孫悟空とウマ娘   作:猫ネコ

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長くなり申し訳ありません。


注意
・捏造に捏造を盛りました。
・LANE=LINE
・駿川たづな=トキノミノル






静まり返った秋の天皇賞 ー 後編 ー

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン「しかし材料がまるで足らんな」

 

ウララ「ざいりょーって?」

 

タキオン「ただ全力で"気,,を注ぎ込めば良いと言うわけではない。キャパオーバーすればスズカ君の脚を破壊しかねん。まずは実験用のネズミが必要だ」

 

ウララ「ヒッ…」

 

タキオン「そして、それ以上に必要なのが、カルテだ」

 

ウララ「かる、て?」

 

タキオン「ああ。スズカ君の脚の診療経過記録。怪我の全貌を見なければ、じっけn………治療に取り組めん」

 

スカイ「カルテかぁ…。ルドルフ会長に訳を話して、とかどうかな」

 

タキオン「個人情報プラス医療機密書類だ。会長と言えども絶対に無理だろうな」

 

エル「それならチームスピカのトレーナーに頼めば!」

 

キング「無理ね。カルテは手に入るかも知れないけれど、こちらの詳細を話すことになる」

 

スペ「だよね…。……?…悟空さん?」

 

悟空「…………、」

 

 

明るい未来への活路を見出せたはずだが、悟空の表情は晴れないままだ。

 

 

キング「どうかしたの?」

 

悟空「………1人。話しを付けておきてぇ」

 

 

悟空はそう言うと、開けっぴろげの入り口を見た。

 

 

悟空「たづな。おめぇはどう思う」

 

エル「え?たづなさんって、」

 

 

ここにはいないはずの名を語りかけるように呼んだ悟空。悟空の視線を辿って入り口へと目を向けると、駿川たづなが現れた。

 

 

たづな「………」

 

スペ「たづなさん!?」

 

グラス「一体、いつから…」

 

 

たづなは誰の声にも答えない。

無表情のまま、悟空だけをただひたすらに見ていた。

 

 

悟空「……何か、言いたい事あるだろ」

 

 

真剣な声色。真剣な眼差し。

いつもの2人とは思えないほどにピリついた空気。その雰囲気は宥めようとするスペ達をも黙らせる。

 

 

たづな「…………貴方はこの世界に、……ウマ娘にどこまで関与するつもりですか」

 

悟空「どこまでってのは?」

 

たづな「…複雑骨折、繋靭帯炎。ウマ娘が怪我で走れなくなる数は年間を通して少なくはない。……貴方が助けるのはサイレンススズカさんだけですか?貴方の周りにいるウマ娘だけを優遇するつもりですか?」

 

悟空「…オラの事を知られたくねぇって言ったのは"おまえ,,だろ」

 

たづな「ええ、そうです。だからサイレンススズカさんだけを治すとなると、………道半ばにして引退したウマ娘が報われません」

 

 

どこか責めるような口調。

それに反応したのはスペだった。

 

 

スペ「ッ!!じゃ、じゃあたづなさんはスズカさんの事、「スペ」…!」

 

 

たった2文字だけで声だけでなく、動きまでも止められてしまう。

悟空の声もそれほどまでに真剣だった。

 

口を紡ぐスペを宥めるのはウララだ。

これまで悟空の1番近くにいた彼女は、この話し合いに口を挟んでは駄目だと直感的に察していた。

 

ほんの僅かに眉を顰めて悟空が口を開く。

 

 

悟空「たづな。…おまえはスズカを治すのは反対だって言いてぇのか」

 

たづな「いいえ。私が言った事に貴方が何を考えるのか。その答えを聞きたいだけです」

 

悟空「そんな事聞いてどうする」

 

たづな「…………」

 

 

どこまでもたづならしくない。

無言も。圧力も。…早く言えと催促する視線も。

 

 

悟空「……オラに出来る事があるなら何でもするつもりだ。…けど、怪我した奴を探してまで治すつもりはねぇ」

 

たづな「!………酷い人」

 

悟空「オラはずっとそうさ。これまで色んな戦いがあったけど、最初から全員助けれるとは思ってなかった。それどころか、生かしといたらヤバい奴だって、オラがもう一度戦いたいから逃した事だってある。……自分勝手って何度も怒られた」

 

たづな「…だから今回もその流れで助けると?」

 

悟空「そうだ。おまえが何を思ってんのか知らねぇけど、可能性があんのに黙って見てる選択肢はオラにはねぇ」

 

 

 

 

悟空「そして、何とかしてやりてぇって思う気持ちは、おまえも同じなはずだぞ!ーーたづな!!」

 

 

室内でそよ風が舞う。悟空の"気,,によって吹いた風だ。

悟空は少しだけ怒っていた。

誰よりもウマ娘の事を考えていたはずの彼女が、なぜ反対するような言い方をしたのか。

 

要領は得ないままだが彼女の名を呼ぶと、一呼吸置いて懐からハンカチを取り出した。

 

 

スペ「た、づなさん……?」

 

 

困惑するスペをよそに、たづなはハンカチでスペの目元を優しく拭う。

 

 

たづな「怖がらせてしまい申し訳ありません」

 

 

どうぞ…と、ハンカチをスペに渡す。

 

 

スペ「あ、、ありがとうございます。………その、たづなさんは、スズカさんを治すの……!ぁ、」

 

 

ポン…ポン…。

頭を温かい手が触れる。

沈んでいた顔を上げると、そこにはいつも通りの笑みを浮かべたたづながいた。

 

 

たづな「もちろん大賛成ですよ。ですが、走れなくなったウマ娘が少なくないのは事実。その考えを聞きたくて試しただけですから」

 

悟空「!……何だよそうだったんかぁ。オラとした事がすげぇ焦ったぞ!」

 

たづな「ふふっ、貴方の場合は本気に見せないとのらりくらりと躱されそうだったので、つい」

 

悟空「タチ悪ぃなぁ」

 

たづな「お互い様でしょう」

 

 

さっきまで漂っていた殺伐とした雰囲気は消えている。

不安な表情で見ていたグラス達も自然と落ち着きを取り戻していた。

 

 

グラス「あの……、話しを戻しますがカルテはどうしましょう」

 

たづな「それについては私が何とかします」

 

キング「え、たづなさんとはいってもさすがに…」

 

たづな「ふふふ、大人になれば色々と出来るんですよ」

 

 

目を細めるたづな。ほんのりと大人の黒い部分を垣間見たキングはぎこちない笑みを返す。

 

 

たづな「アグネスタキオンさん」

 

タキオン「何です?」

 

たづな「カルテを入手次第お渡ししますのでこの部屋で待機していただいても良いですか?寮長には私が話しをしておきますので」

 

タキオン「!……分かりました」

 

 

シュン。

 

 

タキオン(よしっ!合法的に研究室に入り浸れるぞ!)

 

 

悟空「ーーーーって、思ってんぞ」

 

タキオン「……は?」

 

たづな「あらあら、…アグネスタキオンさん?」

 

タキオン「ヒィッ!、これは違っ、そ、そそ孫くん!高速移動使ってまで何をしているんだ!反省したまえ!」

 

悟空「よーし!おめぇ達!みんなでスズカの事助けるぞおおお!」

 

『おーーー!!!!』

 

タキオン「おー!…じゃない!私の話しを聞けぇぇええ!」

 

 

 

『あはははははっ!!!!!』

 

 

 

 

日常の笑い声に包まれ、一触即発だった雰囲気は霧散した。

 

 

 

ウララ(……悟空さん?)

 

 

 

ただ1人の弟子に違和感を残して。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

  

 

それから3日後。

 

 

 

スペ「スズカさーん!こんにちはー!」

 

 

病室の扉をあけながら開口一番に元気な挨拶。

 

 

沖野「スペ。病院なんだから静かにな」

 

ゴルシ「そうだぞスペ。いくら1人部屋だとしても常識ってのがあるからな」

 

スペ「えへへ、すみません」 

 

テイオー(ゴルシが言うな!…って言いたい)

 

ゴルシ「だめだ」

 

テイオー「あはは、やっぱり?………え?」

 

 

 

スズカ「こんにちは。トレーナーさん、みんなも」

 

 

落ち着いた声。艶のある長い髪。

ベッドに座っているスズカは笑みを浮かべた。しかし左足は宙吊りに固定されている。

 

 

沖野「ようスズカ。その、調子はどうだ?」

 

スズカ「大丈夫ですよ、トレーナーさん。みんなもこうして来てくれるので寂しくないですし」

 

沖野「そ、そうか。それなら良いんだ…」

 

 

ゴルシ「…見てくれテイオー。これがトレーニングに1番集中出来てなかった男の姿だ」

 

テイオー「すごく……かっこ悪いです…」

 

沖野「なっ!お前ら!?」

 

スズカ「そうなの?」

 

テイオー「ウン!タイム測ってる時とかボーってしてるし」

 

ゴルシ「間違えてスズカの名前を呼んだ時は末期だと思ったな」

 

テイオー「その時のみんなと言えば、」

 

ゴルシ「青汁飲みながらシュールストレミングを開けた時のような顔してた」

 

沖野「やめろやめろ!お前らトレーナーいじめてそんなに楽しいか!?つーか、え?…そんな、史上最大級の酷い顔してたのか…?」

 

テイオー「うん」

 

ゴルシ「悪いな。とても耐えれなかった」

 

沖野「……スズカ、頼む。早く帰って来てくれ。スピカには良心のある奴が必要だ。…主に俺のために」

 

ゴルシ「んだぁっ!?アタシらじゃ不満だってのか!あぁん!!?」

 

テイオー「そーだ!そーだ!ゴルシはともかくボクは良い子って言われてるモン!」

 

ゴルシ「テイオー………おまえ、そこで裏切んのかよ…」

 

テイオー「だって事実じゃん」

 

ゴルシ「頼むスズカ。早く帰って来てくれ…。スピカには天然ボケのスズカが必要なんだ…。主にアタシのために」

 

沖野「そりゃあスズカを天然ボケって言うやつはお前くらいだろうよ」

 

ゴルシ「だって事実じゃん」

 

スズカ「ふふっ、何だか納得しづらいけれど、天然さんならスペちゃんがいるじゃない」

 

ゴルシ「え?天然……なんだって?」

 

スズカ「へ?え、、と、天然、さん……?」

 

ゴルシ「さっきアタシは天然さんなんて言ったか?もうちょい違う言葉だったような…」

 

スズカ「ぁぅ…」

 

ゴルシ「んー?スペが天然……なんだってえぇぇ?ほら、せーの?」

 

スズカ「ぅぅっ、」

 

テイオー「ちょっとちょっとぉ!スズカに変な事言わないでよね!スペちゃんが黙ってないよ!」

 

スペ「…………」

 

ゴルシ「黙ってっけど」

 

テイオー「もおおおっ!スペちゃん!!」

 

スペ「〜〜っ!だ、大丈夫です!私出来ますから!」

 

ゴルシ・テイオー「「何を?」」

 

沖野「ハァ、…まーたおかしくなっちまったよ」

 

スズカ「この数日間来ていた時は普通だったけれど…」

 

 

そう。スペは、タキオンの所で話しをしてから毎日来ていた。

全てはスズカを支えるために。

けれども彼女は弱音を一切吐かないのだ。逆に心配しているコチラを宥める様子。

せめて心配をかけまいと明るく振る舞って彼女を笑顔にするが、帰宅する時病室から出ると聞こえてくるのだ。

ーー彼女の啜り泣く声が。

"何で,,、"まだ走りたい,,……そんな声が。

スペはそれをドア越しに聞き続けた。分かち合えなくとも、彼女の思いだけでも受け止めようと。

涙をこらえ、歯を食いしばりながら。

 

 

だが、ようやく"その時が来た,,

 

 

スズカを治すため、タキオンが推論を導き出したのだ。

 

 

早速、今日悟空とタキオンがスズカの病室を訪ねる。それも面会時間や食事が終わってから消灯までの間。誰も来ない時間を狙って来るのだ。

もちろん瞬間移動で。

驚かせてはいけないからと、スペの口から伝える事になっていたが、

 

 

スペ(スズカさんの複雑骨折を悟空さんが治しに瞬間移動して来るから待っててって?……みんながいるのに言える訳ないじゃん!!)

 

 

誤算があった。

沖野達とは一緒に来た訳ではなく、病院前で鉢合わせしてしまったのだ。

この状況下で説明するのは不可能。しかし、スペに託された皆の想いや、ちゃんと伝えるように…と、グラスから念を押された重圧が、スペに"焦り,,という感情を引き起こさせていた。

 

 

スペ(ぁー……あぁあぁぁぁあ………)

 

 

もう携帯で良いかな。口頭じゃなくても、LANEで細かく説明すればよくない?……そう思っていた時だった。

 

 

テイオー「ーーーーースペちゃん!」

 

スペ「ていおーさん?」

 

ゴルシ「さすがに固まりすぎだろ。そろそろ帰るぞー」

 

スペ「はえ?も、もう帰るんですか!?」

 

沖野「俺達がいたらスズカも休めないだろ。気になるんならまた来れば良いさ」

 

スペ「……え、へへ。そぉぉれもそうですねぇぇぇ」(なぁに言っちゃってるのぉぉぉお!!!)

 

スズカ「いつでも来て良いからね。でも練習はしっかりね?」

 

スペ「はい!」(じゃなーい!スズカさぁん!!今日の夜に戦闘民族の方が来ますよーっ!)

 

 

ただ一言で良い。

 

 

沖野「そんじゃあ帰るけど、何かあったら連絡してくれ。暇つぶしでも良いからな」

 

 

私達が信じる"あの人,,が治しに来てくれる…と。

 

 

スズカ「はい。ありがとうございます」

 

 

だからスズカさんも諦めないでほしいと。

 

 

ゴルシ「とりあえず、おはようと、こんにちはと、おやすみぐらいはやってくれ。じゃないとソイツ寝不足になるから」

 

テイオー「そうそう!ボク達もトレーナーの憂いに帯びた顔とか見たくないしね〜。……いや、本当に」

 

沖野「俺が悪かったからまじで勘弁してくれ…」

 

 

 

言葉に出来ずとも伝える方法があるはずだ。

 

 

 

スズカ「じゃあね、またね。スペちゃん」

 

スペ「…………スズカさんっ!!!」

 

スズカ「!!? すぺちゃん?」

 

 

病室に響く声。

スペは、驚愕に染まった目を向けられながら、全ての意味を込めて、

ーー右手の親指を立てた。

もう大丈夫。よく頑張った。

そんな時に悟空はこのポーズをしていた。だから真似をした。ただそれだけだ。

 

 

テイオー「す、スペちゃん……?ドーシチャッタノ?」

 

ゴルシ「テイオー。お前が理解するにはまだ早かったな」

 

テイオー「へ?ゴルシは分かるの?」

 

ゴルシ「ああ。これは男の中の男だけが通じ合えるポーズだ」

 

テイオー「……そういう事ね。だから、こんなに一緒にいるのにボク達全員何も通じ合えてないんだ」

 

 

 

 

スペ「……スズカさん」

 

スズカ「スペちゃん…」

 

スペ「また明日!」

 

スズカ「あ、うん、…また明日」

 

 

混沌を置き去りにしてスペが病室から出ると沖野達も後を続いた。

1人静かで異様な空気に取り残されたスズカ。

 

 

スズカ(スペちゃん。……何だったのかしら…)

 

 

スペの想いが伝わってない事は言うまでもない。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

ー 20:30分 ー 

 

 

 

スズカ「…………」

 

 

検査や食事などを終えてからの手持ち無沙汰な時間。ベッドに座りながら生気の抜けた目で、ぶら下がった脚を見ていた。

ギプスに覆われた脚。自慢の脚が見えなくなってから3日。

 

 

スズカ「……ねぇ、………もう走れないなんて事、ないわよね…」

 

 

答えてくれない脚へ、思わず問いかける。

トレーナーは必ず走れると言ってくれた。でも医師の言葉や症状を見る限り、とても自分の走る姿を想像出来ない。

 

 

スズカ「ッッッ!…………ふふっ」

 

 

視界がボヤけるのを感じて自嘲気味にわらう。

 

 

あれだけ泣いたのにまだ涙が出るのか……と。

 

 

 

それならいっそ枯れるまで泣こう。

今この場に心配をかけるヒトはいないのだから。ちょっとくらい理不尽な現実に怒っても良いだろう。

 

 

 

スズカ「っ、、ぅ、ぁっ……ック!〜〜っ、まだ走り足りないのにっ、壊れてんじゃないわよ!!……ばかぁ」

 

 

 

顔を手で覆っても隙間から流れる涙。

 

 

そこに。

 

 

 

風切り音を立てながら《ヒーロー》が来た。

 

 

 

悟空「よっ!」

 

スズカ「っ、……ッッッ!!?!?!?!?」

 

 

片手を上げて満面の笑みを浮かべる悟空。

一瞬にして涙が止まったスズカは、ついでに心臓も止まりかけた。

 

 

タキオン「やあやあ、遅れて悪かったねぇ。これでm」

 

スズカ「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

悟空・タキオン「「嘘だろ!!?」」

 

 

想定外のスズカの反応に悟空達は驚きを隠せなかった。

自分達が来る事は知っているのではなかったのか。

 

 

スズカ「こないでぇぇぇええええッッ!!!!」

 

タキオン「な、何でこんなにっ。スペシャル君が伝えてくれたはずじゃなかったのか!?」

 

 

※親指を立てて背中で語りました。

 

 

悟空「ヤベェ…。タキオン!誰か来る!」

 

タキオン「スズカ君の悲鳴に反応したか。ーースズカ君!私だ!アグネスタキオンだ!!」

 

 

ゆっくり説明している暇はない。

タキオンはスズカの顔を手で挟んで強引に目を合わせた。

 

 

スズカ「ふぇ、…?………はひひぉん?」

 

タキオン「そうだ!訳は後で言うから今だけは知らないフリをしてくれ!頼んだよ!」

 

悟空「タキオン掴まれ!」

 

 

タキオンは悟空に手を伸ばすと一瞬にして消えた。

 

 

スズカ「消えっ!!?」

 

 

困惑しながらも部屋中に視線を配るがどこにもいない。最初から存在していなかったかのように、気配そのものがなくなっていた。

 

……と、そこへ。

 

 

看護婦「サイレンススズカさんっ!どうかなさいましたか!?」

 

 

勢いよく飛び込んで来た担当の看護婦。

 

 

スズカ「ぁ、いや…………ゆ、夢が、」

 

看護婦「夢……ですか?」

 

スズカ「!…はい。ちょっと悪夢を見てしまって…。ご心配おかけして申し訳ありません…」

 

看護婦「い、いえっ、大丈夫ですよ。…サイレンススズカさんのように悪夢などで眠れない子もいます。心細くなった時にはすぐに呼んでくれて構いませんので、安静になさってください」

 

スズカ「はい。ありがとうございます」

 

 

そう言うと看護婦出て行った。

スズカは目を閉じて足音を聞いたが、周囲からヒトの気配が消えたのを感じた。

 

そして、入れ替わるようにまたやって来た。

 

"シュン,,

 

 

悟空「とりあえず平気みてぇだな」

 

タキオン「ふぅ。始まる前にゲームオーバーになる所だったよ…」

 

スズカ「タキオン………彼は、」

 

タキオン「ああ。紹介しよう。彼は…」

 

スズカ「……ゴクウサン」

 

タキオン「!……ふむ。知っていたか。スペシャル君からはどこまで聞いたかな?」

 

スズカ「え、スペちゃん?……何も聞いてないけれど…」

 

悟空「ん?何もって、今からする事とかもか?」

 

 

急に話しかけられたスズカは肩をビクつかせる。

 

 

スズカ「は、はい…」

 

悟空「おかしいなぁ。ちゃんと伝えたって言ってたのに」

 

タキオン「どうせ孫くんに似て杜撰な説明でもしたんだろう。最近のあの子はそういう所が目立って来た」

 

悟空「?…やよいにも言われたけど、あんまよく分かんねぇな」

 

タキオン「だろうな」

 

スズカ「あの……?」

 

タキオン「ああ、すまない。本題に入る前に、彼について簡単に説明しよう」

 

スズカ「ええ」

 

タキオン「彼は孫悟空。異次元の地球からやって来た宇宙人だ」

 

悟空「宇宙人っちゅーかサイヤ人だ」

 

スズカ「待って?」

 

タキオン「待たん。そして彼はハルウララをトレーニング指導しながら警備員として働いている」

 

スズカ「お願い。ちょっとで良いから話しを聞いて」

 

タキオン「キミが最後まで聞くんだ。彼が使う技は生命エネルギーを巧みに操る。その正体を"気,,と呼ぶらしい。この場所に来た技はスズカ君の"気,,を追って瞬間移動して来た」

 

スズカ「………っ…痛い…?」

 

タキオン「頬をつねるな。夢じゃない。他にも"気,,を利用して空を飛んだりテレパシーなどをしている。ちなみに素の力は、学園のウマ娘全員束でかかっても月とスッポン。どちらがスッポンかは言うまでもないな」

 

スズカ「タキオンってスッポンだったの?」

 

タキオン「落ち着いて聞いてくれ。彼の素性は学園の極々僅かしか知らない。必要以上に知れ渡ってはいけない存在だ。スズカ君にとっての親友がいようとも彼の事を話すのはやめてくれ」

 

スズカ「……親友、ね…」

 

タキオン「…………すまない。いらない気を使ったようだね」

 

スズカ「親友くらいいるわよ!」

 

タキオン「……ここからが本題だ」

 

スズカ「あ、はい」

 

タキオン「……………スズカ君。……自身の現状はどれほど把握している?」

 

スズカ「ッ!………私の口から言わせるの?」

 

タキオン「………把握ではなく、理解しているのか」

 

スズカ「………ええ」

 

タキオン「なら話しは早い。非公式なりに本人の許可が欲しくてね」

 

スズカ「…何の事?」

 

 

 

タキオン「このまま奇跡を信じて何もしないか。ーー失敗すれば怪物の脚、成功すれば本来の脚を取り戻せるが……どうする?」

 

 

 

スズカ「……………………え?」

 

タキオン「いやねぇ?折れた骨に"気,,という栄養を分け与えたら自然治癒力が常軌を逸すると考えて、ラットで試したんだ」

 

スズカ「え、栄養?それにラットって、実験用のネズミ…だったかしら」

 

タキオン「ああ。短い期間だったが結果を出せた。ちょっと不快に感じるかも知れないが、骨に異常のあるラットを三匹用意した。一匹は"気,,が弱すぎたのか今も治療中。二匹目は強すぎたのか発達した足で二足歩行をはじめた。そして三匹目が、ーー成功。完全回復した」

 

スズカ「! う、そ、、でしょ」

 

タキオン「私は実験に嘘を吐かない事は知っているだろう。まぁ、ラットに比べればスズカ君の患部は大きいし、症状は酷い。治るまでに時間がかかるだろうが、今よりは可能性を秘めている」

 

スズカ「………………治るの?」

 

タキオン「……分からん。あくまで可能性として、」

 

 

科学者たる者"絶対,,の言葉は言えない。だが、ーー代わるように彼が言った。

 

 

悟空「治すさ」

 

スズカ「ッ!!!」

 

 

その人は曇り無き眼で自分を見ていた。

おかしいと思った。

文字にしたらたったの4文字。話しで聞いただけの彼。散々説明してもらってもどこか胡散臭い"気,,。

素人の自分が見ても分かるほど、未来が消えた怪我。

 

それなのに何故だろう。

 

この人には抵抗もなく頼ってしまう。その上で、なんとかなるって思ってしまうのだ。

 

 

スズカ「ほん、とう……?わたしの…っ……あしは、なおるの?」

 

 

意地でもスペやチームのみんなの前では見せなかった涙が簡単に溢れて来た。

 

 

悟空「ああ。そのためにオラが来た。……今までよく頑張ったなぁ。もう耐えなくても良い。これからは前を見ろよ、スズカ」

  

スズカ「!……ご、くうさん。……おねがいしますっ。わたしはまだ、はしりたい。……トレーナーさんにもっ!私が走るところを見せてあげたい!」

 

悟空「おう!一緒に頑張ろうぜ!!」

 

スズカ「はいっ!」

 

 

タキオン(…全く。過度に期待を持たせる事は悪手でしかないと言うのに、……ハァ、失敗は許されない。実験開始だ)

 

 

     ・

     ・

     ・

 

 

 

 

 

ポワァァァァ…。

悟空の手から発する光がスズカの脚を包み込む。

 

 

スズカ「なんだか温かい。これが……"気,,」

 

 

今にも消えそうなほどの小さな光。

タキオンはストップウォッチを見ながら呟いた。

 

 

タキオン「…55………58.59……よし。そこまで」

 

悟空「……早くねぇか?」

 

 

一応、指示通りに"気,,を送るのをやめたが悟空は少し不満気だ。

 

 

タキオン「多少は早いさ。プラスになるよりはマイナスにして調整した方が良いからな」

 

悟空「?……??…へー」

 

タキオン「うん。分かってないな。孫くん風に言うとだ。骨は"気,,を食べて強くなる。だがお腹いっぱいまで食べてしまうと体調を崩しかねん。もしもそれ以上に食べさせてしまうと胃を破壊する。その容量を超えないために抑えているんだ」

 

スズカ「……先にお腹いっぱいにさせて、骨が好きな時に栄養を取り込む事は無理なの?」

 

タキオン「キミの体はパラメーターの振り分けが出来るのかい?自律神経系はどうにも出来ないだろう。それに、過度に"気,,を送り込んだ末に誕生したのが、二足歩行ラットだ。名前はゴチュウ」  

 

スズカ「そ、そう……」

 

悟空「そんで?明日からはどうすんだ?」

 

タキオン「今日の繰り返しだ」

 

悟空「そっか。んじゃ、スズカ。明日同じくらいの時間に来るから、もうビビるなよー」

 

スズカ「え、、あ、………帰ってしまうの?」

 

タキオン「………、」

 

悟空「ん?おう。用も終わったからな」

 

スズカ「……そうよね」

 

タキオン「ハァ、……スズカ君。この男と話したい事でも紙にまとめておきたまえ。明日からは毎日来るんだ。早い内に全部終わらせてしまうと、ネタが尽きてしまうぞ」

 

スズカ「!……うん」

 

悟空「?…何かよく分かんねぇけど、また明日な!」

 

スズカ「はい!よろしくお願いします!」 

 

 

満面の笑みのスズカ。

悟空は同じように笑って"親指を立てる,,と、その場から消えた。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

ー 学園の屋上 ー

 

 

タキオンを送り届けた悟空はその足で屋上に来ていた。

 

もっと詳しく言うと、屋上に"彼女,,がいるから足を運んだ。

 

 

悟空「ーーーっつー事でスズカの方は一旦落ち着いたぞ」

 

たづな「そうですか。それは良かったです」

 

 

駿川たづな。

遠くの方で鳴る雷の音を聞きながら、手すりに肘をかけていた。

 

 

悟空「おめぇがカルテ?ってのを用意してくれたお陰だ。サンキューな」

 

たづな「ウマ娘のためですからね。これくらいどうって事はないですよ」

 

悟空「そっか」

 

たづな「ええ。にしても、スズカさんはさぞ驚いたでしょうね。皆さんが数日かけて悟空さんの事を理解したのに、彼女は数分で非現実的な事を飲み込んだのですから」

 

悟空「ああ。困ってたけど、タキオンが頑張ってた」

 

たづな「ふふっ、そうでしょうね」

 

 

貴方は口下手ですからと、たづなは微笑む。

悟空はその様子を横目で見ると、また視線を前に戻した。少しずつ雨雲が近いて来ているのが見える。雨の匂いも感じた。

 

 

悟空「………………たづな、…本当におめぇはスゲェ奴だな」

 

 

それでも帰ろうとは言わず、悟空は口を開く。

 

 

たづな「いきなり何ですか?」

 

悟空「そんな完璧に"普通,,を演じる奴は初めてだ。ルドルフでさえ違和感があったしな」

 

たづな「…………申し訳ありませんが、話が見えません。それに、雨が降りそうなのでそろそろ帰りましょうか」

 

 

たづな自身気づいていないだろう。

ーー彼女の声色に冷たさが混ざっている事に。

 

屋上の出口へと踵を返すたづな。

ポツリ。

雫が額に当たる。いつの間にか雨雲が真上に移動して来たらしい。

そして、その拍子に目を瞑った瞬間だった。

 

 

たづな「……………そこを退いてください」

 

 

出口を塞ぐように悟空が立っていた。軽く拳を握りしめて。

 

 

悟空「……たづな。…スズカの事をタキオンの所で話してた時。オラは確かに感じたぞ」

 

たづな「………、」

 

悟空「あの日、おめぇはオラを憎んでいた」

 

 

確信を持って告げる。

だが、たづなは悟空の言わんとしている事を察していたのか、依然として変化はない。

 

 

たづな「………気のせいでは?」

 

悟空「悪いな。敵意や殺意、憎しみの"気,,はこれでもかと言うほどぶつけられて来た。……今更間違える訳がねぇ」

 

たづな「……でしたら、今は感じますか?」

 

悟空「その次の日は少しだけ感じていたけど、今は全くだ」

 

たづな「そうでしょうね。……それなら終わったも同然。後は時が経つにつれて忘れるだけです」

 

悟空「そうはいかねぇ。…あの日おめぇは言ったな?なにが、"オラの考えを聞くために試した,,だ。ーー道半ばに引退したウマ娘が報われない。あれはおまえの本心だっただろ」

 

たづな「ッ!!」

 

 

初めてたづなの表情が歪んだ。

ギョロリとひん剥いた目を見せると、すぐに目を瞑って静かに息を吐く。

 

 

たづな「…………悟空さん。もう終わりにしときましょう。過ぎた話です」

 

悟空「………………今の顔。昔にたくさん見た。……我慢させている顔だ」

 

 

悟空の脳裏に浮かんだ妻の顔。諦めたように息を吐く所まで同じだった。

 

 

たづな「!…貴方が相手です。苦労したんでしょうね」

 

悟空「ああ。本当にそう思う。だけど我慢してもらう以外に方法がなかったんだ。でも、今は違う。話せる事で楽になる方法があるはずだ。おめぇが憎しみを感じる程だ。……オラは一体、何をした」

 

たづな「…………さあ?」

 

 

そう呟いて歩き出す。

目を合わせず、悟空の横を通り過ぎるように。

 

 

悟空「待て!」

 

 

パシッ…と、たづなの腕を掴んだ。

 

 

たづな「…………離してください」

 

悟空「……あの時も言ったはずだ。オラに出来る事があんなら何でもするって」

 

たづな「っ、……貴方にも出来ない事だから話さない。そうは考えなかったのですか?」

 

悟空「!…まだオラは訳を知らねぇ。やってみなくちゃ分からねぇだろ」

 

たづな「は、ははっ、……そう。……そうですよね」

 

 

悟空の手を振り払い距離を開ける。だが出口に向かおうとはしない。

そこまで聞きたいなら言おう…と、たづなは薄い笑みを浮かべた。

 

 

たづな「では悟空さん。ーー今すぐ過去に行って私の脚を治して来てください」

 

 

外では取った事のなかった帽子を外した。

頭頂に現れたのは茶色の耳。その形は後ろ向きに倒れていた。

 

 

悟空「な、、に、、、っ」

 

たづな「どうしました?貴方が聞きたがってた事ですよ?」

 

 

言いながら、帽子を投げ捨てた。

少しの力を込めて叩きつけるように。

 

 

たづな「やってみなくちゃ分からない。もちろんその通りです。不可能を可能にして来た貴方ならやってくれますよね?」

 

悟空「そ、れはっ、」

 

たづな「ん?」

 

悟空「………………すまねぇ、無理だ」

 

たづな「ふふっ、そうでしょうね!」

 

 

明るい声。クスクス笑うと幼さが残る表情。

その反面で上昇する"気,,

 

 

たづな「あはは…は、…っ……ずるい…」

 

 

その"気,,は膨らみ続け、やがてーー爆発した。

 

 

 

たづな「ズルいんですよっ!!貴方達はッ!!」

 

 

 

彼女の声に対して共鳴するように轟く雷鳴。

ポツポツと降り続いていた雨は勢いを増した。

 

 

悟空「……たづな」

 

たづな「何が友達でありライバルですか!私の時はそんな事言ってる暇はなかった!骨折した時だって相談したり想いを受け止めてくれるヒトなんていなかったのにっ!!何で彼女達だけ全部揃ってるんですか!!!」

 

「私は散々我慢をしてきました!もう走る事は出来ないと聞かされた時なんて、抗うことすら許されなかった!そういう運命だったんだなって無理矢理思う事でしか自分の心を守れなかった!!」

 

「……それなのに……っ!」

 

「孫悟空!!貴方が現れた事で!忘れようとしていた気持ちを引き摺り出された!…"気,,を与えれば治るかも知れないですって?そんな事っ、簡単に受け入れれる訳ないでしょう!!」

 

 

悟空「!……だから、あの時、」

 

たづな「そうですよ!報われないウマ娘は私の事です!!」

 

 

激しい雨の中で怒りを露わにするたづな。

その瞳から流れるのは雨か涙かは区別がつかない。

たづなの長年ぶつける所がなかった怒りは更に勢いを増した。

 

 

たづな「どうする事も出来ないからって諦めてきた!歪んでても真っ直ぐ道を歩きたいからって耐えてきた!それが全部台無しだッ!貴方のせいで!!」

 

 

悟空との距離。僅か五歩の空間を埋めると、たづなは悟空の襟を握りしめた。

 

 

たづな「今更私の前に現れて何なんだ!」

 

 

胸の内に押し込んでいた黒い心。その封印を壊したのはこの人だ。憎い。……憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い…、

 

 

たづな「もっ、と早くにっ、私と会っていてくれたら!」

 

 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い……………心の底からそう思う、ーー自分が嫌いだ。

 

 

たづな「貴方がっ!私の手を取ってくれていたら!」

 

 

………ごめんなさい…、

 

 

たづな「私はもっと………戦えたのに…」

 

 

……………許して(たすけて)…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「……たづな」

 

 

たづなの肩に乗る大きな手。

 

 

悟空「ーーー怒るんじゃねぇぞ」

 

たづな「……え?」

 

 

夜の雨雲の下。照明のない屋上。

 

近づかなければ顔が見えない程の暗闇で、

 

 

ポワッと光が出現した。

 

 

たづな「これ、は……なにを、」

 

 

その問いかけには応えず、たづなから少し離れた悟空は、小さな光の球体を真上へ投げた。

その光の道筋を辿るように、たづなも見上げている。

ある程度の距離まで行くと見えなくなってしまったが、まだ悟空が手のひらを上に向けている所を見ると、光は存在しているのだろう。

 

 

悟空「ーーーーーーーーハァッ!」

 

 

空に掲げた右手を強く握った瞬間。

 

 

たづな「!…雨が、やんだ?……いや、」

 

 

厳密には止んでいない。

周囲に目を向けると、まるで雨のカーテンのように自分達だけを囲っていた。

 

どうやら真上だけの雨雲を飛ばしたらしい。

…そう結論付ける。

 

 

悟空「……無理矢理聞いといてすまねぇな。やっぱオラにはどうする事も出来ねぇ」

 

たづな「!……やめてください。謝らなければならないのは私の方で…」

 

悟空「そっか。なら他のを言わせてくれ」

 

 

「ありがとな」

 

 

たづな「え?」

 

悟空「あんな想いをしてまでウマ娘の事を1番に考えてくれてる。他の奴を見ていて嫉妬とかもあっただろうけど、それだけじゃあウマ娘を笑顔には出来ねぇ。ちゃんと大事に育てようって気持ちがみんなに伝わってんだ」

 

たづな「っ!そ、れは当然、です。皆さんには、幸せになってほしいので…」

 

悟空「オラも同じだ。アイツら、…ウマ娘達には悔いのねぇように戦ってほしい。…そんで、ウマ娘達とも同じ気持ちだ」

 

たづな「どういうことですか?」

 

悟空「ウマ娘達と同じ。オラも、おめぇには頼りにしてる」

 

たづな「!!!」

 

悟空「たづなが傍にいてくれるから前だけ見てられる。間違ったとしてもおめぇがいるから大丈夫って思っちまう。勇気を貰ってんのはウマ娘だけじゃねぇ。オラもだ」

 

たづな「悟空さん……」 

 

悟空「まぁ、何だ、なんて言えば良いのか知らねぇけど、……おめぇは強い!誰よりも強い!だから!これからも戦ってくれ!!」

 

たづな「………っ……クッ、…ふふっ。女性に対して強いだとか、戦えなどは褒め言葉になりませんよ」

 

悟空「ありゃ、そうか?」

 

 

後頭部をかきながら苦笑いを浮かべる悟空。

その大きく開いた胸元にポスリ…と、たづなの拳が乗せられた。

 

 

悟空「ん?」

 

たづな「……ねぇ、悟空さん」

 

悟空「なんだ?」

 

たづな「ーー"気,,の探知のやり方、教えて下さい」

 

悟空「えっ!本気かっ!?もちろん教えんぞ!それで鍛えればオラと組手を、」

 

たづな「組手はしません。"気,,を扱うではなく、探知の方法だけです」

 

悟空「えぇぇ、それだけ覚えてもしょうがねぇだろ」

 

たづな「大切な意味があります。以前侵入して来た悪質な記者の事を覚えてますか?」

 

悟空「ああ」

 

たづな「感情が"気,,に宿るなら、そういう人の"気,,は普通とは違うはずです」

 

悟空「まぁ、そうだな。……って、まさか」

 

たづな「はい。悟空さんがいなくなってからは私が学園を守ります。言わば私が悪質レーダー探知機ですね」

 

悟空「……なるほどな。でもそれなら修行して戦えた方が良いんじゃねぇか?」

 

たづな「いえ、それ以上の力は必要のないものまで引き寄せるかも知れません」

 

悟空「ははっ、否定できねぇな」

 

たづな「………悟空さん」

 

悟空「ん?」

 

たづな「貴方がいなくなったら、ちゃんと学園を守ります。なので…、」

 

悟空「………ああ」

 

たづな「それまでの間。スズカさんの事を…ウマ娘の事を。どうか、よろしくお願いします」

 

悟空「おう!オラに任せとけ!」

 

 









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