んー、次話が決まってないから、予告が書けん…。
注意
作中の内容はウマ娘1期アニメ軸を辿ってますが、今回のエルの設定はゲーム版から拝借してマス。
ー 前回のあらすじ ー
キング「脱力、ねぇ。余計な力を使わない事の本当の意味が分かったわ」
ウララ「ウララはあんまり合わなかったかな…」
ーーーーーーー
ある日、黄金世代と呼ばれる彼女達は困惑していた。
教師「エルコンドルパサーさん。この問5の答えは分かりますか?」
エル「はい。2+√6デェス」
教師「せ、正解。少し難しい問題でしたが…。エルコンドルパサーさん説明出来ますか?」
エル「はい。この公式を当てはめて…ーーーー」
スペ・グラス・スカイ・キング
『・・・・・』ポカーン
一人、エルコンドルパサーを除いて…,
・
・
・
エル「フゥ、」
スペ「エルちゃん!どうしちゃったの!?」
エル「ケッ!?」
授業が終わった。
その瞬間にゲートのスタートさながらの動きで席から飛び出すと、スペはエルの両肩に手を置いた。
エル「す、すぺちゃん?どうとは…何の事デス?」
スペ「隠しても無駄だよ。エルちゃん最近変だもん」
エル「???」
スペ「……か、隠したって無駄だよっ。何か、、えっと、、話してよ!」
エル「何か話せって言われても…。……スペちゃん相談乗るの下手デスね」
スペ「ゔっ」
エル「それに本当に心当たりがないので、エルわっかりまセーン」
スペ「え、でも……隠したっt」
グラス「スペちゃん。何回同じ事を言うんですか?」
スペ「だってぇぇぇ!」
エル「グラス?」
グラス「エル。ごめんなさいね。スペちゃんったら不器用だから」
スペ「」グサッ
エル「それは知ってマスけど、」
スペ「」グサグサッ
グラス「だからエル」
エル「ケ?」
グラス「隠してないで早く言いなさい」
スペ「えっ」
エル「えっ」
その様子を見ていたキングとスカイは頭を抱えた。
スカイ「出番だよ、キング」
キング「なんで彼女ってたまにポンコツになるのよ…」
キングはエル達に近寄ると、まず最初にスペとグラスにチョップをした。
デュクシッ !!デュクシッ!!
スペ「ヘムッ」
グラス「ぁぅっ」
キング「このへっぽこ達。物事は簡潔に伝えなさいな」
エル「キング〜。エル当事者だと思うんですけど、置いてけぼりくらってマース!」ダキッ
キング「でしょうね。分かりやすいように言ってあげるから、まずは離れなさい」グイグイ
エル「あーん。キングはつれないデェス」
・
・
・
キング「まぁ、単刀直入に言わせてもらうと、エルさん、あなた最近ふざけてないわよね?」
エル「ケッ!?あ、あのー、質問の意味がよく分からないのデスが…」
キング「エルさんの日常が普通過ぎるのよ。とても1日の半分以上ふざけていたヒトとは思えないわ」
スペ「そうだよ!前はグラスちゃんの事を似非大和撫子って揶揄ったりしてたのに」
スカイ「授業なんて聞いてない事がほとんどだしね〜」
グラス「それに最近はあまり眠れてませんよね?朝早くトレーニング行ってますし…」
スペ「あ!あとはグラスちゃんのご飯にイタズラする事もなくなったよね。激辛ソース入れたり。いっぱい食べるグラスちゃんを豚って呼ぶ事もなくなった。…絶対に何かあったでしょ!……私、エルちゃんが心配だよ…」
エル「………スペちゃんは自分の心配をした方が、」
スペ「ほぇ、なんで?」
グラス「分からないのなら、こちらへどうぞ?教えてあげますから」
スペ「ええええっ!!!なしてそうなるのぉっ!?」
笑顔のまま、こめかみに青筋を立てたグラスはスペの尻尾を鷲掴みにして歩き出した。
"助けてー!,,と縋るように手を伸ばすスペと目を合わせる者は一人もいない。
キング「……なんだか最近、会話が脱線する事増えたわよね」
スカイ「良い意味だとみんなの自我が強くなったよね」
キング「悪い意味なら?」
スカイ「自分勝手」
キング「駄目じゃない…。"あの人,,の悪影響ね」
・
・
・
エル「それで、みんなに心配してもらって恐縮なんデスが、どういう事なんデス?」
スペ「んー、なんかねぇ、エルちゃんの笑顔が減ったなぁって思って。振り返ってみても、はしゃいでる時が少なくなったし」
グラス「お勉強に関してもそうです。エルは地頭が良いので先生の言う事をちゃんと聞けば分かるでしょうけど、まず集中が続かないじゃないですか。それなのに今日…いえ、最近はよそ見すらしません。先生だって驚いてましたよ」
エル「ふむ…」
キング「実際の所、エルさんはどうなの?隠してるだけなら無理に聞かないけど、無意識なら……変よ?」
エル「…まぁ、あえて落ち着こうってしてる所はありマース。来週にはフランスに向けて飛び立つので」
スペ「!……そっか。早めに現地入りするんだよね」
エルの戦う舞台。フランスのパリ・ロンシャン競バ場で行われるG1凱旋門賞。挑戦する者は自国でトップレベル。一着を獲った者は世界一と呼ばれる程の名誉が与えられる。
他国では雰囲気やバ場の違いに慣れるためや、コンディションなどを整えるために少しの間、現地でトレーニングをするのが一般的だ。
エル「イエース!あの舞台で走る事を考えたら武者震いが止まらないんデェス!今からテンション上げても本番では疲れてしまうと思ったので、明鏡止水の如く過ごしてマシタ!」
キング・グラス・スカイ・スペ
『・・・・・・・・・・ハァ、』
グラス「エールーーっ」
スカイ「まぁまぁ、悩んでる訳じゃなくて良かったじゃん」
エル「心配おかけしてごめんなさいデェス!エルはとっても元気なのでノープロブレムデスよ!」
キング「それなら良いけど、レースの方の調子はどうなのよ。凱旋門賞はとんでもないのが出てくるみたいじゃない」
スペ「うん。ブロワイエさん…だっけ?7戦中1着が6回。2着1回。しかもG1を2勝してて、その2つは凱旋門賞と同じ2400m。それと前哨戦のニエル賞は1着。バ場状態に至っては良から重、不良場まで経験済み。おまけにロンシャン競バ場はブロワイエさんのホームグラウンド。まさに死角が全く無い。今1番ノリにノッてるウマ娘だね」
スカイ「く、詳しいね…調べたの?」
スペ「ううん。私のトレーナーさん、ウマ娘オタクだから喋ってるのが耳に入ってきちゃったの。ちょっと変な人だけど、ウマ娘の事を誰よりも知ってるから本当だと思う」
グラス「強敵…ですね」
エル「そんな事は百も承知!しかもそこまで強いとブロワイエだけをマークしたら良いだけ。むしろプラス材料デース!なーはっはっはっ!!!」
腰の位置に手を置き、ふんぞり返って笑うエルはいつも通りだ、と彼女達は安堵した。
そして杞憂だったとも思う。
レースにおける最も重要な事とは、レース当日にコンディションを整える事。
ウマ娘界の中で"仕上がり,,と呼ばれている。
筋肉の付き方。ベストな体重。精神状態。ウマ娘の誰もが、自分の最高の状態を作り、レースに挑む訳だが、
その中でも、エルコンドルパサーは群を抜いていた。
スペのように体重で悩む事なく。
スカイのように気分に左右されず。
キングのように熱くなりすぎず。
グラスのように冷静すぎる事もない。
エルは何事にも対応できる。言わば、"仕上がり,,のプロフェッショナルだ。
そんなエルの様子が変だと慌ててしまったが、そんな事はなかった。
ーーーっと。彼女達は、そう認識した。
ウララ「おーい!キングちゃーん。教科書返しに来たよー!」
エルの机に集まっていた彼女達は一斉にドアの方を見た。ウララはまるで自分の教室かのように堂々と入って来ている。
キング「っもう。教材を忘れるなんて、」
ウララ「えへへ。キングちゃんが入れ忘れるの珍しいよね!」
キング「本当なら!あなたが!自分で!準備するのよ!」
ウララ「だよねぇ…」
スカイ「いやいや、ママが一緒にいたら頼っちゃうのも無理ないって」
スペ「私の部屋にもキングママほしーなぁ」
グラス「アラームいらずでしょうね〜」
キング「ウララさんを甘やかさないでくれるかしら!?」
ウララ「ぁ、は、はは。ーーーあっ。エルちゃん笑ってたけど、何か楽しい事あったの?」
エル「ン?……イッヒヒー。みんなにエルが世界最強になるプロセスを教えていた所デェス!」
ウララ「おぉぉぉっ!さいきょー!」
エル「イエス!エルサイキョー!カモンっ!」
ウララ「エルちゃんさいきょー!」
エル「センキュー!!」
ウララ「海外行くんだもんね!応援してる、、、よ?」
エル「?。ウララ、どうかしマシタ?」
応援のためガッツポーズをしたまま止まってしまったウララ。何かを見定めるようにエルの顔をじっくりと見ている。
キング「ウララさん?」
ウララ「………うーん、」
キングの声にすら反応を示さないウララは、エルの顔を別の角度から見ようと首を傾げたり、後ろに下がっては、近づいたりして、落ち着いた所は、顔から僅か20cmの場所だった。
エル「う、ウララ?ちょーっと近いと思うのデスが…」
ウララ「………」
スカイ「やばくない?R指定行っちゃうんじゃないの!?」
スペ「せ、セ、セイちゃん?あ、R指定ってまさかっ」
スカイ「そう。そのまさか。……ちゅーだね」
スペ「ちゅうぅぅううっ!!?!?だっ、だめだめだめ!教室でなんて絶対に駄目だよ!」
スカイ「おんやぁ〜?教室以外なら良いって口振りだねぇ?」
スペ「!!な、ななななな、ッッッ!しっ、知らない!」
スカイ「知らないかぁ。そんじゃあ………教えてあげよっか?」
スペ「ふぇっ!?」
キング「ちょっとあなた達。ふざけるのは後に「そうですねぇ〜」、、ぇ、」
グラス「今はちょっとだけ………黙りなさい」
キング「」ビクッ
スペ・スカイ「「は、はいっ」」ビックゥゥゥッ!!!
グラス(・・・・・)
エル「ウララ?エルの顔に何かついてマス?」
ウララ「うーむ……………あ、」
エル「ケ?」
ウララは違和感の謎が解けたのか、エルから少し離れた。スッキリしたはずだろうに、ウララの顔は、誰にも分からないほどに、ほんの少しだけ陰りがさしていた。
エルは何の事だか問い詰めようと口を開いた時、休憩の終わりを告げる音楽が鳴りだす。
ウララ「鳴っちゃった…。それじゃあウララ戻るね!」
エル「あっ、ウララ……さっきのは一体…」
ウララ「ん、伝言があったの忘れてた!」
エル「伝言?エルにデスカ?」
ウララ「そうだよ!悟空さんがね。今日のトレーニング終わったら来るように伝えてくれって!」
エル「ケッ!?悟空さんが…エルに何の用デスかね?」
ウララ「さぁ?分かんない。ウララは今日トレーニング無いからいないけど、ちゃんと伝えたからね!それじゃあバイバーイ!」
キング「授業中、寝てはだめよー!」
ハーイ
スペ「それじゃあ私達も戻ろっか。エルちゃんは大丈夫みたいだし」
エル「ご迷惑おかけしマシタ!エルはご覧の通りデス!それよりは悟空さんの用事が気になってしまって、授業に集中出来ないかもデェス…」
スカイ「今が珍しいだけで、いつもじゃん」
エル「なにをー!寝てるスカイに言われたくないデェス!」
スカイ「ふっふーん!私は寝てても夢の中で復習してるからちゃんと覚えてるよ〜」
スペ「えぇぇぇえぇっ!それ本当!?」
キング「嘘に決まってるじゃない」
そろそろ本気で準備をしないとと、彼女達は各々席には戻る。その一足先に席に着いていたグラスは、何をする訳でも無く、ただボーっとしていた。
グラス(・・・・・)
ーーーーーーーー
エル「っどぅえええええ!!!まさかこんなに遅くなるとはっ。というより悟空さんはドコにいるの!?」
悟空の居場所を聞いていないエルはしらみ潰しに探すしかない。ターフ場はもちろん居ない。第一候補である食堂に向かったが居なかった。
このままでは悟空が待ちぼうけだ。ウララから直接聞こうと携帯を取りだした。
エル「っもー!みんなで話し合って悟空さんに携帯持たせまショウか」
後一回画面をタップしたらウララに繋がる。しかしその前にウマ娘の感覚は異様な空気を察知した。
ーーーーーーズズゥン。
エル(地震?………いえ…なんとなく息苦しさを感じマス。それにこの胸への圧迫感…)
エルは携帯をズボンのポケットにしまうと、圧力が強くなる方へ向かった。
逢魔が時の薄暗さ。冷たい風が木々を揺らし、バサバサと音を立てている。
その音を、風を、自然の声を、静かに佇む悟空は聴いていた。
ーーーーフゥ。
そっと目を閉じる。
悟空の身体が風に流されるように、ゆらりと動き、吐く息と共に拳を突き出す。
何かを感じるようにピタリと止まる。
ゆっくり突き手を戻すと、今度は逆の手で突いた。そのまま左足を地面に固定させると、右足を高く蹴り上げる。
非の打ち所がないほど綺麗なI字バランスをすると、その足を下ろして肩幅に開いた。
ザザーッ。
一際強い風が吹くと枯れた葉が空に舞う。ヒラヒラと導かれるように悟空の所へ落ちると、パァンッ!と甲高い破裂音と共に枯れ葉は弾け飛んだ。
その瞬間、悟空の目が開かれる。
悟空「ッッッッッッッッッだりゃぁああっ!!!」
さっきまでの舞踊ではなく、敵を倒すための突き。それは一撃では終わらず、左手や右足、左足、はたまた膝や肘を寸分の狂いなく連動させて打ち続ける。
悟空「だだだだだだっ!はあぁぁぁっ!!!」
タキオンからの助言で、オーラがくっきりと見える気功波は使わないようにしている。音も鳴るし目立ってしょうがないからだ。
だが気功波無しで、仮想組手だけだと限界はある。
だからこの世界での修行のお供は"空気,,しかないのだ。
悟空「ふっ!!!!!」
右足を下から蹴り上げるように振り抜くと、すぐに悟空は高速移動で10m先の所まで回り込んだ。
腰を落とし腕をクロスさせていると、"空気の塊,,が直撃して少し体がのけ反った。
悟空は空気を叩く事により発生する衝撃波を利用していた。
これならば色は無い。"ただの,,空気だ。傍からでは何も見えないだろう。
しかし"ただの,,と言うほど普通でもない。その威力は常軌を逸し、前に悟空はヘマをして木を一本吹き飛ばしている。
バァンッ! ズシャッ! ドゴォン!
1人キャッチボールのように空気を叩いては受け止めてを繰り返していると、そのスピードは徐々に上がり、音だけが響いて悟空の姿はいくつもの残像を残すほどに速くなっていた。
それが30分くらい続き、張り詰めた"気,,を解いた。
悟空「ーーーーハァ、やっぱ物足りねぇな。……タキオンって重力室作れねぇんかな…」
それは悟空の独り言。
そして次は話しかけた。
悟空「すまねぇ。待たせちまったな」
エル「…………エル、参上!!!」
離れた木の陰からエルが飛び出す。
悟空「オッス!」
エル「コンバンワデェス悟空さん!いやー、さすが悟空さん!素人目から見ても熟練された動き!強大な力だけでなく、技術も極めているのが分かりマス!思わず見惚れちゃいマシタ!」
悟空「ははっ!サンキュー。…そういやオラもレース見てて見惚れる時があんなぁ」
エル「ケ?悟空さんからしたら遅くないデスか?」
悟空「速ぇ、遅ぇじゃねぇさ。なんつーか、カッコいいと思うぞ」
エル「ほぇー、悟空さんもそんな事考えるんデスねぇ…」
悟空「まぁな。んで、エルはどうしたんだ?」
エル「ケ?どうしたとはワタシのセリフなのデスが」
悟空「?。オラを探してたんじゃねぇんか?」
エル「探してマシタよ……悟空さんが呼んでるってウララに言われて」
悟空「え、オラが?・・・・・言ってねぇな」
エル「???そう、デスか…。どういう事なんでショウ…」
悟空「んー、ウララだし何か間違えたんじゃねぇか?それよりそっちの調子はどうなんだよ?来週だろ。行くの」
エル「そりゃあもちろん絶好調デース!でも昂る感情を抑えてたらスペちゃん達を心配させてしまったみたいで、エル反省中デース…」
悟空「まぁ精神統一は周りから見りゃあ、ただボーってしてる、だけ、、、、ん?」
エル「どうかしマシタ?」
悟空「んーーー、」
悟空はウララと同じように、角度を変えてエルを見ている。
エル「ケーッ!またこれデスか!?エルの顔に何かついてるなら言ってくだサイよー!」
悟空「…ついてるわけじゃねぇけど、、、」
悟空「おめぇ……何を怖がってんだ?」
エル「・・・・・えっ、いきなり何を、」
悟空「おめぇの顔…どこか前のウララに似てる。あそこまでは酷くねぇけどな。それに"気,,だって安定してねぇ」
エル「そんなっ!エルは大丈夫デス!何かの間違いじゃ、」
悟空「なら何でそんなに震えてんだ」
エル「ッ!」
悟空の指摘通り、エルの手は小刻みに震えていた。押さえ込もうとしても何も変わらない。エル自身ですら気づかなかった本心に動揺を露わにした。
エル「っ!なんで、、、どうして止まってくれないの!?」
悟空「!…エル、落ち着け」
エル「ワタシは結局何も変わってなかったっ。これ以上弱くなったらエルは……エルはッ!」
悟空「エル…」
エル「もう、みんなと走れな……!」
エルは俯きながら口を閉ざす。
今はすっかり辺りは暗くなったはず。それなのにエルの視界は明るく光っていた。
"ポワァァァ,,っと音がする方に顔を向けると、悟空の両手の間に小さな輝きが存在していた。
エル「……………キレー、デス」
悟空「そんでこれをこうすっと、」
悟空はエルの全身を覆うように、光を纏わせた。
エル「!凄い…暖かい。…とても落ち着きマス」
悟空「だろ?オラ達は"気,,を武器にして戦ってっけど、こういうのも悪くねぇな。………なぁ、エル。何を焦ってんか知らねぇけど、オラはいつだって力になんぞ」
エル「悟空さん…」
エル達は近くにあるベンチに座ると、途切れがちに口を開いた。
エル「え、、と、何と言えば良いのか……本当にさっき初めて気づいた事なので、、、」
悟空「おめぇが怖がる程強ぇ奴なんか?」
エル「…自分で言うのは情けないデスが…相手が強くて怖いってよりも負ける確率が高くて怯えてるって感じデス」
悟空「・・・おめぇ、さっき自分が弱ぇみたいな事言ってたな」
エル「……タハハ。勢い余って言い過ぎちゃいマシタね。……悟空さんには全部お話しシマス」
そう言って、自分のトレードマークであるマスクを外した。
悟空「それを取った所見んのは初めてだ」
エル「そうでショウね。これはワタシのパパから譲り受けマシタ。そして……臆病なワタシを隠すための物デス」
悟空「臆病?…エルがか?」
エル「あはは、…見えマセンよね。ワタシの小さい頃は怖がりだったんデス。そんなワタシにパパがマスクを付けてくれると、勇気が湧いたんデス。
マスクを付けているエルは最強!って。
そのお陰で激戦区である中央トレセン学園で走ってこれマシタ。でも同時に思ったんデス」
悟空「・・・・・」
エル「弱い自分を乗り越えもせず、マスクで隠しているワタシは世界最強になれるのか、と」
悟空は口を挟まず、続きを促した。
エル「ワタシだけがズルをしてる。スペちゃんやグラス、キング、スカイはインチキなんてしてない。ウララなんて恐怖を乗り越えたんデスよ?…みんなエルとは大違い。世界最強になるなんて言っても、エルは嘘つきなんデスよ…」
悟空「ズル、か…」
悟空の脳裏にはエルがトレーニングに励んでいる所が浮かんだ。
練習後にヘトヘトになりながら歩く所。熱意が伝わる程の併走。レースだって見た。それに自身が修行だって付けた。
そこに一度足りとも妥協して終わる事はなかった。いつだってエルは最後までやり遂げていたのだ。
悟空「なぁ。そのマスク、オラが付けても強くなれんのか?」
エル「…あはは!それは無理デース。至って普通のマスクなんデスから。強さを追求する悟空さんらしいデスけどね」
悟空「ふーん。……エルって今体力残ってっか?」
エル「ケ?ま、まぁ。残ってマスけど?」
悟空「なら、オラに付き合えよ!ちょっとだけ遊ぼうぜ!」
エル「???」
バシィン!
心許ない街灯の下で悟空はエルの拳を受け止めていた。
悟空「うっし。良いパンチだ!ほれ、次打ってこい」
そう言うと、エルはしっかりと悟空を見たまま、握った左手を突き出した。
それを悟空は当たる瞬間に手を少しだけ引き、クッションをつけて受け止める。
身に怪我をさせないように、エルに返るダメージをなくすためだ。
エル「やぁっ!」
元々格闘技に興味のあったエルは夢中になり、悟空に言われずともコンビネーションを繰り広げる。
一歩も動かず受け止める悟空にムキになり、エルは腰を落としてウマ娘の本領である蹴りを脇腹目掛けて振り回した。
悟空は躱される方が骨や靭帯に悪い事を知っており、やはりこれも、腕を立てて受け止める。
悟空「っ……ひひっ。さすがはウマ娘だ。力つえぇなぁ!」
エル「悟空さんこそ!一本くらいは入れマァス!」
悟空「そいつはどうかな?今度はオラの攻撃を止めてみろ!」
悟空は肘を引いて、予備動作たっぷりの動きで突き出した。
狙うはエルの胸元。それをエルは腕を出してガードしようとするが、当たる前にピタリと止まった。
エル「あれ?」
悟空「エル。その止め方はダメだ。やるなら払うようにしねぇとな」
エル「でも悟空さん、さっきこうやってませんデシタ?」
悟空「オラは頑丈だからな。これは骨で止めてんだけど、鍛えてねぇと折れちまう。真っ直ぐの動きは横からの衝撃に弱いから、オラの攻撃は払うように叩けば良い」
エル「ナルホドォ〜。悟空さんもう一本!」
悟空「うっし!行くぞー!」
エル「ヘーイ!」
悟空は口下手だ。言いたい事はあっても上手く言えない。その事は自身でも自覚していた。
だから悟空なりのコミュニケーションとして組手を教えたが、これが意外とエルに合っていた。
肉体がぶつかり合う音。一旦止まっては適切な動作を教え、それがいつしか笑い声だけになっていた。
エル「ハァハァハァ…疲れマシタけど、とっても楽しかったデェス!」
悟空「オラも楽しかったぞ!付き合ってくれてあんがとな!」
エル「エルの方こそ……って、悟空さんすっごい笑顔!」
悟空「ははっ!だってこの世界に来て初めて組手したんだぞ?オラだって嬉しくなるさ!」
エル「悟空さんの好きな事デスもんね。大した事出来ませんけど、アレくらいでよければ付き合いマスヨ!」
悟空「おっ、そりゃホントか!ぃやったぁあ!」
エル「フフッ。悟空さん子供みたいデース」
エルは慈愛に満ちた顔をすると、空を見ていた悟空はエルの顔をじっと見た。
エル「………また怖がってる顔してマスか?」
悟空「ん?いや全然」
エル「え、」
悟空「おめぇ、今でもマスクしてねぇと不安か?」
エル「っ、……不安デス。アレがないとエルは弱いままだから…」
悟空「それは小せぇ時の話だろ?今は成長してんじゃねぇか。デカくなってからマスク取った事あんのか?」
エル「……いえ、まだ…。いつかは外さないといけない事は分かっているんデスけど…」
悟空「いや外す必要はねぇと思うぞ?」
エル「え?」
悟空「マスク付けて能力が上がるならともかく、エルだけの心が安定するだけのもんだ。
そんなのズルじゃねぇ。マスクの力じゃなく、おめぇだけの力でしかねぇんだ」
エル「………そう言っていただけると嬉しいのデスが、」
悟空「すまねぇな、エル」
エル「悟空さん。何で急に謝って、、、」
悟空「ほら。これ返す」
エル「返すって………ッケ!?エルのマスク!!?」
エルは顔をペタペタと触りまくるがマスクは無い。
悟空の手に持つマスクがさっきまで装着していた物だと判明した。
悟空「いやー!エルがあんまりにもマスクマスク言うもんだから、組手の最中に取っちまった!」
エル「取ったって、、全然気付きマセンでしたけど!?それになんて事するんデスかっ!それが無いとエルはっ、」
悟空「強ぇまんまだった」
エル「ぁっ…」
悟空「おめぇが攻撃してる時も、オラのやつを受け止める時も、コツを聞いてる時も、おめぇの目は生き生きしてた。チカラ出すために声も張って。そんな奴、弱いとは言わねぇ」
エル「悟空さん…っ、」
悟空「良いじゃねぇかマスク付けてれば。大切なもんなんだろ?外さなくて良い。それともエルは本心を隠して、他の奴に嘘ばっか言ってんのか?」
エル「言って…ない…デス…。エルの友達は…みんなの前では…ずっーと本音デシタっ」
悟空「なら気にすんな!マスク付けたまま世界最強になって来いエルコンドルパサー!」
エル「っ、ごく、さ、んっ……悟空さん!」
エルは悟空に飛び掛かると胸元に顔を押し付けた。
涙を流しているのだろう。
悟空は胸元に湿り気を感じると、エルの頭を撫でた。
悟空「凱旋門賞。これで戦えるな!応援してんぞ!」
エル「うぅぅぅぅ!……客席まで来てくだサイ」
悟空「客席かぁ。たづな許してくれっかなぁ。……まぁいっか。どこでも行ってやっから。……もう大ぇ丈夫だな?」
エルは一回頷くと、飛び跳ねるように後ろへ行き、拳を天高く突き上げた。
エル「ハイ!最強、無敵、勇敢なウマ娘はこのワタシ!エルコンドルパサー!世界最強の座を奪いに行ってきマス!」
悟空「おう!やってやれ!」
エル「それじゃあ悟空さん!明日はオフなのでもう一回組手しまショウ!」
悟空「良いんか!?んじゃ、いっちょやっか!」
晴れやかな顔をして拳を作り、悟空とエルは同時に動いた。
それを離れた場所から見てる二人のウマ娘。
ウララ「結局エルちゃんは自分でも気づかないうちに溜め込んじゃったんだね」
グラス「・・・・・ウララちゃんは知っていたのですか?」
ウララ「エルちゃんの事?」
グラス「はい。私や他のみんなも恐らく気づいていませんが、ウララちゃんは多分、あの時すぐに気付きましたよね?」
ウララ「……そうだね。何となく…鏡で見たウララに似てたから…でも感覚だけしか分からなかったから、悟空さんに任せちゃった」
グラス「悟空さんにも言わなかったのは、杞憂で終わるならそれでいい。という事ですか」
ウララ「"きゆう,,ってなぁに?」
グラス「……取り越し苦労。勘違いみたいなものです」
ウララ「ほぇー。うん、そうだよ。エルちゃんに何かあったら、悟空さんは"気,,の変化で分かると思って」
グラス「……エルは水臭いです。少しでも重荷を分けてくれれば力になれたのに」
ウララ「……意地、じゃないかな。自分の嫌な所…好きな人には見せたくない、かも」
グラス「それが当時、キングちゃんに話さなかった理由ですか?」
ウララ「…………グラスちゃんのいじわる」
グラス「ふふっ。ごめんなさい。…でも悟空さんに今回も助けられてしまいましたね」
ウララ「そうだねぇ。…いつか恩返ししたいなぁ」
グラス「ですねぇ」
ウララ「あ、一つだけ言いたいんだけど、」
グラス「なんです?」
ウララ「ウララを連れてくるのは良いけど、誘拐みたいにするのやめてね?いきなり変なの被せられて、前見えなくなるし、怖かったんだから」
グラス「……申し訳ありません」