孫悟空とウマ娘   作:猫ネコ

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不穏…なのか?

注意
・ウララとエルの会話は『夏だ!笑って騒いで遊び尽くせ』と『修行編3』から

・龍球ステークスはオリジナルレース

・捏造有り


【戦う】という意味

  

ー 前回のあらすじ ー

 

 

スカイ「悟空さんがいかがわしかった…」

 

キング「買い物は命懸けだったわ…」

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

〈ようやく夏休みが明けて初日のトレセン学園。日焼けして色が黒くなった者。ひと回り身体が大きくなった者。そして……〉

 

 

…………ドサッ

 

 

グラス「エル。鞄、落としましたよ?」

 

エル「…あ…ぅ、うそ……っ!…」

 

グラス「・・・エル?」

 

 

〈エルは口元に手を添えて驚愕に染まった顔を見せる。突然の変化に肩を揺すってグラスが呼びかけるが、視線は一点を見つめて動かない。

原因は何なのかとグラスも同じ方向を見ると、キングとウララがお互いの教室に入る所だった〉

 

 

グラス「あ、キングちゃん。ウララちゃん。おはようございます」

 

 

〈エルの事を相談したかったグラスは2人を呼び止めた〉

 

 

キング「あら、おはよう。ほんの少し会ってないだけなのに凄く久々に感じるわね」

 

ウララ「・・・・・」

 

キング「?……ウララさん?」

 

 

〈隣から、周囲のヒトも笑顔にする程の挨拶が聞こえない事にキングは疑問を生じる。それはグラスも同じみたいだ〉

 

 

グラス「ウララちゃんも、ですか…。見ての通りエルも突然固まってしまって…。どうしたものでしょうか」

 

キング「エルさんもねぇ。あ、………心配しなくてもいいわよ」

 

グラス「え?何か知っているのですか?」

 

キング「まぁね。夏合宿の事なんだけど、」

 

 

〈思い当たる節を話そうとするキング。しかしそれよりも早く動いたのは今まで固まっていた2人〉

 

 

エル「う、ら、、ら。……ウララぁぁっ!!」

 

ウララ「エルちゃん。……エルちゃん!!!」

 

 

   ……ガシッ…ギュゥゥゥ………

 

 

グラス「・・・・・何ですかコレ」

 

 

〈示し合わせた様にハグを交わす2人を見て困惑は増す一方。何かを知ってると思いキングを見ると、それはそれは可哀想なものを見る目付きに変わっていた〉

 

 

エル「ウララ!よくっ…ウッ……よく無事でいてくれましたネ!」

 

ウララ「うんっ。うんっ!ウララね!すっっっごく頑張ったんだよ!あの恐ろしい時間知っているのをエルちゃん1人にさせたくなかったから……っ。」

 

エル「ウララ……ありがとうっ…」

 

 

 

     ウララァァァァァ!!!

 

     エルチャァァァン!!!

 

 

 

グラス「・・・・・キングちゃん。知っているのなら教えてください」

 

キング「そんなに複雑な話じゃないわよ。

トレーニング(臨死体験)しただけだから」

 

グラス「キングちゃん!?」

 

 

     ・

 

     ・

 

 

グラス「なるほど。悟空さんのトレーニングで……」

 

 

〈キングが合宿トレーニングでの出来事をグラスに説明した〉

 

 

キング「ええ。悪いけど驚く前にあれには引いたわ。トレーニングじゃなくて拷問だもの」

 

グラス「そうですか。キングちゃんがそこまで言うとは……それにあのエルをあそこまで追い詰めて、悟空さんの鍛錬に慣れているウララちゃんが、あんなに…」

 

 

   ウッッッララァァァァァァッ!

 

   エルッッッチャァァァァァン!

 

 

〈うるさいくらいに叫ぶ2人は、あの地獄を昨日のことの様にハッキリと思い出して、目尻に綺麗で透き通った雫を貯まらせている〉

 

 

グラス「・・・・・・・・・・・面白い。望む所です」

 

 

〈ボソっと呟くグラスは瞳に炎を灯し、それを確かに聞いたキングは瞳に氷を宿して冷ややかな目をした〉

 

 

キング「……あなたも大概よね」ハァ

 

 

〈自分の世代は血の気が多すぎる。と、もはや溜息しか出ないキング。

その筆頭に近い存在が自分だという事の自覚はもちろん無かった〉

 

 

ウララアアアアアアア!

エルチャアアアアアン!

 

 

キング「・・・行きましょうか」

 

グラス「そうですね」

 

 

〈青春ドラマのワンシーンを繰り広げている所に一度は目を向けるが、それで終わり。

廊下にいる他のウマ娘達は縋る目でキング達を見るが、我関せず、と教室に入ってしまった。

頼りのキング達が居なくなった事により、巻き込まれない様にと教室へ駆け込む。

すると、エルとウララ以外のウマ娘が廊下から消えてしまった。

 

そして遅れ気味に到着して、休み明けとは思えない静けさに疑問を浮かべるもの達がいた〉

 

 

スカイ「………なにこれ」

 

スペ「……さあ?」

 

 

〈その疑問は、とある2人を視界にいれると瞬時に理解して、声をかける事なく無言で教室に入った。

       ・

       ・

それから数分後。教師の叱咤にて幕を閉じる〉

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

ー キングトレーナー室 ー

 

 

〈最近悟空はレースの事に関して何かを思いつく度、キントレに質問をしていた〉

 

 

キントレ「…………という訳で、有馬記念で勝つには2度ある急坂が鍵となるんですよ」

 

悟空「なるほどな。体力だけじゃキツイな」

 

キントレ「その通りです。1週目での坂で精神に疲労を加え、2週目のゴール前の坂で筋肉をやられます」

 

悟空「…んじゃやっぱいつもみてぇに坂では力を温存して最後に爆発させんのが1番か」

 

キントレ「いえ、それだけは駄目です。

有馬記念では中山レース場を使用しますが、そこの最後の直線はとても短い。

後方勢が勝つには最後の第4カーブから直線に入る頃に先頭集団にいないと圧倒的に不利です。

中山では技術重視ですね」

 

悟空「末脚勝負じゃ分が悪そうだ…」

 

キントレ「………まぁそれが全てではないですけどね」

 

悟空「どういう意味だ?」

 

キントレ「稀にいるんですよ。精神が肉体を凌駕するウマ娘が」

 

悟空「火事場の馬鹿力ってやつか?」

 

キントレ「概ね合ってます。位の高いレースであればあるほど、1つ常識外れな事をすると大波乱が起きて、ウマ娘の呼吸がズレてしまいます」

 

悟空「ふぅん。でも、分かってんだったら他の奴もすれば良いじゃねぇか」

 

キントレ「それが出来たら皆しますよ。口で言うのは簡単ですが、肉体を超える事は普通じゃありませんから」

 

悟空「そっかぁ」

(普通な奴じゃなかったら出来んのかなぁ。ウララは………難しそうだな。ウマ娘に変わりねぇし…。何か一つキッカケがあれば望みはありそうだけど)

 

 

〈悟空はウララには伝えてないが例年の有馬記念を見て現実を知った。ヒトならざる修行の末、飛躍的な進化を遂げているウララだが、裏を返せばスタートラインに立っただけ。

レースで勝つには能力値が全てではないが、いまひとつ決定打に欠けている事を無視できなかった。

 

黙ったまま動かない悟空を見てキントレが言った〉

 

 

キントレ「それにしても最近どうしたんですか?」

 

悟空「……ぁ、ん?どうしたって何がだ?」

 

キントレ「いえ、前まではトレーニング一筋だったのにレースの仕組みやコツについて聞いてくるじゃないですか」

 

悟空「その事か。あんま大した事じゃねぇけど、おめぇはキングと他の奴も面倒を見てんだろ?

敵になるかも知れねぇ奴は教えづれぇだろうし、オラも戦い方が分かれば修行しやすいって思っただけだ」

 

キントレ「…悟空さんだけの考えなら賛同しますが、僕の事も含んでいるなら話は別。

僕は誇りを持ってトレーナーをしています。担当のウマ娘達には公平にトレーニングをしているつもりです」

 

悟空「そうか。いや、そうだよな。ははっすまねぇ!」

 

キントレ「分かってくれたなら良かった。それにもし、そんな気持ちを抱いてしまったらキングに怒られてしまいますよ」

 

悟空「キングに?」

 

キントレ「はい………"私のライバルなんだから最高の状態まで持っていきなさい!それを倒してこそ真の強者よ!"って感じに…」

 

悟空「言うなぁ………フッ!ククククッ!!絶対ぇ言う!」

 

 

キントレ「…そして数分経つとキングは言うんです。

"後は自分でやるからもういいわ。あの子を見てあげて。今が伸び代なのに勿体無いわ"。って」

 

悟空「〜〜〜〜っ!!!」バシッバシッ

 

キントレ「裏でそんな事が起きてる事を知らないウマ娘は一生懸命練習を頑張って、キングとの直接対決に見事勝利。

憧れだったキングを倒し、喜びのあまり泣き崩れてしまいます。

すると、背中に温もりを感じて振り返るとキングの姿。泣いているウマ娘と視線を合わせるようにしゃがみ込んで言いました」

 

悟空「クククッ!…な、なんて、言ったん、だっ」プルプル

 

キントレ「"いつまで泣いてんのよ。このキングに勝ったのだから胸を張りなさい!……でも、よくやったわね。あなたの頑張ってる所はしっかり見てたわよ"。と」

 

悟空「あーはははははははっ!!!キングだ!頭ん中で簡単に想像出来ちまう!プックククク!…さ、さすがキングのトレーナーだぜ」ハァ、ハァ…ブハッ!

 

キントレ「くっ………ふふふふふっ!な、中々のものでしょう」

 

悟空「あぁ……さ、最高だ。他にはねぇのか?」

 

キントレ「他には。…〜〜〜〜〜って」

 

悟空「ぎゃはははっ!あ"ー腹いてぇっ!!」

 

キントレ「そしたら、〜〜〜〜〜になって」

 

悟空「も、もう駄目だ!笑い死ぬッ!!」

 

キントレ「…〜〜〜〜〜〜。」

 

悟空「あははっ!…っ!ゴホッゴホッ!」

 

キントレ「〜〜〜〜」

 

悟空「・・・・・」チーン

 

 

    ・

 

    ・

 

    ・

 

 

 

 

キントレ「大丈夫ですか?悟空さん」

 

悟空「……あぁ、何とかな」

 

 

〈最後の方は掠れて声も出せない状況だった。疲労困憊な状態だがキントレの問いにソファで横になりながら片手を上げて応えた。

すると、その時ソファに何かを見つけた〉

 

 

悟空(こいつは…………傷…か…)

 

 

〈なんとなく見覚えのある傷に、辺りを見渡すとチラチラと傷の入った家具や品があった〉

 

 

悟空(殴ったんか…あっちにはぶつけた後……)

 

キントレ「悟空さん」

 

 

〈悟空は思案中に名前を呼ばれ動揺を見せる〉

 

 

悟空「なっ、なんだぁ!?」

 

キントレ「???…何をそんなに慌てているんですか?」

 

悟空「いや別に?…んで、どうした?」

 

キントレ「そろそろ龍球ステークスの出走ウマ娘がネット掲載されるので、こっちに来てもらって良いですか?」

 

悟空「龍球っていやぁ…今度ウララが走る奴だよな。次はどんな奴がいんのかなぁ」

 

キントレ「強敵だという事は分かるんですけどね」

 

悟空「強ぇのか?」

 

キントレ「とても」

 

 

〈キントレは慣れた手付きでマウスをクリックするが出走バの掲載はまだだ。

それなら空いた時間で説明しようと、引き出しからファイルを取り出した〉

 

 

悟空「なんだこれ?」

 

キントレ「龍球ステークスで勝ったウマ娘の資料です。何かの役に立てばと思って集めました」

 

 

〈机に並んだ顔写真つきの紙。その中によく話すウマ娘の資料があった〉

 

 

悟空「これは…オグリか。それにルドルフの奴まで…。ひゃ〜、やっぱすげぇなアイツら!

んでもアイツらの実力なら勝ってもおかしくねぇか」

 

キントレ「・・・逆ですよ」

 

悟空「逆?」

 

キントレ「はい、逆。

強いから龍球で勝ったわけでなく、龍球で勝ったから強い。

この龍球ステークスにはジンクスがあって、龍球を制する者はG1を制す。

シンボリルドルフやオグリキャップは別として、歴代のウマ娘の中でも連敗続きから龍球で勝ってG1ウマ娘に伸し上がったものも少なくありません」

 

悟空「へぇ、そんなにすげぇレースだったのか…。それにしても、よくそんなとこにウララを走らせようって考えたな。強ぇ奴とやんのはオラ好みだけど」

 

キントレ「ウララが本気で有馬記念で勝ちたいと聞いてから考えていた事です。

僕の見立てでは"能力だけ"はギリギリG1級。可能性としては大いにあります」

 

悟空「おめぇから見てもギリギリG1級か…。でもここは絶対ぇに"負けられねぇ"」

 

キントレ「はい。"負けてはいけない"所です。もし仮に負けてしまえば有馬記念に出走は出来ても勝つの難しいでしょうね」

 

悟空「修行あるのみだな」

 

キントレ「そうですね」

 

 

〈悟空は戦闘から、キントレは長年の経験から、"負けられない戦い"がある事を知っている。

負けても次もう一度頑張れば良い。その考えが通じない戦いもあるのだ。

事の重大さを強く受けとめるとパソコンからピロン!と音が鳴った〉

 

 

キントレ「あ、出ましたよ悟空さん!龍球ステークスの出走………バ……」

 

悟空「・・・こりゃあ……やべぇかもな」

 

 

〈予想外の出走ウマ娘を見て2人はそれ以上言葉を発せなかった。

無慈悲な現実に悟空達の未来予想図は簡単に潰されてしまう。

それでも活路を見出すため画面をただ見つめていた。

 

 

 

 

 

 

だがそう簡単に受け止める事が出来ない者もいた〉

 

 

 

「ちょっと!これどういう事よッ!!!」

 

 

〈バンッ!と教室中に響くほどの力で机に手を叩きつけ、携帯画面突き出す。

昼休みの時間だというのに、その教室と近くの廊下にいるウマ娘は息を呑んで、独特の静けさが漂う。

彼女は周りの様子を肌で感じるが表情を変える事なく、いつもの様子で口を開いた〉

 

 

「なぁにぃ?ちょうど日が差してるから少し寝ようって思ってたのにぃ」

 

「とぼけないで!あなた何のつもりなのよ!」

 

 

〈一触即発の雰囲気に彼女達の友人が仲介に入る〉

 

 

スペ「ちょっ、どうしたの!?落ち着いて。ね!」

 

グラス「そうですよ。ちゃんと訳を言わないと分かりませんよ。キングちゃん」

 

 

〈宥めるように声をかけられたのはキングヘイローと呼ばれるウマ娘。そして…〉

 

 

キング「いいえっ!このヒトは分かっている!アナタは全部分かっている!私が怒ってる理由を!

 

ーー訳を言いなさいセイウンスカイッ!!!」

 

 

 

〈セイウンスカイとキングヘイロー。彼女達を知る者は特別珍しくない光景。

スカイがふざけてキングが叱る。それに釣られてスペが加わりグラスが宥める。そこにエルがもう一度火をつける。そんな、わちゃわちゃしながらも笑顔でいっぱいだったのに、今の彼女達に笑みはない。

ここまで本気でスカイに怒るキングを見るのは初めてだった〉

 

 

スカイ「訳かぁ……有馬チャレンジとか言って頑張ってるウララに水を差して、龍球ステークスに出走する。やつの事であってる?」

 

キング「ーーーっ!アナタッ!ふざけてるの!?」

 

スカイ「本気だよ。何が悪いの?」

 

キング「っこの!ーーーーウララさんの邪魔をして何がしたいのよッ!!」

 

 

グラス「!!!………キングちゃん」

 

 

〈彼女は気づかない〉

 

 

スカイ「邪魔?違うよ。私は私のために走るだけ」

 

キング「何も違わない!!!アナタが龍球で走る意味なんて無い!アナタならもっと他の所があるでしょ!!」

 

 

スペ「キングちゃんっ」

 

 

〈怒りのあまり、自分の発言の意味を…〉

 

 

キング「ウララさんは!ずっと前から決めてたの!勝ち続けて有馬記念に行くって!!」

 

スカイ「へぇ。まるで私が出たら連勝ストップするみたいな言い方だね」

 

 

〈昔から隣に寄り添って見てきたハルウララのレース人生。ここまで闘争心溢れるウララを見て内心喜んでいた。ともに鎬を削って、讃えあって、笑い合って、そんな夢物語が叶うかもしれない時。

だからこそ、それを邪魔するセイウンスカイが気に入らなかった〉

 

 

キング「可能性の問題よ!もし負けて走る事をやめてしまったらどう責任とるのっ!!?」

 

スカイ「・・・・・」

 

 

エル「キング……ッ…」

 

 

〈それでも彼女は気づかない。同期が、ライバルが、友達がどんな眼をしているのか〉

 

 

キング「アナタは………っ。アナタは龍球に出るべきでは、

『それ以上キングヘイローの名に泥を塗りたくなければ黙りなさい』ーーーっ!?」

 

 

〈堪忍袋の尾が切れたキングに訪れたのは、声に刀身が宿り、身体を貫く感覚。

勢いよく振り返ると、心の叫びを押し潰した様に言ったグラスはともかく、スペやエルまで睨みつける様に真っ直ぐ見ていた〉

 

 

スカイ「・・・・」

 

キング「ぁ…あなたたち……スカイさんを庇うの?…だって…ウララさんは……」

 

 

〈我に返ったのは精神状態だけ。言葉の真意を読み取れない哀れな少女にいつもの凛とした立ち姿は見えない。

もはや可哀相とも思えるが、同情で見ないフリをしてはならない域まで達している。

このバ鹿な友には泣かせてでも言う必要があった〉

 

 

グラス「キングちゃん。気持ちだけは理解できます。でもその気持ちを相手にぶつける事は許しません。

私達はウマ娘。本能のままに走って、誇りと共に戦う。

おままごとや友情ごっこをしている訳ではないんですよ」

 

キング「っ!」

 

 

スペ「そうだよ。キングちゃんらしくない。

出走が決まれば上も下も、強いも弱いもない。勝ったウマ娘が強いだけ。

自分の選んだレース人生を他人が決めるのは違うと思う」

 

キング「・・・・・」

 

 

エル「……本当ならこんな事言う必要はないデス。もしも他で言ってるウマ娘がいれば1番に怒るのはキングなんデスから。

…情けない奴デス。どんなに辛いことからも正面から受け止める、そんなプライドの塊だったキングはどこに行ったのデスカ」

 

 

 

 

キング「!……ぁ、私…なんて事を…っ…」

 

 

 

〈スカイに怒鳴り散らした事とウララへの侮辱ともとれる発言を理解したキングは、顔が真っ青になりワナワナと震え出した〉

 

 

グラス「先程も言いましたが気持ちは理解しています。ですが、何よりも先にやるべき事があるでしょう?」

 

キング「……うん」

 

 

〈自分が溢すべきではないと、必死に涙を堪えてスカイに向き直ると、勢いよく頭を下げた〉

 

 

キング「スカイさんごめんなさいっ。私…その……いえ。…本当にごめんなさい」

 

スカイ「ううん。こうなる事…ってよりも殴られるまで予想してたから平気かな」  

 

スペ「さ、さすがだね…」

 

 

 

 

 

〈騒動が落ち着いてくると、昼休み本来の賑やかな空間を取り戻す。

キングは律儀に1人1人謝罪に行ってから、顔を赤くして戻ってきた〉

 

 

キング「あの、ごめんなさ、」

 

スカイ「もー!何回謝んのさ!分かったって!私も煽ること言っちゃってたし!

もうその事で言うのは無しね」

 

キング「ぁぅ……失態だわ…」

 

グラス「そうですねぇ」

 

キング「ヒグッ!」

 

スペ「グラスちゃん!もうちょっと優しくしてあげて!今キングちゃんはナイーブなの!」モギュ!

 

キング「スペさん……」ギュゥゥ!

 

グラス「あらあら〜。スペちゃんに庇ってもらうだけでなく、ハグまで………この、へっぽこウマ娘」

 

スペ「こら!」

 

キング「・・・・グスッ」ギュッ

 

エル「もうただの嫉妬デース…」

 

 

〈若干幼児化している者もいるが、穏やかな昼下がりになった。

そろそろ休み時間も終わる頃で、キング達も席に戻ろうとする時、グラスが足を止める〉

 

 

グラス「何となく思っただけですけど…セイちゃんは菊花賞出ますよね?3000mは精神肉体のみならず、長いレース展開から脳が疲れると聞きます。2000mより少しでも距離を増やした方が良かったのでは?」

 

 

〈ウララの件とは関係ないとばかりに平然と尋ねる。スカイもその事を理解しているのかアッサリと答えた〉

 

 

スカイ「もちろん菊花賞には出るよ〜。でも距離より大切な用事があるから、このレースだけは外せないかなぁ」

 

グラス「用事とは?」

 

スカイ「それは内緒。何も無かったらそれはそれでいいし、何かあった時はまた聞きに来てよ。その時は洗いざらい話すから」

 

グラス「???。分かりました」

 

 

〈グラスワンダーはセイウンスカイというウマ娘を知っている。

表側ではのらりくらりとのんびり歩いていても、裏側ではどこまでも計算尽くだという事を〉

 

 

グラス(今度は一体何が見えているのですか、ねぇ…)

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

ー キングトレーナー室 ー

 

 

悟空「ん?」

 

キントレ「どうしました?」

 

悟空「いや、なんかキングの"気"が変に上がったから。…まぁ落ち着いたみてぇだし平気か。

それにしても……ハァ。スカイか。いつかはヤル相手だったから早ぇうちに当たって良かったんかもな」

 

キントレ「とにかく、注意するのは逃げウマですからね。ただセイウンスカイは普通じゃないので、既存の逃げウマ対策がどこまで通じるか…」

 

悟空「そういや、細けぇとこはオラ知らなかったな。スカイはやっぱ強ぇのか?」

 

キントレ「……身内贔屓になりますが、僕の最高戦力であるキングヘイローから下の順位をとった事がない。全戦全敗なんですよ」

 

悟空「そうか。………よし!とりあえず修行すっか!スカイは逃げウマだから最後に差せる脚を鍛えれば良い勝負すんだろ!んじゃあな!」

 

キントレ「あっ、"ガチャ!"………だから速いんですって」

 

 

〈1人呟くが返答するものはいない。キントレは悟空の出て行ったドアをしばらく見つめていると、今までとは比較にならないほどのため息を吐いた〉

 

 

キントレ「……悟空さん、セイウンスカイの本当の強さは眼に見えないんですよ」

 

 

〈今やセイウンスカイの強さを1番知っているのはキントレだと言っても過言ではない。

愛バであるキングを勝たせようと1から策を練り、シミュレーションを重ね、万全を期して挑んだ結果が皐月賞。

2着で僅差とはいえ、キントレから見ると着差以上の実力の違いを思い知らされた。

キントレは実のところセイウンスカイにさえ勝てば全員に勝てると思ってる所もある。

そのセイウンスカイを今度はハルウララが相手をつとめる事となった〉

 

 

キントレ(悟空さんなら………。いや、僕も考えるだけじゃなくて行動しようか)

 

 

〈今日のトレーニングに向けて準備を始めようと道具を持つと、ある事を思い出した〉

 

 

キントレ「確か悟空さん、キングの"気"が上がったって言ってたな。……今日はケアから始めようか」

 

 

〈当たり前のように''キングの異常には予想ではなく確信をついた"。

 

 

ーーー後日。この意味の真理に悟空は身をもって苦しめられる事となる〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「ふんふっふふん♪らんらんらんっ♫」 

 

悟空「お!ご機嫌だなぁウララ」

 

ウララ「うん!何たってセイちゃんと一緒に走れるんだもん!とっても楽しみなんだー!」

 

悟空「…レースを楽しむのは良い事だ!でも、気をしっかり持つんだぞ?日常と戦いではヒトなんて簡単に変わっちまうからな」

 

ウララ「大丈夫だよ!ウララ絶対勝つから!私も強くなってるし、今度も自信あるんだ〜!」

 

悟空「そっか!なら今日も張り切ってやんぞぉっ!」

 

ウララ「おー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告:(シンボリルドルフ)

 

 

とうとうレースの恐ろしい所が見えてきたな。ここで友としてか、ライバルとして戦うのかで未来は変わる。

龍球ステークス……懐かしいな。私も走ったが断言しよう。

このレースには魔物が潜んでいる。まぁ、この場合の魔物は私自身だったがな…。

 

 

次回、龍球ステークス(2000m)

 

 

なぁ、悟空さん………。貴方はハルウララの事をどれだけ知っている?よく考えるんだ。

 

 

ーーーどうか同じ過ちだけは犯さないでくれ。

 

 

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