたいわ。ある程度は知っているけれど、詳しく知りたいもの」

 

「だったら、エンブラの街での出会いからだね。そういえば、あの時買ったアクセサリーは誰に贈ったんだい?」

 

「そこも説明しないと……ミーナはアクセサリー屋の娘だってのは知っている?」

 

「そうね。聞いたような聞いていないような。剣をずっと振っていたのは知っているわ」

 

「そこにぼくが贈り物を買いに行ってね。そこでたまたま出会ったんだ。その時には、カタリナとアクアにアクセサリーを贈ったんだよね。カタリナには髪飾りを、アクアにはブレスレットを」

 

 本当に懐かしい。あの時にはぼくはずいぶん弱かったはずだ。

 それを言ってしまえばミーナも弱かったことになってしまうか。

 とはいえ、純粋な実力ならミーナのほうが上だった。あの時勝てたのは本当に偶然だ。

 それはさておき、あの時には訓練に付き合ってもらったお礼に2人に贈り物を選んだんだっけ。

 アクアは今でも大切にしてくれているし、カタリナもたまにはつけてくれている。

 2人にはまた贈り物をしても良いかもね。いや、ミーナたちにも良いかもしれない。

 まあ、それはまたいずれの話だ。今は会話に集中すればいいか。

 

「結局ユーリは気が多かったんじゃないか? 2人に別に贈り物をするなんて」

 

「そういう意図で贈り物をしたんじゃないよ。本当に、ただの感謝だから」

 

「ふふっ、そんな時からあの2人とは仲が良かったのね。アタシもその光景が見てみたかったわ」

 

 ヴァネアの言う事は不可能ではあるけれど、気持ちはわかる。

 駆け出し時代のアリシアさん達を見たいとか、昔のステラさんを見たいとか、色々とあるからね。

 とはいえ、それはできないから、これからの関係性をより良いものにするしか無い。

 そうすれば、もっともっと色々なみんなの一面が見られるだろう。

 カタリナやアクアの新しい一面はあまり想像できないけどね。

 あれだけずっと一緒にいて今更そんなものが見つかるとはあまり思えないから。

 

「ヴァネアの昔がどんなだったかも気になるかな。言いたくないならいいけど」

 

「アタシの昔は、まあただの人型モンスターだったわね。きっとあの頃に坊やと出会っていたら、ろくな展開にはならなかったわね」

 

 そんなモンスターとここまで仲良くなるなんて、ミーナは一体何をしたのだろう。

 野良の人型モンスターと仲良くなるイメージは全然できない。

 これまで何度も戦ってきたけど、友好的な相手は1体もいなかった。

 野良のヴァネアとぼくが出会っていたら、きっとヴァネアを殺していたと思う。そうならなくてよかった。

 

「人型モンスターとぼくが和解したことって一度もないからね。ほんと、ミーナとヴァネアが出会ってくれてよかったよ」

 

「本当にね。坊やと殺し合ってたなんて、考えるだけでも嫌だもの。こうして話していられるのも、ミーナのおかげよ」

 

「今思えば、僕の判断は甘かったんだろうね。でも、それで良かった。ヴァネアと契約できたことは、僕の大切な財産だからね」

 

 ヴァネアとミーナが契約してくれたおかげで、ぼくはミーナと再会できたし、ヴァネアとも仲良くなれた。

 だから、ぼくにとっても大切な財産になったと言っていいと思う。

 ぼくは何度も出会いの幸運に感謝しているけれど、最も強い幸運はミーナ関連だろうな。

 偶然に偶然が重なった結果として今の関係があるのだから。

 

「ぼくも同じ気持ちかな。それで、話を戻すんだけど、その後の大会でぼくとミーナは決勝戦で戦ったんだ」

 

「そうだったね。あの時は、僕が勝つと信じて疑っていなかった。だけど、ユーリには負けてしまったんだ。あれは決まったと思ったんだけどね」

 

「詳しく説明すると、ぼくが終始追い詰められていて、いい一撃を貰った後のミーナの隙に無理やり勝ったんだよ。あれはきっと再現できないね」

 

「そうだったのね。その時の坊や、かっこよかったんでしょうね」

 

 どうだろうな。最後の最後に無理やり試合だけ勝ったようなものだから。

 実力的には完全に負けていたと思うし、あの時に戻ったとしても勝てないと思う。

 

「僕は正直負けたショックでそれどころじゃなかったから。でも、ユーリならきっと決意を込めた顔をしていたのだろうね」

 

「ああ、そんな感じがするわね。坊や、アクアとカタリナが見に来ているのに、気合が入らないわけないもの」

 

「確かに、カタリナの応援のおかげで勝てたんだと思う。みんなのために勝ちたかったんだ」

 

「ユーリはその時からずっと誰かのために戦っている気がするよ。僕とはぜんぜん違う」

 

 ミーナの言葉はあまり納得ができないな。

 これまでミーナはぼくの事を考えて力を振るってくれていたと思うけれど。それにヴァネアも。

 単に自分のためだけに力を振るうような人間ならば、ここまで大切には思えていないはずだ。

 とはいえ、なんと言って納得させればいいのやら。ミーナの考えを変えるほどの言葉は思い浮かばない。

 

「ミーナがぼくと違うとは思わないけれど。でも、自分のために強くなるのは悪いことじゃないよ。今ではぼくの仲間としてその力を役立ててくれているんだし」

 

「君には置いていかれたくなかったからね。だから、必死だったんだ」

 

 それで、あの時ぼくに真剣で戦いを挑んできたのだろうか。

 一歩間違えれば死ぬような攻撃までされてしまって、悲しかったけれど。

 だけど、どちらも無事で和解できたのだからそれでいい。ちょっと大きいケンカくらいに思っておけば。

 

「そうなんだね。でも、無理はしないでね。ミーナが傷つく姿は見たくないから」

 

「うん。今ならユーリのことを信じられる。僕を忘れたりしないって。ずっと仲良くできるって」

 

 それってつまり、ぼくがミーナのことを忘れると思われていたのか。

 悲しくはあるけれど、心というのは制御出来ないものだから、仕方のないことではある。

 とはいえ、今では信じてくれているんだ。ぼくの思いが伝わったということだろう。

 でも、はっきりと言葉にすることは大事なことだ。改めて、ちゃんと伝えよう。

 

「そうだね。ミーナもヴァネアも、ぼくにとってとても大切な人だよ。これからも、ずっと一緒にいたい」

 

「嬉しいな。ふがいない僕でも、君にとって大切な存在でいられるんだから。でも、ユーリと対等なライバルになることを諦めたわけじゃないよ」

 

 そういうミーナの顔は朗らかさと頼もしさを同時に感じるもので、ミーナの心の余裕が伝わってくるようだった。

 本当にミーナがぼくに追いついてくれるのなら、とても嬉しいけれど。

 ミーナならできると思う。そう信じていい相手だとはっきりと言える。

 とても楽しみだな。またミーナと競い合う時間は。

 

「その意気だわ、ミーナ。アタシも、2人にとってふさわしい存在でいられるように頑張るわね」

 

 ヴァネアからは凄まじい気合を感じる。

 もうすでにぼくにふさわしい相手だと思うけれど、ヴァネア自身が納得できる形になることを願う。

 いつか、この3人で最高の連携ができたらいいな。まあ、ぼくとアクアとカタリナが1番だとは思うけれど。

 

「ミーナ、ヴァネア、ぼくと出会ってくれてありがとう。2人のおかげで、ぼくは強くなる楽しみを知ることができたんだ」

 

 2人はそれに笑顔で返してくれた。

 またいつか、最高のライバルと最高の戦いができる日が来てほしい。心からそう思えた。

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