孫悟空とウマ娘   作:猫ネコ

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話が少し長いので、前、中、後編に分けます。

形は違えど敵意や重圧の混ざった戦場に居たウマ娘。
数多の修羅場を潜った彼女たち。

……だがその実態は人という生き物を知らない子供だった。





頼れるモノ達  ー 前編 ー

 

 

ー 前回のあらすじ ー

 

ハルウララ3連勝おめでとう!!

  スカイは・・・強く生きてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈ある日の午後。お馴染みのメンバーは学園内の端の方にある、草木が生い茂る場所に来ていた。〉

 

 

エル「はぁぁぁ。やっぱりオフの時はお日様キラキラしてるのが1番デスネ!」

 

スカイ「それは同感だけど、こうもいい天気だと睡魔が襲ってくるよ〜」

 

スペ「ええ!?寝ちゃだめだからねセイちゃん!一匹は、一匹だけは獲りたいよー」

 

グラス「でもそんなの獲ってどうするんですか?」

 

エル「ふっふっふっ。これだからグラスは頭ではなく尻に栄養が行くんデスヨ。」

 

グラス「・・・・エル」

 

エル「ハイ。……ごめんなさいデシタ。」

 

スペ「獲った後の意味とかじゃないんだよねー」

 

エル「見つけた時の幸福感!!」

 

スペ「触った時の重量感!!」

 

 

「「カブトムシは凄くかっこいい!!!」」

 

 

スカイ「だからまだ早いってのに…」

 

 

 〈最近は半袖で過ごすのが当たり前になり、ただ立っているだけでも汗が流れ落ちる程の暑さになっていた。

 エルとスペの提案により、女子学生が集まって昆虫採集に勤しんでいた。

 とは言っても暦上はまだ夏には入っていない。

 日頃よく自然の中に行くスカイは昆虫はあまり出てきてない事を伝えるが、2人の熱意に圧倒されてしまった

 

 毎度お馴染みメンバーとウララ。そして…〉

 

 

キング「ほらウララさん帽子はしっかり被ってなさい。油断をするとすぐに水分を持っていかれるからこまめに補給するのよ?」

 

 

 〈お母さんが引率していた。〉

 

 

エル「オウっ♪出ましたねキングマザー!!」

 

グラス「ですが、少々過保護ではないかと…」

 

ウララ「エヘヘ!ウララも言ったんだけどね。結局はちゃんとしないから!って怒られちゃって」

 

スカイ「えぇぇ。キングってばモンスペなの?」

 

キング「何よモンスペって」

 

スカイ「モンスターペアレントの略。byセイちゃん」

 

キング「失礼ね。私だって最近は問題ないと思って何も言わなかったわ。勝ち進んでるし、水も差したくなかったしね。」

 

スペ「それなら何も悪い事ないんじゃないの?」

 

キング「・・・この前の事なのだけど、練習の終了時間になっても全然帰って来なくて悟空さんが送ってくるのかとも思ったのだけど、いくら待っても帰って来なかったのよ」

 

グラス「それは不安ですね。どこにいたんですか?」

 

キング「トレーニング用のタイヤの上で寝てたわ」

 

スカイ「……悟空さんは?」

 

キング「一緒に寝てた」

 

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

 

スペ「ウララちゃん。ちゃんとキングちゃんの言う事聞くんだよ?」

 

ウララ「え。」

 

エル「まぁ、日が暮れても暖かい時期になりましたからネ気持ちは分からなくもないデスが…」

 

ウララ「エルちゃん」パァァ!

 

グラス「悟空さんの大胆さがウララちゃんに移ってきてますね。」

 

スカイ「キング。これからもうちのウララをよろしくお願いします」

 

キング「なんで貴方が母親目線なのよ。」

 

ウララ「もぉぉ!ウララは1人でも大丈夫だってばぁ!」

 

 

・ ・

 

・ ・ ・

 

 

エル「はぁ、、、一匹もいませんデシタネ」

 

スペ「そだね、、、」

 

  「「……ハァ。」」

 

 

スカイ「「だからまだ早いって言ったじゃんか」

 

キング「にしても落ち込みすぎでしょう。いたじゃない、あの、、なんて言ったかしら。小さいけどキラキラした昆虫。」

 

エル「黄金虫の事デスカ?あんなのそこらじゅうにいマスヨ…」

 

スペ「ノコギリとまではいかなくてもせめてコクワくらいは見たかったなぁ」

 

スカイ「まぁまぁ。ちゃんとその季節になったらまた行こうよ。セイちゃんとっておきの罠知ってるからさ」

 

グラス「もしかしていっぱい獲れるのですか?」キラキラ

 

スカイ「あ、、うん。いっぱい獲れるよ。」(グラスちゃんって虫好きだったのか。)

 

ウララ「ね、ね!また一緒に行こうね!」

 

キング「そうね。夏休みの宿題を終わらせたらね」

 

ウララ「うわぁぁぁああ!!!」

 

スペ「キングちゃんがっ!キングちゃんが言ってはいけない事言いましたぁぁぁっ!!」

 

エル「これから楽しもうって時に嫌な事言わないでくだサイ!!!」

 

 

〈レースが関係しなければ皆ただの年頃な学生。和気藹々とオフの日を謳歌していた。

 

     

 厄災がすぐそこまで来ているとも知らずに

 

 

 

 

   

「ハルウララさんだね?少し時間いいかい?」

 

 

〈背後から突如声をかけられ、振り返ってみると、スーツ姿にカメラをぶら下げてカバンを肩にかけている40代くらいの男性がいた〉

 

 

ウララ「ウララに何か用事なの?良いよ!どうしたの?」

 

キング「・・・待ちなさい。…見たところ記者の方でいいのかしら?」

 

 

 「はい!私は四星新聞の○○と申します。本日はハルウララさんの独占インタビューとしてお話をさせていただく予定でしたので参りました。」

 

 

キング「・・・・」

 

グラス「四星新聞といえば大手会社ですね」

 

エル「ほう!ウララも一流の仲間入りデスネ!!」

 

ウララ「そうなんだ。・・あ!すぐにトレーナー呼んで来るね!!」

 

 

 「あ、いえ。来る前に電話で話した時に許可は頂いておりまして、この辺りに来ていると伺ったものですから、このまま取材させていただいても良いですか?」

 

 

ウララ「話終わってたんだね。うん!ウララでよければよろしくお願いします!!」

 

スカイ「むふふ。ウララがまた一歩成長した事にキングママは何か思うk・・・キング?」

 

キング(・・・・・)

 

〈今や知らぬものはいない大手会社四星新聞。ダービーを獲ったスペシャルウィークはもちろん、皐月賞のセイウンスカイ。新入生王者のグラスワンダーにNHKマイルのエルコンドルパサー。キングヘイローはG1こそ獲ってはないが、血統と後一歩の可能性として、一度取材を受けた事があった。

ウマ娘にとっては名誉ある取材。ハルウララもその仲間入りを果たすため喜ばしい事なのだがキングは顔をしかめている。〉

 

 

キング(トレーナー不在の取材?そもそもそんな話聞いていないけど、、、)

 

 

〈そんなキングの心境を知る由もなく話はどんどん進んでいく〉

 

 

男「ウララさんはダートはもう走らないのですか?」

 

ウララ「うん。今は有馬記念だけをみたいからダートは走らないかな〜」

 

男「そうですか。距離についての不安はありますか?」

 

ウララ「うーん。それはちょっとあるかも…だけど、一生懸命修行してるから必ず乗り越えれるって思ってるよ!」

 

男「なるほど。修行ですか、面白い言い方しますね!では次の質問です。

 

 

突然成績が上がりましたが何をやったんですか?」

 

キング(ピクッ)

 

ウララ「んーとねぇ、重り背負って限界まで走ったり、後は「いやいやそういうのじゃなくて」…え?」

 

男「何かやったんでしょ?定番でいったら筋肉増強剤とかだね。」

 

  「「「「「!!!?!?」」」」」

 

 

〈この男が吐いた言葉。聞き流せるはずもない。ウララを除いたキング達は憤りを隠す事はしなかった〉

 

 

ウララ「なぁにそれ?ウララそんなのしてないよ?」

 

男「隠さなくても良いですって!ほら!後は何?興奮剤としてコカインとかかい?それとも怪我を考えず大麻とか」

 

キング「黙りなさいッ!!!」

 

ウララ「ビクッ…きんぐちゃん?」

 

 

〈次から次に戯言をぶつけてくる記者を打ち切るように心臓を握りつぶす様な鋭い声が響き渡った。

ウララは豹変したキングにとまどいの声をかけるが、周りにいたスペシャルウィーク達がハルウララを囲う様に近寄ってきた。〉

 

 

スペ「ウララちゃん。今は少し大人しくしといてね。」

 

エル「すぐに終わらせマスから。」

 

 

〈穏やかに話しかけてくるスペやエル。しかし穏やかなのは話し方だけ。耳は極限までしぼり、尻尾も逆立て目つきも鋭い。友達をバ鹿にされて黙っている者達ではなかった。

 

ウマ娘は人間よりも数倍強い。端的にいうとパワーが桁違いだ。格闘技や武道を習っていようともそれを覆せる程の力がある。常識だ。

そんなウマ娘5人が敵意丸出しで睨みつけてくる中、男はニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべたままだった〉

 

 

キング「ウララさんは自分の力だけで強くなったのよ!血を吐きそうな程の辛いトレーニングにも耐えてね!!そんな頑張りを知らない奴がウララさんを侮辱する事は許さないわよ!」

 

男「ップ!あっははは!ただのトレーニングでこんな大幅な路線変更なんて出来ないでしょ。バ場や距離がどれだけ大事か君達だってわかってるはずだけどねぇ?」

 

エル「全員が全員とは限りマセン。エルだってダートは走れマスし、距離だってどれが適正距離か分からなくて全部走れる者だっていマス」

 

男「そうだね。確かに探せばそういう娘もいる。だけどこれを1人のウマ娘がやっているんだよ!しかもやったのはハルウララ!あの地方でも一切勝てなかったやつがだよ?

才能なんて全く無かったやつがここまで出来やしないよ!

 

なにか使わないとね?」

 

 

 

〈正面から勝手な物言いに一同は怒りが収まらないが、ウララだけは違った。

自分は一生懸命だった。勝ちたかったから頑張った。応援してくれる人だっているのに、ウララの頑張りは届かなかった、、と、涙をホロホロと流していた。

いつもみたいな子供みたいに声を上げて泣くのではなく、ただ涙だけが溢れていく哀しい泣き方。

そんな姿に心を痛め、スカイが宥めていた。

 

……もう我慢の限界だ〉

 

 

キング「貴方ねぇッ!!!」

 

グラス「キングちゃん。どうしようもない人とは話しても無駄です。」

 

男「お、グラスワンダーさん。庇ってくれてるのかい?後怪我の状態もついでに聞かせてくれないかな?」

 

グラス「ふふ。庇うではなく、貶しているのですよ。そして怪我の具合なら貴方の体で感じてもらう事になりそうです。

私の、、私達のライバルであり、友の事を傷つけておいて……五体満足では帰しませんよ。」

 

男「……はぁぁ。これだから融通のきかねぇ女は嫌いなんだ。」

 

スペ「・・・あなた四星の人じゃないですよね?いくら大手の会社とは言っても、こんな事やったらただじゃすまないだろうし、なにより四星の人達はもっと暖かかったよ」

 

男「まぁさすがに分かるか。……もういいかな」ボソッ

 

キング「何よ言いたい事があるならハッキリと……え?」   

 

 

〈ウマ娘に詰め寄られ、恐縮したかの様にボソボソと何か言ってる。

そんな様子にキングは畳み掛けようとしたところで、男が

 

   カバンから刃物をとりだした〉

 

 

男「お前らうるせぇんだよ!こっちは仕事で来てんだよ!生活だってかかってるし、さっさと全部吐かないと痛い目じゃすまないぞ!!」

 

キング「…は、、え、、、」

 

 

〈刃渡15cm以上はあるだろうか。家庭でも一般的な包丁の大きさだ。

凶器を取り出した以上、後には引けないのだろう。

加えて、めちゃくちゃな発言。もはや男は冷静さを失い、距離が少しあるとはいえ、目の前で目撃してるキング達には恐怖の対象でしかなかった。〉

 

 

グラス「〜〜っっ!!キングちゃん!!みんなも!逃げますよ!!!」

 

 

〈震える心臓を強引に抑え込み、グラスが必死に声を出すが、脚が動かない。

徐々に距離を詰めて来ている男の姿を見ているだけしか出来ないのか。

心が勝手に判断したのだろう、死を目前にした彼女達は涙を流す事しか出来なかった。

……もう駄目だ。そう感じた時、

 

 

 

 

   一筋の光が差し込んだ〉

 

 

 

「あらあら。この様な離れた場所で何をやっているのですか?」

 

 

男「!!?、、くっ!」

 

スペ「あ、ああ!」

 

 

 

スカイ「!!ーーっ。たずなさん!」

 


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