注意
・キャラ崩壊あり。
ー 前回のあらすじ ー
キングヘイロー(ふん。どうせ私に期待なんてしてないくせに)
グッバイヘイロー(ふん。生意気な子。………………楽しくやれているのなら好きにすれば良いわ)
悟空(……やっぱ似過ぎだよなぁ)
ーーーーーーー
11月上旬。
ほんのり冷たい風が吹き始め、薄手のアウターを羽織る人達が増えて来た今日この頃。
トレセン学園の門前にはチームスピカの面々が揃っていた。
スペ「あの、れ、連絡はまだ無いですか…?」ソワソワ
マックイーン「まだありませんわ」
ゴルシ「つーより、スペ。何分置きに聞くつもりだ?」
テイオー「病院を出たって連絡来てから3分間隔くらいで聞いてくるよね」
スペ「ううううぅぅ…、だって……」
スカーレット「気持ちは分かるわ。私もちょっと緊張してきたもの」
ウオッカ「だよな。………あのさ、本人の前じゃ言えないけど、おれ…、今でも信じれてねーんだ」
マックイーン「…………そんな事、全員が思っていますわ」
テイオー「うん…。……心の底から嬉しいって思うけど、それ以上に理解が追いつかないっていうか…」
スペ「…………………………………」
スカーレット「お医者さんだって何度も調べなおしたって聞いたわ。でも結果は全部同じ」
ゴルシ「……アレから半月くらいか。生涯歩く事すら危ういと言われ車椅子生活。それがものの数日で松葉杖…‥……ハッ…、もしかしたら宇宙人の仕業なのかもな」
マックイーン「なにふざけた事を………とは言えない。むしろそう言われた方が納得出来ますわね」
スペ「…………」
スペ(……大当たりです。宇宙人の仕業ですよ…)
先程までの不安が吹き飛び、スペは真顔で遠い景色を見つめた。
心を無に。そうしないとチームメイトに隠し事をしている罪悪感で押し潰されそうになるからだ。
というのも。
本日は、サイレンススズカの退院日なのだ。
タキオン、そして悟空から聞いていた途中報告。
1日の早朝と夜の合計2回。3分間"気,,を当て続けるようにしていたらしい。
さらには上半身は元気だからと、宙に浮いた悟空を持ち手のバーに仕立てて懸垂をしたり、腕立て伏せ、上体起こしなど、下半身を使わないトレーニングを悟空監視の元でやっていたとの事だ。
スペ(悟空さんにお風呂に入れてもらったと電話で聞いた時には反応に困ったけど…)
そこだけは深く追求して聞いてみたが、どうやら髪の毛を洗ってもらったらしい。
ガサツだと思っていたら丁寧で、ドライヤーの最中に思わず寝てしまったのだとか。
スペ(スズカさん楽しそうだったし、私としてもスズカさんが笑ってくれて嬉しいんだけど)
正直に言おう。
その時と同じテンションで帰って来られたら、このチームメイト達との寒暖の差で気持ち悪くなりそうだ。
スペ(ここは私が皆さんに元気を付けないと…!)
そう考えてスペは手を鳴らして注意を引こうと両手を広げた。
すると。
ゴルシ「ーーーうん、考えんのもメンドクセー!スズカが化け物並みの回復力があるってだけだ!」
テイオー「そーだよ!さっすがスズカだよねー!」
マックイーン「意地でも走るのという気持ちが起こした奇跡ですわ!同じチームとして祝いましょう!」
ゴルシ「よっしゃ!オメーら辛気クセー顔すんじゃねーぞ!スズカが車から降りて来た時が勝負だ!誰1人遅れんなよ!」
スカーレット「ええ!」
ウオッカ「任せとけ!」
スペ「は、はい!」(あれ!?私が1番引っ張られてる!!)
ーーピコンっ!
ゴルシ「ん?……………あっ、トレーナーから連絡来たぞ。そろそろ着くってよ」
スカーレット「ってことは…………………あれじゃないかしら?」
タイミングよく一台のタクシーが向かって来る。
他に車は無く、信号もない一本道。タクシーはあっという間に学園の前に停車した。
ーーガチャ。
ドアが開くと運転手にお礼を言う彼女の声。そして、先に降りるように告げるトレーナーの声がした。
スズカ「よ、いしょ…、……あら?……………ふふっ、お出迎えしてくれたのね」
ゴルシ「おうよ。そんで、せーの!」
『おかえりなさい!チームスピカへ!』
横1列に並び、清楚な振る舞いでお辞儀をする。
それはチームスピカが歓迎をする際に使う動作だった。
スズカ「ええ、………ただいま」
自然と笑みを溢すスズカの元にスペが近づいた。
スペ「スズカさん。荷物持ちますよ」
スズカ「ありがとうスペちゃん。まだ杖が慣れてなくて、助かるわ」
着替えなど私物の入ったボストンバッグをスペに渡す。
その時、会計を済ませたトレーナーがタクシーから降り立った。
沖野「今スズカが言った通りだが、日常生活を許されてもスズカは楽に動ける訳じゃない。お前達みんなでフォローしてやってくれ」
スペ「当たり前ですよ!私が付きっきりでお助けします!」
テイオー「熱意凄いね…」
ゴルシ「盲導犬ならぬ盲導スペだな」
スズカ「うふふ、頼もしいわ」
沖野「いや、みんなでな?スペがのめり込むと他の事が疎かになるから程々にしてくれ」
スペ「大丈夫ですよ!私だって限度は分かっていますから」
沖野「そうか?なら良いんだが、……とりあえず部室に行くか」
スペ「はい!それではスズカさん。手をどうぞ」
スズカ「手?……繋ぐって事かしら?」
スペ「はい!」
スズカ「でも、杖ついているから危ないわ」
スペ「だから私が杖の代わりになるんです。そんなのよりも丈夫ですから安心してください!」
スズカ「ええっ…!?」
沖野「ほらみろ!初っ端訳の分からん事を言い出した!」
スペ「訳分からんとは失礼な!私は本気です!」
沖野「尚更駄目だ!………スペ、お前はスズカのリハビリの妨げになるから必要以上に接するの禁止な」
スペ「!…そんなぁ…、スズカさぁん………」
スズカ「スペちゃん。私も、その……トレーニングがてら動きたいから、そっとしてくれると…ね?」
スペ「」
スズカ「スペちゃん…?」
スズカの手がスペの目の前を往復しようとも、視点が一向に動かない。
ゴルシ「心が真っ白な灰になって燃え尽きたとさ」ボソ
スカーレット「行き過ぎた手助けだったけど、本人に断られたらキツイわよね」ボソボソ
ウオッカ「スペ先輩、やっと会えるって楽しみにしてたもんな…」ボソリ
・
・
・
部室に向けて歩を進めるチームスピカ。談笑をしながらのんびりと歩いていると。
スズカ「あ…!」
カツカツ…と、杖の音がピタリと止まる。
スペ「?……どうかしました?」
沖野「スズカ。痛むのか?」
誰も彼も、へにょりと曲げた眉に不安そうな瞳でスズカを見つめた。
スズカ「い、いえ、足は全然問題なくて、………すみません。何でもないです」
沖野「……そうか。もし痛みが出ても我慢はしなくて良いからな。すぐに言ってくれ」
スズカ「はい。……………、」チラッ
またも鳴り出す杖の音。
スズカは誰にもバレないように視線を投げた。
スズカ(……悟空さん)
かなり離れた所にいるが、彼の特徴的な髪型は間違いようがない。
警備の服に身を包み、隠しきれない筋肉が強く主張している。
ふらふらと、後頭部で手を組みながら歩く姿はとても職務中には見えないが、おそらく巡回中なのだろう。
スズカ(挨拶したいけど、……今はダメよね)
彼の理由を聞いて、スペやグラスが隠していた意味を理解した。
警備員としてなら他の者にも紹介は出来るだろうが、付き合いが続くと必ずバレる時が来る。
そうならないために、極力関わる事を避けているとの事だ。
スズカ(皮肉だわ…。悟空さんと話せて嬉しいのに、その機会を作ったのが "コレ,,なんだから)
今もギプスに包まった左脚。
複雑な感情が胸の内を蠢いた。
【よっ!】
スズカ「えっ…!!」
沖野「どうした!やっぱり痛いんだろ!?」
スズカ「す、すみません!本当に何でもないんです!」
ゴルシ「つってもスズカちゃんよー、2回続けて奇妙な声出すのは反則じゃねーか?」
テイオー「そうだよ。ゴルシじゃあるまいし」
ゴルシ「そうそう。私ならともかく…って、オイ」
スズカ「違うの。声が……」
スペ(声?……………まさかッ!)
ウオッカ「声って…、う、うそだろ…」
スカーレット「な、なによウオッカ…。怖いの?ふ、震えてんじゃない……」
ウオッカ「そ、ういうスカーレットだって…!」
沖野「俺には何も聞こえなかったけどなぁ」
マックイーン「私もですわ。ちなみにどんな声なんです?」
スズカ「えっ、と……」
【今朝ぶりだな!順調みてぇで良かったぞ!】
スズカ「!……………ぁ」
今ようやく分かった。
それと同時に訳が分からない。今も離れた所を歩いているのに、何故こんなにもハッキリ聞こえるのだろう。
彼の有する能力の1つだろうが、何をどうしたら良いのかサッパリだ。
そんな時。
スペ「スズカさん!酷いです!」
突然スペがスズカに抱きついた。
スズカ「えっ?」
スペ「聞き流してくださいよー!私のお腹の音くらいっ!」
ウオッカ「お腹って………ぶっ!」
スカーレット「ちょっとウオッカ!笑っちゃダメでしょ」プルプル
ウオッカ「い、いや、だってよ」クククッ
テイオー「モー!スペちゃん!驚かさないでよー!」
スペ「わ、私が悪いんじゃないですよ!スズカさんが皆さんに言うから!」
沖野「はははははっ!確かにスペはジャパンカップに向けて食事制限していたな!くくっ、声と間違えるって相当だぞ」
スズカ「あ、スペ、ちゃん……」
スペ「うぅぅ…、スズカさんのばかぁ…」ムギュ
腰に手を回し、自分の体に身を預けるようにしながら、負担をかけないようにスズカの胸元に顔を押し付けた。
スペ「……………心の中で語りかけてください」ボソッ
スズカ「!!!」
さっきまでとは違い遊びを無くした低い声。背中をポンポンと叩いて彼女は離れていった。
スズカ【…………悟空さん?】
悟空【おう】
スズカ【…………ビックリしました…】
悟空【何がだ?】
スズカ【だって私、コレされたの初めてなんですよ?】
悟空【ありゃ、そうだっけか?………あ、確かにオラが行く時は勝手に行ってたもんな】
スズカ【そうですよ。こんな事出来るならもっとお話ししたかったです】
悟空【そいつはすまねぇな。んでもこれからはスペがいるから暇じゃねぇだろ?】
スズカ【暇が理由じゃありませんよ。楽しいからです】
悟空【ん。そっか。まぁこれからはする必要がねぇな。すぐに会えば良いんだしよぉ】
スズカ【っ、はい!】
悟空【学園でもよろしくな】
スズカ【はい】
スズカ「これからもお願いします!」
沖野「おわっ!い、いきなりだな…」
スズカ「あ……、」
スペ「ひゃわっ、え、お、お願いしますね!スズカさん!!」(うそでしょぉおおおお!!!)
物語に宇宙最強の男が関わる事で、波乱の学園生活が幕を開いた。
そして、悟空はと言うと。
悟空(ったく。またかぁ……)
テレパシーを終えた直後。校舎を睨む悟空の姿。
深く大きい溜め息をつくと無線を繋いだ。
悟空「ーーこちら孫。ウマ娘の対応で巡回を中止させてもらう…ます」
『ーーはい。了解しました。よろしくお願いします』
プツッ。
悟空「………とりあえず着替えて、……いや、この恰好の方が都合いいか」
警備員が校舎に入っても何らおかしくないだろう。そう考えて校舎に向かう悟空。
その足取りは彼にしては珍しく、不満を露わにしていた。
ーーーーーーー
ー 生徒会室 ー
エアグルーヴ(グルーヴ)「ーーーー会長。こちらの業務は終わりました」
ルドルフ「ありがとう。では一先ずエアグルーヴは休んでくれ」
グルーヴ「まだまだ業務は残っていますよね?」
ルドルフ「残ってはいるが急ぎじゃないんだ。それよりはスズカの所へ顔を見せに行ったらどうかな?」
グルーヴ「スズカ……。…………会長はスズカの回復にどうお考えですか?」
ルドルフ「!……どう、とは?」
グルーヴ「率直に申し上げますが、異常です」
ルドルフ「ふむ」(分かるぞエアグルーヴ)
グルーヴ「私が見舞いに行った時にはベッドの上で脚を吊り上げた状態でした。それが今や松葉杖…。常識では考えられません」
ルドルフ「だが起きた事だ。誰が何と言おうと現実が全てを物語っている」(仕組まれた事ではあるがな)
グルーヴ「それはそうですが……!」
ルドルフ「エアグルーヴが感じる疑問は私も重々承知している。だが、それとスズカの退院を祝わないとは別の問題じゃないのか?」
グルーヴ「!!!」
ルドルフ「業務はまだ残っているとはいえ、一区切りはついてる。罪悪感を抱く必要もないさ」
グルーヴ「会長……」
ルドルフ「スズカのためにも行くと良い。チームの者だけでなく、仲の良いヒトが来たらスズカも喜ぶだろう」
グルーヴ「……分かりました。ではお先に失礼します」
ルドルフ「ああ。お疲れ様」
…ガチャ…………バタン……。
エアグルーヴが生徒会室から出るとルドルフは背もたれに体重をかけた。
長所と短所に真面目過ぎるという言葉が登録されているエアグルーヴ。休ませるためには、このようなやり取りが必要なのだ。
ルドルフ(そういう所は、休めと言わなくても休んでいるブライアンの方がやりやすいな)
というのも。
日頃から生徒会として働いてくれている2人には、業務よりも学生生活を楽しんでもらいたいというのが本音である。
ルドルフ「さて、一意専心!自分で決めたノルマをこなそうか!」
机の上には積み重なった書類。
ルドルフは自分の頬をパチン!と叩いて喝を入れた。
その時だった。
ゴン!ゴン!
生徒会のドアにノックのような音が鳴った。
ルドルフ「?………どうぞ」
カチャ…。
静かに開くドア。
そこには…。
ルドルフ「誰もいない……?」
ノック音は気のせいだったのか。しかしドアは開いた。
不可思議な現象に目を丸くするルドルフは、恐る恐る近づいて廊下を見渡した。
右、左、前…。何度も首を振る。
"得体の知れない,,感覚に、ゾクッ…と背中に冷たいモノが走った。
ルドルフ「…ん?得体の知れない………ッ!!」
1つ。確信めいた予想が浮かび上がると、答え合わせをするために勢い振り返った。
悟空「おめぇにしちゃあ気付くのが遅かったな!」ニヒヒ
ルドルフ「とうさ、………悟空さん…」
会長席に座る彼がいた事で、予想は的中となった。
ルドルフ「お
悟空「いんや、ちょっと本気で動いただけだ。ほんの少しドアを開けた時にな」
ルドルフ「残像すら見えないとは。いやはや、改めて能力の高さを実感したよ」
悟空「………そいつはどうだろうな」
ルドルフ「え?」
悟空「さっき言ったろ?おめぇにしちゃあ気付くのが遅かったって。オラとしては、おめぇが姿を捉えられなくても、ちゃんと気付くくれぇの速さで動いたつもりだった」
ルドルフ「ぁ…!」ダラダラ
悟空「ルドルフ。問題だ。オラがココに来た理由は何だと思う?」ガタッ
悟空は席を立つと、石化の如く固まったルドルフの元に近づいた。
ルドルフ「あ、あそびに、来てくれた……とかかな?」
悟空「それは2番目の理由だな。1番は他にあんぞ」
悟空が一歩踏み出すとルドルフは一歩下がる。
文字通りの一進一退だ。
ルドルフ「他…、あ、はは……私には皆目見当がつかないみたいだ…」
悟空「………ハッ、嘘つけ。…………とっくにご存知なんだろ?」
シュン!
悟空の姿がブレるとルドルフは宙に浮いていた。
ルドルフ「ッ…!」
両脇には大きな手でガッシリと掴まれている。
プラーンとぶら下がったまま移動をすると、手を離されて急落下。
着地地点はソファの上だった。
ルドルフ「うっ…、」ボフッ
悟空「おめぇさあ!」ズイッ
ルドルフ「!!!」
悟空「"気,,ッ!また弱くなってんじゃねぇか!!」
ルドルフ「……ふむ、やはりな」
悟空「開き直るな!」
ルドルフ「うぅっ、…………申し訳ない…」
しょぼん…。
ソファに座るルドルフは小さく身を縮こめた。
悟空「オラは別に普段から"気,,を探ってる訳じゃねぇ。何か違和感を感じたら注意してるだけなんだ。おめぇはそこに引っ掛かった」
ルドルフ「…以前、忠告された時から適度な休憩を心掛けていたんだが……」
悟空「……張り切っちまったんだな」
ルドルフ「……」コクン
仕事が嫌いという訳ではない。むしろ好きだ。
好きな物に没頭するのは仕方のない事。
悟空「まぁ、前と違うのは "気,,が乱れてるんじゃなくて弱くなってるだけだから、休むと治るはずなんだけど」
ルドルフ「もう少しで区切りがつくんだ」
悟空「本人がコレだもんなぁ…。……一応聞くけど、"焦ってる,,訳じゃねぇよな?」
以前のルドルフはURA本部のトップに立つために、無茶な仕事漬けの生活を送っていた。
しかし現実はそう簡単な事でなく、仕事に明け暮れたからといってトップの座には絶対立てない。
その事はしっかりと悟空に怒られている。
ルドルフ「もちろんだとも。私の疲労は自己管理不足のせいさ」
悟空「中身は違ぇけど、ほとんど前と同じじゃねぇか」
ルドルフ「……そのようだ」
悟空「ハァ…。もう止めはしねぇけど、とりあえず一回飯行くぞ」
ルドルフ「まだ区切りが…!」
悟空「だーから止めてねぇんだから後でやりゃあ良いだろ。おめぇ1人だと休憩と言いつつ紙切れ見てそうだし」
ルドルフ「むぐっ…!」
悟空「途中でモヤモヤすんのは分かるけど、めいいっぱい休んでから仕事した方が、力も出て効率っちゅーのが上がるんじゃねぇんか?」
ルドルフ「………至極、的を射てる」
悟空「ならもう良いな?オラに掴まれ」
ルドルフ「しゅ、瞬間移動で食堂に行くのはマズいのでは!?」
悟空「ちょっとばかし寄り道する。………おめぇと似た状態の奴が1人いんだよ」
ルドルフ「似てる……………………いや…まさか、な」
心当たりがある。というか、条件に合う者が1人しかいない。
疲労した姿が想像つかない彼女。ルドルフは半信半疑のまま悟空に触れた。
"シュン!,,
ーーーーーーー
ー とある部屋 ー
一瞬にして切り替わる視界。
移動した先でルドルフは瞠目した。
ルドルフ(こ、んな事が……!)
視線を外す事が出来ない。
ソファに横になっているのは想像した通りの彼女だ。
しかし、状態があまりにも酷い。
チャームポイントの緑の帽子はそのままだが、仰向けで寝ている彼女の目元にはタオルが置かれている。湿り具合からみて目を保養しているのだろう。
だがそんな事は全然優しい。
問題はこれからだ。
緑のジャケットは机に雑に置かれ、ワイシャツのボタンが上から2つほど外されている。おまけにシャツの裾はスカートから出されていて、パンプスという右左揃って役に立つ代物が離ればなれになって床に転がっていた。
彼女にしては、……いや、世間一般的の中でも充分だらしない。
そして。
彼女の口からボソボソと聞こえる言葉に、ルドルフはお腹を押さえてプルプル震えた。
たづな「……ちー。チアガールが立ちあがーる。………つー。妻はつまらん。………てー。…でー。出禁には出来ん。………とー…」ボソボソボソ
ルドルフ(女子会の時にあげたダジャレ本を暗記してくれているとは!さすがたづなさんだ!)
そう。
悟空が察知した弱々しい"気,,の正体とは駿川たづなの事である。
たづな「とー。…十日まで待とうか……」ボソッ
悟空(………見ちゃいけねぇもんだな、コレ)【ーールドルフ】
ルドルフ(テレパシー…!)【なんでしょう?】
悟空【一旦出直すぞ。声をかけてから来ねぇと駄目だ】
ルドルフ【ですね。お手を失礼します】
物音を立てないようにルドルフはゆっくりと悟空に手を伸ばす。
たづな「なー。………………なー…?」
ルドルフ(むっ!)ピタッ
たづな「……なー…………………なー……」
ルドルフ「………」ソワソワ
悟空(ルドルフ?)
たづな「なー。……………ない…」
ルドルフ「ナースのなすがまま…というのはどうですか!?」キタッ
たづな「ッ!?」ビク
悟空「あ、こら!喋っちゃ駄目だろ!!」
たづな「ッッッ!!!!!?」ビクビクビクッ!
ルドルフ「しまった!私とした事が…」
たづな「…………」
ノロノロと動き出すたづなの手。
目元の濡れタオルを外して、悟空とルドルフを視界に入れた。
たづな「…………………あなた達だけ、でしたか…」
それならどうでもいいやと言わんばかりにもう一度タオルを目に被せる。
悟空「おめぇ限界来てんじゃねぇか」
たづな「……来てません」
悟空「横になってる所、初めて見たぞ」
たづな「…見なかった事にしてください」
悟空「……まぁ、黙って来たオラも悪ぃから忘れるようにはするけどさぁ」ハァ…
ルドルフ「たづなさん、失礼します」
一向に動く気配のないたづな。
ルドルフは彼女の、はだけた胸元を整えてボタンを閉めた。
そこまでしてもたづなは無抵抗だ。女子会を通じて余程近い仲になったとみえる。
たづな「ん、んん…………………起きます」
ルドルフ「ええ。手をどうぞ」
たづな「ありがとうございます」グイッ
起き上がるとジャケットに袖を通してソファに座った。ルドルフもその隣に腰を下ろしている。
たづな「それで。お二人はどうしたんですか?」
悟空「おめぇ達2人とも "気,,が弱くなってっから強制休憩だ。飯行くぞ」
たづな「私、ご飯食べましたよ?」
悟空「あり?そうなんか?」
たづな「はい」
悟空「あちゃあー、それで休んでたんか…。すまねぇ、早とちりしちまった。オラてっきり飯も食わずに仕事してたんだと思って…」
たづな「エネルギー摂らないと思考は巡りませんからね」
ルドルフ「ちなみに何を食べたんですか?」
たづな「カロリーメイトをいただきました」
悟空(カロリーメェト?)
ルドルフ「ほう?………して、何味が好きですか?」
たづな「バニラです」
ルドルフ「………ふっ、」
たづな「あら…、何か?」
ルドルフ「いえ別に。……バニラ、か」
たづな「……ルドルフさんは?」
ルドルフ「チョコレートこそ至高だと思ってます」
たづな「へえ?ルドルフさんにしては、ふ つ う ですね」
ルドルフ「……悪いですか?」
たづな「滅相もありません。…………フフッ…」
ルドルフ「……では2番目に好きな味は?」
たづな「……ルドルフさんからどうぞ」
ルドルフ「……………シロップ味」
たづな「私達は同志です」スッ
ルドルフ「肝胆相照の関係に一歩近づきましたね」ギュ
悟空(バニラ?……チョコレートに、シロップ…)ウーム
たづな「悟空さん?首を傾げてどうしました?」
悟空「んー、…たづな。おめぇは "飯,,を食ったんだよな?」
たづな「え、そうですけど…?」キョトン
ルドルフ「実は言うと私も済ませてはいたんだ」
悟空「……おめぇは何を食ったんだ?」
ルドルフ「もちろんカロリーメイトさ」フンスッ!
悟空「…………なあ、ちょっとその、カロリーメェトっちゅーのを見せてくれねぇか?」
たづな「そこは食わせてくれー…じゃないんですね」
ガサゴソと漁るのは鞄の中。
たづなは小さな黄色い箱を悟空に渡した。
悟空「」
たづな「その子、優秀なんですよ?」
ルドルフ「栄養、価格、味、手間、全てにおいて他の商品を凌駕している」
たづな「食事の時間を設ける必要はないですからね。サクサクっと食べれるんです」ドヤッ!
ルドルフ「カロリーメイトのおかげでソウルメイトも出来ました」ドヤッッッ!
たづな「っもー、照れ臭いじゃないですか〜」
ルドルフ「ふふっ」
悟空「…………こ、」ワナワナ
ルドルフ「ん?」
悟空「こんなんで腹が膨れるわきゃねぇだろーーーッ!!」
廊下まで轟く激昂。
悟空の怒りを目の前で見た彼女達は、怯えを緩和させるために手を握り合った。
悟空「おめぇさぁ!これっぽっちで飯とか言ってっからぶっ倒れてたんだろ!?」
たづな「え、ーと…………あは、は…」
悟空「ルドルフも!カロリーメェト食っただけで偉そうな顔すんな!」
ルドルフ「はい……」
悟空「ハァァ…、………あのなぁ、休むってのは何もしねぇって意味じゃねぇんだ。身体をほぐして、腹いっぱいにして、そんで寝る。そんくれぇ分かってんだろ」
たづな・ルドルフ「「…………はい」」
悟空「んじゃさっさと行くぞ」
たづな「あ、あの…、その事なんですが……」
悟空「何だよ。こんだけ言っても食わねぇ気なら、オラも怒っちゃうぞ」
たづな「いえ、食べようとは思ってますが……その、」
悟空「じれってぇなぁ。早く言えよ」
たづな「……あ、足に力が入らなくて…」カァァ
悟空「…………………ルドルフは?」
ルドルフ「問題ないさ」
悟空「ここで隠し事したらオラ知らねぇかんな」
ルドルフ「………ギリギリ歩ける状態です」
悟空「ほんとにおめぇ達ときたら、…………ウララ達より手ぇかかんぞ」
悟空はため息混じりに手をかざす。
そこから"気,,が発射されて、彼女達の身体を包み込んだ。
たづな「こ、れは、……視界が綺麗にっ!」
ルドルフ「肩も軽い…。というより全盛期の…、レースに出ていた頃の力がみなぎってくる…!」
たづな「そうですねぇ」
ルドルフ「え?」
たづな「…………肩が軽いです」
悟空「オラの"気,,を分けた。ただこれは特別な事がない限りするつもりはねぇから、今後は期待しねぇでくれ」
たづな「ありがとうございます」
ルドルフ「肝に銘じよう」
・
・
・
ー 食堂 ー
彼といる時には珍しく、机の上には人数分だけのご飯があった。
たづな「悟空さん。お蕎麦一杯だけって足りなくないですか?」
悟空「もう3時だぞ?飯はちゃんと食ったさ。……誰かさんと違くてな」
たづな「うぅ…、チクチク刺して来ますね…」
悟空「言われたくなけりゃあ飯はちゃんと食え」
たづな「はい…」
悟空「ルドルフ。おめぇもいっぱい食うんだぞ。さっき抱えた時に思ったけど、軽すぎだ」
ルドルフ「は、はい」
悟空「まぁ飯が不味くなるから、これくれぇにしとくけどよぉ。単純な話、腹減んねぇのか?」
たづな「もちろん減りますよ」
悟空「だよなぁ。我慢してんのか?」
ルドルフ「我慢ではなく、後回しってところかな」
たづな「仕事をしていると、とあるサイクルが発生するんです」
悟空「さいくる…?」
ルドルフ「はい。仕事の最中は様々な現象が起きます。眼精疲労、頭痛。そして空腹。しかし空腹を感じる時は仕事の区切りが悪い」
たづな「そこで思います。キリの良い所までやってから食事にしよう、と」
ルドルフ「予定を組み、何を食べようかと悩みながら手を動かす。時々鳴るお腹の音を恥ずかしく思っていると、ある時ふと感じる」
たづな「あれ?私、お腹空いていない…?」
ルドルフ「これは空腹を過ぎると起こる現象で、私達からするとそれは好機。次に空腹が訴えかけてくる間に仕事を進めよう」
たづな「しかし、また空腹がやってくる頃には区切りが悪い」
ルドルフ「どうしてもそこで中断をする訳にいかないから、また範囲を決めて仕事を続ける」
たづな「けれどさすがにお腹が減りすぎて集中出来ない。その時に食べるのが、」
ルドルフ「calorie mate」
たづな「空腹時って少しでも食べると満腹に感じるんですよ」
ルドルフ「それを繰り返した際に待ち受けているのが、アレという訳さ」
悟空「………あったまいてー…」
スープまで飲み干した空き皿を前に、悟空は項垂れた。
悟空「キングはたまに暴走するし、グラスは服選びに着物きせてこようとするし、そんでおめぇ達はこれか。……普段しっかりしてる奴らって、どっかしらぶっ飛んでなきゃいけねぇのか?」
ルドルフ「し、辛辣だね…」
たづな「少しくらいはご容赦ください…」
悟空「んでもさっきのたづなには、オラたまげたぞ」
たづな「わっ、忘れてくれると仰ったじゃないですか!」
悟空「まあまあ。おめぇにもあんな所があんだなーって思うと、なんだか忘れんのももったいなくねぇか?」
たづな「いえ全く?」
ルドルフ「私は同感です」
たづな「ルドルフさん!?」
ルドルフ「お休みしながらもあんな事を言ってたなんて、私は感動しましたよ」
たづな「え、私変な事言ってました?」
ルドルフ「変ではないさ!…そう。たづなさんはダジャレを口ずさんで、ーー」
悟空「あー、何かバカな事言ってたなぁ」
ルドルフ「ばっ…!」ギョッ
たづな「そういえばそうでした。……恥ずかしい所を見られてしまいましたね」
ルドルフ「は、恥じることなど1つも、」
たづな「くだらない事考えてると落ち着くんですよねー」
ルドルフ「」
悟空「あ、それ分かるかもしんねぇ」
たづな「おや、共感していただけますか?」
悟空「まぁな。界王さまがダジャレ言って1人で笑ってんの見てっと、平和だなーって思うもん」
たづな「それは平和そのものですね。ちなみに界王様という方は初めて聞きましたが?」
悟空「だっけか?んー、地球の神さまがちっぽけになんのが、えんまのおっちゃんで。そのえんまのおっちゃんがちっぽけになんのが、界王さまだ」
たづな「………で、そんな偉大なる界王様の好きな事が?」
悟空「ダジャレ。あとドライブ」
たづな「………………………親しみやすいお方ですね」
悟空「だろ?………んで、おめぇは一体どうしたんだ?」
ルドルフ「別に…。何でもないさ」ムッスー
悟空「頬膨れてんじゃねぇか」
たづな「?………あ、」
悟空「ん?」
たづな「あの、ルドルフさん?」
ルドルフ「………何ですか?」
たづな「お、怒っちゃいました?」
ルドルフ「……………私はくだらない物をあげた覚えはない…」フン
たづな「ッ…!で、ですよね!ダジャレ本のおかげで私も脳がスッキリと、」
ルドルフ「………せっかくカロリーメイトのお陰で距離が近づいたというのに、今では対岸にいるようだ」
たづな「遠っ!!じゃなくて、…………ルドルフさん。不適切な言い方をしてしまい申し訳ありません。ダジャレを軽んじていた事は事実ですが、奥深いと感じたのもまた事実」
ルドルフ「!!!」
たづな「よろしければ今度ダジャレ勝負でもしませんか?」
ルドルフ「相手になりましょう!」キラキラ
悟空(あー、確かルドルフもダジャレ好きだったなぁ…。すっかり忘れてた)
ーーーーーーー
お腹を満たして3人がやって来たのは先程までたづなが休んでいた部屋だ。
そしてルドルフの肩には鞄いっぱいに詰め込まれたファイルが入っている。
たづな「さて!区切りが良い所まで!」
ルドルフ「心満意足を目指して!」
たづな「ファイ!」
ルドルフ「オー!」
悟空「なあ」
たづな「悟空さん、心配無用です」
ルドルフ「そうとも。回復した私達に死角はない。とうさ…、悟空さんには話し相手にさえなっていただければ」
悟空「それなんだけど、オラにも手伝える事はねぇか?」
たづな「えっ、……そんな、付き合っていただくだけでも恐縮ですのに…」
悟空「いやー、何だかんだ言ってもおめぇ達の邪魔をしちまった事に変わりねぇからさ。つってもオラ難しい事は分かんねぇから出来る事があれば、なんだけどよ」
ルドルフ「………ふっ、本当に頭が上がらないな。たづなさん。厚意に甘えましょう」
たづな「そうですね。無下にしたくないので是非。…
なんですけど、何をしてもらいましょうか…」
ルドルフ「悟空さんはパソコンを触れるかい?」
悟空「機械はいじった事ある程度だな」
たづな「文章を打ち込むとかは……」
悟空「漢字分かんねぇぞ」
たづな「ふむ。………あっ!では数字だけを打ち込んでもらいましょうか!」
そう言ってたづなは鍵のついたロッカーを開けると、中程度な大きさの箱を取り出した。
たづな「ん…しょっ、と」
ドサッ。
机に置かれた箱。悟空はソファに座りながら前のめりになって覗き込んだ。
悟空「数字だけならオラにも出来そうだけど。こいつを何かすんのか?」
たづな「はい」
たづなは上蓋を外した。
そこにあるのは。
悟空「ほぇー……」
小、中、大…といった不規則な大きさで乱雑に詰め込まれた紙切れである。
そして悟空の目を奪うのは、圧倒的なほどの数。
両手足の指では全く数え切れず、紙を何度かずらしても底が見えないのだ。
悟空は目の前の状況を少しずつ理解すると、どんどん顔が青白いものと変化していく。
その紙切れ1枚1枚の一番下には、数字が記されているのだから。
悟空「……た、たづな?オラは、何を…」
たづな「今説明しますね!」
爽やかな笑顔を披露すると、机でパソコンを起動させた。
たづな「ーーでは、悟空さん。画面を見てください」
悟空「お、おう」
たづな「1枚の紙には一行使ってください。終われば一行開けてから、また入力」
悟空「一個飛ばしっちゅー訳だな」
たづな「はい。そしてキーボードの打ち方ですが、数字はココ。終わったらコレ。間違えたらココ。行を変える時もココです」
悟空「分かった。……ああ、分かったんだけど…、」
たづな「何ですか?」
悟空「紙ってのは、箱の中に入った紙…全部か?」
たづな「はい」ニコッ
悟空「は、はは…、おめぇ達はこんな事ずっとやってんのか?」
ルドルフ「そうだね」
たづな「これでもまだ氷山の一角で、やれと言われたら時間が掛かってしまうんです。本当に助かります!」
悟空(そりゃあ、くたびれる訳だ)「……おしっ!いっちょやっか!」
たづな「あ、悟空さん。注意していただきたい事がありまして」
悟空「なんだ?」
たづな「ゆっっっくりで良いので間違えないでくださいね?」
悟空「が、頑張るぞ…」
・
・
・
悟空「んー、と……」カタ…………カタ…………
ルドルフ「悟空さんは元いた世界では、あまり仕事に携わってないと言っていたね」
悟空「あまり…、ってか、………全く、だ」カタ…………………カタ…
たづな「全く、ですか。そういえばチチさんに怒られていたって言ってましたね」
悟空「………まぁな。………野菜でも、…育てようって、……なってたんだけど、……死んじまった」カタ……………カタ……
ルドルフ「は、反応に困るな……」
たづな「ですね。…あれ?となると機械はどこで操作してたんですか?」
悟空「宇宙船……だ。………ブルマは、簡単に……してくれたけど、…微妙に覚える事も、あってな」カタ…………カタ………カタ…
たづな「宇宙船?……それだけ聞くと規模が半端ではないですね」
ルドルフ「ブルマ、さん。……確かアグネスタキオンから聞いた事があるような」
悟空「…ああ。……タキオンに、ブルマの事を話したら、完全に打ちのめされてたかんな。……愚痴でも言いたかったんだろ」カタ……カタ…カタ……
たづな「タキオンさんが負かされるとは…、凄い方なんですね」
悟空「だな。んでもちょっと、……いや、かなりやかましい奴だけど」カタ…カタ……カタカタ……
ルドルフ「悟空さんの知人だと逞しいというイメージがあるね」
悟空「ははっ。アイツはすげぇ逞しい奴だぞ!なんたって違う星で1人になっても生き延びてたかんな!」カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
たづな「ッ!ちょ、ちょちょ、!!!」ガタッ
ルドルフ「ストップ!父さん!ストップだ!!」ガタッ
椅子が倒れようと関係ない。
たづなとルドルフは悟空に詰め寄り、動きを止めた。
悟空「っ、何だよ。ビックリしたなぁ」
たづな「こちらの方が驚きましたよ!?」
ルドルフ「た、大驚失色…。心臓が止まりかけたのは悟空さんが5tのタイヤを持ち上げた以来か」
悟空「あぁ、あったな。そんな時も」ハハッ
ルドルフ「って、笑っている場合ではなく、たづなさん!チェックを!」
たづな「今やってます!」
入力済みの紙が入った箱から一枚ずつ見比べるたづな。
悟空「オラまだ間違ってねぇはずだけど?」
ルドルフ「一応…その、念の為に、ね?…………少し聞きたいんだが、」
悟空「ん?」
ルドルフ「タイピング。急成長じゃないかい?」
悟空「たいぴんぐ?」
ルドルフ「キーボード………ボタンを打つ事さ。何故こんな短時間で速く打てたんだ?」
悟空「なぜって…、慣れたからだけど?」
ルドルフ「慣れ、か?」
悟空「ああ。だってボタンの場所は変わんねぇし、紙は1番下に書いてある数字を打つだけだろ?」
ルドルフ「論理的に言えばそうだが…。う、打つのが速い理由は分かったが、数字を見るスピードだって!そもそも紙を取る動作が…!」
悟空「ああ。悪くねぇ修行だ!」
ルドルフ「修行?………ッ!…そういう事か」
悟空「???」
ルドルフ「ふむふむ、…紙を取る反射神経。数字を捉える動体視力。場所の位置を覚える空間把握能力。五指を繊細に操れる動きは武術の基本?……それが全て超越していれば造作もない事なのか」ボソボソ
自分の世界に入ったルドルフを困惑気味に見つめる悟空。
その時。
たづな「ーー悟空さん。失礼しました」
悟空「ん。大ぇ丈夫だったろ?」
たづな「はい。疑ってすみません」
悟空「良いって。そんな事より早く終わらせちまおうぜ!」
たづな「はい!」
悟空のとんでも能力により、発破をかけられた彼女達。
なぜだか悟空に対抗心を抱き始め、先程までののんびりした会話が一転。
部屋にはタイピングの音と、ペンでなぞる音。紙を捲る音だけが鳴る始末となった。
・
・
・
そして。
事件は起こる。
本来、瞑想などにより集中力がある悟空は既に作業を終わらせていた。
何度目か視界に入れる時計。
それまでにも何度か言ったのにも関わらず。
時計の針は、とても綺麗な90度の形をしていた。
悟空「オイ!いつまでやってんだ!」
彼の目の前には、髪がボサついた生徒会長と、服を着崩した秘書がいる。
ルドルフ「も、うちょっとだ!あと少し!」
たづな「今はダメ!ダメなんですよ!!」
忙しなく手を動かす2人。まばたきという概念を知らないかのように閉じる事のない瞼。
もはや戦場だ。
そして、戦場には活力が必要だ。
そのため。
たづな「ルドルフさん!栄養補給です!」
悟空「ッ…!」
悟空の目の前を飛来する黄色い塊。
ルドルフ「ありがとうございます!」
戦友はそれはキャッチすると、無駄をなくした動きでスティック状の塊を口へ向けた。
ルドルフ「……ん?」
ピタリ。
ルドルフの手が止まる。
悟空「…………よお」
違う。
止められていたのだ。
発光した黄色い髪を靡かせている彼の手によって…。
ルドルフ「」
たづな「ぁ…………、」
悟空「すげぇな。お前達。さすがのオレも驚いた」
彼女達の髪が揺れる。
窓は閉まっていて風がないはずなのに。
悟空「なあ、そろそろ腹減ったから飯を食おうと思ってんだけど、お前達はどうする?」
ルドルフ「お供させていただきます」
たづな「同じくです」
悟空「仕事はしなくて良いのか?」
ルドルフ・たづな「「はい」」
悟空「そうか」
スゥ…と、部屋から金色の光は消えた。
悟空「なら食いに行くか!」
ルドルフ「是非!」
たづな「ん?…………あ"ッ!」
悟空「どうした?」
たづな「………しょ、食堂、閉まってます」
ルドルフ「」ヒュッ
悟空「………」
轟ッッッ!!!
たづな「私達で作りましょう!」
ルドルフ「そうしましょう!」
悟空「……ハァ、っもー!………まぁ…、これも癖なんかな」
たづな・ルドルフ「「あ、はは………すみません」」
悟空「オラのも少しで良いから頼んで良いか?料理は苦手でよぉ」
たづな「もちろんです!お礼も兼ねて普段お召しになられている量作りますよ」フンス!
悟空「いや大変だから良いって。それよりは早く食って風呂入って寝ろ」
ルドルフ「うぅ、面目ない……」
そして。
悟空曰く、彼女達のご飯は美味しかったとさ。
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\ 次回予告 /
サイレンススズカが退院した事により、一段とトレーニングに力が入るスペシャルウィーク。
次走は、世界から強者だけが集まる舞台。ーージャパンカップ。
勝利に向けて日々鍛錬に励むスペシャルウィークだが、トレーナーの口から予想だにしない言葉が飛び出した。
『スペ、選ぶんだ。ジャパンカップか…、有マ記念。2つに1つしか俺は許可しない』
ーーチームスピカのトレーナー:沖野
『……トレーナーさん。……私と一緒に、地獄に落ちてください』
ーーチームスピカのメンバー:スペシャルウィーク
『…………………す、スペたん…?』
ーー黄金世代:グラスワンダー
読者様より、ご指摘がありました。
曰く。
感想を書きたいのだが、回の中で気になる部分が多くて書くことに困る。
との事でした。
とても嬉しいメッセージです。
アンサーとしては。
改行をして、アレは良かった。コレが気になった…などをしていただければ、私も改行ごとに返信します。(長文喜んで)
無理に文章にしなくても箇条書きで良いので、読者の皆様もよろしくお願いします。