邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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26話 疑惑

 ユーリヤとパーティを組んで何日か。ぼくたちはユーリヤと活動することに慣れてきていた。ユーリヤは細かいところに良く気が付くし、一緒にいてかなり快適だった。

 今日は以前ユーリヤと出会ったときに倒した食虫植物のようなモンスターについての報告を聞きに、組合でサーシャさんに会いに来ていた。

 

「サーシャさん、調査が終わったとのことですが、結局あいつは行方不明事件の犯人だったのでしょうか」

 

「あのモンスターの近くから、遺品や遺体が見つかったということはありませんでしたわ。モンスターの体内も調べましたが同様ですわ。

 また、資料を調べましたが、同種のモンスターは見つかりませんでしたわ。恐らくあのモンスターは新種ということですわ。解剖もしましたが、あのモンスターが装備ごと人々を溶かせるようには思えませんでしたわ」

 

 鉄は溶かせていないとか、そういう事だろうか。

 だとすると、装備がそのまま残っていないとおかしい。装備は見つかったのだろうか。見つからないのなら、物盗りの可能性もあるよね。

 

「ですが、あれから行方不明者が出なくなっていることも事実。組合としましては、あのモンスターが行方不明者の原因と結論付け、調査を打ち切りとし、アリシア様方を含むあなた方に報酬をお支払いすることになりましたわ」

 

 じゃあ、これ以上の調査はされないということだよね。次に似たような事件が起こらないならいいけど。

 

「ただ、念のために他の可能性があることは頭の片隅に置いておいてくださいまし。行方不明者の傾向からして、あなた方がターゲットになる可能性は少ないとは思いますわ。

 ですが、あくまで希望的観測。お気をつけになられることをお勧めいたしますわ」

 

 ふむ。疑わしいところはあるが、状況証拠的にはあのモンスターが犯人だということか。

 他の何かが犯人だとすると、目的がわからないな。金目の物を持っている人は少なかったようだし、金目当てでもなさそうだ。

 モンスターの可能性が濃厚であることは確かだけれど、一応、ぼくたちを付け回す人がいないかは確認しておいてもいいかもしれない。

 

「それはさておき、ユーリ様。出来れば2人きりで話がしたいと思いますわ。いかがでしょう?」

 

 2人きりでか。一体何の話をするつもりなんだろう。

 サーシャさんなら妙なことにはならないだろうし、ぼくはかまわないと思っている。ただ、他の人の意見も聞いておいた方が良いだろう。

 

「どうしようか? ここで待っててもらってもいいかな?」

 

「あんた、付いていくつもりなのね。ま、いいわ。せいぜい浮かれておきなさい。どうせそういう話ではないでしょうよ」

 

 そういう話って、どういう話だと思っているのだろう。

 どうせ大勢に知られたくない報告があるとか、それくらいだろう。そこまでサーシャさんと親しくなっているとは思えない。まだ会ってそう経っていないわけだし。

 

「ユーリ、何かあったら大声を出して。すぐに行くから」

 

「ユ、ユーリさん。わたしは構いません。アクアちゃんと遊んでおきますねっ」

 

「話は決まったようですわね。では、こちらへどうぞ」

 

 そう言ってサーシャさんはぼくを組合の裏側へと連れていく。鍵のかかっている部屋を開け、ぼくたちが入った後、鍵を閉めた。人に聞かれたくない話なのかな。

 

「さて、これでよろしいでしょう。ユーリ様、ユーリヤ様についてですが、十分に警戒なさってくださいまし」

 

 ユーリヤに警戒して欲しい? 一体どういう事だろう。ユーリヤはぼくたちに良く尽くしてくれている。疑うようなことがあるとは思えないけど。

 

「説明しないといけませんわね。ユーリヤ様ですが、あの日ユーリ様方に発見される以前の痕跡が、一切存在しないのですわ。それまでに出会った人もいなければ、店などを利用したことや街道を利用したといった痕跡もありませんわ。

 そこから考えられる可能性としては、ユーリヤ様が暗殺者や密偵、工作員、あるいはそれに類するものといったものがありますわ。ただ、密偵などであったとしても、一切の痕跡がないというのは不自然ではありますわ。本当に、突然あの場所に現れたかのようですもの。

 もしかしたら、あのモンスターもユーリヤ様が持ち込んだ、あるいは何かの工作をごまかすためにあのモンスターを利用したということもあり得ますわ」

 

 なるほど。そういうことならば、ユーリヤを疑うということも理解できる。あの仕込み靴も、鉄の糸も、密偵や暗殺者の技だと言われて納得できないということはない。

 ただ、なぜだろう。ぼくはユーリヤを疑う気にはなれなかった。ぼくに好意的だということもあるかもしれない。

 でも、ぼくを騙そうとした人がいなかったわけじゃない。そういう人が好意を装ってきたこともある。その上で、ぼくの心はユーリヤを信じる方に傾いていた。

 なんとなく、本当になんとなくとしか言いようがないのだけれど、ユーリヤがぼくを裏切るということは、絶対にないことのように思えた。

 

「サーシャさん、忠告は本当にありがたいです。サーシャさんがぼくを心配してくださっているということも分かります。

 ですが、ぼくはユーリヤを疑うということをしたくない。せっかく情報を下さったサーシャさんには悪いと思いますが、ぼくはユーリヤを信じます」

 

「そうですか……ユーリ様らしい、と。そう思えてしまいますわね。ユーリ様のお優しさはわたくしも好ましいと思っておりますわ。ですから、ユーリ様はそのままで構いませんわ。

 ですが、それでしたら、アリシア様やレティ様、ステラ様にもこの情報はお伝えしたいと思いますわ。ユーリ様の人を信じるということは美徳ではありますが、隙にもなりますわ。

 ですので、こちらでユーリヤ様を調べて、怪しいところがありましたら、わたくしたちから、ユーリ様へと伝えたいと思いますわ。

 それと、忠告を聞き入れないことを気になさる必要はありませんわ。あなた方を様々な形でサポートするのが、わたくしの仕事ですわ。冒険者としての活動をあなた方はしっかりとなさっていますわ。ですから、これくらいの事は迷惑でも何でもありませんわ」

 

 サーシャさんは本当にぼくたちの事をサポートしてくれている。サーシャさんがいなかったら、冒険者としての活動は、もっと苦しい物だっただろう。サーシャさんは、ぼくたちにエルフィール家の名前をいい形で広めてもらいたいみたいだし、ぼくたちの名声を高めることを考えてもいいかもしれない。

 

「本当にありがとうございます。サーシャさんには、いつも助けられていますね」

 

「こちらもあなた方の活動で助けられていますわ。持ちつ持たれつということですわね。それはさておき、ユーリ様。今度、2人でお出かけいたしませんか? ユーリ様、わたくしが楽しい時間にいたしますわよ……?」

 

 そう言ってサーシャさんは触れそうなくらいぼくに顔を近づけてきた。いつも可愛らしい印象のサーシャさんだけど、今日は妖艶な雰囲気がする。なんだかドキドキしてしまった。

 

「わ、わかりました」

 

「嬉しいですわ。それでは、ユーリ様の次の休日に合わせておきますわね。ふふっ、楽しみにしていてくださいまし」

 

 そう言ってサーシャさんはぼくを部屋から連れ出した。組合の受付に戻ると、カタリナたちが迎え入れてくれた。

 

「あんた、それで? 一体何の話をしていたのよ? 2人っきりでする意味のある話だったんでしょうね?」

 

 カタリナの問いかけに対して、サーシャさんはぼくと腕を組んで答える。

 

「わたくしたちは、今度の休日に逢引きをすることになりましたわ。ユーリ様、楽しみですわね?」

 

 そう言いながらサーシャさんはぼくに流し目を向ける。少しどぎまぎしてしまったが、これはさっきユーリヤの話をしていたのをごまかす目的もあるのだろう。明らかに露骨にカタリナを挑発している様子だった。

 

「デ、デートぉ? あんたまさか、本当にそんな話をしていたわけ!? 本当、信じられないわ。ま、いいわ。どうせあんたじゃサーシャさんをまともにエスコートなんてできないでしょうよ。せいぜい失望されておくことね」

 

「ユーリ様がエスコートに慣れていないからといって、失望などいたしませんわ。むしろ、ユーリ様らしくて好ましく思いますわ」

 

「ユ、ユーリさん。今度わたしともデートしてくださいっ! あなたのユーリヤが、サーシャさんより楽しませて見せますからっ!」

 

「つい最近 出会ったばかりのユーリヤ様が、ユーリ様の好みを知っていまして? わたくしはきちんと存じ上げておりますわよ」

 

 先ほどユーリヤを疑えと言っていたようには思えない。サーシャさん、演技が上手いな。ぼくたちへの態度も演技だったらどうしよう。

 いや、演技だったとしても、サーシャさんのしてくれた事が無くなるわけじゃない。よっぽどとんでもないことを企んでいない限り、サーシャさんへの感謝は消えることはないだろう。

 

「ユーリ、サーシャさんと出かけるの、楽しみ?」

 

「そうかもね。サーシャさんがどんなところに連れて行ってくれるつもりなのかは気になるかな」

 

「ふふっ、素晴らしいところですわよ。きっとユーリ様も気に入ってくださいますわ。

 それに、いい気分転換になると思いますわ。ですので、しっかり楽しんでくださいな、ユーリ様。それで、また今後の冒険者活動の活力にしていただければと思いますわ」

 

 ぼくの冒険者活動のことを考えてくれているらしい。サーシャさんはぼくに立派な冒険者になってほしいみたいだし、当然といえば当然だけれど、他の冒険者にもここまでするものなのだろうか。

 まあ、組合でサーシャさんが話しているところなんて、ぼくたちとアリシアさんたちとステラさん位しか見たことはないけど。

 

「ユーリ。良いお土産があったら頂戴。でも、かさばらないものでいい」

 

 アクアが物をねだってくるのは久しぶりだな。いつもはぼくと何かしているだけで満足みたいな感じだし、良い物を見繕ってあげたいな。

 

「ふふっ、ユーリ様からだけではなく、わたくしからも土産を持っていきますわ。もちろん、ユーリヤ様とカタリナ様にもお贈りいたしますわ」

 

「そ。よろしくね、サーシャさん。それとあんた、変なものを買ってくるんじゃないわよ」

 

「わ、わたしにもですか? そうですね。可愛い物だと嬉しいですっ」

 

「楽しみにしておいてくださいまし。それでは、皆様方、また。ユーリ様、逢引きのこと、楽しみにしておりますわよ」

 

 それからぼくたちは家に帰った。今日は本当に気疲れしてしまった。ゆっくり休んで、また頑張ろう。

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