孫悟空とウマ娘   作:猫ネコ

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すみません長すぎました。この話は1話で終わらせたかったので…つい…。


注意
・ドラゴンボールはアニメ軸
・捏造あり





師匠と弟子

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 前回のあらすじ ー

 

 

 

キントレ「頑張ってください。悟空さん」

 

オグリ「頑張れ悟空」

 

タキオン「孫君。頑張りたまえよ」

 

ルドルフ「私もついてるからな。父さん」

 

 

たづな「・・・・・・既婚者、かぁ…」

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

スカイ「ウララの調子はどう?」

 

キング「…駄目ね。日に日に悪化してるわ」

 

スペ「私は何回かご飯に誘ったけど逃げられちゃった」

 

グラス「それどころか、今や避けられていて話すら出来ない状況ですね」

 

スカイ「………………そっかぁ」

 

 

〈校内を固まって歩くのは仲の良いライバル達。話している内容もあってか、いつもの笑顔は全く見られない〉

 

 

エル「まったく!スカイがそんな顔してどうするんデス。覚悟あってやった事でショウ」

 

スカイ「・・・・うん」

 

グラス「…とは言っても何か1つ決め手が欲しいですね。このまま長引かせても良くないでしょうし、」

 

スペ「んー、あえて併走してみるとか?」

 

キング「それだと止めを刺す結果になりそうね」

 

スペ「…やっぱり?」

 

 

〈各々がレースのトップクラスに立つ彼女達はスカイを責める事はなく、解決策を見出す事に専念した。しかし何を言っても裏目にしか出ない事は分かりきってる事。簡単に口を挟む事は出来ない〉  

 

 

スカイ「……キングさぁ、前にウララがレースに出れなくなったらどう責任とるのか、聞いてきたよね」

 

キング「!!!」

 

 

〈振り返るのは龍球ステークスの出走バが決まりスカイに詰め寄った時の事。ウララとスカイに侮辱ともとれる言動をした事を思い出し、キングは顔を赤くした〉

 

 

キング「あ、あの時は気が動転してしまってっ、本当に悪い事を、」

 

スカイ「ううん。キングを責めたい訳じゃなくて、私はウララがレースの道から離れた時の事をちゃんと考えてたんだよ」

 

スペ「え、」

 

スカイ「…私は、ウララが一時的にでもレースから離れた場合。その瞬間トレセン学園をやめる。菊花賞も出ない」

 

『ーーーっ!!?』

 

グラス「・・・」

 

 

〈スカイの爆弾発言により、言葉がでないキング達。

誰かに止めて欲しい。考え直してほしいなどという言葉を待っていない事はスカイの目を見れば明らかだ。

しかし、グラスは違う。スカイの決意を聞いて目付きを鋭くした〉

 

 

スカイ「………なにかな?」

 

 

〈スカイは体に突き刺さるような圧力を感じとり、グラスに問いかける〉   

 

 

グラス「セイちゃんの覚悟に水を差すのは気が引けますが、それは逃げてるのでは?ウララちゃんの負い目を受けるのなら、辛い事を背負って走り続ける事が償いだと思いますけど」

 

 

〈それにスカイは首を振った〉

 

 

スカイ「それも考えた。… だけど、結局は本能には勝てない。どれだけ悔やんでも私は多分レースを楽しんじゃう」

 

グラス「…確かに、そうですね」

 

スカイ「うん。…頼まれてもないのに勝手に友達を陥れといて楽しくレースをする事は出来ない。私がやめた後にウララが立ち直っても同じ事。私はレース人生を打ち切る。

………ちなみにその後に降りかかる事も考えてるからツッコまないでね」

 

スペ「セイちゃん、、、」

 

 

〈本能。それは良くも悪くも全てを忘れるほどの情熱。

スカイは考えた。

もしも走った時の事。勝った時、負けた時。そしてトレセン学園を去ったとして。考えうる道を全てイメージした。その結果だした結論だ〉

 

〈ーーだからこそ解せない。キングは腑に落ちない様子でスカイを見た〉

 

 

キング「・・・ねぇ、あなたがそこまでする理由は何なの?…レース人生を賭けるほどのモノがあると思えないのだけど」

 

スカイ「…………え、え〜っ、そんなにセイちゃんの事が気になるぅ?夢中にさせちゃったかな?」

 

キング「言い辛いのか知らないけど、いくら繕ったって"そんな顔,,してれば痛々しいだけよ。笑ったりしないから言いなさいな」

 

スカイ「・・・、」

 

 

〈スカイは無理矢理に上げた口角を元の位置に戻して、視線を一度空に向けた〉

 

 

スカイ「フゥ…………日本ダービーで負けて、腐っていた私をウララが助けてくれたんだよ」

 

 

〈皐月賞というクラシック一冠を手にして挑んだ日本ダービー。コンディションもレース展開も完璧だったにも関わらず結果は4着。スペシャルウィークの後ろ姿が離れていく光景が脳裏に焼き付いていた〉

 

 

スカイ「私はさ…勝ちたかった。いや、もちろんみんなもそうだろうけど、私は一冠を獲った。目標は三冠だったんだ」

 

スペ「・・・・・」

 

キング「あなた、、、」

 

スカイ「そもそも出場権が貰えなかったグラスちゃんやエルの前で言うのは間違ってるのは分かってる。ごめん。

……結果スペちゃんに負けた私は夢が潰れた」

 

エル「スカイ…」

 

スカイ「……前提としてG1を獲れないモノもいる。一冠獲ったなら良い。欲張りだ。みんなはそう思うかも知れない。

でもっ!そんなの知らない!他のヒトがなんて言おうとどうだっていい!私はっ………私は勝ちたかった…」

 

 

〈スカイは声を押し殺して嘆く。本題はこの後だ。それなのに上手いこと喋れず、涙を零さないので精一杯だった〉

 

 

グラス「…セイちゃんの気持ちを否定する者はこの場に居ません。どうか落ち着いて」

 

スカイ「グラスちゃん……うん、ごめんね。…ウララとの事だよね」

 

 

〈スカイは何とか持ち直して、胸をトントンと軽く叩いた〉

 

 

スカイ「それで、ダービーで負けた私は引退も考えてて悩んでたんだけど、近くにウララが居たんだ。

特別な話はしてない。最近した事や楽しかった事。嬉しかった事や喜んだ事。ろくに返答しない私にずーっと話しかけてくるの」

 

キング「ーーふふっ、あの子そういう所あるわよね。私の時もそうだったわ」

 

スペ「うん!ウララちゃん絶対に後ろ向きな事言わないもんね!」

 

エル「まるで太陽デース!」

 

グラス「で、でも、待ってください。…ダービー後と言えば、ウララちゃんは…」

 

スカイ「そう。ーーウララのトレーナーが学園から去った時期」

 

スペ「あっ!」

 

 

〈ハルウララがフリーになった事は学園で誰もが知る噂話になった。

それと同時に裏で動く者もいた。もちろん引退させるためじゃない。何とかしようと奮闘していたが、善意だけで出来る程トレーナーは甘くない〉

 

〈文字通りウララは独りだった〉

 

 

スカイ「そんなウララ自身が1番辛いはずなのに笑い続けるの。そして時折悲しい顔見せるくせにすぐに笑う。

……ウララを見てると、私が凄い小さいモノだと感じさせられた。それでも、もう一度立ち上がる勇気を貰ったんだ。

だから私は恩返しをしたくて…そしたら悟空さんと出会い、有馬目指すようになって応援していると致命的な欠陥を見つけた」

 

スペ「格上とのレース…だよね」

 

スカイ「うん…。先輩達と走るレースは正直言って怖い。その上G1で、それも有馬記念なんて出ればプレッシャーでゲートすら辿り着けないと思った。

だから私だけが出来る方法でやろうと思ったけど…駄目だったね。

変に虚勢張ったり、いつも通り振る舞ってたけど、結局中途半端な事しちゃった」

 

エル「スカイ………それで責任をとるという訳デスか」

 

スカイ「責任…さっきはそう言ったけど、ケジメ…かな。

ウララを覚醒させるため。私が本気のウララと戦って勝つため。

目的を遂行するために退路を断つ。私の人生を賭ける事は当然の事だったんだよね」

 

キング「……あなたもウララさんに甘かったのね」

 

スカイ「やってる事は激辛だけどね。それにまだ…………」

 

グラス「まだ、、何です?」

 

スカイ「……んーん。何でもにゃい」

 

 

〈ふざけた語尾で言葉を濁す。不確かなモノ過ぎて言えないのだ。

ーースカイの策はまだ途中。言わば最終段階に入っていた〉

 

 

スカイ(私だってあの人が居なかったらこんな危険な事、考えついても実行しない。…ごめんね悟空さん。結局貴方に全部丸投げしちゃった事を許して…)

 

 

ナァ.チョットクレェイイジャネェカ。

ハナシテッテバ!。

 

 

キング「ん?………っ!。ね、ねぇ…あれって、」

 

スペ「・・・とりあえず、隠れて様子見よっか」

 

 

〈一同は頷くと、音を立てず建物の陰に潜んだ。耳を声のする方へ向け、顔をひょっこりと出す〉

 

 

スカイ(ここが正念場、かな。………悟空さん。お願いっ)

 

 

   

    ・

 

    ・

 

    ・

 

 

 

〈スカイ達の視線の先には悟空とウララの姿。だが、普通に話し合っている訳でなく掴み合っていた〉

 

 

ウララ「だぁから!ウララはこれから用事があるんだって!手を離してよぉ!」

 

悟空「んな事言うなよウララぁ。ちょっとだけだから。面白ぇもん見せてやんぞ?」

 

 

〈悟空はたづな達の所を出てすぐウララの"気,,を追った。対面して狼狽えるウララをよそに悟空は普段の調子で話しかけた。

もう怖気付く必要はない。失敗だってしても良いと割り切った悟空はウララに詰め寄った〉

 

 

ウララ「別に見たくないよ!もうほっといて!」

 

悟空「……そっか。

んじゃ着いてくるか、肩車して連れて行くかどっちが良い?」

 

ウララ「どっちも嫌だよ!なんでほっといてくれないの!?ウララはもう悟空さんとは…………と、とにかくウララは行かないから!」

 

悟空「ったく、しゃあねぇなぁ…。……抱っこがいいんか?」

 

ウララ「…お願いだからウララの話し聞いてよ……」

 

悟空「へへっ。それを言うならオラの事も聞いてくれよ。どうしても言っときてぇ事あんだからよ」

 

ウララ「…………………分かった」

 

悟空「よし。んじゃ肩車でも、」

 

ウララ「走っていくよ」

 

悟空「そうか?」

 

 

〈悟空の身勝手さにウララは断念するしか道はなく溜息をこぼす。

ウララは悟空の顔をチラッと見る。今朝のような困った顔はしておらず、太陽みたいに晴れやかな顔。

自分の心の中は黒く濁っていて気持ち悪いのに、気がつけば擦り寄ってしまいそうになる感覚がして、とても嫌な気持ちになっていた〉

 

 

悟空「んじゃ、遅くなる前に…」

 

 

〈悟空は話すのをやめ後ろに振り返る。微かに笑みを浮かべると誰1人として居ない空間に向かって話しかけた〉

 

 

悟空「おーい!おめぇ達も来いよ!」

 

ウララ「え?」

 

 

〈悟空の声に反応してオズオズとキング達が物陰から出て来た。それによりウララの顔は青白いものへと変化していく〉

 

 

キング「…まぁ、バレるに決まってるわね」

 

スペ「悟空さんだもんね」

 

グラス「でも、私達も一緒に行って良いのですか?」

 

悟空「ああ。構わねぇぞ」

 

エル「そういう事なら…」

 

 

〈続々と悟空とウララに近寄ってくるキング達。

ーーそして龍球ステークスから3日後にして、再び対面する〉

 

 

スカイ「………ウララ」

 

ウララ「ビクッ…………ぁ、ぅ、、、せいちゃん…」

 

スカイ「・・・・わ、私は行くのやめよっかなぁ!……用事あるし、」

 

 

〈ウララの怯えた表情を見て、スカイは身を引いてしまう。しかし、悟空はそれを許さなかった〉

 

 

悟空「そうなんか?…けど、すまねぇ。少しで良いからオラのワガママに付き合ってくれねぇか?」

 

スカイ「っ……で、でも」

 

悟空【オラを信じろ。スカイ】

 

スカイ「!!!」

 

 

〈不意に頭の中には飛んできたテレパシー。こんな状況だってのに、スカイの不安は消し飛んだ〉

 

 

スカイ(情けない事ばかりだなぁ)「うん。私も一緒に行こうかな」

 

悟空「そうこなくちゃな!元々おめぇ達の事も呼ぼうと思ってたから手間が省けたぜ」

 

ウララ「ぁ、ご、くうさ、」

 

悟空「んじゃ、走っぞぉ!ついてこーい!」

 

 

〈ウララの声には気づかないフリをして駆け足をする。特別スピードは出ていないが、遅れまいと各々が走りだし、その最後尾にウララもついていった。

後ろから見るウララの足取りは重く、歪だ。前方の皆との間に開く距離は、心の距離を表しているようにも思えた〉

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

悟空「この辺りでいっかなぁ」

 

 

〈悟空が足を止める。そこはウララと初めて会った場所であり、周りには民家が無い、自然あふれる所〉

 

 

スペ「懐かしいね。私は悟空さんとココで会って以来かな」

 

グラス「長い付き合いだと思うのに、まだ数ヶ月しか経っていないんですよね」

 

エル「でも、ココで何があるんデスかね?」

 

ウララ「ハァハァハァ…ごほっ、…ハァ、ハァ…」

 

スカイ(・・・ウララ)

 

 

〈言うほど遠くない場所でも今のウララには堪えてしまう。この数日間は運動というものをしておらず、おまけに心と身体はバラバラ。

1人だけ激しい息切れを起こしていた〉

 

 

悟空「大ぇ丈夫かウララ?やっぱすげぇ鈍ってんなぁ」

 

ウララ「ゴホッゴホッ……っ………そ、れで…こんな所で何をすんの?ウララ、トレーニングならやらないよ」

 

 

〈悟空を無視してウララは問いかける。それに気にする様子はなく、悟空はウララ達から少し離れた位置に歩いて行った〉

 

 

悟空「修行ならしねぇさ。これからはオラの事を教えるだけだ。おめぇ達はどんな事をしても良い。耳を塞いだり、しゃがみ込んだり…何でもいい。やらなきゃいけねぇ事はただ一つ」

 

 

〈悟空がウララ達に向き直る。大草原が広がっているかの如く穏やか空気が、〉

 

 

悟空「ーーオラから目を離すんじゃねぇぞ」

 

 

〈一変して暴風が吹き荒れる〉

 

 

キング「な、なにをっ!?」

 

悟空「ぁぁぁ………………」

 

 

〈突然木々がバサバサと音を立て激しく揺れる〉

 

 

エル「ご、くう、、さん?」

 

 

〈悟空はエルの声に反応しない。目を瞑り、左右対称で美しい程の真っ直ぐな立ち姿。肘を曲げ腰の位置で拳を軽く握る。ゆらゆらと髪と服が動き、それはやがて…〉

 

 

      〈爆発した〉

 

 

 

悟空「ーーーハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

グラス「きゃぁっ!」

 

スカイ「なんっなの!?」

 

 

〈ゴオオオオオオ!と地鳴りが聞こえ、地面にヒビが入る。突然の事に叫ぶが、吹き荒れる暴風でかき消されてしまう。

この現象はまだ記憶に新しい悪徳記者が来た時。それと同じだった。ーーココで終わっていれば、〉

 

 

悟空「アアアアアアアッッッッッ!!!ーーーーいいか!おめぇ達!これから見せるのはオラの限界を超えた姿だッ!!!」

 

ウララ「限界を……こえた?…」

 

悟空「ーーーーーーー!」

 

スペ「・・・・え、」

 

グラス「っ!…や、やっぱり……私のは…………"見間違いじゃなかった,,…」

 

 

〈彼女達が最初にやった事は自分の目を疑う事だった。次には夢。目の前で起こっている事が現実だと認める事が出来なかった。悟空の異次元さは理解している。しかし、〉

 

〈黒から金へと髪の色が変化する事に脳がついて来なかった〉

 

 

グラス「あ、の時、、赤織の、記者の時に一瞬だけ……」

 

悟空「・・・あの時、抑えてたがよく分かったな」

 

キング「!!!」

 

 

〈悟空の低く冷たい声にキングは息を呑んだ。赤織記者の時に怒っている声は聞いたがその時と心境がまるで違う。

本能が、この男は危険だと身体全身に訴えてきていた〉

 

 

悟空「コイツは"オレ,,達サイヤ人にだけなる事が出来る。穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士。超サイヤ人」

 

エル「スーパー、サイヤ人…」

 

スカイ「・・・激しい怒りって…」

 

悟空「・・・・・親友が殺された」

 

ウララ「っ!」

 

スカイ「ッッッッッ!ごっ、ごめんなさっ」

 

悟空「気にすんな。今は生き返ってる。それに今はそんな事を言いたい訳じゃねぇ」

 

 

〈グッ!っと拳を強く握ると、不規則に吹く風は悟空を中心に竜巻状になり、高さ数十mはありそうなほどの形となる〉

 

 

スペ「クッ…またっ」

 

グラス「スペちゃん!」

 

 

〈激しい風だけではなく、立っている事すら満足に出来ないほどの揺れ。態勢を崩してしまったスペにグラスが駆け寄った〉

 

 

グラス「スペちゃん捕まってください!」

 

スペ「ありがとうグラスちゃん」

 

グラス「はい。ーー皆さんも!早くっ!」

 

 

〈今頃は異常気象としてニュースで放送されているだろう。引き起こしているのは1人の男とは誰も思わないし、言っても信じてくれない。

でも彼女達は止めようとは思わなかった。悟空が自分達に"伝えたい,,と言ってくれた事だからと必死に立ち向かい続けた〉

 

 

エル「スカイ!ワタシに捕まってくだサイ!」

 

スカイ「エル!」

 

 

〈グラス達と同じように固まって手を取り合う。しかし、その中でも1番体が小さくて軽い者〉

 

 

ウララ「ーーーッッッッッ」

 

 

〈ウララは修行の成果を発揮するように強靭な足腰を利用して踏み留まる。だけど、それも長くは続かない。ズリズリと足が動いてしまう…が、〉

 

 

 

 〈それを黙って見ている彼女ではない〉

 

 

キング「ーー私から離れないで!」

 

ウララ「!…キングちゃん。…ウララはっ、」

 

キング「・・・・」

 

 

〈キングはウララの体を強く抱き込む。……そしてもう一度あの叫びが竜巻の中から聞こえてきた〉

 

 

悟空「ーーーグッ……ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ…だあああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

スカイ「っつ!…み、耳がっ」

 

エル「み、見てくだサイ!空がッ!!!」

 

 

〈エルの騒音の中であまり聞き取れない声でも、指で差す空を見る〉

 

 

スペ「!……は、はは……地球…壊れちゃったりしないよね?」

 

グラス「こんなの…地球そのものが震えてるみたい…」

 

 

〈まるで他人事みたいに呟く。空に浮かぶ雲が凄い速さで動いているのを見て地球の終わりを悟った。

だが、それすらもまだ途中。災害は終わらない〉

 

 

 ーーーバチッ!

 

 

キング(…何の音?)「ウララさん!もっとくっついて!」

 

ウララ「っ、」ギュゥゥゥ!

 

 

〈キングは微かにした音を辿る。砂や石、風が巻き上がる中を必死に視線を巡らせ………見つけた〉

 

 

キング「ーーーかみなり?」

 

 

〈空ではなく地面を見ながら雷を連想した。這うように紫電を撒き散らしながら移動するソレはどんどん増殖している〉

 

 

ーーバチッ…バチチッ………バチチチチチチチチッ!!!!!

 

 

〈紫電は竜巻に引き寄せられ音を立てながら纏わりついていく。ーーーーそして、〉

 

 

悟空「ッッッッッ!!!ーーー次だァッ!オレがいくら限界を超えても奴等は軽々とそれを超えてくる!絶対に負ける訳にはいかねぇ闘い!オレは限界の更に限界の壁を越えようとした!その姿がっ」

 

ウララ「限界の……更に!?」

 

 

〈稲妻帯びた竜巻は回転速度を上げながら収縮していく〉

 

 

悟空「超サイヤ人2!!!!!」

 

 

  ドッバアアアアアアッッ!!!!!!

 

 

〈叫び声と共に竜巻が弾け飛ぶ。ウララ達はあまりの衝撃に目を瞑り体を縮こまらせた。

"シュン!シュン!,,と"バチチチチッ,,という音が2つ重なり、ゆっくり目を開けていく〉

 

 

エル「こんな、事が…生物に出来るものなのデス、か?」

 

 

〈エルがそう思ってもおかしくない。

悟空を現地として謎の風が吹き荒れ、辺りにはバチバチと音を立てて稲妻が走る。

髪がさっきよりも逆立ち、前髪に一房が垂れた状態。変わったのは姿だけか。いや違う。"気,,を探れない彼女達でも分かるほど圧力が増した。

神々しい姿は恐怖を通り越し、もはや崇拝すら感じる〉

 

 

悟空「………」バチッ!…バチチチチッ!!!

 

キング「これが、、限界の…更に限界を超えた姿…」

 

スカイ「…スーパーサイヤ人2……、、」(悟空さんの世界ではこれだけの強さが必要だったの?)

 

悟空「生きてる時はコイツの一歩手前までの姿にはなれた。完成したのはオレが死んでからだ。…ーーーぇよな」

 

エル「え、今なんて…」

 

 

〈最後に何かを発したであろう事を聞き返しても悟空からの返答はない。

比較的近くにいたグラスはかろうじて耳にしていた〉

 

 

グラス「・・・・・遅い?」

 

スペ(なんだか悟空さん、哀しそう…)

 

 

〈スペは確かにそう思ったが、悟空の顔は至って普通。何故哀しそうだと思ったのかはスペ自身でも分からない。スペは思考を働きかけたが、すぐに放棄する〉

 

 

 

悟空「・・・・」フワァ

 

 

 

〈ほんの少しだけ地面から離れて宙に浮く悟空が、何かをする事は一目瞭然だったからだ。

収まるどころか圧力は増す一方。悟空の姿が揺れて見えるのは地面が震えているせいなのか。陽炎のようにユラユラと歪んでいる〉

 

〈悟空の発する熱が伝わると嫌でも理解してしまった〉

 

 

キング「ま、まさか……まだこれ以上の力が…」

 

悟空「ーーーーーーーーキッ!」

 

 

轟ッ!!!!

 

 

〈再び空気の塊がウララ達を襲う〉

 

 

悟空「ぁぁぁぁぁ………………グゥゥッ、」

 

 

スカイ「……なんだか辛そうじゃない?」

 

エル「シッ!油断は絶対ダメ…………来る!」

 

 

〈何かを感じ取ったエルはスカイの頭を抱きかかえて体を小さくした。

吹き荒れる暴風。鳴り止まない雷。激しく揺れる地面。今にも千切れ飛びそうな木々。増水する川〉

 

〈それら全ての音を消し去る『声』〉

 

 

悟空「ガァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!…………オ“オ“オ“オ“オ“オ“ッッッッッ!!!!」

 

 

〈さっきまでの様な芯が真っ直ぐ通った姿勢ではなく、腰を落として荒々しく雄叫びを上げる悟空。力強く握った手や腕は血管がビクビク動き、少しずつ筋肉が膨れ上がっている姿は、まさに異常〉

 

 

スペ(なんて大きい声っ。耳を塞ぐ程度じゃぁ…)チラッ

 

グラス「っ…ッッ……ぅぁっ……クゥ…」

 

スペ(・・・・・・よし)スッ

 

 

〈スペは自分の耳をピコピコと動かし出来る限り内側に倒して、抑えていた手を離した。その手の先はグラスの耳へ〉

 

 

グラス(す、ぺちゃん…っ!)

 

スペ(・・・)フルフル

 

 

〈グラスは、自分は大丈夫だとスペの手を外そうとするが、首を振ってグラスの動きを止めた。僅かに優しく温和な目をグラスに向けると、視線をずらして悟空へ向けた〉

 

 

スペ(あの人が精一杯伝えようとしてるんだ。何が何でもしっかり見ないと)

 

グラス(スペちゃん………そうですね)

 

 

〈スペの意志を感じ取るとグラスにも強い意志が眼に宿った。

片時も目を外さないと心に決めて悟空を見るが、黄金の輝きを悟空が纏う〉

 

 

悟空「オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!ーーーコイツがァッ!限界の、更に限界を…さ、らに超えた…っ、」

 

 

〈溢れんばかりに漏れ出す黄金は空間を支配し、やがてそれは目も開けられないくらい輝きを増す。あまりの眩しさに目を閉じていく彼女達。

そんな中ウララだけは見ていた。いくら悟空から遠ざかってもウララの身体は勝手に反応する。

だが、それでも限界はある。防衛本能から瞼が下がっていく時、〉

 

 

     〈ウララは確かに見た〉

 

 

ウララ(・・・猿?)

 

 

悟空「ーーーグオオオオオオオオオオオオオオオ"オ"オ"オ"オ"っ!!!!!!!ハァッ!!!」

 

 

パァァァァァーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エル「と、止まった……」

 

キング「っつー、……何が、どうなったの?」

 

 

〈これまであった自然災害が本当は無かったのではないか、と言う程ピタリと止んでいる。

それでも夢じゃないというのは周りの様子を見ればハッキリと分かる。

悟空を中心に更地になった地面。ヒビが入り川の水は蒸発。木々は根っこが頑張ったのか耐えており、土砂崩れが起きない事が奇跡のようなものだった〉

 

 

ウララ「……悟空、さん」

 

 

〈ウララの呟きに他の娘が反応し、悟空に目を向ける〉

 

 

グラス「これは一体…」

 

スペ「どういう事?」

 

キング「……あれって、」

 

エル「ええ。ーーーー元の悟空さん…デスね」

 

 

〈エルの言う通り、悟空の髪は黒色に戻っており、地面に膝をついていた〉

 

 

悟空「ハァハァハァ……っあー、、ハァ…ハァ…」

 

キング「ちょっ、ちょっと大丈夫なの!?」

 

 

〈悟空が息を切らしている所を初めて見たキングは駆け足で近寄った〉

 

 

悟空「ハァハァ………く、くくっ。ははっ!いやーすまねぇな!やっぱ下界じゃ無理だった!」ハハッ!

 

スカイ「え、っと……説明…頼んでもいい?」

 

悟空「そうだな。オラがやろうとした超サイヤ人3はココに来る前にやっと出来た事だったんだ。

元々エネルギーの消耗が激しい3は下界じゃ不向きだったし、なれてまだ3回目くらいなもんだから身体がついて来なかったな!いやー失敗失敗!」

 

キング「失敗失敗…じゃないわよ!こっちがどんな想いだったか分かってるわけ!?相談も無しにこんな事して、、、それにあんな…怖く…」

 

悟空「………ああ。本当にすまねぇな」

 

 

〈耳も首も項垂れたキングの頭を優しく撫でる悟空〉

 

 

ウララ「………………ねぇ、悟空さん」

 

 

〈しかし、この男は分かっているのか…〉

 

 

ウララ「ウララね、悟空さんが何をしたいのか全く分からないよ」

 

 

〈悟空の強さを見せただけで、話は全く進んでいない事に。

不審な目を向けるウララに悟空の口元は微かに緩む〉

 

 

悟空「だろうな。今やったのは話しやすいように先にやっただけで、ただのオマケだ」

 

ウララ「・・・、」

 

悟空「オラは今の今まで忘れてた事があったんだ。いや忘れてたっつーか…一緒だと思わなかった。みてぇな所かな」

 

ウララ「…何を言ってるの?」

 

悟空「・・・オラはおめぇの気持ちが分かる。多分、まんま一緒だと思う」

 

 

〈それを聞いてウララが思いっきり目を開く。その理由は驚愕じゃない。怒りだ〉

 

 

ウララ「ふざけないで!!!」

 

スペ「ウララちゃん…」

 

悟空「・・・本当の事だ。嘘じゃねぇ」

 

 

〈悟空は怒鳴り散らすウララからスペ達みんなを遠ざける。ウララは悟空の正面に立つと、心の底から失望し、睨んだ〉

 

 

ウララ「嘘だよ!あんなに強い人がウララの気持ちを知ってる筈が無いっ!適当な事言う悟空さんなんて見損なったよ!」

 

悟空「オラが強ぇか… 。なぁウララ、オラを嫌ってくれてもいい。だけど一回だけオラの言いたい事を聞いてくれねぇか?」

 

ウララ「っ!………………………………なに」

 

悟空「へへっサンキューな。……さっきも言ったけど、オラが言いたかったのは超サイヤ人の事じゃねぇ。必要も無かったから言わなかったんだ。ーーオラが死んだ理由を」

 

スカイ「っ、…悟空さんの、」

 

エル「亡くなった理由…」

 

 

〈確かに聞いた事が無いと彼女達は思う。自分が死んだ事を軽々しく話す悟空に緊張感が持てないからと、深く考えた事が無かった。

とても恨みを買いそうな人とは思えない。それに加えて"あれだけの力,,だ。

酷い言い方になるが、対した理由ではない。………そう思いたかった〉

 

 

ウララ(…っ)

 

グラス(な、なんだか胸が苦しい…?)

 

 

〈ウララやグラスだけではなく、他の娘にも、これ以上はないくらいの不安が襲った〉

 

 

 

 

悟空「オラが死んだ理由はな、」

 

 

    

     「敵に殺されたからだ」

 

 

 

 

ウララ「ーーーーーヒュッ」

 

 

〈薄々分かっていた。戦いが好きな彼。事故や災害では絶対に死なない。消去法として残ったのが病気。そして……敗北〉

 

スペ「そ、、そん、なぁ…」

 

スカイ「ひどい…っ!…」

 

グラス「っ……………クッ…」

 

エル「・・・・・ごく、っさ、、」

 

 

〈悲痛に顔を歪める者。顔を見れず目を逸らしてしまう者。ホロホロと涙をこぼす者。

認めたくなかった。時には兄や父のような頼もしさや安心感があり、友達のように笑い合える彼。そんな彼が殺されたという現実を知りたくなかった〉

 

 

キング「…………なんでよ」

 

悟空「…キング……」

 

キング「なんでっ、、貴方みたいな人が殺されなくちゃいけなかったのよぉ……」

 

 

〈キングは手で顔を覆う。隙間からは止めどなく雫が流れていった。

それを悟空は指で掬い、キングの頭を優しく撫でた〉

 

 

悟空「まぁ、そんな泣くなよ。終わった事だ。つってもあれだぞ?ただ負けただけじゃねぇからな!あの世で会った時に勝ってるし」

 

キング「そ"ん"な"の"い"い"わ"け"よ"!!!!」

 

悟空「い"っ!ちが、言い訳じゃねぇって!ほら、おめぇ達も涙拭け!」

 

エル「ぅぅっ…」

 

スカイ「むり、かも……グスッ」

 

グラス「」ボロボロボロボロボロ

 

スペ「うわあああああああああん!!!!!」

 

悟空「参ったなぁ…」

 

 

〈行き所のなくなった右手で後頭部を掻く悟空。その様子をウララは離れた場所から見ていた〉

 

 

ウララ「………ぁ…」

 

 

〈本当なら自分も行きたい。胸が痛くて苦しいから思っ切り泣きたいのに、意地が邪魔をして何も出来ない。

結局ここでも自分は何も出来ないと、キング達がいる場所から目を逸らす。

だが、その前に悟空と目が合った〉

 

 

悟空「心配すんなよウララ。話を誤魔化そうとしてる訳じゃねぇ。結果を先に言うと訳わかんねぇから順番に言ってるだけだからな」

 

ウララ「・・・」

 

 

〈疑ってはなかったが、悟空がまだ話すと言うのであれば聞く。ウララは再度悟空を睨んだ〉

 

 

ウララ「…続き…なに……」   

 

 

〈悟空はウララから目を離さずにキング達から離れた〉

 

 

悟空「おう。まだ本題に入れねぇから一気に言うぞ?

ーー戦ったやつの名前はセル。人造人間っつー人工的に作られた生き物だ」

 

キング(ツッコんでは駄目よ)

 

悟空「生まれたてのセルはまだ未完成。完全体になる前にオラの仲間達が倒そうとした」

 

スカイ「完全体って何?時間で進化すんの?」

 

悟空「セルは生命エネルギー…ようは生物の血や肉、源となる全ての力を吸収するらしい。実際、いくつもの街から人が全員消えたみてぇだ」

 

グラス「っ!何百人も殺されてしまったのですか!?」

 

悟空「いや、百じゃきかねぇ。万以上……つってたな」

 

スペ「酷い…」

 

エル「・・・!!悟空さん"気,,で探せなかったんデスか?」

 

悟空「セルは"気.,を消して移動してたらしい。仲間達が近づくのを逆に読まれて姿さえ見つけられなかった。…って言ってた」

 

キング「…………さっきから誰目線よ。悟空さんはそこに居たのではないの?」

 

悟空「オラは心臓病で倒れてた。薬が効くまでは寝たきりだ。夢の中で話しを聞いてたから何となくは分かってたけど」

 

キング「そう」(キング!ツッコんでは駄目よ!!)

 

悟空「でも、オラが目覚めた時には遅かった。形態は変化して強くなっていった。オラの力も届かねぇくらいに」

 

スペ「……そこでやられちゃったの?」

 

悟空「いや、勝てねぇ事が分かったから修行をしに行った」

 

スカイ「悟空さんの力は知ってるけど、そんな短期間で強くなれるの?」

 

悟空「神様の神殿にある、精神と時の部屋っちゅーのがあって、一面真っ白で何も無い空間。現実世界では1日でもその部屋の中じゃ1年になるんだ。そこでやった」

 

グラス「ぅ…1年、ですか……」

 

 

〈グラスは神様や神殿を無視して1年の修行というワードに引っかかった。

トレーニングをする身として、連続5日間くらいが限度だろうか。それも数時間ほどしか出来ない。

詳しく聞いてはないが、どうせ休憩時間よりトレーニング時間の方が長いのだろうと勝手に想像する。間違ってはないはずだ。それを娯楽も何にも無い空間に1年…。

グラスはその狂気とも呼べる所業に尊敬ではなく、めちゃくちゃドン引きした〉

 

 

悟空「オラは結構強くなったけど、部屋から出たら既に完全体になっていた。圧倒的な力を手にしたセルは世界に向けて言いやがった。

ーーセルゲームを開始するってな」

 

エル「楽しいゲーム…じゃないデスよネ」

 

悟空「そうだな。地球を壊されたくなきゃ倒しに来いって事だ」

 

キング「地球を!?…それもハッタリじゃないのでしょうね」

 

悟空「ああ。もちろんオラ達は戦った。そん時オラの力は超サイヤ人2の一歩手前。……セルには通用しなかった。負けたオラは下がって、可能性を秘めた奴を送り出した。潜在能力を爆発させたソイツはオラどころかセルをも圧倒した」

 

グラス「悟空さんが負け………いえ、、、そのセルを圧倒したのなら終わりではなかったのですか?」

 

悟空「そうだ。セルは何をどうやっても勝てねぇ事を悟った。その結果セルは地球もろとも自爆する道を選んだんだ」

 

エル「汚い奴デス!」

 

スペ「え、でも地球ごとって事は、逃げ場が…」

 

スカイ「………………瞬間移動」ボソッ

 

ウララ「・・・・・っ」

 

悟空「スカイの言う通りだ。その選択しかなかったし、オラの代わりに戦ったソイツを守れるなら迷いはなかった」

 

キング「悟空さん…」

 

悟空「まぁ、飛んだ先の神様を道連れにして死んじまったし、セルは死んでなくて地球に戻るし散々な結果だったけどな!」

 

キング(ツッコんでは………)

 

グラス「えっ、地球は無事だったのですか?」

 

悟空「おう!危なかったけど、ソイツがやってくれたぜ!色々あったけど一件落着した!……っつーまでが前置きだ、ウララ」

 

 

〈悟空とウララの視線が交わる〉

 

 

ウララ「…うん。本当凄いよ、悟空さんは。……本当に、"ウララとは大違いだ,,」

 

悟空「・・・んじゃ話すぜ。オラにも弱ぇ所があるって事を」

 

ウララ「……あなたにウララの気持ちは分からない」

 

 

〈数秒の間沈黙が続く。ウララは絶対の自信があった。悟空に弱いヒトの気持ちが分かる訳ないと。だからこそ全部話しを聞いてから決断する事を決めた。

そんな殺伐とした2人の行く末を見守るため、キング達は傍観を決め込む〉

 

 

悟空「…オラは死んだ後、神様に肉体を残してもらい、修行をつけてくれる事になった。

地球に置いてきた奴等を考えるとちょっと辛かったけど、オラは楽しみだった。すげぇ神様に鍛えてもらえんならオラはもっと強くなる。ずっとワクワクしてた。…ように思ってた」

 

ウララ「違ったの?」

 

悟空「途中までは全然気づかなかった事だ。

それで修行をつけてくれる大界王様の星に行った。そこにはオラの他にも強い奴がいっぱいいて張り合った。武道大会なんかも開いててすげぇ楽しかった。

そんで、いざ修行を始める時…オラは全然ワクワクしなかった」

 

ウララ「・・・」

 

悟空「おかしい話しだろ?楽しみにしてたのにオラの心は冷たいままだ。

結局、修行は一切しねぇで、組手や大会に出るだけの日々が続いた。

さすがにやべぇって思って強引に修行した。意味もなく限界まで"気,,を上げたり、重りつけて武術の型をやったりして、だけど心がついてきてねぇんだ。すぐに息が切れて修行どころじゃなくなった。

ついに走る事すらやめた時、オラは思った。

 

ーーあれだけ限界を超えたのに結局負けちまった。修行したってこれ以上強くなれねぇんじゃねぇかって」

 

ウララ「ぁ、そ、れはっ!」

 

 

〈ウララは思わず声を張り上げた。悟空の言った事は自分も確かに感じた気持ちだ、と。

暗い闇の中に小さな光を見つけ、ウララはなりふり構わず縋り付く〉

 

 

ウララ「そ、れで、、それでっ、どうなったの!?」

 

悟空「フッ……なーんにも出来なかった!」

 

ウララ「え、」

 

悟空「寝て起きて食って組手しての繰り返し。それが半年くれぇ続いた」

 

ウララ「そんなに、」

 

悟空「だけど、ある日夢を見た。オラのガキの頃。亀仙人の…オラの師匠の所で修行を始めたばっかの時、今のウララと同じように亀の甲羅を背負って身体を鍛えていた。そんな中で言った。

武道家なんだから技を教えてくれ。って。

身体を鍛えるだけじゃ勝てねぇだろうから聞いた。そしたらよぉ、師匠が言ったんだ」

 

 

 

【武道は勝つために励むのではない。おのれに負けぬためじゃ】

 

 

ウララ「おのれに………自分に負けないため……」

 

悟空「分かるだろウララ。おめぇが負けたのはスカイにか?オラがやる気をなくしたのはセルに負けたからか?…違ぇよな。

ーー結局オラ達は自分自身に負けてたんだ」

 

スカイ「・・・」

 

ウララ「っ…ぁ、ウ、ララは、、」

 

悟空「・・・・まぁ、それが分かったからなんだっつー話しだけどな。やる気が戻る訳じゃねぇし。だけど諦めたくなかったオラは初心に返った。

自然や山の中で暮らし、腕立て伏せや岩を持ちあげて鍛えたり。今となっちゃ準備運動にもならねぇ事をした。そんで積もり積もった結果、さっき見せた力を手にした」

 

ウララ「・・・そっか、」

 

 

〈ウララは憂いを帯びた顔をする。悟空の世界で起きた事を知れたのは嬉しかった。悟空が感じていた事は確かに自分と同じだったと納得もした〉

 

〈けれどウララが立ち直る事はなかった〉

 

 

ウララ「やっぱり悟空さんは凄いよ。"コレ,,を乗り越えるなんて。…ウララは怖いよ。もし頑張ったら次は必ず勝てるの?諦めなければ夢は叶うの?そんなの辛い、」

 

悟空「いつまでくすぶってんだ、ウララ」

 

ウララ「っ、え」

 

 

〈ウララを遮ったのは鋭い刃のように尖った声。驚いて悟空の顔を見ると眉を顰めている。怒っている…でも圧力を感じないから怖くない。叱られているようだった〉

 

 

悟空「考えたんだけど、これは勝負だぞ?勝つか負けるか分からねぇ。それに、絶対に勝てるって決まったらつまんねぇだろ。甘えてんじゃねぇ」

 

キング「っ、そんな言い方っ!」

 

悟空「酷いってか?勝つ事がどれだけ大変か、おめぇが1番分かってそうだけどなぁ。キングヘイロー」

 

キング「っ!」

 

エル「・・・キング、」

 

 

〈怯んだキングをエルが下がらせる。悟空は再びウララに目を向けた〉

 

 

ウララ「・・・、」

 

悟空「オラはおめぇのトレーナーじゃねぇ。ウマ娘の事なんて詳しくねぇし、基本の事ですら最近やっと分かったくれぇだ。 

ウララのような悩んでる奴に普通のトレーナーがなんて言うか想像もつかねぇ。

 

キングにG1獲らせるためにキントレがなんて言うか。

スペを日本一にさせるためにトレーナーが何言うか。

エルを世界最強にするために何を言うか。

グラス……は知らねぇけど、何かしてんだろ」

 

グラス(・・・・・私も悟空さんとの時間を貰わないと)

 

 

悟空「でも、そんなオラだから言える事がある!」

 

 

〈少し声を大きくすると悟空から風が舞う。穏やかな風がウララの髪をフワリと靡かせた〉

 

 

ウララ「悟空さんっ…」

 

悟空「怖くても、辛くても、泣きたくても、歯ぁ食いしばって立ち上がれ!おめぇにはそれが出来る!!」

 

ウララ「っ、で、出来ないよっ!ウララは弱いんだ!それに、トレーナーなら強引に押し付けたりしない!」

 

悟空「トレーナーならそうだろうな。オラは目指してねぇし、ウララならきっと出来るっつー確信がオラにはある!」

 

 

〈"なんでそんなウララに、,,小さな声で呟いた言葉をしっかり聞いていた悟空は優しく微笑んだ〉

 

 

悟空「オラはウララに教えてきた。鍛え方、意志、戦い。あえて名前を付けるんなら、

 

ーーオラは『師匠』でウララは『弟子』だ。どんなに不利な事になっても最後まで信じ抜く!!」

 

ウララ「ウララが…弟子、」

 

悟空「ははっ!なぁウララ。見せつけてやろうぜ。オラ達2人で作る最強の力を、コイツらに…地球中の奴等全員によぉ!」

 

ウララ「・・・・・、」

 

 

 

 

 

 

ウララ「ごめんなさい」

 

 

〈止めどなく流れる涙を拭う事はせず、地面に跡を作っていった〉

 

 

スペ「ウララちゃん、」

 

キング「・・・っ」

 

 

〈"無理だった,,全員の脳裏に浮かぶ結論。悟空も成り行きを見ている中でウララはスカイの方を向いて言った〉

 

 

ウララ「セイ、ちゃん!ごめ、んなさいっ!」

 

スカイ「…ウララ」

 

ウララ「ウララ、セイちゃんが怖くて、みんなが怖くなっちゃってっ、、今まで頑張ってきたトレーニングが無駄だって言われてる気がして、、、ウララ逃げちゃった…」

 

グラス(・・・・ふふっ、良かった)

 

 

〈一足先に特別な雰囲気を感じ取り、グラスは安堵の表情を浮かべた。他のみんなも、もう心配はしていない。

ポツポツと話すウララにぎこちないながらも笑顔が見えてきたからだ〉

 

 

ウララ「ねぇ悟空さん。ウララ、もう一度走りたい!強くなって、みんなに勝ちたいんだ!

………いっぱい迷惑かけちゃったけど、手伝って、くれる?」

 

悟空「おう!何度だってやろうぜ!」

 

ウララ「うひひっ!」

 

 

〈満点の笑顔のまま、ウララはキング達の前に立った。そして頭を下げる〉

 

 

ウララ「みんなもごめんなさい!」

 

エル「ベリーベリー問題ないデース!」

 

スペ「気にしなくて良いよ!やっぱりウララちゃんは笑ってなくちゃね!」

 

キング「ま、まぁ、ライバルが減って勝っても意味ないから立ち直ってくれて良かったわ」

 

グラス「うふふっ、あらまぁ……」 

 

キング「…なによ」

 

グラス「いえ、別にぃ?それよりも、」

 

 

〈グラスはスカイを見た。まだ1人暗い顔をしたスカイの目の前にウララは移動した〉

 

 

スカイ「…ウララ、その…ごめ、」

 

ウララ「セイちゃんの声、ちゃんと聞こえてた」

 

スカイ「え、あ…」

 

 

〈それはレース後の事だろうか。主語がなくても伝わり、ウララはスカイの手を取った〉

 

 

ウララ「やっぱりセイちゃんは優しいね!それにすっっごく強かった!……龍球ステークス、おめでとう。…まだ、言えてなかったよね…ごめんなさい」

 

スカイ「っ、こっちの方こそ、、、、」

 

 

〈“ごめん”それはスカイの口からは出なかった。

自分の勝手でウララを悩ませて、結果は良かったものの、浅はかな事をした。

本当なら謝るべきだろうが、言うべきことは謝罪じゃないだろうと、何となく思った。だから代わりにこの言葉を贈る〉

 

 

スカイ「・・・・・ありがとう、ウララ」

 

ウララ「…あはっ!…うん!ーーーでも、これで終わりだよ?」

 

 

〈突然笑みを消してウララはスカイの手を離して遠ざかる。一同が視界に入る位置に移動した〉

 

 

グラス(これはこれは…)

 

エル(……ヘェ?成長が早いデスネ)

 

 

〈グラス達全員の目付きが鋭くなる。その原因は髪がゾワリとする程の圧力を放っているハルウララだった〉

 

 

ウララ「ウララはもう負けない。『師匠』と一緒に頑張って、有馬記念はウララが勝つよ」

 

キング「上等よ!」

 

スカイ「……プッ、返り討ちにならないように気をつけてねぇ」

 

スペ「ダービーウマ娘に勝てると良いね」

 

グラス(強気な煽りスペちゃん……ポテンシャル秘めてますねぇ)

 

 

〈くだらない事を考えてるグラスは放っておいて、愉しさに顔を歪めるウマ娘達。

悟空はクスリと笑うと、手をパンっと叩いた〉

 

 

悟空「そんじゃあ帰っぞぉ、おめぇ達ー」

 

『はーい!』

 

〈ボロボロになった場所は後日直すとして、帰路につく。前の方で和気藹々と話す中、ウララは1人悟空に近寄った〉

 

 

ウララ「悟空さん」

 

悟空「ん、どした?」

 

ウララ「え、と………ありがと」

 

悟空「フッ……ああ。これからまたよろしくな!」

 

ウララ「うんっ!」

 

悟空「よしっ、……さっ、日が暮れる前に帰らねぇと、たづなが怒るから急ぐぞー。走れ走れー」

 

 

〈うぇーっと不満な声を漏らす彼女達。悟空は急かすためにスカイの頭をクシャクシャに撫でた〉 

 

 

スカイ「わわっ、何すんのぉ!?」

 

悟空「ひひっ!ほら、スカイも走れー!」

 

スカイ「っもう!」

 

 

〈スカイは悟空の横顔を盗み見る。この人が居て良かったと、心の底から喜んだ〉

 

 

スカイ(…ありがとね。悟空さん)

 

 

〈照れ臭いから“心の中”で感謝の想いを伝える〉

 

 

 

 

 

悟空「おう!おめぇもよく頑張ったな!」

 

スカイ「うん!…………………は?」

 

 

〈スカイは混乱した。自分は今絶対に口に出していない。それなのに、確かに返事をして来た。それが何を意味するか…理解不能〉

 

 

スカイ「ちょーーーっと、おかしくない今のっ!?」

 

悟空「別に何もおかしくねぇぞ?なっ、ウララ」 

 

ウララ「???…うんっ!」

 

スカイ「ウララ、適当に返事しないでよぉ!今のはあり得ないって!!」

 

ウララ「悟空さん、セイちゃんは何を言ってるの?」

 

悟空「へへっ、オラにも分かんねぇや」

 

スカイ「嘘つけ!」

 

 

グラス「そういえば、悟空さんでも勝てなかったセルを倒した方は凄いですね」

 

悟空「ん?ああ、何たってオラの子だからな!やってくれると信じてたぜ!」

 

グラス「へぇ、悟空さんの子、ど、、もっ」

 

 

『ええええええええええええっ!!!!!』

 

 

『子供いた結婚何歳いつからどこで貴方』

 

悟空「ちょ、ちょっと待て。話してやっから1人ずつ喋ってくれぇ!」

 

 

〈悟空の暴露により、今日あった事などそっちのけで食いつく彼女達。

困惑の表情を浮かべた悟空は"長くなりそうだ,,とため息をつく〉

 

〈案の定、学園に着くまで止まる事のなかった質問コーナーを終え、彼女達はホクホクしながら寮に帰った〉

 

 

 

悟空「……ハァ、ルドルフの言ってた以上だな……今のが1番疲れたぞ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

ー トレセン学園:理事長室 ー

 

 

ルドルフ「怪我人及び被害は無し。今回の災害は異常気象として捜査中との事です」  

 

やよい「うむ。…あれだけの事があって被害無しとは、、普通じゃないな」

 

たづな「・・・・・」

 

やよい「…どうした、たづな。険しい顔をしているが、」

 

たづな「・・・タイミングが良すぎて、」

 

ルドルフ「タイミング?…………っ!」

 

やよい「……何の事かは分からないが、取り返しがつくなら何でも良かろう」

 

たづな「理事長これは、」

 

やよい「たづな。自分の心を信じろ」

 

ルドルフ「まさか、理事長は……」

 

 

 

やよい「フッ。私はお前達が言う事も今回の件も、なーんも知らんぞ?」

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

次回予告:(駿川たづな)

 

 

 

やっぱり、あの人でしたか…。これはお説教が必要ですね。

……まぁ、いいです。それよりも大変な事が起きてしまいましたよ。

あのヒトが超サイヤ人の存在に気づいてしまいました。すぐ行動に移すようです。

 

 

狙いは孫悟空さん、ただ1人。ならば…私のする事は決まっています。

【たづな、おめぇ何を考えてる、」

 

…悟空さん…後は任せましたよ。

【よせ……よせっ!戻って来い!】

 

ーー絶対に・・・にも・・・ませんから!

【行くなァっ!たづなああああああああ!!】

 

 

 

 

次回、劇場版  たづなの決めた道。

 






question(Q)「被害…やばくね?」
answer (A)「被害?そんなの無いよ」

Q「いや、津波とか建物とか、絶対…」
A「大丈夫。何も壊れてない」
Q「…でも、」
A「(o_o)」ジー
Q「…………分かった」


2
Q「悟空のスーパーサイヤ人の時、平常心を保てるように修行したから口調変わらないよ?」
A「私の好みだからほっといて」
Q「はい…」

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