………………遅くなり申し訳ありません。完結はするので優しく見守ってください
注意
・この話の中で出てくる修行内容、身体の仕組みなどは深い意味はありません。
ー 前回のあらすじ ー
エル・キング・グラス・スカイ・スペ
『私の方が速いっ!!!』
トレーナーs
『オフ日に立てなくなるまで走るな!!!』
エル・キング・グラス・スカイ・スペ
『ごめんなさい!!!』
ーーーーーーー
ある日の午後。
体操服を着たウララは休憩中のグラスと話していた。
グラス「・・・そうですか。ようやく終わったんですね」
ウララ「うん。やっとだよ。……やっと、無休の二週間が終わった……」
グラス「……お疲れ様でした」
静かに語るウララの瞳に、浮かび上がった綺麗な雫。
聞く者全てを絶句させた地獄の日々。
その名も、
休む必要全く無し!これで君も立派な
(by
悟空がこの地に踏み込み、ウララと出会って数ヶ月。悟空はウララの事を、ただ教えてる訳ではなかった。
ウララの癖やポテンシャルなど、身体に関わる事を見続け、体感的に能力値を把握してしまった。
その結果、ウララの修行後、悟空のアフターケア。お風呂や食事で回復できるギリギリをせめれる事に成功。
ウララは毎日疲れ知らずでトレーニングを行う事が出来るようになった。
しかし、体は良くても心は不良だ。
その事をウララが悟空に言っても、悟空の考えは、
"ん?疲れてねぇなら出来るだろ,,の一言で終わってしまう。
誤解がないように言っておくと、悟空は至って大真面目であり、むしろ喜んでいた。
グラス「キングちゃんやたづなさんに怒られた時には、ションボリしてましたね」
ウララ「あそこまで落ち込まれるとウララの方が謝りたかったよ…」
グラス「悟空さん顔に出ますからねぇ…。それで今日は4日振りのトレーニングですか」
ウララ「そうなの!遊びには行けたけど、休み過ぎちゃって逆にモヤモヤしてたんだぁ。昨日なんて少し筋トレしちゃった」
グラス「ふふっ。弟子は師に似る。体現してますねぇ」
ウララ「???。そういえば、みんなは前に競い合ったって言ってたけど、グラスちゃんは大丈夫だった?」
グラス「え?大丈夫とは?」
ウララ「オフの日にいっぱいやって疲れちゃったんでしょ?珍しくキングちゃんが怒られてたから、グラスちゃんは大丈夫だったのかなって」
グラス「あ、あー、その事なら………エルと2人で一週間の整備担当を言い渡されました」
ウララ「あははっ!やっぱり怒られたんだぁ!」
グラス「ぅぅっ…そんなに笑わないでください…」
ウララ「ひひっ、ごめんごめん!」
グラス「っもう。試合に勝って勝負に負けたとはこの事です…」
ウララ「え、」
ウララは笑顔のまま硬直した。
グラス「?、どうかしました?」
ウララ「いやぁ……あのね?」
グラス「はい」
ウララ「今の…キングちゃんも全く同じ事言ったなぁって思って、」
グラス「今のとは…試合に勝って勝負に負けた、ですか?」
ウララ「うん。勝ったのはキングちゃんじゃないの?」
グラス「私ですよ」
ウララ「っ、」
グラスは嗤った。当時の事を思い出しているのか、弧を描く口元。
だけど、目は全く笑ってない。
ちなみに、ここまでキングと同じ反応だった。
ウララ「そ、そうなんだぁ。強いねグラスちゃん!」
グラス「ふふっ。そうでしょう?マイルだって、2000mだって2400mだって私が勝ちました。もはや最強は私だと言っても過言ではないでしょう」
ウララ(このセリフもキングちゃんと同じ…。一緒の事言ってウララの事を騙してる…訳ないか。…もしかして負け惜しm)
グラス「ウララチャン?キイテマスカ?」
ウララ「ひゃいっ!聞いてるよっ!」
グラス「ワタシ……ツヨイ?」
ウララ「ひぃぃぃっ、つ、強いと思うよ!」
グラス「そう。…………じゃあ、」
ウララ「〜〜〜っ、」ゴクリ
グラス「これでもですかぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
グラスはウララに飛び掛かると上から下まで余す事なく、くすぐりまくった。
ウララ「ひぃぃぃいあははははははははははははははははははははははは!!!!!!なにっ、ひひっ!何でくすぐるのぉぉぉおおおお!?うひひひひひひひ!!!!」
グラス「こーちょこちょこちょこちょ!!私の事疑った罰ですよ〜」
ウララ「くふふっ、うたがってっにゃいよぉぉぉ!!あはははははははは!ごめっ、ゆるしてえぇぇえぇ!!!」
グラス「しょうがないですねぇ。このくらいにしておきましょうか」
グラスが手を離すと、ウララは膝から崩れ落る。
ぜー、はー、と荒々しい息遣いを何とか立て直すと、ウララは率直に聞いた。
ウララ「………ね、今のってウララが悪かったのかな?」
グラス「・・・ふむ。もう一回くらいますか?」スッ
ウララ「わぁあああっ、今の無し!もう言わないからくすぐらないでぇ!」
・
・
・
グラス「ん、そろそろ時間ですか」
時計を見ながらグラスが呟く。
ウララ「トレーニング戻るの?」
グラス「ええ。ウララちゃんはどうするんです?」
ウララ「今ウララはねぇ、悟空さん待ってるの」
グラス「悟空さん?………それにしては姿が見えませんね」
ウララ「うーん、集合時間は10分前なんだけどなぁ」
グラス「悟空さんが遅刻とは珍しいですね。何かあったのでしょうか?」
ウララ「・・・"あの,,悟空さんに?」
グラス「・・・あり得ない事でした」
ウララ「んー、忘れてるかも知れないから探してくるね」
グラス「ええ、それではここで、……あら?」
手を振るグラスは動きを止める。ウララはグラスの視線を辿ると、黒いジャージを着た悟空が走ってきていた。
悟空「いやぁ、すまねぇ!待たせちまったな」
ウララ「う、、ん。それは良いんだけど…」
グラス「・・・」
ウララとグラスは悟空の顔から目が離せないでいた。
よく見なくとも一瞬で分かる、目の下のクマ。顔の血色は悪く、青白くなっており、酷くやつれていた。
悟空「なんだよおめぇ達。オラの顔に何かついてっか?」
ウララ・グラス「「何があったの?????」」
悟空「ん?遅刻した理由か?」
グラス「と、いうより悟空さんの状態です。今日はお休みになられた方が良いのでは…」
ウララ「うん…。そうしよ?悟空さん」
悟空「オラの事言ってんなら心配すんな。わざとやった事だからよぉ」
グラス・ウララ「「わざと?」ですか、」
悟空「おう。今日やる修行はオラが身をもって教えた方が良いと思って、この四日間は"気,,を放出し続けたんだ。加えて睡眠を減らして、飯もたづなと同じくらいしか食ってねぇ。体力はギリギリだな」
ウララ「そんなっ!悟空さんがご飯少ないなんて、」
グラス「何という自殺行為を!」
悟空「行為っつーか、オラ死んでっけど…。まぁそんな訳でオラはいつもの力が全くねぇ。くたばる前に行くか」
ウララ「う、ん。…悟空さんが言うなら平気かな。今日は何するの?」
悟空「最初はいつも通り筋トレや少し走るくれぇだけど、グラスも一緒に来るか?」
グラス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いえ、まだチームトレーニングの最中なので」
悟空「そっか。ざんねn」
グラス「なので次もまた絶っっっっ対に誘ってくださいね?私待ってますから」
悟空「お、おう」
ウララ(一緒にやりたかったんだね。グラスちゃん)
グラス「では、失礼します」
ココに居続けると自身のトレーニングに集中出来ない、とグラスは後ろ髪引かれながら、その場から立ち去った。
ウララ「ありゃ、行っちゃったね」
悟空「アイツも強くなんのに必死っつー事だ。オラ達も負けてられねぇな」
ウララ「そうだね。少し空いちゃったけど、今日からまたよろしくね、悟空さん!」
悟空「おう!」
そして思い出される地獄の日々。
ウララ「ごっ、くう、さん!たっぶんっ!う、さぎっ、飛びって!タイヤっ、引かないっ!と、思う!!」
中腰のまま飛び続ける後ろをゴシャ、ゴシャと音を鳴らせてついてくるタイヤ。
悟空「普通の車のタイヤだ。今のおめぇならどうって事ねぇだろ」
ウララ(そんな訳ないじゃん!足パンパンだよぉ!)
と、言える暇もなく、心の中で絶叫した。
しかし、ウララの足は止まらない。
無茶なトレーニングに言い訳はたくさんする。泣き言だって吐くし、涙を浮かべる時なんて結構ある。
それなのにウララは前から目を離さない。
やめたいという心を裏切り、体が勝手に動くのだ。
ウララ(普通逆なはずなんだけどね…)
自嘲気味に口元を緩めて、一歩の飛ぶ幅を大きくした。
ウララ「負けないぞぉぉおおおおおお!!!」
思い浮かぶ同期の怪物達。ほんの少しでも近づくために、弱音は咆哮でかき消した。
それなのに、この男はいつも逆な事を言う。
悟空「ウララー!そこまでだ!帰ってこーい!」
出鼻をくじかれたウララは前のめりに潰れる。
ウララ「これからだったのにぃぃいいいい!!!!」
やる気に満ちた魂を打ち止めされ消沈するウララ。
肩を落としながら、ペットを散歩するようにタイヤを引いた。
ウララ「もぉおおっ!なぁに!?」
悟空「ははっ!そう怒んなって。やりてぇ事は体力を減らす事で、筋肉を消耗する事じゃねぇんだ」
ウララ「むぅ。……それじゃあ走ってくる?」
悟空「いや、足はこれ以上したくねぇから、、、、甲羅背負って腕立てでもすっか」
ウララ「えーっ!ウララ上半身のトレーニング苦手なんだよねぇ」
悟空「おっ!そりゃ良い事聞いたなぁ」
ウララ「え、」
悟空「苦手っつー事は伸び代があるっちゅー事だ。ほれ、ムキムキになるぞ!」
ウララ「ムキムキかぁ、、、カッコよくなるかな?」
悟空「・・・ああ、」
ウララ「そっか!じゃあ甲羅背負ってくるね!」
悟空「おー」
ムキムキに目を輝かせたウララはスキップをしながら走った。
悟空(・・・女ってムキムキになれるんかな?)
腕の立つ自分の妻チチや、実力自慢が集まる天下一武道会でも筋肉が膨れ上がった女性は居なかった事を思いだし、騙してる感じになったかもと、少しの罪悪感に苛まれていた。
ウララ「ふんっぬーっ……ふにににっにーーーっ!」
悟空「18…19……後30回!」
ウララ「そんなに!?むっ……うぁっ!ぎゅぐぐ、、むが!」
・
・
・
悟空「ーーーーーーーおし、良いぞ!」
悟空がそう言うと、ウララはドタバタと地面に転がり、背負っている紐を取った。
ウララ「っっっぷはーっ!もうダメ!亀さんの事嫌いになりそうだよぉ」
悟空「・・・・・」
ウララ「?、どうしたの?悟空さん」
悟空「・・・いや、修行の目的なんだけど、やりてぇ事があるから体力を残り少なくしたくて、」
ウララ「う、ん……?」
悟空「でも、こんな方法じゃウララの体力は無くならねぇ」
ウララ「へ?」
悟空「調整しながらの修行は、おめぇの体力が減らねぇんだよ。良い事だけどオラのやりたい修行が出来ない!」
ウララ「・・・悟空さんは何が言いたいの?」
悟空「いつもと同じくらいのやつをする。んでもって、疲れてぶっ倒れてから修行本番だ!」
ウララ「ごめんね。意味が分からないや」
悟空「ちょっと待ってろ!いつものタイヤ持ってくっから!」
最初は理解できない…いや、理解"したくない,,ウララだったが、離れていく悟空の背中を見ていく内に少しずつ、事の重大さが分かってしまった。
ウララ「ーーーあー、そっか。4日ぶりだもんね。懐かしいって思っちゃうよ。………三途の川に行くのは、」
ウララ「だからっ、動かないん、だって!!!!」
5tのタイヤはピクリともせず、ウララの足だけが空振っていた。
悟空「もっと腰落とせ!地面を足の指で握るんだ!」
ウララ「やってるよぉ!」
悟空「ったく、休み前は少しだけ動いてたってのに。さてはウララ、怠ったな?」
ウララ「4日も空けばこんなもんだよぉ!少し手伝ってぇええええ!!」
悟空「んー、オラもあまり力は出せねぇけど……押すくらいなら行けるか」
悟空は後ろからタイヤを押した。
いつだったか、力を入れすぎてウララが前のめりに倒れてしまったからと、悟空はゆっくり力を上げていく。
ーーーズリズリズリ
ウララ「おっ、おー、うん。行ける!」
悟空「よし!走れウララ!」
ウララ「おーーーーーー!!!」
・
・
・
ウララ「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ………」
悟空「ウララ……おめぇ、」
ウララ「ご、くう、、さん」
悟空「まだ体力残ってんな?」
ウララ「・・・・・ノこってないヨ?」
悟空「声裏返ってんぞ。後はターフ1.2周走ったらちょうどいいかな」
ウララ「・・・、」
悟空「そんな顔すんなよウララ。ここまで疲れさせるにはちゃんと目的があるんだ。今はコツを教えるだけで、今後はココまではしねぇから今日だけ頑張れ!」
ウララ「ムゥ……でも、、、っ!」
不満を吐き出そうとウララが悟空の顔を見た時、息を呑んだ。
最初に見た時より明らかに顔色が悪く、離れていても耳をすませば聞こえるお腹の音。
思えばこれは自分のトレーニングだが、悟空が"身,,を持って教えてくれると言っていた。
ウララ(ウララのために悟空さんが辛い思いまでして教えてくれてるんだ…)
語らずとも伝わった悟空の想いにウララは反省した。
ウララ「ね、…ただ走るだけで良いのかな?」
悟空「ああ。本気で走る必要はねぇ。ランニング程度で良いんだ。その間にオラも最後の仕上げすっから」
ウララ「そっか。それじゃあ行ってくるね!」
悟空「おう!おめぇから少し目ぇ離すから気をつけてな」
ウララ「うんっ」
タッタッタッ…、軽快なリズムでターフを走るウララ。
ウララ(うわぁ、みんな怖いくらい張り切ってる)
一人で走るウララの肌にチクチクと突き刺さる重圧。
"ウララだって負けないぞ,,と気合を入れ直すが、周りを走っているウマ娘の様子がおかしい事に気づいた。
ウララ(?……焦ってる?)
走る姿がどこかぎこちなく見えるウマ娘達。
それなのにウララの感じる重圧は増す一方。近場で模擬レースでもあれば感じてもおかしくないが、それらしいものはやっていない様子。
不気味な感覚に背筋がゾワリとする中、視界にキングヘイローが凄い勢いで地を駆け抜けて行くのが見えた。
ウララ(キングちゃん?………っ!)「まさか…」
悟空「・・・・・はぁぁぁ」
悟空は腰の位置で拳を握り深呼吸をしていた。
"気,,の放出。オーラは出ていないが、悟空は残りの体力を減らすため誰にも分からないように力を出し続けていた。……つもりだった。
ズドドドドドドドドドッッ!!!!!
悟空「ん?」
キング「悟っっ空さぁぁあぁぁぁん!!!!」
悟空「き、キングゥ!?」
キング「そんなに"気,,出したら他の子が萎縮しちゃうじゃない!」
悟空「え、オラそんなに出してねぇぞ!?」
キング「出てるのよ!それに普段と違くて何だか冷たい感じだったし…。何のつもりか知らないけど、不用意にあなたの"気,,出したらG1レースなんて軽く凌駕するほどの圧力なんだから気をつけなさいな」
悟空「あちゃあ…、そりゃあ悪い事したなぁ。ここまで消耗したのは久々だからコントロールが出来てなかったみてぇだ」
キング「消耗?…って、悟空さん体調悪そうね。大丈夫なの?」
キングが悟空の体調の変化に気づいた時、ウララがレース本番並みの速度を出して帰って来ていた。
ウララ「ハァハァハァハァハァ…………き、今日は悟空さんに考えがあるらしくて、わざと体力を減らしてるんだって」
キング「あらウララさん。体力を減らすって……悟空さん体力減るの?」
ウララ「らしいよ。そのために四日間"気,,を出しっぱなしにしたんだって」
キング「へぇ、」
ウララ「その間もほとんど寝てないみたい」
キング「まるで修行僧ね。でも悟空さんならそれでも足らないのかしら」
ウララ「ご飯はたづなさんと同じくらいしか食べてないんだって」
キング「何やってるのよ!!!」
悟空「キング?」
キング「ど、ど、どうするのよっ!悟空さん死んじゃうわ…」
悟空「ぁ、いや、だからオラもう死んでる…」
キング「死んでるから何よ!と、とりあえず食堂でオニギリでも作って…いえ、悟空さんには腹の足しにもならないわね……あっ!牛を一頭、」
ウララ「はいキングちゃんすとーっぷ!」
あわあわと、手を振り乱すキングのお腹に抱きついて抑制を図る。
キング「きゃっ。…う、ウララさん?」
ウララ「もー、キングちゃん慌てすぎ!確かに悟空さんにとっては凄く珍しい事だけど、ちゃんとウララの事を考えてやってくれてるんだからね!今食べちゃったら全部無駄になっちゃうよ」
キング「あ、そ、それもそうね。ごめんなさい、私ったら…つい」
悟空「謝る事ねぇさ。キングはオラの心配してくれたんだろ?ありがとな!」
悟空はキングの頭に手を乗せると優しく撫でた。
キング「ちょっ、やめなさい」
悟空「まぁまぁ。…ん?キングは練習終わりか?」
キング「ええ。クールダウンはまだだけど、」
悟空「ーーーうん。体はまだ冷めてねぇし、キングも一緒にやろうぜ!」
キング「ぇっ・・・・いや、私は練習終わりで、もう足がガタガタよ。今回は遠慮しておくわ」
悟空「おっ?そっかそっか。ガタガタかぁ。ならちょうど良いな!キントレに言ってくっからちょっと待ってろよ」
キング「お願い後半部分も聞いてっ!………ぁ」
伸ばした手は空を切り、悟空の背中は離れて行く。
行きどころの無くなった手は寂しそうに下がっていき、隣の小さなウマ娘はそれを見て、背伸びをしながらポンと肩に手を置いた。
キントレ「練習に参加する分には構いませんが、何をするんです?」
キング(最近トレーナーの悟空さんに対する信頼度が高くて困るわ…)
悟空「おう。修行の目的から先に言うと、疲れてからでも本気で走れる方法だ」
ウララ「???」
キントレ「・・・・なるほど。それは盲点でした」
キング「今ので分かったの!?」
キントレ「多分だけどね。…一般的には疲れないために体力を作る。そのため何十キロという距離を走り、何百メートルという距離を何回も走る」
キング「???…当たり前じゃない」
キントレ「だけど悟空さんが言ってるのは、疲れてもスピードが落ちない走り方って意味だと思う」
悟空「そうだ。どんなに体力つけても減る時は簡単に減る。コースの外側を走ったり、相手の"気,,に呑まれたりな。龍球のウララが良い例だ。スカイにいいようにされて最後には自分の知らない所で体力が無くなり末脚は不発だった」
ウララ「ぅ"っ、」
キング(この人、鬼ね)
キントレ「でも具体的にどうするんです?さすがに疲れたから走り方を変える。なんて事、レースの中じゃ出来ませんよ」
悟空「言うと単純なんだけど、無駄な動きを無くすってだけだ。今の状態は疲労が溜まって思うように手足が動かせないはず。……まぁやってみっか。ウララ、キング。オラについて来い!」
ウララ「いきなり!?」
キング「ウララさん、行くわよ!」
突如走り出した悟空に遅れながらもウララ達はついていった。
軽いランニングでターフに行くと悟空が振り向く。
悟空「いいか二人とも。これからやる事は普段無意識でやってる事を意識的にする。とりあえずまずは200m。思いっきり走ってくれ」
ウララ「はい!」
キング「分かったわ!」
2人は走った。
予想通り疲労した体は思うように動かない。
足を地面にとられて右や左にズレ、風圧に負けて体が起き上がってしまっている。
だけどそれはレースの最後なら珍しくない。疲れた身体へムチを打つように、強く踏み込むため一際大きく足を上げた。
悟空「踏み込むのは駄目だ!」
ウララ「え、」
キング「っ!」
タイミングを乱された二人は徐々に失速。
体力が無い中で走らされ、それも途中で止められた事に不満気な表情を見せた。
悟空「おめぇ達は今レース本番に似た走りでやってくれたな?」
キング「あなたが思いっきり走れって言ったじゃない」
ウララ「何かだめだったの?」
悟空「いや確認しただけだ。説明すっからキントレの所に戻るぞ」
・
・
・
悟空「ーーーと、走ってくれた訳だけど、キントレは何か思ったか?」
キントレ「………いえ、特には…。手足の連動はしっかりしてたし、右にヨレても立て直してた。後は本番さながらのスパートをかけようとした所で悟空さんが止めた」
キング「私もいつも通りだったわ」
ウララ「ウララも、かな」
悟空「確かにおめぇ達の言う通りミスは無かった。ただ、オラから言わせると無駄な動きが多すぎる」
キントレ「無駄、ですか?」
悟空「ああ。普段のレースなら問題ねぇ。だけど体力が残り少ねぇ時に同じ走りをしても限界が見えてんだ。
例えばさっきスパートに入る直前、強く踏み出そうとしたな?」
キング「え、ええ。加速つけるなら当然だと思うけど」
悟空「けどキングは走る前、足がガタガタだっただろ?踏み込むっつーのは見た目以上の筋肉を使う。そんなんじゃ最後まで持たねぇぞ」
キントレ「でも、それならどうやって、」
悟空「簡単だ。全身を使えば良い」
ウララ・キング・キントレ
『・・・・・・簡単?』
悟空「・・・じゃねぇかも知れねぇ、けど。コツさえ掴めればこの先きっと使えるだろうよ」
キントレ「……もう少し説明出来ますか?」
悟空「そうだなぁ…。走るって簡単に言えても実際は奥が深い。細かく言うと、足を上げる時には腿。踏み込む時には腿裏、尻。姿勢維持は腹や背中みてぇな多くの筋肉使うだろ?
他にも股関節や膝関節。疲れが溜まると全部が鈍くなってくる」
ウララ「そうだね。いくら筋肉トレーニングしても足パンパンだもん。」
悟空「だろ?疲労した体で力づくに動かしても体力の消費が激しい。
だから力に頼らない走りを会得しようぜって事だ」
キング「………ちょっとやったくらいで出来るの?」
悟空「無理だ。癖は簡単に消えてくれねぇから、ゆっくり調整していくしか方法がない。けど今はオラが居るからコツくらい掴めると思うぞ」
キントレ「実践あるのみですね。キングは何だったら明日オフにするから存分にやってきて良いよ」
キング「トレーナーがそう言うなら…。ええ!やってやるわ!私はキングよ。十の練習だけで百の成果を出してあげる!」
ウララ「頑張るぞー!」
ターフに轟く声はもはや悲鳴にも聞こえ、それを発している二人のウマ娘の後ろを男が併走していた。
悟空「キング!手を強く握りすぎだ!それと肩の力を抜け!」
キング「くっ、、走ってる時に力を抜くなんて、」
悟空「手に集中するんじゃなくて関節や末端を意識するんだ。手の動きは肘関節。肩を前後じゃなくて肩甲骨を。意識だけを変えるだけで筋肉の硬直はなくなる。ほら、手ぇ置いてるから分かりやすいだろ?」
キング「ーーーん、確かに。ありがt…」
悟空「ん?どうした?」
ぎこちないながらも悟空の言う通りにしたキングだったが、現実をしっかり受け入れようと深く息を吐いた。
キング(こ、この人っ。横向きながら私と並んで走ってる!……って悟空さんなら出来るわよね)
悟空「おしっ!手の動きは良い感じだ。そのまま下いくぞ。地面を踏むんじゃねぇ。前に倒れるつもりで膝を突き出せ!腿は上げるってよりは膝蹴りするイメージだ!膝関節もちゃんと曲げるんだぞ!」
キング「膝蹴りなんて知らないわよ!」
と、言いながらも、どんどん全身から力みが消えていく。スピードは決して速いものではないが、一流と自負するだけの事はあると、悟空は感心していた。
悟空(目立った成績は無ぇけど、コイツの眠った力がまだまだありそうだ。間違いなく強敵の一人だな)
キング「ねっ、、、ご、くっさん!」
限界が近づいても感覚を体に叩き込もうと、足を止めないキングだったが、一緒に走っているウララの事が気がかりだった。
悟空「どうした?」
キング「わ、私の事は良いからっ。ウララさんにも付いてあげて!」
悟空「ウララ?もちろんちゃんと付いて話してんぞ?」
キング「え?」
誘導されるようにキングは右後ろを見た。
自分と同じく叫びながら走るウララの姿。そしてその横にはウララの背中を支えている悟空がいた。
キング(!?、?!?!?)
悟空「キング集中しろ!頭の位置が上下に動くのは無駄な動きだ!一定に保て!芯だけはブレさせないように腹は力入れるんだ!」
キング「っ、集中。………集中っ………集中!なんてできる訳ないでしょぉぉぉおおおおお!!!」
キング「ハァハァハァハァハァ…」
ウララ「あ"ーっ、疲れた!キングちゃんはどうだった?」
キング「っご、、悟空さん、」
ウララ「ん?あぁ、ウララには教えてくれてたけど、キングちゃん教えてもらってないよね?ごめんね」
キング「………私も教えてもらったわ」
ウララ「へ、そう?悟空さんずっとウララと一緒にいたと思った」
キング「いたわ。……分身してたけど、」
ウララ「…キングちゃん…。よっぽど疲れちゃったんだね!」
キング「私はボケてないわよ!」
キングの言ってる事が理解出来ないウララは首を傾げると、その先に悟空とキントレが歩いて来るのが視界に入った。
キントレ「ーーーー力ではなく技術を軸にしたものですね」
悟空「そうだ。キングは最後の方はコツを掴んだみてぇで、荒削りだけど自分で改善してやがった」
キントレ「そうですか。多分僕は領域外なのでどうしようかと思いましたが、」
悟空「まっ、オラがいる間はたまに見てやっから心配ぇすんな。それにいなくなったとしてもキングなら上手い事やるだろうしな!」
キントレ「悟空さん…。…とりあえず消える発言はやめましょう。僕を含め皆んなの心臓に悪いです」
悟空「?、そうか?」
ウララ「おーい、悟空さーん!」
悟空「オッス!今日はお疲れさん。体力が切れてから動くのは結構
ウララ「うん、もーヘトヘトだよぉ」
悟空「ははっ!これでゆっくり休んだら強くなれっからな。キングはどうだ?」
キング「…そうねぇ、今までは力でゴリ押ししてたけど、緩めることで出せる速さがあるって事を知ったわ。けど…、」
悟空「???」
キング「疲労してからじゃないと出来ない練習なんて効率悪いわね。何か考えないと、」
悟空「いや、分かりやすいってだけで、別に元気が有り余ってる時でも出来るぞ?そうなると力に頼っちまうけど、キングは頭が良いからなぁ、気をつけ所が分かってれば出来るはずだ」
キング「そうなのね。……でも良いのかしら?これで私は強くなってしまうわよ?」
悟空「おお!良い事じゃねぇか!どんどん強くなれキング!そんでG1も掻っ攫っていこうぜ!」
キング「!……ほんと、あなたってば呑気ねぇ。私はウララさんの敵だと言うのに。……もしも私が有マ記念で勝ったとしたら、悟空さんは喜んでくれるのかしら?」
悟空「っっったりめぇじゃねぇか!!!」
キング「ちょっ、なに!?」
悟空はキングを抱きかかえ、自分が一番だと思わせるように天高く上へあげた。
キングは一瞬の放心状態から、はっ、と目が覚めると羞恥心が芽生えてくる。
何とかして降りようと試みるが、ガシッと掴まれた悟空の手はほんの少しも離れはしない。
それどころかテンションの上がった悟空はクルクルと回り出した。
悟空「オラはウララの事を修行つけてるけど、おめぇ達が負けねぇように頑張ってるとこをオラは知ってる。キングはもちろん、スペやスカイ、グラスにエル。誰が勝っても喜ぶし、めいいっぱい褒めてやんぞ!」
キング「…ふっ、ふふ……あはははは!なら特等席で見てなさい!私とトレーナーの力が1番になる所を!そしたらもう一度私を抱く権利をあげるわ!」
悟空「ははっ、ウララは強くなってるし、そう簡単にはいかねぇかもな!でも本当に勝ったら雲より高く飛ばしてやるよ!」
キング「それはいらない」
悟空「お?」
普段キングは笑う時、手で口元を隠すのがほとんどだ。自分を一流と誇示し、なおかつ大口を開けて笑うことは下品と教わったのだろう。
そんなキングは今、無邪気に笑っているのだ。
その光景を見た彼女のトレーナーと同室の娘は感激のあまり目を輝かせていた。
ウララ「………おー、」
キントレ「ふむふむ。これはこれは…」
ウララ「ねぇ、キントレさん」
キントレ「なんだい?」
ウララ「これって確か、春が来たって言うんだよね?」
キントレ「おっ、よく知ってるね。その通りだよ」
キング「来てないし適当な事言わないでちょうだい」
悟空「ちゅーかキング。オラ思ったんだけど、走る時もう少し頭を倒せねぇのか?体が起き上がりすぎな気するけど」
キントレ「あっ、悟空さんそれは…」
悟空「ん?」
キング「いやよ」
悟空「いや?やりたくねぇのか?」
キング「ええ。何でこの私が頭を下げなきゃいけないのよ。
悟空「ぇ、、、ん?でもよぉ、今より速くなるかも知れねぇぞ?」
キング「だとしてもよ。私は今のままで勝利を掴む。プライドを潰して勝っても得るものは一つも無いわ」
腕を組み、まるでそれが当たり前の事だと告げるキングに、悟空は既視感があった。
悟空(あー、そういう事か。こいつはベジータに似てんな)
昔は手も足も出せなかった強敵の存在。
それがいつしか力の差が逆転し、悟空自身ですらベジータより強いという確信があった。セルとの時にはかなりの差が開いているとも思っていた。
だがそれが続くとは、これっぽっちも思っていない。神様の元で修行をしているとしても、彼は一心不乱に血を流しながらも追いついてくる。
そんな確信があり、このウマ娘に重なる部分がある事を知った。
悟空(油断ならねぇ。でもウララを強くしてくれんのはキングの存在なんだろうな)
キング「?…どうしたの?こればかりは悟空さんに言われても止める気ないわよ」
悟空「いやそうじゃねぇ。オラの勘違いだったみてぇだ。…キングはその誇りを大切にしろよ?そしたらいくらでも強くなれる。オラは知ってるからな」
キング「ええ!もちろんよ!」
おまけ
キントレ「悟空さん、質問良いですか?」
悟空「なんだ?」
キントレ「悟空さんって、この日のために制限かけてスタミナを落としたんですよね?」
悟空「そうだ。寝る時間や飯も全部少なくしたんだ。おかげでフラフラだ」
キントレ「それが全くそう見えないんですよね。顔色は悪いですけど、練習時の走行はブレてませんし、観察眼も健在でした。キング達との差は一体…」
悟空「あぁ、その事か。オラもさっき気づいたんだけど、いくら疲れてもオラの動きは身体に染み付いてるから、あんまり意味がなかった。骨をバキバキにするくれぇじゃねぇと」
キントレ「oh…。それなら制限の意味って、」
悟空「全く意味なかったけど、強いて言うならオラの修行になったぞ!」
キントレ「……苦行を強くなる要因に捉えて笑えるとは…これが戦闘民族か、」
悟空「ちゅーかさすがに腹減ったなぁ。ちょっと食堂に……あっ、オグリの"気,,があんじゃねぇか!オラ行ってくんな!」
キントレ「………………………今度食堂に差し入れ持っていこう」
レースの間のひと時でした。ウマ娘本編軸に乗っても良いのですが、急ピッチかなと思い、日常話を書いています。
次回は凱旋門賞にしようか、もう一回日常編かは…考え中。