邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム 作:maricaみかん
すべてのアクアに乗っ取られている人物がアクアとの和解を決意した。
それから、ステラは計画を次の段階へと進めることにした。
すなわち、アクアとこれからを過ごすための思いを束ねること。
そして、アクアへそれらを送ることで、アクアの心に訴えかけること。
何よりも、その手順を経ることで、皆が解放される未来をつかむために。
それからのアクアとユーリの関係は、きっと大きく変わる。
そして、それは素晴らしいものになるはずだ。
だから、ステラの胸は希望でいっぱいだった。
いつか理想としていた光景よりも、遥かに素晴らしいものを見られる瞬間は迫っている。
心の高鳴りを抑えながら、ステラはさらに準備を進めた。
これまで目覚めさせた者たちに、これからアクアと心をつなげることを伝える。
そして、それぞれの準備が整っていく。
皆がアクアに対する思いをそれぞれの中で形にしていた。
それから、ステラがユーリに贈った指輪の力でアクアにそれぞれの思いを伝える。
それを受け取ったアクアは、まず皆に和解の意思があることを喜んだ。
そして、それを実現した時に、再びユーリに危害が及ぶことがないかを探り始める。
皆を解放したところで、同じ展開になればまた自分は同様の行為をするだろうと判断したからだ。
その心配を排除するために、皆の心をしっかりと吟味していくアクア。
アリシアは、ユーリを失わないために危険な冒険を抑えると決めていた。
サーシャは、エルフィール家よりもユーリを優先していいと考えていた。
ミーナは、一度は自らを諦めるほどにユーリに攻撃したことを反省していた。
メルセデスは、ユーリに嫌われるリスクをしっかりと認識して後悔していた。
オリヴィエは、ユーリと離ればなれになるくらいなら妥協点を探る判断をした。
それぞれの考えを知り、アクアはユーリが次に傷つけられるリスクは低いと判断した。
ただ、だからといって即座に解放する判断を決めなかった。
結局自分と皆が仲違いしてしまうのならば、何の意味もないからだ。
自分たちが戦うことでユーリにとって良くないことになるのでは、解放しても仕方ない。
だから、アクアはもっと深い心に触れることを望んだ。
それに応えるように、アクアに皆の心の奥底が流れ込んできた。
その思いには、皆がそれぞれユーリに対して求めているものがあった。
アリシアのユーリと対等でいたいという願いに共感した。
レティのユーリを可愛がりたいという感覚に同意した。
サーシャのユーリを依存させたいという感性に賛同した。
ヴァネアのユーリと幸せになりたいという本心を理解した。
ミーナのユーリを追いかけていたいという祈りに同調した。
メーテルのユーリの上に立ちたいという欲にうなずいた。
メルセデスのユーリをずっと尊敬していたいという憧れを肯んじた。
フィーナのユーリに求められたいという望みを認めた。
リディのユーリを支えたいという希望を支持した。
オリヴィエのユーリに守られたいという弱さを受け入れた。
皆の心に共鳴したアクアは、大切な人たちとユーリへの思いを共有したいという思いを新たにした。
そこで、全員を解放することに前向きになる。
最後の一手はノーラだった。アクアはノーラの心を読んだ。
すると、ステラから自分のように皆の思いを送られたノーラは、ユーリのために皆を解放したいと考えていた。
ユーリがこれまで彼女たちと紡いできた絆を無駄にしないために。
そして、ユーリを大切に思う人達が、これからもユーリを幸せにしてくれるように。
何よりも、アクアのわだかまりが解消されることで、ユーリとアクアがもっと仲良くなれるように。
ノーラは本当は自分がユーリの一番になりたいと考えていた。それはアクアにも強く伝わっていた。
にもかかわらず、ノーラはアクアとユーリの関係を本気で考えていたのだ。
その思いが伝わったことで、アクアは皆を解放することに前向きになった。
それと同時に、もっとノーラに報いたいという思いも持つことになった。
アクアは本格的に皆に体を返すために、まずは夜を待った。
ユーリに気がつかれてしまいたくないという思い、皆が体の操作に慣れられるようにという配慮。
それらの考えから、ユーリが寝静まってから行動を始めるためだった。
そして、運命を変える夜がやってきた。
アクアは一斉に皆を解放するのではなく、順番に解放していくことに決めた。
万が一問題が起きた時、すぐに対応できるようにするためだ。
それには、ユーリに対する危害への警戒と、うまく体を動かせないかもしれない皆への心配があった。
まずは、ステラが解放される。
ステラは自分の状況を理解してすぐ、指輪と自分がまだつながっているか確認した。
アクアの感情が今でも流れ込んでくるのを理解して、ステラは微笑む。
これで、ユーリとアクアを理想の関係に導く手伝いがまだできる。
きっとユーリは今皆が解放されたことで、違和感を抱くはず。
その疑問こそが、アクアとユーリを次の関係へと進める力になるのだ。
明るい未来を想像することで、ステラは心どころか体まで弾むような心地でいた。
つづいて、アリシアとレティが解放される。
アリシアは風刃の調子を確認した後、軽く体を動かす。
今後ユーリと冒険するために、戦闘能力を把握することが必要だからだった。
問題なく動けることを確認したアリシアは、またユーリと冒険することを想像して高揚していた。
レティは一度部屋の中を軽く飛び回り、自分の感覚を調整する。
そして、翼を色々と動かしていた。
またユーリを抱きしめて、その感触を楽しむために、翼の感覚がどうなっているかが大事だったからだ。
ユーリのお姉さん分としてまたユーリをからかいながら遊ぼう。レティの心は晴れやかだった。
そのつぎに、サーシャが解放される。
サーシャだけは意識を持ったまま無意識を操られていた。
そのため、サーシャは自分の変化を大きく自覚できなかったが、ステラの指輪を通して自分の状況を理解した。
試しに思考を走らせてみると、いつもより残酷な手段も考えられる気がする。
それでも、サーシャはユーリやアクアたちとの未来のために、ゆっくりと尽くしていくと決めた。
それから、ミーナとヴァネアが解放される。
ミーナは模擬剣を手に取り、自らの剣技を軽く確かめる。
またユーリと訓練をして、一歩ずつでも追いついていくために。
いずれユーリとまた対等なライバルとして戦えたら嬉しい。そうでなくとも、チームとして助け合う経験は最高のはずだ。ミーナは期待を抱えながら訓練した。
ヴァネアは全身に一度神経を走らせて、どこか調子を崩していないか確認する。
万全の状態でいることで、訓練でも冒険でも最高のパフォーマンスを発揮するために。
ユーリとミーナのいるところならどこへでも行く。
その覚悟を決めて、ヴァネアはさらに力を高めると決意した。
次いで、メルセデスとメーテルが解放される。
メルセデスは契約技である水の膜をまず使った。
ユーリの弟子として、同じスライム使いとして、ユーリに見せて恥ずかしくない精度であるために。
自分はユーリの次、2番目のスライム使いになるのだから。
メルセデスはその希望を大切にしながら訓練を続けた。
メーテルはスライムとしての形状変化を試していた。
オメガスライムという理想が目の前にある以上、少しでも自分を高めたいと考えて。
そして、メルセデスと相棒としてさらに連携の幅を広げるために。
メーテルは今を全力で楽しんでいた。
その後に、フィーナが解放された。
フィーナは自分の持っている特異な力を制御する挑戦をしていた。
これまでは力を忌避していたが、自分を受け入れてくれる人がいるのだから。
その力でユーリの役に立てば、きっと褒めてもらえるはずだ。
フィーナには未来が輝いているように思えていた。
最後に、オリヴィエにリディ、イーリスが解放された。
イーリスはそのままベッドに入り込んで睡眠を始めた。
これから来る日常で、いつもどおり過ごすと決めたイーリスだった。
リディは次にユーリと会う時にどんな茶を用意するか考え始めた。
オリヴィエはもう救われているようだから、自分の心配をしていれば良い。
自分もユーリもイーリスもオリヴィエも楽しめる時間を作る。
そのために、リディはゆっくりと思考を深めていった。
オリヴィエは自らの力を他の人に使えないかを検討し始めた。
ユーリとともに永遠を過ごしたい。だから、己の能力が役立つのならば全力を尽くす。
その中で、他にユーリと親しいものにも能力を使えば良い。
オリヴィエは自分の幸せのために、ユーリの幸福も尊重するつもりだった。
その未来に、オリヴィエの理想が待っていると信じて。
そして、全てのアクアに操られている存在が解放された。
それとともに、アクアはノーラの思考を監視することも止めた。
ノーラはもう十分に信頼していい相手であるし、対話で収めれば良い。
ノーラがユーリと自分を想ってくれていたことには感謝している。
だから、これからは自分たちの幸福の輪に入ってくれれば良い。
ノーラはアクアにとって、本当に大切な存在となっていた。
これで、ユーリも自分もみんなも幸せになることができるはず。
だから、この選択は間違っていない。
ユーリの望みも、自分の望みも、同じように叶う最高の展開であるはずだ。
それならば、これからの自分は楽しい時間をいっぱい過ごせるはず。
アクアはわだかまりが解消されて、ようやく心の底から笑えそうだった。
そして、最後にアクアを悩ませる問題があった。
ユーリヤはただの肉の人形でしかない。
それは、ユーリの未来にとって良いものなのだろうか。
それが違うのならば。
ユーリヤだって本当の人間として、幸せを味わっても良いのではないか。
そんな考えのもと、ユーリヤという人間を本物にすると決めた。