邪悪ヤンデレ厄災系ペットオメガスライム   作:maricaみかん

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裏 渇望

 カタリナはいつものように、アクアの操る体でユーリを見続けていた。

 そんななか、ユーリに新たな出会いがあった。

 フィーナというこれまた新しい女であり、カタリナは再び不機嫌になりながらもフィーナに警戒していた。

 

(フィーナさんの現れるタイミングがちょうど良すぎる。この人は自分がチームに入りやすくなる瞬間を見計らっていた?)

 

 これまで全く見たことのない人間が、オーバースカイがピンチに陥った瞬間に現れる。カタリナはそこに何者かの作為を見た。

 ユーリを傷つける可能性のある人間かもしれないと警戒していたが、カタリナがフィーナの目を見た瞬間に別種の警戒へと変化した。

 

(この人、ユーリを見る目だけが違う。他の人は普通に見ているのに、ユーリを見ている時だけは感情が目に見えるよう。まさか、ユーリの事が好きだから、オーバースカイに?)

 

 カタリナはユーリの周りに女が増えていくことがとても不満だった。

 しかし、操られている自分が何かできるわけでは無いし、仮に自分の体が自由だったとして、ユーリの周りの女を積極的に排除するような真似は出来ないだろう。

 ユーリは案外周囲への悪意には敏感だ。ユーリから女を引き離そうとすれば、感づかれかねない。

 ユーリと結ばれることを夢見るカタリナにとって、それは致命的な展開といえた。

 

(この人のおかしな力をユーリは受け入れているし、フィーナさんは本気になりかねない。ユーリは押しに弱いところがあるから、積極的な姿勢を見せる女に奪われる可能性が一番高いはず。

 嫌よ……ユーリがあたしの物になって、あたしはユーリの物になる。そうなってくれないと、あたし……)

 

 カタリナは自分以外の女にユーリを奪われるという想像をするたびに、心に針が刺さったような感覚を受けていた。

 ステラにアリシアとレティにサーシャ、それとユーリヤにフィーナ。

 自分からユーリを奪うかもしれないと思える女がとても多くいて、だからカタリナはユーリが奪われる想像を何度も繰り返してしまう。

 

(ユーリ……あんたとまた、くだらない話がしたい。あたしが意地悪を言って、あんたが適当に流して。あたしの料理を食べさせたり、一緒に冒険の話をしたり、モンスターをぶっ飛ばしたり。

 あんたとの日常があたしにとってどれだけ大切か、よく分かったわ。あんただってあたしが大切でしょう? そうじゃなきゃあたしのために何度も必死になったりしないわ)

 

 ユーリとの思い出を繰り返しても、ユーリを眺めていても、カタリナの精神への負荷は消えない。

 カタリナはユーリへの好意を自覚してからずっとため込んでいたユーリとしたいことを思い出して、精神を落ち着かせようとする。

 

(あんたと手を繋いだり、キスをしたり、そんなんじゃ全然足りない。今まで触れられなかった時間を取り戻すためには、もっと深い関係にならないと。ユーリがあたしを必死に求める姿を見られたらいいわね)

 

 ユーリの事を考えている以外でも、ノーラの存在がカタリナの癒しになることもあった。

 カタリナはもともと可愛い生き物が好きだったが、手間がかかることが嫌で飼おうとはしていなかった。

 ノーラはとても賢いうえに、ユーリがほとんど世話をしているので、単純に可愛がることだけができそうだ。

 なので、そうすることを考えて楽しむ中で、少しだけ懸念ができた。

 

(ノーラの性別はどちらなのかしら? ユーリにあんなに甘えているモンスターがメスなら、進化した時にとても危険じゃないかしら?

 モンスターと人間の間に子供はできないとはいえ、結ばれること自体はできる。あの態度の女なんて、情欲を抱かない男がいるのか怪しいくらいよ)

 

 モンスターの生態上、ノーラが進化したとしても人型になるとは限らないが、カタリナはノーラが人型になる前提で考えを進めていた。

 もはやカタリナにとってユーリと接する全てがユーリを自分から奪いかねない存在に見えていた。

 

(ノーラはあたしにも甘えてきているから、あたしからユーリを奪わないと信じるしかない。もう最悪なら他の女もユーリの物になっていいわ。あたしが1番でさえあれば。

 ユーリ、いっぱい一緒にいろいろなことをしましょ? 他の女としたことは、全部あたしともやってもらうから、しっかり準備しておきなさいよ)

 

 カタリナは最後には自分がユーリの隣にいるのだと信じていたくて、ユーリを奪われてしまうかもしれないことが恐ろしくて、考えがあちこちに飛んでいくようになる。

 

(ユーリは確か勲章をもらったのよね。あれがあれば、あたしも色々できるかしら? ユーリに勲章を渡したのはオリヴィエ様なのかしら。王都での大会って言ってたはずよね。

 アクアとあたしとでユーリを共有するってのはどうかしらね。結局何をしてもユーリからアクアは離れたりしないんだから、恨みだけ持っていてもどうしようもないわ。

 ユーリがあたしと結ばれるときにはどんな顔をするのかしらね。絶対嬉しい顔だけれど、余裕のあるあいつなんて想像できないわ。なっさけない顔しそうよね)

 

 いつになったらアクアは自分を解放してくれるのか。もうアクアは自分の事なんてどうでもよくなってしまったのか。

 アクアが自分の事を大切に思ってくれているはずだと信じようとするカタリナだが、諦めも浮かびだす。

 

(あたしが死ぬまでずっとこのままだったらどうしよう。それで、ユーリと誰かが幸せそうにするのを横から眺めることになるの? アクア、助けてよ……ユーリと3人でまた過ごすのよ……)

 

 カタリナは1人でずっと考え続けることに疲れ切っていた。今アクアがカタリナの意識に話しかけでもすれば、とても喜んで会話をしたであろう程に。

 考えの内容もそろそろ限界に近づいて、同じ考えが再び浮かぶと自覚することも多くなっていた。

 カタリナはとても新たな刺激を求めていた。

 

 カタリナが望んだ形かはさておき、新たな刺激自体はそう遠くないうちに訪れた。ミアという契約モンスターとの出会いから始まった。

 

(ユーリのやつ、ただの敵にまで気を配るようになるなんて。お人よしも度が過ぎているのよ)

 

 ユーリが大切にする相手は自分と、百歩譲ってアクア。それだけでいいと考えているカタリナにとって、ユーリの他者への優しさは煩わしくもあった。

 しかし、ユーリの優しさによってオーバースカイが手に入れているものも多く、完全には否定しきれないでいた。

 

(ミアさんのこれ、契約なのかしら? だとすると、ユーリはまた新しい力を手に入れたことになる。まさか、これもアクアの仕込み? そんなわけないか。

 あたしを取り込んだのもアクアの独占欲が原因のはず。そんなアクアが他の相手とユーリが契約をすることを許すとは思えない。偶然でしょうね。

 それにしても、ユーリはずいぶん偶然に恵まれるものね。アクアだって危険性を除けば大当たりどころの話ではないし。それがあたしとユーリの幸せに繋がってくれればね)

 

 その時点では楽観的にユーリの新たな力について考えていたカタリナだったが、すぐにその考えを改めることになる。

 オーバースカイがうまく連携できないほどに力を高めたユーリ。その姿を見ていたカタリナに、心底恐ろしいビジョンが浮かぶ。

 それは、強くなったユーリについていけなくなったカタリナを、ユーリが捨て去ってしまうという物だった。

 

(ユーリ……あんた、そんなに強くなっちゃったら、もうあたしの弓なんて必要ない?

 ……嫌! ユーリ、あたしの傍にずっといてよ……あんたがいたから、あたしは頑張れた。あんたを好きだって自覚してからよく分かったのよ。

 あんたを死なせたくないし、あんたとずっと一緒に居たい。そのために強くなったのよ)

 

 カタリナは長い間自覚していなかったが、相当な期間ユーリの事を好きでいた。

 ユーリは弱くて頼りないにもかかわらず、ずっとチームを組んでいたことはそれが原因だった。

 ユーリといる時間を守るためだからこそ、辛い訓練に耐えることもできた。

 そんなカタリナにとって、ユーリから必要とされなくなることは絶対に避けたい、何よりも恐ろしい事態だった。

 

(ああ、今ようやくアクアの気持ちが分かったような気がする。ユーリから必要とされなくなるって、こんなに怖い事なのね。

 それは、アクアも我慢できないはずよね。ユーリと離れ離れになる可能性を本気で想像しちゃったりなんてしたら。

 アクア、最初からユーリとあなたを引き離すつもりなんてなかったのよ。だから、安心して良いのに)

 

 カタリナのアクアを許せないという気持ちより、ユーリと引き離されたくないという思いの方が上回ることで、アクアとの未来を考える余地が生まれていた。

 アクアを許すほど納得できたわけでは無い。それでも、ユーリと一緒に居られない未来より、誰が他に居ようとユーリと一緒に居られる方が良い。

 カタリナはユーリだけは何があっても失いたくなかった。

 

(もう他の女を見るななんて言ってられない。ユーリ、あんたがあたしを求めてくれるならそれだけで……。

 素直になれって言うならなるわ。都合のいい女が良いならそれでもいい。浮気だって許してあげる。

 だから、だから……あたしの事を絶対に手放さないで。強く捕まえていてよ。あたしはあんたの事だけが好きなのよ……)

 

 カタリナはユーリが自分を捨て去ることを思いついた時からずっと感じている寒さから逃れようと必死だった。

 この寒さが無くなってしまうのなら、きっとどんなことだってできる。悪事でも、辛い事でも。

 自分だけがユーリと結ばれたいという思いに蓋をしようとした。

 ユーリと別々の未来を歩む結末だけは避けたいとカタリナは必死だった。

 

(ユーリ、あんたといる時間だけがあたしの幸せなの。お願いだから、その幸せを奪わないで。あんただってあたしと一緒に居たいでしょ? そうだと言って……。

 ユーリといられる時間以外なら、あんたが全部あたしから奪っていい。あんた、こんな機会は無いんだから、あたしのことを貰ってよ……)

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