孫悟空とウマ娘   作:猫ネコ

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・・・難産でした。

ただ、かけた時間と反比例して出来に関しては正直微妙です。
悟空とルドルフを深い位置に関わらせたくて捏造ばかり詰め込みました。
細かい設定などは重視せず、こんな話があったな程度に思っていてください



注意
・ルドルフの四字熟語はあまり出ません(難しかったです)

・URA設定は適当です

・ルドルフの歳は22にしました。マルゼンスキーが20歳超えてるらしいので…
学園の卒業の歳など細かい所は無しにしてください

・文の途中で平仮名だと分かりにくいので'たづな'みたいに記号つけてます。
ややこしかったら外します。





皇帝

 

 

 

 

ー 前回のあらすじ ー

 

 

スペシャルウィークが進化した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

ー 生徒会室 ー

 

 

 

エアグルーヴ「…会長、私はそろそろ練習に行きますが、今日も遅くまでやられるつもりですか?」

 

 

〈夏休みの終わりにつれ、新学期へ向けて生徒会の業務も増えていく。そんな中でトレーニングをする事も減り、以前より格段と仕事量の増えたシンボリルドルフに不安混じりの声がかかった〉

 

 

ルドルフ「いや、今日はそれほど遅くまでならないよ」

 

グルーヴ「そんな事言って、この前は門限を過ぎてもいたと聞きましたが?」

 

ルドルフ「そ、そんな事もあったか?だが問題はない。今日は区切りの良い所で終わる予定だからな」

 

グルーヴ「そうですか…練習の方は参加出来そうですか?」

 

ルドルフ「・・・練習か…」

 

グルーヴ「?? …会長?」

 

ルドルフ「っ!あぁ、練習はおそらく間に合わないだろうから自主練にするさ。エアグルーヴは気にせず練習に行ってくれ」

 

 

〈ルドルフは憂いを帯びた表情をしたかと思えば、一変してまたも書類を手に取り端的に話した。

 

生徒の見本になるため、文武両道や健康第一は基本とするルドルフのバランスが崩れている事にエアグルーヴは気づいていた。しかし、仕事面に関しての提案や進言をした所で、のらりくらりと躱すのみ。

追求しても精神を追い詰めるだけだと思い、エアグルーヴはそれ以上何も言えなかった〉

 

 

グルーヴ「分かりました。ではお先に失礼します。……会長も、どうかご自愛ください」

 

 

    "バタッ"

 

 

〈ドアが閉まった音を聞いてから、ゆっくりと顔を上げた〉

 

 

ルドルフ「………すまない」

 

 

    ・

 

    ・

 

    ・

 

 

 

〈黙々と作業を続ける事2時間。夏の午後5時は明るいままだ。

ルドルフは血流が滞って重くなった首をコキコキとならせてペンを持った時、ドアの向こうから慌ただしい音が耳に入る〉

 

 

ーートト…ドドド…ドドドドッッ!!!

 

 

ルドルフ(?…なんだ?)

 

 

〈段々とこの部屋に近づく音が気になり、ドアを開けて確認しようと腰を上げた時に向こう側から強く開かれた〉

 

 

   "バンッッ!!!

 

 

悟空「ここまで来りゃあ大丈夫か!?……っっ!大丈夫じゃねぇ。こっちに向かって来てやがるっ」

 

ルドルフ「……ごくうさん?何をしているのですか?」

 

悟空「ルドルフ頼む!オラがここにいる事は絶対ぇに言わねぇでくれ!絶対だぞ!」フワァ…

 

 

〈悟空は両手を合わせ頭を下げながら必死に頼み込んだ。コツコツという足音が耳に入ってくると、悟空は浮かび上がって天井に張り付いた〉

 

 

ルドルフ(話には聞いていたが、本当に飛ぶ事が出来るとは…しかし、一体誰から…)

 

 

  コツコツコツコツ……"コンコン"

 

 

ルドルフ「…どうぞ」

 

 

     「失礼します」

 

 

〈歩き方からノック、そして話し方からも礼儀正しいという言葉が当てはまるヒト〉

 

 

ルドルフ「たづなさん…」

 

たづな「ルドルフさん。こんな時間まで…日々の生徒会業務ご苦労様です」

 

ルドルフ「ありがとうございます」

 

  「「・・・・・」」

 

 

〈挨拶を交わしたと思えば、その場で立ち止まり辺りをキョロキョロと見渡している。ルドルフの脳裏には悟空がチラつくが少しでも反応してしまうとすぐにバレるだろう。

ルドルフは自分の中だけで深呼吸をして言った〉

 

 

ルドルフ「あの…たづなさん、何か用事なのでは?」

 

たづな「・・・ええ。そうですね。ルドルフさん。

 

 ーーー悟空さんはここにいますか?」

 

 

  "ゾクッッッ"

 

 

ルドルフ(彼女からこの様な声を聞くとは…何をしたんだ)「いえ、来ていませんが…」

 

たづな「……そうですか」

 

ルドルフ「何かあったのですか?」

 

たづな「大した事ではないのですけどね。

私が大事にとっておいた物を勝手に食べられたので罰を与えようと思いまして…

とりあえず注射をしてから全身をくすぐった後、目にコーラを流し込もうと考えていたんですよ」

 

ルドルフ「…なるほどっ?…それは中々…涙が沢山出そうですね!?」

 

 

〈食べ物の恨みは恐ろしい。

そんな言葉を実現するかの如く酷い事を嬉々として話す'たづな'にルドルフは静かにパニックを起こしていた〉

 

 

たづな「ですが、ここではないとしたら瞬間移動されたみたいですね。

・・・ふふっ…楽しみはとっておく事にします」

 

ルドルフ「はぁ…」

 

 

〈気の抜けた返事しか出来ないルドルフに10秒程じーっと見てから「では」と言って'たづな'は出て行った。そこから数分後、安全だと思ったのか悟空が天井から降り立つ。

だがその顔は青白く、引き攣った笑みを浮かべていた〉

 

 

悟空「…なぁルドルフ」

 

ルドルフ「なんですか?」

 

悟空「あいつ、笑ってたよな」

 

ルドルフ「そうですね」

 

悟空「でも、気味が悪かったな」

 

ルドルフ「……そう、ですね」

 

悟空「オラ…どうしたら良いんだろうな…」

 

ルドルフ「………とりあえず謝る所から始めましょう」

 

悟空「そうだな………けど今は…この部屋にいさせてくれ…」

 

 

〈憔悴している悟空に自業自得だ!なんて事は言えずに無言で頷くルドルフだった〉

 

 

 

 

ー side ルドルフ ー

 

 

悟空さんが居座ってから早十分。私は作業に戻るから悟空さんは楽にしてくれと言ったのはいいが、それから会話がない。

エルコンドルパサーやグラスワンダーは和気藹々と悟空さんとのエピソードを話してくるが、私自身はそんなに話した事がない。

2人っきりなんてトレーニング用のタイヤを取りに行った時くらいか。

その気になれば業務に没頭するのは簡単だ。

だが大人1人放っておくのはどうだろう。

なんにせよ、ただただ気まずい…

 

 

悟空「なぁ、ルドルフ」

 

 

悟空さんがソファに体を預けながら話しかけて来た。やはり、あちらも気まずいと感じたのだろうか。…いや、聞いた話からすると、そういう人ではないと思うが。

 

 

ルドルフ「なんですか?」

 

悟空「おめぇ、歳いくつだ?」

 

ルドルフ「今は22歳です」

 

悟空「そっか」

 

 

意図は分からないが、話をしようとしてくれるのであれば乗らない手は無い。 

私は不安な気持ちが吹き飛び、仕事をしながら会話を楽しむ事にした。

 

 

ルドルフ「その頃悟空さんは何をしていましたか?」

 

悟空「オラか?オラは…」

 

 

横目でチラッと見ると、目線を斜め上に向けて考えている。…ふふっ、変に落ち着くな。

皆が言う大自然の様な空間とはこういう事なのだな。

待ち時間で発生した沈黙ですら苦ではない。

私は穏やかな気持ちで次の書類に手を伸ばし、直筆のサインが必要な項目に記入をした。

 

 

悟空「そん時には悟飯…子供が産まれてたな」

 

 

ふふっ。そうか、それはめでたi…………

 

 

ルドルフ「……こども?」

 

悟空「あぁ、オラの息子だ」

 

 

……………

 

…………………

 

………………………ほう?

 

 

…なるほど。

とんでもない事を突拍子もなくぶち込んでくる。

私ですら言葉に詰まってしまった。手元を見ると書類が破れている。

 

 

ルドルフ「悟空さん結婚していたのですか?他の者からその様な話は伺ってませんでしたが…」

 

悟空「ん?…あ、確かに言ってなかったなぁ。まぁ大した事でもねぇし別にいいだろ」

 

 

悟空さんは何気なくといった感じで言っているが、彼女達が知れば絶叫ものだろう。

私は恋愛について経験がないが興味はある。先程から作業が進んでない事だし、一層の事開き直る事にした。

 

 

悟空「お?急に立ってどっか行くんか?」

 

ルドルフ「いえ、少し休憩にしようと思いまして、お茶を淹れます。茶菓子も沢山あるので是非食べてください」

 

悟空「そうか?へへっ!悪ぃなぁ」

 

 

ニシシッ!と年不相応な…いや、顔相応と言った方が良いか、そんな子供みたいな笑顔に私もつられて笑みを浮かべた。

 

    ・

 

    ・

 

    ・

 

 

目の前の机にはお茶とお菓子。反対側の椅子には悟空さん。呼吸を整えて準備完了!

 

 

ルドルフ「それで奥様とはどんな出会い方をしたのですか!?」フンスッ

 

悟空「うおっ!!おちつけよルドルフ。ちゃんと話してやっから」

 

 

…うむ、私とした事が、つい前のめりになってしまった。

 

 

ルドルフ「し、失礼しました」///

 

悟空「おう。んで、出会いだったな。オラとチチが会ったのは、オラがまだ小せぇ時。12くれぇだったかな」

 

ルドルフ「ふんふん」

 

 

チチ…奥様の名前だろうな。12歳からとは…とても長い付き合いなのだな

 

 

悟空「だけど、会ったのはそれっきりで、次会ったのは19くれぇだな。それで結婚した」

 

 

・・・・なるほど。全く理解出来ん。

 

 

ルドルフ「悟空さん、端折り過ぎではないですか?」

 

悟空「そうか?んー、でも何て言や良いのか分かんねぇな」

 

 

説明下手みたいだ。質問形式の方がやりやすいだろう。

 

 

ルドルフ「では、その19歳の時に会って、何故結婚する事になったのです?」

 

悟空「確か…最初会った時に将来嫁に貰ってくれって、チチに言われたからだぞ」

 

ルドルフ「12歳で嫁にもらってくれ、ですか…」

 

 

なんとも…マセていたのだな。でも7年間も好意を寄せているとは一途にも程がある。

世の中にはこの様な恋愛があると思い、感動すら覚えた。

 

 

悟空「ははっ!でもオラは嫁に貰うの意味が分からなかったし、久々に会ったから名前聞くまで忘れてたかんな!」

 

 

先程までのワクワクした気持ちが霧散したぞ。女性の敵だったのか。だが、悟空さんの表情からは後悔してる風には見えない。

 

 

ルドルフ「それは…凄く怒っていたのでしょうね」

 

悟空「そりゃあもう!怒りを拳に乗っけてたな。だけどオラはあの戦いがすげぇ楽しかったんだ!」

 

 

当時の事を思い出しているのか目元が緩くなっている。

それに、拳や戦いと聞けば導きださせるのは1つしかないな。

 

 

ルドルフ「奥様…チチさんと戦ったのですか!?」

 

悟空「おう!天下一武道会つってな。世界から腕の立つ奴らが集まって1番強い奴を決める大会があったんだ。

そこの本戦で何年かぶりに会って戦って、その場で…えっと、なんつったっけ……あ、"ぷろぽーず"したんだ」

 

ルドルフ「なんとっ!?お互いのホームグラウンドとも呼べる闘技場で婚約をするとは…とても素敵な展開だな!それでその後はどうなったんだ!?」

 

悟空「お、おう。その後は色々ゴタついちまったけど、一緒に冒険して、結婚式挙げて…夫婦になった」

 

 

はにかんだ笑みから漂う幸福感!私の内側から溢れ出る気持ちを何と呼んだら良いのだ!?叫びたいのに言葉が出てこないっ。

クッ!私もまだまだ未熟というわけか…

…………まてよ、最近流行ってる言葉があると言っていたな…あれは確か…

 

 

ルドルフ「・・・・・・・・・尊い」

 

悟空「え?」

 

 

いかん、つい勝手に口から出てしまった。

しかし、実際の意味とは異なっているだろうに何故かしっくりとくるな。・・・ふふふ

 

 

ルドルフ「フゥ。その後はどうなったのですか?」

 

悟空「えーと、結婚式挙げた次の年だから、、、20歳の時に悟飯が生まれたな!」

 

ルドルフ「悟飯…息子さんですね」

 

悟空「そうだ。オラと同じで尻尾が生えたままでよぉ。血ぃ繋がったやつなんて初めて見たから…あん時は嬉しかったな」

 

 

表情だけでなく、声だけを聞いても当時の情景が思い浮かぶ。本当に嬉しかったのだろう。

だが今の話には何故か反応する事が出来ないでいた。

尻尾についても聞きたかったが、血縁者を初めて見たとなると考えられる要因はいくつかある。

しかしそれは今聞くべきではないと私の直感が訴えてきた。

 

 

ルドルフ「失礼ながらあなた方の子供なら、さぞ手を焼きそうですね」フフッ

 

悟空「はははっ!そう思うだろ?オラもそう思ってたんだけど、全くの逆でおとなしい子だったんだ。

チチの言う事をしっかり聞いて、本を読んだりすんのが好きだったみてぇだな」

 

ルドルフ「そうだったのですか。家の中が好きだったのでしょうかね」

 

悟空「いや?そういう訳じゃなかったぞ。昆虫や植物の図鑑持ちながらウロウロしてたし、高い木に登っては降りられなかったり動物追いかけて行ったら迷子になったり、外にいる方が多かったな」

 

 

全然おとなしくないじゃないか…

 

 

ルドルフ「…そこまで遊べば充分だと思いますよ」

 

悟空「ん、そっか」

 

ルドルフ「そういえば、お子さんに武道は教えなかったのですか?よく子供は親のやっている事に興味を惹かれると聞きますが」

 

悟空「ずっと教えようとしてたさ。鍛えて、強くなって、オラとも組手とか出来たらなーっと思ってたんだけど、チチの奴がぜーんっぜん許してくれなかったんだ!勉強ばっかさせてよぉ!そんで悟飯の奴も偉い学者になるんだーって張り切っちまって」

 

ルドルフ「ははは!どこの家庭も父は肩身が狭いみたいですね」

 

悟空「全くだ!」

 

 

悟空さんは降参したように手をブラブラと降っている。

許してくれなかったと言ってる割に楽しそうに話していたから悟空さんにとっても特別悲しい事ではなかったのだろう。

しかし、振っていた手が急に止まり「でも」と続けて言葉を区切った。

その瞬間に空気がガラリと変わったのを感じる。

私は息を呑んで次の言葉を待った。

 

 

悟空「オラも含めて周りの奴等が悟飯の道を強引に変えたんだ」

 

 

静かだが強い口調。怒りの感情もあっただろうが、それ以上に哀しみを感じた。

私は何と返せば良いのか分からず黙っていると悟空さんは続けて言った。

 

 

悟空「偶然かなんなのかは知らねぇけど、オラの周りに次々と悪い奴らが寄ってくるんだ。オラは戦うのが好きでワクワクする気持ちもあるけど、もし負けちまえば地球はぶっ壊される」

 

ルドルフ「地球が……」

 

 

スケールが大き過ぎて現実的ではないが、純粋で真っ直ぐな眼を見れば疑う余地はない。

 

 

悟空「ああ。どれだけ一生懸命にやろうが敵は待ってはくれねぇからな。

そんで結局は底知れねぇ潜在能力を持つ悟飯の力を借りなくちゃならねぇようになるんだ。

……戦うのは好きじゃねぇって言ってんのに、」

 

 

"昔は何も考えず戦えて良かった"と付け加えて言う悟空さんは何だかとても小さく見えた。

彼は良くも悪くも戦士なんだ。そして1人の父親でもある…良くも悪くも。

単純に親子のコミュニケーションを組手でと考えていた世界から変わり過ぎている。

同情すら感じる思いに、私は「しょうがない」や「それしか道がなかった」など、慰め程度の言葉をかけようと思った時に、悟空さんの一言で考えが変わった。

 

 

悟空「最後には悟飯の心を傷つけちまった。父親として失格だ。

 

 

 

  ーーオラの事、恨んでんだろうな」

 

 

 

ルドルフ「それは違うぞ!」

 

 

その言葉に私は、生徒会室全体に響く様な大きい声を出した

 

 

悟空「おっっ。る、るどるふ?どうした?」

 

ルドルフ「あなたは分かっていない!」

 

 

ふふ。我ながら滑稽だ。少し話を聞いた程度で知ったかぶる私の方が分かっていないだろう。

だが、言わせてもらおう。私の身勝手極まりない言葉を。

この人は今の今まで、心に鎖をつけたままだったのだ。

それでは悟空さんではなく、息子の…悟飯くんがかわいそうだ!

 

 

ルドルフ「失礼承知で言わせてもらうが、悟飯くんは悟空さんを恨んでなんかいないと思う」

 

悟空「…なんでそんな事おめぇに分かるんだ?」

 

ルドルフ「あなたの話を聞いたからです」

 

悟空「オラの?」

 

ルドルフ「はい。昔の話をする貴方は幸せに溢れた表情でした。そんな愛情を受けていたのだから恨むはずがありません。悟飯くんが一回でも戦うのが嫌だと悟空さんに言いましたか?」

 

悟空「…いや、言ってねぇ。だけどそれは押し付けてたから言えなくしちまったんだと「違う」

 

ルドルフ「悟飯くんは嫌な事をする以上に悟空さんの期待に応えたかったからだ。自分の好きな人が頼ってくれるなら力になりたい。

そう思ったから悟飯くんは辛い事とも戦えたんだ」

 

 

勝手気儘だ。未来の自分が見たら羞恥で顔を真っ赤にするだろう。

私が言ったのは都合の良い話。そうであってほしいなど願望にすぎない。

そうとしか言えないはずなのだが不思議と間違いではないと思う。

 

 

 

悟空「……そっか。

ニヒヒ!おめぇがそう言ってくれて良かったぞ!」

 

ルドルフ「いえ………ろくに知りもしない私が言っても説得力は皆無だと思うが」

 

悟空「そんな事ねぇさ。何となくだけど、ルドルフと悟飯はどこか似てるんだよなぁ。」

 

ルドルフ「似てる…か。フフッ…私は他の人と似てると言われた事がないので何やら新鮮な気分だよ」

 

 

やはり人とヒトは対面して話すに限るな。自分にしか見えないものがあれば、その人にしか分からないヒトもいる。

 

 

悟空「そういや、おめぇはもうレースに出ねぇんか?」

 

ルドルフ「私は引退したも同然なので、悟空さんが知るウマ娘のレースには出ないよ。催し物の限られたレースくらいかな」

 

悟空「今年は走んのか?」

 

ルドルフ「予定では年末くらいに」

 

悟空「そんな身体でか?」

 

ルドルフ「え、、、」

 

 

話し始めた時の様な空気だったので油断をしていた。

顔を上げて悟空さんを見ると打って変わって意地の悪そうな顔をしている。

 

 

悟空「最初見た時より、明らかに"気"が減ってる。…いや乱れてんだな。

おめぇはしっかりしてそうな奴だったから自分で何とかすんのかと思ってたら、一向に駄目になっていくしよぉ。

直接聞いても話さねぇと思ってたからキントレの奴に聞いたら、そういう時は自分から打ち明けたら良いって教えてもらったんだ」

 

 

一体どこからが仕組まれた事だったんだ…

エルコンドルパサーとグラスワンダーのふたりには入念な賢さのトレーニングが必要だな。

 

 

悟空「今度はおめぇの番だな。ルドルフ」

 

 

悟空さんは鈍感やデリカシーがないとか言っていたが、本当にただ思った事を言った結果だろう。

 

この人は目的が決まれば過程を考えて実行する事に関しては天才だぞ………。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

ルドルフ「ふむ…専門的な事を言っても分かりづらいだろうから簡単に話をしよう」

 

悟空「ああ。その方がオラも助かる」

 

ルドルフ「まず前提として、私は全てのウマ娘が幸福な世界を目指している」

 

悟空「そいつはすげぇな!…でも全てかぁ」

 

ルドルフ「皆まで言わなくても良い。実力が物を言う世界では、その目的は矛盾が発生する。

それでも私は願わずにはいられない」

 

 

〈悟空は戦いの中でどうやっても守りきれないものがある事を知っていた。だがそれはルドルフも同じ事。全部分かっていながらもそんな目標を掲げているルドルフに悟空は否定するような事を言わなかった〉

 

 

ルドルフ「だがレースを抜きにしても障害はたくさんある。今で言うと、エルコンドルパサーやグラスワンダーはクラシックレースに出走する事が出来ないとかな

その時点でも一生に一度しか走れないレースに出走する事すら出来ないとなると後悔も残るだろう」

 

 

〈クラシックレースと言われてもピンとこないが、黙って続きを待った〉

 

 

ルドルフ「昔に似たような事があった…今度こそはと思ったが、やはり私の力はまだ足らない」

 

悟空「ふーん。'やよい'と'たづな'は手伝ってくれねぇのか?」

 

ルドルフ「…もう恩返しを出来そうにない程手を貸していただいたさ。

今でも私が好きなように動けるのはあの方達のお陰ともいえる」

 

悟空「なるほどな・・・そんで?」

 

ルドルフ「全てはURA……ウマ娘を管理するトップとでも思ってくれ」

 

悟空「」コクン

 

ルドルフ「ウマ娘におけるルールはそのURAで決められるのだが!・・・そこにいる連中は性格が悪い」

 

悟空「お、、おう…」

 

ルドルフ「私はURA本部に出向いた時に確かに聞こえた。下劣な話だったがやつらは現時点で1番金銭が多く発生するウマ娘、ハルウララに目をつけたんだ」

 

悟空「へぇ……へ?・・・ウララが、か?」

 

ルドルフ「そうだ。君はあまり知らないだろうが、彼女が走っていた地方では、とてつもない人気だったんだ。

廃止寸前のとあるレース場を持ち直した事例もある」

 

悟空「でも、あいつ最近になって初めて勝ったんだろ?

…言っちゃあ悪ぃけど、良く人気なんて出たな」

 

ルドルフ「ふふっ。確かにハルウララは勝ったことはなかったが、"負けた事だってなかったよ"」

 

悟空「??。そりゃどういう………なるほどな。おめぇの言う通りだな!」ハハッ

 

ルドルフ「話しを戻すが、その人気者が今度は中央が開催するレースに出走して勝ったときた。

しかも有馬記念で勝つ事を目標にしてる。

ハルウララを動かせば莫大なお金が動く、それを上層部の連中…まぁ一部の者だけなのだが、ウマ娘を商売道具扱いしていると言っても良い。

そんなのがふんぞり返って高みの見物をしているのが気に入らないんだ」

 

 

〈ルドルフの淡々と話す言葉には重みがあった。それは間違いなくルドルフの本心であり、他の誰にも言えるはずのなかった想い。

その様子を直感で感じてはいるが、不服そうな顔をしている悟空がいた〉

 

 

悟空「…おめぇが思ってる事だけは分かったんだけど、結局なんでそんなに身体壊してんだ?

オラはおめぇ程の奴がそんなんになっちまう理由を知りてぇんだけど…」

 

ルドルフ「・・・ふふっ、そうだろうな。

だがヒトの想いには結論だけでなく、そこまでに至った過程もある…それを知っていてほしいんだよ」

 

悟空「…そっか・・・・・ようはウマ娘を軽く見てる奴等が気に入らねぇって事だろ?」

 

ルドルフ「・・・ま、まぁ…間違ってはいない、、かな……兎にも角にもそこで私は考えた。

私がトップに立てばルールは自由自在だと」

 

悟空「うん」

 

ルドルフ「だから、

 

 

ーー焦って片っ端から手を出したらこの様だった」

 

 

 

悟空「うん………………え?」

 

 

〈悟空が驚きの声を上げると空気が凍った様に静かになった。少し間を置くと、何かに耐える様にプルプルと震えているルドルフに声をかける〉

 

 

悟空「…その、トップ…一番になるっちゅうのは急いでやったらなれるんか?」

 

ルドルフ「・・・いや無理だ。段階を踏まないと絶対になれない」

 

悟空「・・・んじゃ何か?おめぇがボロボロになった理由は自己管理が出来てねぇからなったってのか?」

 

ルドルフ「……………………ウン」

 

悟空「何やってんだおめぇ………」

 

ルドルフ「・・・・・・生徒会長だと言うのに不甲斐ないっ!穴があったら入りたいくらいだ…」

 

悟空「・・・・・」

(色んな意味で驚いたな……だけど早く分かって良かった)

 

 

〈悟空は「よしっ」と掛け声とともに勢い良く立ち上がる。その様子に赤くなった顔を手で隠していたルドルフは怪訝そうに尋ねた〉

 

 

ルドルフ「悟空さん?」

 

悟空「ルドルフ。今日の夜は何か予定あるか?」

 

ルドルフ「いや、特に、、、今やっている仕事を終わらせるくらいかな」

 

悟空「つまり無ぇって事だな!んじゃちょっと付き合えよ!祭りに行こうぜ!!」グイッ

 

ルドルフ「わっ!ま、待て!祭りだと!?そんなもの行く時間はない。今日の分の仕事が残ってるんだ」

 

悟空「仕事って今日絶対に終わらせないと駄目なんか?」

 

ルドルフ「そういう訳ではないが……」

 

悟空「なら問題ねぇだろ」

 

ルドルフ「でも……」

 

 

〈決めた分の作業を残したまま出かけることに抵抗があるみたいだ。悟空はほんの少しだけ溜息を吐いて、真面目な顔を見せた〉

 

 

悟空「何も手を抜けって言ってる訳じゃねぇぞ。ただおめぇのそれはやり過ぎだ。

"気"が小さくなるだけなら何とでもなるけど、ルドルフの場合は乱れてるんだ。

このままいくと、そんなに遠くねぇ先で必ずぶっ壊れんぞ」

 

ルドルフ「ーーーっ!」

 

 

悟空「戦い続けたいのなら休め。頑張ってやってきた心身はちょっと休むくれぇで怠けたりしねぇ」

 

ルドルフ「悟空さん………」

 

悟空「イヒヒッ!仕事は全く出来ねぇけど、トレーニングなら付き合ってやっからもう少し力抜けって。

どうせ今の話だって誰にも話せてねぇんだろ?オラがいる間は愚痴くれぇ聞くからよ!」

 

 

〈ルドルフその言葉に目を見開き、驚いた表情を見せた後、恥ずかしいそうに微笑んだ〉

 

 

ルドルフ「ああ…そうしよう」

 

 

     ・

 

     ・

 

     ・

 

 

悟空「んじゃ早速祭りに行こうぜ!」

 

 

〈手を引っ張り、窓から飛び立とうとした時にルドルフが慌てたように呼び止めた〉

 

 

ルドルフ「ま、待ってくれ!」

 

悟空「もー!今度はなんだよー!」

 

ルドルフ「すまないっ。・・・その…生徒の長たる者、トレーニングや業務をほっぽり出して遊びに行くというのは…他のウマ娘に見つかると少し恥ずかしいな…」

 

悟空「恥ずかしい!?…んー、何でか分かんねぇけど、バレなきゃ良いんだよな」

 

ルドルフ「まぁそうだが、あてはあるのか?」

 

悟空「おう!困った時はたづなが何とかしてくれんだろ。さぁオラに捕まれ。瞬間移動すんぞ」

 

ルドルフ「たづなさんか…はて、何か忘れている様な……っ!!待つんだ悟空s"シュン!!"」

 

 

〈中々込み入った話をしていたため、重要な事を忘れていた。

元々悟空が生徒会室に来た理由。その根源に自分からノコノコと姿を見せに行った〉

 

 

 

 

 

 

 

"シュン!!"

 

 

    ーーーっ! バシャ

 

 

〈目の前で何もない空間から突如現れた2人。

それに驚いて飲みかけのジュースを床に撒き散らしている'たづな'に悟空は片手を上げながら言った〉

 

 

悟空「よっ、たづな!早速で悪ぃんだけど、これからルドルフと祭りに行こうとしてんだけどよぉバレたくねぇらしいんだ。

変装でサングラスとか、、ねぇ、、か、な、」

 

たづな「・・・」

 

 

〈白い歯を見せながら近づくが'たづな'の顔のパーツが全く動いてない事に気づく。

そして自分の用件を伝えてるうちにしっかりと思い出した〉

 

 

たづな「・・・・・・・」

 

ルドルフ(ウゥ……沈黙は胃にクるな…)

 

たづな「・・・・・・・・・・どういう訳です?」

 

悟空「あ、、、その、、さっきの事は、、オラが、」

 

たづな「急にお祭りに行く事になった理由を聞いています」

 

悟空「あっ、はい」

 

 

〈余計な事は言うなと全身から訴える'たづな'に悟空は低姿勢を貫くらしい。見兼ねたルドルフが口を挟む〉

 

 

ルドルフ「申し訳ありません。私が、」

 

たづな「いえ、悟空さんから聞くので大丈夫ですよ」

 

ルドルフ「…………はい」

 

悟空(祭り行くまでにオラは生きてるんかな…)

 

 

〈ルドルフの言葉ですら遮って色の無い表情で悟空を見た〉

 

 

たづな「お祭りには強引に誘ったのですか?」

 

悟空「…似た様なもんだ。あまりにも不器用な奴だから……ちょっとくれぇ……って思って…」

 

たづな「そんな勝手な行動をしてルドルフさんに迷惑をかけては駄目でしょう」

 

ルドルフ「ぁ、、、迷惑ではありません」

 

たづな「・・・・」

 

ルドルフ「仕事は締切間近の物は全て終わっています。

なので…私も祭りに興味を惹かれたのですが…あ、たづなさんの手を煩わせようとは思っておらず…」

 

 

〈ルドルフらしからなぬ辿々しい話し方だがその顔は霧が晴れた様にスッキリとしていた。

その様子を見て'たづな'はクスリと笑った〉

 

 

ルドルフ「・・・たづなさん?」

 

悟空(???)

 

たづな「悟空さん、焼きそばやたこ焼きなど、夕飯になりそうな物を頼んでも良いですか?」

 

悟空「へ?あ、あぁ、構わねぇけど…怒ってねぇんか?」

 

たづな「うふふっ。この学園のために全てを尽くしてくれている我らが生徒会長が、ただお祭りに行くくらいで怒ったりしませんよ。

むしろ嬉しいくらいです!」チラッ

 

ルドルフ「!!」

 

悟空「そうなんか!そりゃあ良かった!てっきり怒ってんのかと思ってたな」

 

たづな「悟空さんにはちゃんと怒ってますよ」

 

悟空「え、、、」

 

たづな「だから買ってきてと頼んだのです。いわばパシリというものですよ!」フフン

 

悟空「ぉー、、、おし!たくさん買ってくるからな!」

 

たづな「あなた基準はやめてください。ルドルフさん、買い過ぎない様に見ていてくださいね」

 

ルドルフ「フフフ!…はい」

 

たづな「それで変装でしたね」

 

悟空「おう!サングラスでも、」

 

たづな「そんなの付けても夜の祭りでテンション上がってるルドルフさんなだけです」

 

ルドルフ「そうでしょうね」

 

悟空「んじゃどうすんだ?」

 

たづな「夜ですし目立つ事をしなければカツラで充分でしょう。…どうぞ」スッ

 

 

〈ロッカーをゴソゴソ漁って出来たのは男用の短い髪と女用の長い髪〉

 

 

悟空「オラの分まであんのか。なんでこんなん持ってんだ?」

 

たづな「・・・・いらなかったですか?」ニコニコニコ

 

悟空「ルドルフ!オラ達2人ともつけりゃあ絶対ぇバレねぇぞ!!」

 

ルドルフ「う、うむ」

 

 

〈悟空がルドルフの手を取り、窓に近づいた〉

 

 

たづな「ちょっと待ってください」

 

悟空「あー、やっぱ飛んでいくのはマズかったか?」

 

たづな「いえ、見つからないっていうのが絶対条件ではありますが、それは別にいいです。……ルドルフさん」

 

ルドルフ「?…はい、なんですか?」

 

たづな「明日の事なんですが…その…これから行くお祭りの話なども含めて……///」

 

ルドルフ「・・・?」

 

 

〈いまいち要領得ない話しにルドルフは首を傾げている〉

 

 

たづな「じょ……女子会しませんかっ!?」

 

 

〈可愛らしい小さな爆弾がルドルフの胸を貫いた〉

 

 

ルドルフ「…じょしかい?・・・・・女子会ですかっ!?それは、その、私とたづなさんが…ですか?」

 

たづな「はい・・・いやですか?」

 

ルドルフ「そういうわけでは……何故私なんです?」

 

たづな「ほら、私達って立場が似てなくもないですし……何よりそんな2人が何を話そうと自由じゃないですか」

 

ルドルフ「!!!」

 

 

〈俯いて視線を逸らしながら両手の指をグニグニと合わせている。

たづなの理由には偶然にも先程悟空とした話と酷似している点がある。

その事が分かった瞬間にルドルフは全て悟った〉

 

 

ルドルフ(全部分かっていたのか………敵わないな)

「そうですね。では明日にお互い時間作って女子会をしましょう。茶菓子なども多めに用意しておきます」

 

たづな「ふふっ。私も持っていきますよ。楽しみですね!」

 

ルドルフ「あはっ!そうですね!」

 

悟空「なんだおめぇ達、明日なんか食べるんか!?オラも食いてぇっ!」

 

《悟空さんは女子ではないので駄目です!》

 

 

悟空「ちぇ…」

 

たづな「」チラッ

 

ルドルフ「」チラッ

 

 

っぷ!あはははは!!!

 

 

 

〈トレセン学園のとある一室。その前を通ると部屋の中でとても楽しい事があったのだろうと連想するほど屈託のない笑い声が3つ響き渡っていた。〉

 

 

     ・

 

     ・

 

     ・

 

 

 

ガヤガヤガヤ

     

       ガヤガヤガヤ

 

 

 

〈悟空とスペシャルウィークが先日来た所とは別の少し規模が大きい祭り会場に到着した。祭りの中で存在する独特で賑やかな音を聞きながら悟空達は歩いていた〉

 

 

ルドルフ「結局カツラしかしてないがバレないだろうか」

 

悟空「服だって着替えたのにバレやしねぇだろ」

 

ルドルフ「だと良いが…」

 

悟空「それより何か食おうぜ!オラ腹減っちまったよ」

 

ルドルフ「そうだな。だがその前に言葉遣いを変えよう。君の声を聞けば誰だかすぐに分かってしまう」

 

悟空「そんな事急に言われてもなぁ…敬語は出来ねぇし…」

 

 

〈悟空は出来る限り手伝おうとしているが、そんな器用な事出来るはずもなく唸っていると、ルドルフは買ったばかりのゴ○ゴ13のお面を付けながら提案した〉

 

 

ルドルフ「端的に話すのはどうかな?」

 

悟空「端的?なんだそりゃ」

 

ルドルフ「簡単に言えば一言ずつ話すのさ。少し怖いイメージもあるが君とは結びつかないだろう」

 

悟空「まぁそれなら出来そうだな」

 

ルドルフ「うん。それじゃあ次から頼むよ。よーいスタート」

 

悟空「・・・・」

 

ルドルフ「何か食べたい物はあるかな?」

 

悟空「・・・わたあめ食べる」

 

ルドルフ「ブハッッッ!あ、あー!すまない!

…んふふっ。何だか子供が我儘言ってるみたいになってしまったな。もう大丈夫だ。行こうか」

 

悟空(こいつめ)「・・・りんご飴も食べたい」

 

ルドルフ「ゴポッッ!んふふふふふ!!!わざとだろ!私が悪かったから許してくれ!」

 

悟空「っふ。くふふふ!んじゃ行くぞ」

 

ルドルフ「ああ…………ふふっ」

 

 

〈肩が触れ合う程の位置で歩く2人は周りから見ると、どんな関係に見えるのか。友達か、恋人か、…….それとも親子なのか。

時折悟空の腕を組んで歩くルドルフは心を許している様に見える。

2人でりんご飴を齧っていると横にいる人の声が自然と聞こえてきた〉

 

 

「花火って19時からだったよね。今何時?」

「今は…18時50分だよ」

「えっ、もうそんな時間!?」

「うん。もうそろそろ行こっか」

「そうだね。どうせなら良い所で見たいしね!」グイッ

「わわっ!引っ張んないでよぉ!」

 

 

  タッタッタッタッーーーーー

 

 

「「・・・・・」」

 

 

ルドルフ「今の聞いたか?」

 

悟空「ーーーーーほぇ?」ホイ、ニイチャン。フランクフルトダ

 

ルドルフ「・・・だろうな。この後に花火をするみたいなんだ。行かないか?」

 

悟空「おう、良いぞ。空に行くか?」

 

ルドルフ「・・・いや、皆と同じ位置で見たい」

 

悟空「ははっ……そっか!」

 

     ・

 

     ・

 

     ・

 

 ーーーーーードォンっ!!

 

 

〈真っ暗な空に花が咲く度に心臓が震える。

悟空達は花火を見るための専用スペースに来ていた。〉

 

 

ルドルフ(身体に衝撃が来るほどの位置で花火を見たのはいつだったか…その時はまだ幼かったかな)

 

悟空「なぁ、ルドルフ」

 

ルドルフ「実名はマズイが、なんだい?」

 

悟空「花火……でけぇなぁ」

 

ルドルフ「ん?…ふふ。なんだそれは……だが確かに大きいな」

 

 

〈ルドルフは横目で悟空の顔を見るが、何を考えているのか分からなかった。ただ花火をじっと見ている。

ルドルフもつられる様に空に顔を向けた〉

 

 

ルドルフ(あぁ、ほんとに大きいな…)

 

 

〈所々であった会話もいつしか途切れて2人揃って茫然としていた。

ハッとして我に返ったのは花火終了のアナウンスが流れてからだった〉

 

 

    ・

 

    ・

 

    ・

 

 

 

ルドルフ「ふぅ、何だか変な感じがするな」

 

悟空「んー」

 

ルドルフ「ただ見ていただけなのに心が軽く感じる。満足したかと思えば今度は消失感がする。…矛盾しているな」

 

悟空「…分からなくはねぇな。ま、それで良いんじゃねぇか?無理に答えを出す必要なんてねぇだろ」

 

ルドルフ「ふっ。その通りだ」

 

 

〈人の流れに沿って帰宅をする途中、今度は意識的に悟空の腕を組もうとした時、聞き慣れた声を感じた〉

 

 

「いやー!とても凄かったデス!」

 

「夏の風物詩。お祭りと花火は欠かせません。次は皆さんも一緒に来れたら良いですねぇ」

 

 

 

ルドルフ(……この声は、)

 

 

〈ルドルフは黙ってお面を装着して、悟空の腕を組んで引き寄せた〉

 

 

悟空「!?…なんだ?」

 

ルドルフ『しっ!声を小さくするんだ』コソコソ

 

悟空「・・・?」

 

ルドルフ「私達より左後方、少し離れているが聞き慣れた声がした。探ってくれないか?」

 

 

〈いまいちパッとしない悟空だが、聞き慣れた声というのに想像がついて、口に串を咥えながら上を向いた〉

 

 

悟空『んーーー、、、あちゃあ…グラスとエルだ』コソコソ

 

ルドルフ『やはりか…』コソコソ

 

 

「ん?今名前呼ばれましたか?」

 

「さぁ、私は聞こえマセンでしたヨ」

 

 

「「!!?」」

 

 

悟空『やべぇ、気ぃつけねぇとこの距離でもバレんぞ』

 

ルドルフ『極力話さない様にしよう』

 

 

〈耳元付近で小さく話すが、逆に目を惹く事をこの2人は知らなかった〉

 

 

「わあ!見てくださいグラス!仲の良いカップルがいマース!」

 

「はしたないですよエル……………ん?」

 

 

悟空・ルド「「ん?」」

 

 

「どうかしたのデスか?」

 

「…いえ、何となくですが、、、会ったことある気がして」

 

 

「「ーーッ!?!!?」」

 

 

ルドルフ『おかしいだろ!何故わかる!?』

 

悟空『うげぇ…やっぱ、、、怖ぇな』

 

 

〈2人が焦っているとも知らず話はエスカレートしていく〉

 

 

「一度話しかけてみてはどうデスか?」

 

「…そうですねぇ。私の周りに交際している方はいないと思いますが、、見ず知らずって感じはしないんですよね」

 

 

ルドルフ(クッ!時間の問題か。走って逃げても意味はなさそうだ)

 

悟空『おいルドルフ!オラの背中に穴が開きそうな程見られてんぞ!どうすんだ?』

 

ルドルフ『…………私はルドルフじゃない。ルナだ』

 

悟空『?何言ってんだ』

 

 

〈ルドルフは深呼吸を3回した後、ん"ん"っと喉を鳴らせて息を吸い込み声を変えて喋った〉

 

 

ルドルフ「父さん!最後に私、焼きそば食べたい!」

 

悟空(?……!!なるほどな)「そうか。向かうから手を離すなよ。ルナ」ギュ

 

ルドルフ「うん」ギュ(これでどうだ!?)

 

 

「あー、親子デシタね」

 

「そうみたいですねぇ。話しかけなくて良かったです…」

 

 

〈見事作戦に引っかかってくれたグラス達を置いて、自然な流れで悟空の腕を引き、その場から逃げる様に離れていった〉

 

 

    ・

 

    ・

 

    ・

 

 

はぁはぁはぁ…………

 

ルドルフ「はぁー流石に背筋が"凍ったな"」

 

悟空「そうだな。オラも"ヒヤッ"としたぞ」

 

 

   ーーっ!

 

〈ルドルフはその言葉に思いっきり目を見開いた〉

 

 

ルドルフ「君もイける口なのか!?それもレベルが高いと来たかっ!」

 

悟空「何の事だ?」

 

ルドルフ「ふふっ。私は誤魔化せないよ。私が凍ったと表現したのに対して、ヒヤッとすると掛けたのだろ?ダジャレとは少し違うが中々…ブフッ!面白いじゃないか!」

 

 

〈ルドルフと出会ってから1番の笑顔が繰り出された。しかし、悟空は全くといっていい程理解出来ておらず、一部のワードだけが頭に残った〉

 

 

悟空「何か楽しそうだな……。ダジャレかぁ、、、確か界王様が好きだったな。オラも言ったっけか」

 

 

〈悟空からすると10年近く昔の事だが、そんな事はお構い無しに詰め寄ってくるルドルフの目はキラキラと輝いている〉

 

 

ルドルフ「おー!何か言ったのか?何と言ったんだ!?是非聞かせてくれないか!」

 

悟空「お、おう、すげぇな…えーと、、、

 

 

 ーーーふとんがふっとんだ!!!!

 

・・・だったな。どうだ!面白ぇか?」

 

ルドルフ「いや全くだ」スン

 

 

〈ニヤニヤとしながら見たルドルフの顔は凄く冷めていた〉

 

 

悟空「…………え?」

 

ルドルフ「折角のダジャレを披露してもらって悪いが、それだと別の意味で笑われてしまうぞ」

 

悟空「あ、、いや、オラはあんまり、」

 

ルドルフ「そうだ!今度私の専用ノートを貸してあげよう!為になると思うから是非見てくれ!」

 

悟空「………………………ああ」(こんな顔してる奴に断れる訳ねぇだろ…)

 

 

〈デリカシー0と言われた悟空でさえも、自分の好きな事を楽しげに話すルドルフにいらない、と断るのは無理だった。それが例えどんなに興味が無いとしても…〉

 

 

ルドルフ「ふふっ。これは良いな!明日の女子会なるもので’たづな'さんにも教えてあげよう!きっと喜んでくれるだろうな!なぁ父さんもそう思わないか?」

 

悟空「そうだな。'たづな'なら喜んで…………?………今オラの事父さんって呼んだか?」

 

ルドルフ「ん、………〜〜〜っ!!!」

 

 

〈機嫌良く口ずさむ様にダジャレを言っていると、悟空がボソッと呟いた。ルドルフは何の事か分からなかったが、持ち前の頭脳は優秀すぎて一言一句頭の中で再生してしまった。

一度思い出したならそれしか考えることが出来ず、手で顔を覆いながら項垂れていると頭に大きな手が優しくポンと乗った〉

 

 

ルドルフ「あっすまない!…今のは、、だな、///」

 

悟空「ははっ!

・・・悟飯といいルドルフといい…オラの子にしちゃあ出来過ぎてんなぁ」ナデナデ

 

ルドルフ「ぁ………っ…」

 

悟空「さて、と…今日はもう帰るか。たづなが腹空かして待ってるだろうしな!」

 

ルドルフ「・・・ふふっ。そうだな、帰ろうか」

 

 

〈生暖かい風に身を委ねてポツリと返事をした。

周りの音にかき消されそうな程小さな声だったが決して不満や心残りがあるわけではない。

今日の事で新たな自分を見つけて、今までは誰1人もいなかった特別な存在が2つも出来た事。良い意味で自分はまだ子供だと思い知らされた事。

ルドルフはこの上ない幸せを感じていた〉

 

 

 

    

ーーーーーーー

 

 

ー 後日 ー

 

 

〈ある日の午後。チームリギルに所属する生徒会の一同はトレーニングの休みを見計らって業務に勤しんでいた〉

 

 

ナリタブライアン(ブライアン)「なんで休みの日まで仕事をしなければいけないんだ」

 

エアグルーヴ(グルーヴ)「そんなもの早く終わらせるに限るからだろう。

見ろ、会長だって休まずにしておられる」

 

ルドルフ「・・・・・」

 

ブライアン「フン…私は時間になったら途中でも帰るからな」

 

グルーヴ「ったく!またトレーニングか。そのスパルタ加減を仕事に回してもらいたいものだな」

 

 

〈ブライアンとグルーヴは言い合いながらも手を止めずに作業を進めていた。文句を言っても優秀なのが垣間見える。

そして、これまで黙々とペンだけを動かしていたルドルフが口を開いた〉

 

 

ルドルフ「・・・・・ブライアン」

 

ブライアン「なんだ?」

 

ルドルフ「今日のトレーニング内容なんだが、併走トレーニングなんてどうだ?」

 

グルーヴ「!?」

 

ブライアン「………あんたとか?」

 

ルドルフ「勿論そうだ。私では役者不足かな?」

 

 

〈低姿勢な物言いだが口元は歪めている。驚いているグルーヴを他所に、ブライアンはクックッと喉を鳴らせた〉

 

 

ブライアン「まさか。あんたが相手してくれるんなら私の全力をぶつけても問題ないだろう」

 

ルドルフ「ふふっ。面白くなってきたな。…エアグルーヴも一緒にどうだ?たまには競い合ってみるのも一興だと思うが」

 

グルーヴ「む、、、会長まで……ですが、仕事が、、」

 

ブライアン「フッ。無理に誘う必要もないだろ。その気のない奴が来ても邪魔になるだけだしな」

 

   ブチッ!!!

 

グルーヴ「図に乗るなよブライアン。吠え面をかいても知らんからな」

 

ブライアン「望む所だ。それじゃあ定刻まで後2時間ほどだから続きでもするか」

 

ルドルフ「・・・・いや、」

 

     ーーーーピピピピピ…ピッ

 

 

〈ルドルフは手を伸ばして携帯のアラームを止めると、挑発的な笑みを浮かべて呟いた〉

 

 

ルドルフ「仕事はもう終わりだ。トレーニングに行こうか」

 

グルーヴ「・・・・・・・かいちょう?」

 

ブライアン「あんた………悪い物でも食べたのか?」

 

ルドルフ「私も考えたのさ。急いだ所で出来ない事があるってね。それなら一層の事止めて、有意義な事に使った方が良いだろう」

 

 

〈これまでのワーカーホリックとも言える様なルドルフからはあり得ない事だが、投げ遣りになった訳ではない事は情熱的な視線が物語っていた。

ルドルフが決めた以上は何もいわない。ブライアンとグルーヴは顔を見合わせた後、口元に孤を描いた〉

 

 

グルーヴ「会長がそう言われるのでしたら、是非ご鞭撻のほどをお願いします」

 

ブライアン「あんたは何を思ってるのか知らんが、隙を見せると食い潰すからな」

 

ルドルフ「ふふふっ。それは怖いな。それにエアグルーヴも鞭撻など言わず私を捩じ伏せに来てくれ。

 

 

 

ーー今の私はちょっと強いぞ?」

 







元々は、皇帝の在り方。という題名でしたが一言一句すでにあったものなので変えました。
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