孫悟空とウマ娘   作:猫ネコ

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超戦士の苦悩 ー 後編 ー

 

 

 

 

 

〈悟空はキントレの部屋から出ると迷いなく足を進めた。目的地は分かっている。走る事はせず、不器用ながらも話の内容をまとめていた。

心の折れたウララ。元気の付け方。悟空とウララの関係。現段階では、どれもまだ不安定なまま。現状や対策を聞いても解決策は見出せていない。

鍛えて、戦って勝つだけでは終わらない闘い。考えるのが苦手な悟空は頭から煙が吹きそうになった。

しかし、自分がやらなきゃ駄目だという自覚はある。

 

景気付けに顔をパン、パンと叩いて友達がいるであろう"食堂,,へ向かった〉

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

side オグリキャップ

 

 

カチャン、カチャンとお皿の擦れる音がする。手元のお皿が空になると、脇に置いてあるお皿に重ねて置いた。次に食べる物を選んでいると、突然目の前の椅子が動いた。

 

 

悟空「よっ。食ってる所悪ぃな。ここ座んぞ」

 

「ん、ふぉふうふぁ」(む、悟空か)

 

悟空「おめぇに用があって来たんだ」

 

 

私に用事か。気にはなるが、私も悟空に伝えたい事があったんだ。手っ取り早く終わるから先に言わせてもらおう。

まだ口の中に硬めな肉があるが、ゴクンと音を鳴らせて飲み込んだ。

 

 

「用事はちゃんと聞くが、コレを食べてみてくれ。今私の中で一番の好物なんだ。きっと悟空も好きだと思うぞ?」

 

 

お皿には大きめな肉の塊がある。好きな物は別腹だと言って5個ほど貰っていた。その中の1つを皿ごと渡すと、悟空は困った顔をして首を振った。

 

 

悟空「すまねぇな。ちょっと前から食う気がしねぇんだ。今度貰うな」

 

「・・・そうか」

 

 

悟空との食事は楽しいから好きだった。だから結構残念な気持ちになる。

しかし、あの悟空が食べる気がしないとは珍しい事もあるものだ。

 

 

「では用と言うのを…ひふぉうふぁ」(聞こうか)

 

悟空「あぁ、…ん?……えーと、」

 

「???」

 

悟空「・・・何て言や良いんだろうな」

 

「???…知りたい事をそのまま言えば良いんじゃないか?」

 

悟空「そっか。んじゃオグリ。おめぇは心が折れた事ってあるか?」

 

 

「………ズルズルズルズル」ゴクン

 

 

中々込み入った話になりそうだ。私自身あまり察しが良くないからタマやイナリに怒られたりするが、今回のはすぐにピンと来た。

 

 

「ウララの事か?」

 

悟空「…やっぱ分かるんか」

 

「ああ」

 

 

龍球ステークスは私も見た。そしてウララと同じ顔をして引退したウマ娘を目の前で見た。

私の事を聞いて何の役に立つかは知らないが、協力しようか。

 

 

「心が折れた事か。あるぞ」

 

悟空「あんのか!?…嫌な事だろうけど、オラに教えてくれねぇか?」

 

「良いぞ。あれは私が現役最後の方で…」

 

悟空「ちょ、ちょっと待てオグリ。オラから聞いた事だけど簡単に言っちまっても良いんか?」

 

 

フッ。急にオドオドし始めた悟空は新鮮で面白い。だが、らしくないな。

 

 

「友達が困ってるんだ。力になれるなら構わない」

 

悟空「オグリ…」

 

 

少しは顔色が戻ったみたいだ。私は食べる手を止めて悟空の目を見た。

 

 

「それじゃあ話すぞ。今考えると私はレース人生で無茶な走りをしていたらしい。G1を2週連続で走ったりもした」

 

悟空「G1連続…は、ははっ。やるなぁ」

 

「うん、それまでもたくさん走ったさ。でも足は限界が来ていた。見えない疲労が溜まっていた」

 

 

トレーニング中、足に重りをつけたように鈍くなって立つ事すら出来なくなった。

トレーナーと医者が慌ただしかった記憶がある。私と言えば何故かすんなり受け入れた。

 

 

「診断結果は疲労。その後にやったレースでは6着、11着と掲示板にも入らなかった。でも焦りは無かった。それほどまでに満足したレース人生だったんだ」

 

 

〈オグリは当時の心境を話す。悔いがない事は顔を見れば一目瞭然、穏やかな表情をしていた。だが悟空は戦う者として思う事があった〉

 

 

悟空「・・・負けを受け入れちまったってのか」

 

「ああ。私の中では達成感すらあったが、今にして思えば勝つ事を諦めた私は心が折れていたんだろうな」

 

悟空「・・・」

 

「しかし、これには続きがある」

 

 

"聞かせてくれ,,と言う悟空に無言で頷いた。

 

 

「私は負けが続いて身体にも限界が来ていたから引退する事に決めた。

色々思い入れがあったから引退レースは有馬記念で行う事にした」

 

悟空「…有馬記念」ボソッ

 

「だが、さっき言ったように私はもう満足だった。勝ちに行くレースじゃなく、今まで応援してくれていた人達に向けて走る恩返しのつもりだったんだ。その事に皆喜んでくれた。トレーナーも友達も、先生もファンも。

皆がありがとうって、今まで頑張ったって伝えてくれたのに、

ーーーアイツだけは違った」

 

悟空「あいつ?誰の事だ?」

 

 

忘れもしないライバルの事。思えば最初からスパルタだったな。

 

 

「有馬記念目前に迫った時、連絡も無く、トレセン学園にいきなり来たんだ」

 

悟空「来たって…ウマ娘じゃねぇんか?」

 

「ウマ娘だよ。いるのは中央トレセン学園じゃなくて笠松と言う遠い所だ。

誰に聞いたか分からないが、食堂にいる私の所へ来たアイツは、私の胸ぐらを掴んで殴ってきたよ」

 

悟空「いきなりか!?大ぇ丈夫だったんか?」

 

「大丈夫なものか。久しぶりに会ったと思ったら殴られたんだぞ。食べていたパンがクッションになったとはいえ痛かった。

どういうつもりだと、私も怒ったが途中で言葉が出なかったよ。

ーー殴ったやつが悲痛の顔をしていたからな」

 

 

アイツの怒った顔を見るのは2回目だ。1回目は私も言い返したが、その時のは胸が締め付けられて痛かった。

 

 

悟空「・・・・なんでだ?」

 

 

意味が全く分からんと、表現で語る悟空が面白くて吹き出してしまった。怪訝な顔をされたが話を続けるとしよう。

 

 

「もちろん私も分からなかった。胸ぐら掴まれてるから離れる事も出来ないし、聞こうにも至近距離でアイツの目を見ると何を話せばいいか分からない。周りのウマ娘達もただの喧嘩と思わなかったのか止めてくる者は居なかった。

少し沈黙が続くとアイツが呟いた。

 

…【何をやっている】と。

 

それはこっちのセリフだと思ったが、言い返せなかった。黙った私に苛立ったのか次から次に言ってきた。

 

【これで終わりか?負けたままだぞ、ムカつかないのか】

 

散々な事を言われた。

さすがに私も我慢が出来なくて怒鳴った。

 

ーーお前に何が分かる。私はもう満足なんだ、いきなり来て勝手な事を言うな。と。

 

そしたらすぐに返された。

 

【それはただ逃げてるだけだ。勝てないから満足したと勘違いしてるに過ぎない】

 

そう言われて私も殴りそうになったんだが、涙を流すのを見てやめた。

私に寄りかかりながら辛そうに言ったんだ。

 

【お前は、オグリキャップなんだぞ…っ。頼む、本気で戦ってくれ。私は…オグリが負けて終わる所は見たくない…………私のライバルは世界で1番速いんだ……】

 

勝手な奴だろう?こっちの都合なんて無視だ。でも私の肩を湿らせていくアイツを抱きしめると不思議と力がわいてきた。

そして引退レース有馬記念。私は全力を出して勝ちに行く事を決めた。

………これで全部なんだが、すまない。長くなってしまったな」

 

 

あの時の事は昨日の事のように覚えている。先生が来るまで抱きしめていたのは、後に考えると恥ずかしくてアイツと笑い合ったな。

 

 

悟空「……おめぇは…どうなった…」

 

「勝った」

 

悟空「…そうか」

 

 

ふむ。私の身の上話をしただけだが、役に立ったようだ。悟空独特の雰囲気を感じる。

 

 

悟空「さんきゅーなオグリ。おめぇのお陰で少し分かった事がある」

 

「それなら良かった」

 

悟空「んじゃオラは行くな。飯の邪魔して悪かった」

 

 

そう言いながら席を立つ悟空を私はすぐに呼び止めた。

 

 

「待て悟空」

 

悟空「ん?なんだ?」

 

「ご飯、余ってるから一緒に食べてくれ」

 

悟空「…いや、さっきも言ったけど、オラ食う気が、」

 

「だめ。食べるんだ」

 

悟空「???。オグリ、」

 

「私だって悟空以外には言わない。君は…私達は食べて強くなる。逆に言えば食べないと弱いままだ」

 

悟空「!!!」

 

「さぁ、一緒に食べよう悟空。私は君と食べるご飯がとても好きなんだ」

 

悟空「オグリ……へへっ、そうだな!んじゃさっきの肉くれよ!」

 

「ひふぁ、はへふぁ」(今食べた)

 

悟空「あーっ、そりゃねぇだろ!ちょっと楽しみだったんだぞ!」

 

「・・・」モグモグモグモグ

 

 

調子が少し戻って良かったが、まだ完全ではないか。まぁ私は全部言ったから後は悟空自身で頑張るしかないだろう。

それにしてもアイツの話をしたら会いたくなったな。今度は一緒にご飯でも食べようか。

 

ーーーなぁ、マーチ。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

side アグネスタキオン

 

 

バンっ!

 

 

悟空「おめぇの足が使えなくなった時ってどう思った?」

 

「…………出直して来いバ鹿者」

 

 

図体やガタイの割に軽やかな足音で正体は分かっていたが、入り方と第一声は論外だ。

この部屋では大人しくしろと何度も言って理解したと思っていたが、この男は一晩寝ると忘れるらしい。…それにしても、

 

 

「随分元気じゃないか。それも精神鍛錬の賜物かい?」

 

悟空「意地の悪ぃ事聞くなぁ。…そうでもねぇさ。ついさっきまでくたばってた」

 

 

ついさっきに、過去形か。1人で考えても解決するような奴ではないから誰かに助言してもらったとみえる。

紅茶でも振る舞ってやろうと思ったが、前にクサイと言われた事を思い出してやめた。小型冷蔵庫から勝手に取ってるし…。  

 

 

「ここは君の住処じゃないんだがねぇ」

 

悟空「オラだってこんな危なっかしい所に住みたくねぇぞ」

 

「世界一危ない生物が何を言う」

 

悟空「オラからすりゃあタキオンが1番危ねぇよ」

 

「失礼な男だ。私は心の赴くままに行動してるというのに」

 

悟空「それが1番危ねぇんだって…」

 

 

飛び込んで来たかと思えば貶すばかり。礼儀というものを知らんな。

まぁそんな当たり前の事は把握済みだから今更怒る事でもない。

私は完成した紅茶を持って作業机についてる椅子に座った。

 

 

悟空「こっち来ねぇんか?」

 

「今作業中なんだ。会話は出来るから気にしないでくれ」

 

 

…正直ホッとした。ウララ君のレース、噂などを聞いてウララ君はもちろん孫君も危ういと思っていた。

事実、前に見かけた時は酷く弱々しく見えていた。声をかければ良かったのだろうが私はそれが出来なかった。

横目で彼を見ると缶ジュースを傾けていた。感覚的には大した事もなさそうだが、薄らと目にクマがあるのと肌の血色が微妙に悪い。

普段の彼は体調面に関して文句なしだから、少しでも異常があると分かりやすい。

 

 

悟空「ん、オラに何かついてっか?」

 

 

さすが武術家だ。察知能力が鋭いな。これにも"気,,が関係しているのだろうか。

 

 

「…天使の輪っかがついてる」

 

悟空「今更だろ。天使っつーよりは死人だけどな」ハハッ

 

 

笑えない冗談。ヘイロー君が聞いたら怒りそう。

 

 

「それで?私の足が壊れた時の事を聞きたいのかい?」

 

悟空「そうだな。壊れた時っつーか、前と後も?」

 

「つまり全部って事だな」

 

悟空「ははっ、そうなるな」

 

「ハァ…」

 

 

全く、呆れるな。ヒトの不可侵領域に悪気もなく入れるのはこの男くらいだろう。

その事に抵抗感が無い私は受け入れてしまってるのだろうと簡単に納得した。

 

 

「まず私が走ったのは合計4戦。脚に異常がある事は2戦目あたりから分かっていた」

 

悟空「へ?そうなんか?」

 

「ああ、ほんの少し違和感があった。気のせいと思うほど小さな違和感。私は放っておく事はせず、念入りに調べた。結局その時は分からなかったが、確証を得たのは3戦目前のトレーニングの時。

左脚につっかかりが生まれた。触ると熱を帯びて、少しの腫れ。病院に行かずとも屈腱炎の初期症状だとすぐに分かった」

 

悟空「くっけんえん?」

 

「ウマ娘の中では珍しくない脚の怪我だ。酷くなれば歩く事は困難。もっといけば死すらも視野に入る」

 

悟空「っ!そいつはやべぇな」

 

「そうだな。その事はモルモ…トレーナー君にも説明した。そこで迎えた3戦目。私は1着を獲る代わりに屈腱炎が中等症…レベルが3段階ある内の2段階に到達した」

 

悟空「でも、おめぇ走ったのは全部で4戦って…」

 

 

何かに耐えるような顔をして見てくるが、鼻で笑って返した。らしくない顔は見たくない。ボロボロになっても戦うのは一緒だろうに。

 

 

「止められるだろうから病院には行っていない。ようやく次のレースはG1の皐月賞なんだ。邪魔をされては困る。

脚の具合はトレーナー君と私の診断結果は同じだった。

 

ーーー次走れば必ず壊れる」

 

悟空「…トレーナーは止めなかったのか?」

 

「止める?いや、その逆さ。私達は大いに喜んだ。考えても見たまえ!次走れば壊れるって事は次走れるって事なんだよ!

私達の誓いは"可能性の果て,,を見る事。脚が壊れる代わりにG1を獲って、"果て,,を観測出来る。安い買い物さ」

 

悟空「・・・オラはあんまり良く分かんねぇけど、トレーナーがそういう事したら駄目なんじゃねぇか?」

 

 

まだ数ヶ月とはいっても一日中ウマ娘に関わっていたら知識も増えるか。

良い傾向だろうが、マニュアルでは駄目なんだよ。

 

 

「駄目に決まってるだろう。そういったウマ娘を抑止するのがトレーナーの役目なんだ。もしも知っててやった事なら今後のトレーナー人生に影響が出る。

他のトレーナーからは敬遠され、ウマ娘からは信頼を失くす事だってある。最悪免許剥奪もあるかもしれんな」

 

 

私に限らずレースに出たいがため黙っているウマ娘だって少なくない。

危険出走として謹慎になったウマ娘もいるくらいだ。

 

 

悟空「なのに走ったのか?」

 

「だから走れた…の方が正しい。誓いのために私を信じたトレーナーだから事の詳細を全て話した。私だってそんなトレーナーじゃなかったら話していない。

黙って走って、勝手に壊していた。そこに達成感は無かったと思うがな」

 

悟空「・・・」

 

これが私の一連だが、孫君が知らなければいけないのはもう1つ先の事だろうな。

情報が多かったのか顰めっ面だ。端的に分かりやすく言ってやるとしよう。

 

 

「分かるかい、孫君。私の意志をトレーナー君が汲んで、トレーナー君のG1制覇という夢を私が叶えた。

 

ーーーアグネスタキオンというウマ娘のトレーナーは彼女以外に考えられない事なんだ」

 

悟空「ウマ娘から見るトレーナーか……」ボソッ

 

 

孫君の呟き声はしっかりと耳で拾った。少しは分かってくれるかな。

トレーナーからの一方通行ではウマ娘はついて行かないんだよ。

……こんな話の内容をモルモット君に聞かれたら即刻首を吊ってやるがな。

 

私は飲むのを忘れていた紅茶を一口……うん、ぬるくて不味い。

孫君を見ると頭の後ろで手を組んでボーっとしていた。あれで考えているのか?…。

すると飛び跳ねるように立ち上がった。

 

 

悟空「よしっ、何となく分かって来た!」

 

「それでも何となくか」

 

悟空「ああ。肝心な所はまだだけど、今考えてみりゃあオラはウララの事考えねぇで引きずってばっかだったと思う。もう少しアイツのやりてぇ事を聞いても良かったかも知んねぇな」

 

「まぁ、それが何に繋がるかは知らんが、実験は試してなんぼだ。存分に間違えるといい」

 

悟空「おう、おめぇが言うと本当に良いのか怪しいけど、覚えとくぜ」

 

「本当に失礼な男だ。迷惑料として紅茶を淹れたまえ」

 

悟空「えー、………面倒くせぇ」

 

「うるさい。ほらっ、いーれーろー!カップ用意!ティーパック淹れて熱湯!1分半数えて終了!簡単だろ!」

 

悟空「やる事は簡単だろうけど、やる気が起きねぇな」

 

「君のやる気なんて知った事じゃ……いや、淹れれるようになったら孫君にとっても良い事だぞ」

 

悟空「なんでだ?あの匂いがキツいやつだろ?オラは飲めねぇぞ」

 

「飲むのは孫君じゃない。たづなさんだ。何かやらかしても機嫌を取るのにちょうどいいぞ?」

 

悟空「淹れ方教えてくれ!」

 

「よしきた!」

 

 

私も立ち上がると物の配置だったりを教えた。意外にも慣れた手つき。手先は器用のようだ。

不器用なのは性格なだけか。………ふふっ。本当にバ鹿な男だねぇ。

 

 

「なぁ、孫君」

 

「なんだ?」

 

「頑張るんだよ」

 

「・・・・・おう」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

〈悟空はタキオンの所を離れた後、少し早歩きでとある一室に向かった。中から感じる2つの"気,,。ノックをしようとドアの前に手を出した〉

 

 

「どうぞ」

 

 

〈叩く前に中から声が聞こえた。疑問に思う事はない。アイツなら分かるだろと変な信頼感が悟空にあった。口角だけ緩めるとドアノブを回す〉

 

 

悟空「オッス」

 

 

〈片手を上げて挨拶する。声をかけられた2人は対面で座っていて、机の上には何かを食べたであろう空のお皿とフォーク。半分くらい入ったコーヒーがあった〉

 

 

ルドルフ「ふふっ。ここは私もオッスと返した方が良いのかな?」

 

たづな「いいえ。ルドルフさんも悟空さんもちゃんと挨拶してください。……出来ますね?」

 

 

〈満面の笑みには引き攣った笑みで応える悟空〉

 

 

悟空「お、おはようございます?」

 

たづな「まぁ、挨拶なので間違ってはないですが、お疲れ様とかの方が一般的ですかね」

 

ルドルフ「フッ、おはよう。悟空さん」 

 

たづな「何でこの流れでおはようと言うのですかっ。わざとでしょう!」

 

ルドルフ「…クッ…フフッ…。ほら、たづなさんも挨拶しないと」

 

たづな「………お疲れ様です」

 

ルドルフ「頑固なお方だ」ププッ

 

たづな「っもう!」

 

悟空「・・・おめぇ達仲良くなったなぁ…」

 

ルドルフ「これも女子会のなせる技さ」

 

悟空「ジョシカイ?…確か前に言ってたなぁ。オラもそれすりゃあ良いんか?」

 

たづな「悟空さんは出来ないと言ったではありませんか。他の所では言わないでくださいね」

 

悟空「???」

 

たづな「分からなくて良い事です。それで悟空さんは用があって来たのでしょう?」

 

悟空「あっ、そうだ」

 

 

〈気がつけば普段のやり取りになり、たづなから指摘されるまで忘れていた悟空。しかし忘れるほど吹っ切れたのかというとそうでもない。

日常の空気に身を任せていた悟空は我に返り、今まで起きた事とやった事を全て話した〉

 

 

悟空「〜〜・・・ちゅー訳で、ウララの心だったり、トレーナーとしての役割は分かったんだけど、肝心の話し方が分からねぇんだ。」

 

たづな「なるほど…。キングヘイローさんのトレーナーさんからは絆の強さ…」

 

ルドルフ「オグリキャップからは友として…ライバルとしての熱い想い」

 

たづな「この際細かい事は目を瞑りますが、タキオンさん達から一蓮托生の覚悟…ですか」

 

たづな・ルド「「・・・・・」」

 

たづな・ルド「「そこまで分かっていて何が分からないのかが分からない」です」

 

悟空「へ?」

 

 

〈言ってはいけないが彼女達は拍子抜けだった。悟空がこの部屋に来る前にちょうどその話をしていた。慣れてない事だろうから助けが必要だと。

それが、いざ来てみれば話した後だと言う。逆に何故来たのか不思議に思うほどだった〉

 

 

たづな「散々悩んで、散々教えてもらったんです。考えるのはもういいでしょう」

 

悟空「な、に言ってんだよ。考えねぇとウララを傷つけてちまう」

 

ルドルフ「必要以上に考えて答えを導き出したとしても、それは果たして悟空さんの想いなのか?悟空さんが納得出来ない事でもハルウララが元気になるなら言うのかい?」

 

悟空「っ………」

 

ルドルフ「私は悟空さんがこの世界に来る前からハルウララの事情は知っている。トレーナーが不在になっても代わりを見つけなかった。キングヘイローの誘いでさえ断っていたくらいだ。

それが何の因果か君達は出会い、ハルウララは君に惹かれたんだ。

トレーナーじゃなく、孫悟空という1人の男をね」

 

悟空「・・・」

 

たづな「最低限とは言っても、ちゃんとウマ娘の事を理解してくれたんです。後は悟空さん自身が行動するだけですよ」

 

悟空「行動って言っても…」

 

 

〈逃げられるからどうしようもない。悟空が頭に引っ掛かっているのはそこだ。無理にやって良いのか、実は他に良い方法があるんじゃないか。考え出すとキリがないが失敗もできない。

悟空の気持ちは少し晴れたが、結局振り出しに戻ってしまったと感じてしまう。

そしてもう一度落ち込みそうになった時、、、〉

 

 

 

     〈凛とした声が響いた〉

 

 

 

 

 

 

      「拳をつくりなさい」

 

 

 

〈この世界では聞かない言葉に悟空は顔を上げて声の主を見る。自然と目が合った。少しの歪みのない姿勢に揺るぎない強い瞳。その目から逸らす事は出来ずにいると彼女は"ふふっ,,と笑った」

 

 

たづな「なにも、殴れなんて言いません。ですが貴方がこれまで戦って来た時は必ず拳を握っていたはずです。形違えど、これも1つの戦い。臆したら負けですよ」

 

悟空「たづな……でもそれで失敗しちまったら、」

 

たづな「悟空さんは失敗が怖くて生前でも逃げたんですか?」

 

悟空「ぁ、」

 

たづな「意志があるならもう一回。それでも無理なら私も頑張ります。それでも無理で、色々試しても手の施しようがなくなったら、一緒に諦めましょう!」

 

悟空「ーーーーーー …クッ、ハハッ…」

 

 

〈笑顔で諦めを口にする彼女は正しいのか。悟空の中で思ったソレは一瞬にして消えた。

正しさなんてどうでもいい。代わりに呼び起こされたのは戦いの記憶。余計な事は考えず、力の全てをぶつけるのが自分のやり方だと思い出した。

霧が晴れたように頭がスッキリして、くぐもった笑いをしていた悟空はやがて腹を抱えて笑い出した〉

 

 

悟空「あーはっはっは!!!結局全部オラがビビってた訳か!……キントレもオグリもタキオンも全員戦ってたんだ。ウララは今立ち止まってる状態だ。オラも一緒になって立ち止まってる場合じゃねぇな!」

 

ルドルフ「今から行くのかい?」

 

悟空「ああ。やるからには早ぇ方が良い。………なぁルドルフ」

 

 

〈すっかりやる気に満ちた悟空。漏れ出した"気,,で髪をそよそよと揺らしながらルドルフの名を呼んだ〉

 

 

ルドルフ「ん、なんだ?」

 

悟空「オラ…今度は間違えずに済みそうだ」

 

ルドルフ「!!!…そうか、それはそれは、」

 

 

〈こちらを見ずに呟く。脈絡のない言葉でもルドルフはすぐに分かった。だからルドルフはあえて言った〉

 

 

ルドルフ「頑張ってくれ。私もついてるからな。ーーー父さん」

 

悟空「フッ……ああ。オラに任せとけ。つっても失敗したらまた()っけどな!そん時はたづな!さっきの忘れんなよ?」

 

たづな「はいはい。ほら、早く行って日が暮れる前に帰って来てください

 

悟空「おう!んじゃあんがとな!」ニヒッ!

 

 

〈2人の返答を聞く前に部屋から出て行った。閉まりきってない扉をため息吐きながら、たづなが閉めると、席に戻る。その顔をとても嬉しそうだ〉

 

 

ルドルフ「もう大丈夫ですかね?」

 

たづな「さあ?やってみなくちゃ分からない。というものですよ」

 

ルドルフ「ふふっ!そうみたいですね」

 

たづな「……それにしてもレアなものを見ました、ねぇ?シンボリルドルフさん?それとも孫ルドルフとでも言うべきです?」

 

ルドルフ「なっ!いやっ、ちが!あれは訳があって、」

 

たづな「ほうほう。ちょっと可愛かったので、私の事も呼んでくださいよ」

 

ルドルフ「………それは貴女も孫家に加わりたいという、」

 

たづな「そーじゃないですっ!!!」

 

ルドルフ「…母さん?………いえ、不倫相手はやめた方がいいかと、」

 

たづな「だから違いますって!しかもそこは姉さんとか………え、ふりん?」

 

ルドルフ「」コクン

 

たづな「…ふりんですか………えっ不倫!?」

 

ルドルフ「悟空さん、既婚者です」

 

たづな「・・・・知らなかった…」

 

ルドルフ「ですよね」

 

 

 

 

 

 

悟空「ウララああああああ!!!待ってろよおおおおっ!!!」

 

 

 

 

 

 

次回予告:(アグネスタキオン)

 

 

全く、あの男はようやく元に戻ったか。ま、これからが勝負みたいだねぇ。

孫君にさえ嫉妬しているウララ君にどう立ち向かうかは知らないが、何やら勝算があるみたいだ。

 

次回、孫悟空とハルウララの関係。

 

おや…地震かい?派手に揺れるなぁ。耐震性のある学園がここまで揺れるとは震源地が近いのだろう。

ーーーなに?山の麓で金色に輝く何かがあったって!?こうしちゃおれん!行くぞモルモット君!

 

 

 

 

 






書いていて思った事は、悟空ネガティブすぎ?一種のキャラ崩壊かもしれん…。だけどそれはもう終わり!
悟空といえばスーパーヒーロー!!!

それと分かる人はいたかな?史上最強の弟子ケンイチの名場面の一推しセリフを少し出しました!



  「拳をつくれ。武術家だろ?」

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