注意
・キャラ崩壊あり。
・サイレンススズカの設定は、アニメ、漫画、ゲームから引っ張ってます。
・捏造
ー 前回のあらすじ ー
悟空「良いかウララ!有マ記念で勝つにはストリップストリームを極めるしか方法がねえ!」
ウララ「任せて!絶対に習得してみせる!ストリップストリームを!」
ーーーーーーーー
ある日。
「ーーーあっ!」
後ろからそんな声が聞こえた。
とても聞き慣れた声だ。
スズカ「スペちゃん…?」クルッ
カツン…と杖を止める。
スペ「スーズカさーんっ!お疲れさまですー!」
スズカ「お疲れ様。スペちゃん」
お花畑のように爽やかな笑顔で走り寄ってくる彼女。後ろには同期のあの子達もいた。
グラス「こんにちは〜」
エル「デェス!」
グラス「こら、エル。挨拶はしっかりなさい」
エル「ケー………こんにちはデェス。スズカさん」
スズカ「ふふっ、こんにちは。グラスちゃん。エル」
入院時、度々訪れていたグラスはもちろん。毎日王冠で共に走ってからはエルとも気兼ねなく話しをする間柄になっていた。
そう。彼女達とは友達といえる関係になっているのだが…、
スカイ「こんにちは〜、サイレンススズカ先輩」
キング「お疲れ様です」
スズカ「え、ええ。セイウンスカイさんも、キングヘイローさんもお疲れ様……」
この2人は違う。
学園の中で1番多くある関係。ただの先輩と後輩だ。
スカイ「それじゃあ先に行ってるね〜」スタスタ
キング「授業始まる前には戻って来なさいよ」スタスタ
スペ「はい!」
スズカ「……………」
エル「それにしてもスズカさんはまだ杖をついているんデスネ。あの人からは完治に向かってると聞きマシタが」
スズカ「…………」
エル「スズカさん?」
スズカ「!……あ、そうね。タキオンの見立てでは杖をつく必要はないんだけど、世間を考えたら次の通院日までは杖をついていた方が良いみたい」
グラス「そもそも杖で歩ける事態恐ろしい話しですからね。回復速度が尋常ではありません」
スズカ「ええ。だからトレーナーさんやお医者さんも喜んでくれてはいるんだけど、奇妙な様子に困惑しているわ」
スペ「トレーナーさん達には隠していて申し訳ないですけど、来年には一緒に走れそうですね!」
スズカ「そうね。楽しみだわ」
エル「おーっと!エルの事を忘れてもらっては困りマース!毎日王冠での借りを返させてもらいますヨ!」
スズカ「ふふ、怖いわねぇ。結果は同じだと思うけど」
スペ「おおーっ!やる気満々ですね!燃えてきました!」
グラス「私もです、スズカさん。もう一度競い合う件の事、忘れないでくださいね?」
エル「!」
スズカ「ええ。もちろん」
エル「………………」チラッ
スペ「………またですか、この栗毛。私には再戦の事言って来ないくせに。一度勝てば用済みって酷すぎます。ヒトをその気にさせといて……」ブツブツ
エル(oh……)
グラス「ん?スペちゃん、今何かーー」
エル「あああああっ!っぺちゃあああん!買い食いレッツゴーしますヨおおおおっ!!」
スペ「へ…?」グイッ
ーーーダダダダダッ!!!!
グラス「える?………エル!? スペちゃああああああん!!?何を突然…って、そんな時間ないですよ!? というか私を置いていかないでください!」ダッ!
エル「仲間外れに決まってんデショおおおお!!愛の逃避行の邪魔しないでくだサイぃいいいいい!!!」ダダダッ!
グラス「ッ!…………誰の手を取って愛などとほざいているのか分かっているんでしょうねええええ!エーーールーーーーッ!!!!」ダダダッ!
エル「そもそもグラスの尻はデカいのであって軽い訳じゃないデショうが!!自分の尻の扱い方を間違えてんじゃないデスヨ!」ダダダッ!
グラス「差し切る……いえ、刺し斬ります」ドンッ、シュバッ!!
スペ(………?)ダダダッ!
ドップラー効果のように叫び声が遠ざかる。
そんな彼女達の姿が見えなくなるまで、スズカはずっと見続けていた。
スズカ(……………………)
さて、適任は誰だろうか。
そう考えて身を翻す。
カツン……カツン………と杖の音を立てながら思案していると、やはりと言うべきなのか。
彼が候補に浮かんで来た。
・
・
・
夕方。
チームスピカのトレーニングを早上がりしたスズカは、違うターフに来ていた。
悟空「ーーーーへぇ、スカイとキングの友達になりてぇのか」
スズカ「はい……」
やや顔を赤らめて相談するのはセイウンスカイとキングヘイローの事だ。
会えば挨拶をするが、それはスペシャルウィークという共通のウマ娘がいるからに過ぎない。
スズカは思うのだ。
グラスやエルみたいにスペが関係してなくとも、スカイやキングと話しをしたい…と。
スズカ「………あの、出直した方が良いかしら?」
悟空「何でだ?別に構わねぇぞ」
スズカ「そ、そうなの?………でも、」
しかしだ。
相談をするには時と場所を考えなければならない。悟空は気にする事なく簡単に許可をくれたが、すぐ隣にいる彼女からすれば気が散ってしょうがないと思う。
ウララ「ぐぬ、っ……!………ハァ…っ、ハァ…」
ポタポタと滴り落ちる汗。足は仔鹿のように震えて、必死な形相で崩れ落ちないように踏ん張っている。
トレーニング後なのは一目瞭然だが、今は違う。
何もしていない。ただひたすらに立っているだけ。
それでも気を抜けば倒れてしまいそうになるのは背負っている甲羅が原因だろう。
スズカ「……私、練習の邪魔にならない?」
ウララ「……………」
悟空「だってよ。スズカが聞いて来てんぞ、ウララ」
ウララ「ハァ、ハァ……ッ、くっ、……?……あ、……な、なんか、呼んだ、……かな?」プルプル
スズカ「い、いえ。何でもないわ!私やっぱり、」
悟空「なにやってんだよウララー。ちゃんと息しろ息ぃ。周りが見えてねぇから置いていかれてんぞー」
スズカ「悟空さん!?今のウララちゃんにそんな事を言っても聞こえてないんじゃ…、」
悟空「心配いらねーよ。そういう修行なんだから。なあ?ウララ」
ウララ「……スゥ………ハァァ…。………う、ん……ご…めん、ね。スズカちゃん……もういっかい、お願い…」
悟空「ってな訳だからスズカも気にしなくて良いぞ。色々話しかけてくれた方が修行のためにもなるし」
スズカ「そ、そう…?」
そしてもう一度スズカは同じ事を言った。
今度は途切れがちになりながらも反応をするウララ。
聞く所によればこれは、疲れてる最中でも普段通りに動けるようにする修行らしい。
ご丁寧に説明してくれたが、スズカにははてなマークが増えるだけだった。
・
・
・
ウララ「ぐっ、ぁ………あ"あ"あ"あ"あ"ーーッ!もうだめだよおおお!」
悟空「あちゃー、やっぱそんなすぐに上手くいかねぇか」
悟空はウララの背中に回ると甲羅を取った。それと同時にウララは、重力に身を任せて地面と同化する。
ウララ「ハァハァハァハ……………はぁぁぁ…」
悟空「んー、ほんの少しだけ耐えれる時間が伸びたか?まぁコツを掴んだってよりは意地だろうけど」
ウララ「……一歩前進したって事で褒めてほしいな」
悟空「そうだなぁ…。………でもオラが考えてたよりちょっと下だからダメー」ニヒヒ!
ウララ「けちーー!」
悟空「ほれ、元気があんなら早く立ってやれ。スズカが待ちくたびれんぞ」
ウララ「!」
スズカ「あ、私はそんな……気にしなくても」
ウララ「ううん。ちょっと待っててね………………ふんぬっ!!!!」グワッ!
悟空「よーし、今日の修行は終わり。お疲れさん」
ウララ「今日もありがとーございました!」
悟空に一礼をするウララ。
フゥ…と体から力を抜くとスズカに向き直る。
ウララ「それで、スズカちゃんは、キングちゃん達とお友達になるんだよね?」
スズカ「ええ、そのつもりだけれど……」
ウララ「やったーっ!みんなが仲良くなるとウララも嬉しくなるよ!」
悟空「そうだな。足も大分回復して来たし、外にでも遊び行ってこれば良いじゃねえか」
スズカ「それが………まだ遊びに行ける関係ではなくて…」
悟空「ん。だから友達になりてぇって話しだろ?ちゅーかこんな許可をとるような真似しなくても、普通に話しかけてこりゃあ良いのに」
ウララ「キングちゃんは今日のトレーニングお休みだから、遊ぶにはちょうど良い日だね!」
悟空「ちょうど良いっていやぁ、いまキングとスカイは一緒にいるみてぇだぞ」
ウララ「おぉーっ!タイミングバッチリ!」
悟空「やるなら今だな!」
盛り上がってきた2人は無邪気に言い放つ。
ウララ「行ってらっしゃい!今度はみんなで遊ぼうね!」
悟空「アイツらは………三女神のとこかな。動いてねぇから座って話しでもしてんだろ。なんだったら連れてってやろうか?」
高等部のスズカが少年少女のように友達になりたいと言ってるにも関わらず、悟空達からは揶揄う言葉が1つとして出て来ない。
そこはスズカにとって物凄くありがたい所だ。
しかし、
彼らは知らない。
課題をクリアをするには条件ポイントがいくつか存在し、その条件をクリアしてようやく本題に挑めるという事を。
スズカ「……………って…」
悟空「なんだ?」
ウララ「スズカちゃん…?」
サイレンススズカ。
彼女は今まで、
スズカ「……どうやって…………友達になるんですか…?」
単独で走り過ぎたのだ。
悟空「…………ん?」
ウララ「ど、うやって……?」
スズカ「だって私は先輩だし、いきなり話しかけたら迷惑なんじゃ…」
気持ちの良い走り方を知っている。その走りは首位争いに名乗りを上げれるため、先輩にアドバイスをもらう事はなかった。というよりーーいらない。
先頭の景色を見るために、先輩とのコミュニケーションは不必要だった。
スズカ「それに話題は?先輩の私がグイグイ話しかけた方が良いのよね?じゃないと困ってしまうものね?」
同期とは気が付けば会話をする関係になっていた。
そしてチームのみんなや同室のあの子。彼女達はこちらが黙っていようとも笑顔で話しかけて来ていた。
それに釣られていつの間にか話しをするようになっていた。
スズカ「わ、私がリードしないとっ!今の流行りって何かしら!?まずは調べてから話しかけるべきよね!」
初めてなのだ。
雰囲気に流されるのではなく、時間の経過を頼るでもなく、自分から進んで友達になろうとするのは。
ウララ「お、おちついて、スズカちゃん」
悟空「そ、そうだぞ。友達になるってだけなのに考えすぎじゃねえんか…?」
詰まる所。
彼女にとって友達作りとは、ダートの短距離を走るようなものである。
スズカ「私はペン回しが得意ですっ!!」
悟空「わかった!わかったからまずは落ち着けって!」
ウララ「そうだったんだ……」
・
・
・
悟空「……………んじゃ、確認な?」
すっかり意気消沈してしまったスズカは、静かに首を縦に動かした。
悟空「おめぇはキングとスカイと友達になりてえ。けど友達のなりかたを知らねぇからオラの所に来た………で、良いか?」
スズカ「………」コクン
悟空「………やっぱおめぇ、友達いねぇんじゃ…」
スズカ「います。いますけど……みんなが話しかけてくれていたから…」
悟空「こっちから話すのは初めて、っちゅー事か…」
スズカ「……はい」
悟空「ウララとは?ウララと仲良くなんの早かっただろ」
スズカ「……" あの ,,ウララちゃんですよ?」
悟空「…………ああ。そうだったな」
ーーーーーーー
先月の事だ。
スズカが退院し、杖をついて学園内を歩くのに慣れて来た頃。
彼女達は対面した。
スズカ「初めまして…で、良いのかしら?」
学園内で知らないヒトはいない程のウマ娘。
走って、笑って、走って、笑って、笑ってーー。
彼女がそこにいるだけで、その周りにいる者は笑顔になる。
スズカ「ハルウララさん」
ウララ「ウララでいーよ!こうやって会うのは初めてだね!」
スズカ「そうね」
噂と違わぬ満面の笑み。
スズカは自然と口角が緩むのを感じながら危惧している事があった。
スズカ(…………今のところ落胆はされてないみたい…)
というのも、入院中にスペ達が無い事ばかり吹き込んだせいだ。
ウララ「スズカさんの事はスペちゃん達から聞いてたんだぁ!えっと……」
スズカ(あぁ……言われてしまう…)
ウララ「……あっ!学園で5本の指に入るほどの美しいウマ娘!」
スズカ(やっぱりそれなんだ……)
ウララ「ーーって、そんな言葉じゃ足りなかったみたいで、」
スズカ「え」
ウララ「シルクのように艶やかな髪は国宝級! 淡い緑色の輝く瞳はエメラルドの宝石を凌ぐ! スラッとした身体には世界中の視線を独占するほどの魅力を持ち! もはや三女神ではなく四女神の1人として世に君臨した生ける伝説!! …………うんっ!スペちゃん達が言うように綺麗なヒトだね!」
スズカ「ごめんなさいほんとうにごめんなさい。私なんかが出て来て申し訳ありませんでした」
ウララ「えぇーっ!?どうしたのいきなり!?」
スズカ「もうだめだわ。これはシャレにならない。恥ずかしいを通り越えて裏切った気持ちしかないんだもの」
ウララ「?……なに言ってるのか分からないけど、せっかく会えたんだからもっとお話ししようよ!先輩だけど、スズカちゃんって呼んでも良いかな? 今まで話せなかった時間を埋めるように仲良くなりたいんだぁ!」
スズカ「はい。はい。仰せの通りに。私もウララちゃんと呼ぶので勘弁してください」
ウララ「あはは!まだ変な事言ってるー!スペちゃん達からは "くーるびゅーてぃー ,,って聞いてたけど違うんだね!」
スズカ(なんか余計なの増えた……)
ウララ「それじゃあ何する?どうせなら悟空さん達も呼んでおやつパーティしよっか!」
スズカ「悟空さんだけでお願い。今スペちゃん達に会うと何するか分からないから」
ウララ「そう?それじゃあ早速悟空さん探ししよう!」
スズカ「ええ」
ーーーーーーー
悟空「オラのとこに来た時には普通に話してたもんな」
スズカ「馴染めたというか雰囲気にのまれたというか…。まぁそんな感じです」
悟空「ふーん。……それと同じようにキング達と話せねぇのか?」
スズカ「はい。私とウララちゃんが話していたのだって、8割ほどウララちゃんからでしたので」
悟空「そっか」
スズカ「はい…」
悟空「しっかし、めぇったなぁ…。会話すんのに困った事ねぇからオラ分かんねぇぞ。ウララは?」
ウララ「ウララも同じかなぁ。このヒトとお話ししたい!って思って話してるから考えた事ないよ……」
悟空・ウララ「「うーん…………」」
スズカ「………」
恐らく。いやほぼ確実に。
地球という大きな規模で考えても、この2人よりコミュニケーション能力に優れた者はいないだろう。
ひっそりとスズカは、相談相手を間違えた事に肩を落とした。
ウララ「んんんん………あっ!いーこと思いついた!」
悟空「おっ!なんだなんだ?」
ウララ「あのねぇ、かいちょーが言ってたんだけど、」
悟空「ルドルフが?」
スズカ「?」
・
・
・
三女神像の噴水前。
スカイ「ね〜、キング〜」
キング「なによ」
スカイ「寒くない?」
キング「お昼を過ぎた12月の噴水前。寒くない訳がないわ」
スカイ「カイロとか持ってません?」
キング「持ってないわよ。今飲んでるコンポタージュで何とかしなさいな」
スカイ「ふっふっふっ…。こんな缶如きで私の体温を上げれると思うとは、キングヘイロー片腹痛し」
キング「使い方微妙に違くない?」
スカイ「byエルコンドルパサー」
キング「あぁ、グラスさんっぽい真似をしたエルさんね」
スカイ「せーかい」
キング「当然の結果よ」
スカイ「もっと喜んで」
キング「いえーい」
スカイ「何それ」
キング「byハルウララ」
スカイ「………急に寒くなって来たね」
キング「どういう意味!?」
ガタッ!と過剰に反応するキング。
ところが芦毛のウマ娘は違う方向を見ていた。
スカイ「あ」
キング「ん?」
カツン、カツンと音を立て。
視線が交錯すると彼女は動きを止めた。
スズカ「…………アラ、キグウネ」
ロボットのような抑揚のない口調がスカイ達に届いた。
スカイ「あ……はい」
キング「奇遇、ですね…?」
やや不審な目で見てしまう。
そんな事はお構いなしに、ギクシャクとした動きでスズカは近づいた。
スズカ「キョウハ………コホン。……今日は良い天気ね」
スカイ「え?……まぁ、そうですね」
スズカ「まさに " 青雲の空 ,, だわ」
なにか、失くした記憶を探すように遠い目を上空に向ける彼女。杖付きも相まって儚げな様子が見てとれる。
当然、スカイ達は困惑した。
スカイ「…………わたし呼ばれた?」ボソッ
キング「バカ言いなさい。文字通りの意味に決まってるわ」ボソボソ
スズカ「寒くなってきても日差しが入ると気持ち良いわね。 " 麗ら,, かな気分を味わえる」
スカイ「……まじ?」ボソ
キング「偶然よ。それ以上でも以下でもない」ボソリ
スズカ「…………私にとって " 今週は特別,, ね」
スカイ「強引なの来たね……」ボソリ
キング「え、本当に?そういう事なの?」
スズカ「…………」ジー
スカイ「見てる!めっちゃ見てくるよ!」ボソボソ
キング「彼女は一体どうしたのよ!?また悟空さん?」ボソボソ
スカイ「可能性としてはあり得る!」ボソボソ
奇妙な状況。異質な空気。
普段では考えられない事が起きたら、まず孫悟空を疑え。
キング達はマニュアル通りに思考を巡らせると、キングは一言呟いた。
ーー彼女に恥をかかせる訳にはいかない、と。
スカイ「………」
キング「………」
スズカ「………」
スカイ「……た、確かに今日は良い天気ですね」
キング「そうね。こんな日は何か面白い事したいわ」
スカイ「おっ、中々興味深いの言いますねぇ」
キング「スカイさんはいい案あるかしら?」
スカイ「んー…、はいっ、ではでは!そういう事なら私の尻尾に注目〜!」
キング「あら、なにか?」
スカイ「なんと私はっ、尾も白いんですぅ〜!」
キング「なっ、なんてことなのーっ!?」
噴水の前に立つ2人。
片や自身の尻尾を指で差し、客席に向けるが如くお尻を突き出している。
片や両手をパーに広げて驚愕を露わに……しているフリが下手なウマ娘。
2人はそのポーズのまま、横目でチラリと彼女を見た。
スズカ「…………」
スカイ「…………」
キング「…………」
スズカ「………ごめんなさいっ!!!」ダッ!
そう叫んで、彼女は立ち去った。
・
・
・
スズカ「」ズーン
悟空「すまねぇ、オラが止めるべきだったな…」
スズカ「………………いえ」
ウララ「あれぇ?ダジャレを言えばみんな仲良しって、かいちょーが言ってたんだけどなぁー」コテン
悟空「…………ほんと、すまねぇ」
スズカ「………」
スズカの勇ましい姿を物陰から見ていた悟空とウララ。スズカが口を開く度に、悟空の表情は青く変化していた。
悟空「ーーけ、けどさ!おもしれぇ事すんのは良いと思うぞ!」
スズカ「………アレ。面白かったですか?」
悟空「いや今のじゃなくて…」
ウララ「え?おもし、ーー」
悟空「ストップだウララ!」
ウララ「?」
悟空「うん。面白かったんなら今度ルドルフに聞かせてもらえ。今はちょっと違かったんだ」
ウララ「そうなんだ…。じゃあ今度だね。悟空さんも一緒に!」
悟空「は、ははっ…………ほんとのほんとに今度だな!オラは忙しいからウララだけでも頼んどいてやる!」
ウララ「えぇー、悟空さんも一緒に聞こうよー!」
悟空「ッ!そ、そんな事より今はまだスズカが困ってる最中だろ。ほっといたらダメじゃねえか!」
ウララ「! ごめんなさい、そうだよね。………うんっ!今ので駄目なら次だよ!」
悟空「その通りだ!」
スズカ「……………もう、怖がられてるかも」
悟空「大ぇ丈夫!オラに考えがある!」
スズカ「かんがえ…?」
悟空「ほら。オラがスピカのトレーニングに混ぜてもらった時にさ、おめぇがパニックになったらスペの奴が、ーー」
・
・
・
スカイ「…………」
キング「…………」
スズカが立ち去った後、力が抜けるように座り直した2人。
空になったコンポタージュを意味もなく眺めていた。
スカイ「…………尾も白いは古かったかな…」
キング「………いえ、あなたは良くやってくれたわ。きっと私の反応が悪かったのよ。驚くのではなくてツッコミにしておけば………」
スカイ「……………そもそも何の意図があったんだろ」
キング「全く分からない」
スカイ「だよね…」
スカイ・キング「「……………ハァ」」
同時にうなだれる。
「あら?」
今度は後ろからだった。
スカイ・キング「「っ!?」」
勢いよく振り向くとそこには、平然な様子で杖に寄りかかる彼女がいた
スズカ「セイウンスカイさんとキングヘイローさん。こんにちは」
スカイ「こ、んにちは……?」
キング「サイレンス、スズカさん…?」
スズカ「ええ。突然で悪いのだけど、あなた達に聞きたい事があって来たの」
まるで今日初めて会ったかのような淡々とした言い方だ。
スカイ達は戸惑いつつも話しを進める。
キング「なんでしょうか」
スズカ「2人は今、食べたい物ある?」
スカイ「食べたい物ですか?」
スズカ「うん」
スカイ「……突然どうしたんです?」
スズカ「いいから」
スカイとキングは顔を見合わせる。
要領を得ない彼女の催促。スカイは意を決して口を開く。
スカイ「………私は、ーー」
スズカ「私はねっ!!!!!」
スカイ「マジですかセンパイ!?」
スズカ「食べたいのがあるの!!!」
スカイの声を遮ってまで彼女は必死だ。
杖を握りしめる手に血管が浮き出て、慣れていないであろう大声を出している。
キング「何ですかそれは!よろしければ買って来て差し上げましょうか!!」
それは伝染した。
スズカ「違うの!使いっ走りにしたくて言ったんじゃないわ!」
キング「ではなんですか!」
スズカ「私が食べたいのはっ!」
彼女はしっかりと2本の足で地面に立った。
杖を自身の体に預けて、円を描くように両手を上にあげた。頭のてっぺんで指先同士をくっつけて、彼女は叫ぶ。
スズカ「い、いちごだいふくっ…!」フヨッ
ピシリッ!
空間に亀裂が入ったように、2人の動きは完全に止まった。
スカイ「…………」
キング「…………」
スズカ「…………」
スカイ「…………………」
キング「…………………」
スズカ「………………こ、これはね?わたしの髪を…その……イチゴに見立てて………あ、この手は生地のつもりなんだけど……」
沈黙に耐えきれずボソボソと芸の説明をする彼女。
もはや涙が滲んでいるように見えるこの状況は、
スカイ「(………ここで決めるよ)」
キング(「オーケーよ」)
2人にとってチャンス到来だった。
スズカ「あ、の………分かりづらかった…かな?」
キング「サイレンススズカ先輩ッ!!!」
スズカ「ひゃいっ!?」
2人は機敏な動きで両手を広げると、
スカイ「私は雪見だいふくです!!」フヨッ
キング「チョコレート味とかどうですか!?」フヨッ
スズカ「………ふぇ?」フヨ
頭の上で大きな丸を作るウマ娘が3人。噴水の前で向かい合う形になった。
スカイ「………」フヨッ
キング「………」フヨッ
スズカ「……………ご、」
最初に均衡を破ったのはスズカだ。
スズカ「ごめんなさいっ!」
即座に身を翻して、歩幅より遠めに杖をついた。
スカイ「あっ、」
キング「スズカ先輩!」
耳を倒し、2人の抑止する声を一方的に遮断する。
カツンカツンと一生懸命に杖をつく。そして7回目の音を出そうとした時、スズカの動きが止まった。
考え直した訳ではない。
「スズカ」
一言だ。
小さな風を撒きながら正面に立つ彼は言った。
スズカ「ごくうさん…?」
当人である彼女でさえ不思議に思う。
後ろにいる2人なんてより一層だ。
ウララ「頑張ったね!スズカちゃん!」
スズカ「ウララちゃん……」
遅れてやって来るウララ。
方向を見るに、大きな木の陰に隠れていたようだ。
スカイ「ちょっと………セイちゃんの頭はキャパオーバー寸前なんだけど…」
キング「本当に悟空さんが関わっていたなんて……。まさかとは思うけど、からかった訳ではないわよね?」
悟空「ああ。ちゃんと本気だったさ」
スカイ「?」
悟空はスズカの目を合わせ、
悟空「スズカ」
スズカ「………ごめんなさい。また、わたし…」
悟空「………さっきウララと話したんだけどな?ーーもうやめにしよう」
スズカ「ッ…!」
耳を疑い、信じられないとばかりに顔を上げた。
その行動は失敗だった。
彼の真っ直ぐな目が、嘘偽りのない事だと示している。
スズカ「い、いや…です……」
力なく首を振る。
スズカ「確かに逃げてばかりだけど、自分から決めた事なんです……」
悟空「でもな、ヒトには合う合わねえってのがある。おめぇには合わなかったんだ」
スズカ「…そんな………………それなら、最初から協力なんて…」
悟空「すまねぇな」
項垂れるスズカに優しく触れる。さらには左手も動かし、スズカの両腕を挟みこむようにして持ち上げる。
悟空「んしょ…と」
そしてスカイ達と向かい合わせになるように反転させた。
スズカ「………………………え?」
スカイとキング。そしてスズカは同じ顔をしていた。
目をクリクリとさせて、首を傾げている。
悟空「スカイ!キング!」
真後ろからの声にスズカの肩はビクっと震わせ、恐る恐る上を向くと、ニヒヒッ!と笑う悟空を見た。
悟空「コイツさ!おめぇ達と友達になりてぇんだってよ!」
ウララ「ちょっと恥ずかしがり屋さんな所あるけど、仲良くしようね!」
あっけらかんと言い放つ。
スズカ「……?……………ふぁっ!?は、ふへ…!!?」
ボンッと効果音が鳴りそうなほど急速に顔が赤くなるスズカ。口を開けては閉めてを繰り返し、ちゃんとした言葉を出せずにいる。
悟空「いやぁー、おめぇ不器用すぎやしねえか?さすがのオラもこれじゃあ無理だって思ったぞ!」
ウララ「頑張ってたからお邪魔したくなかったんだけどね。やっぱり大切な事はちゃんと言わないと、って悟空さんと話してたんだぁ!」
スズカ「だ、だだだだだっ、だからと言ってこんなやり方…!」
まるで転校した初日に親と挨拶をする小学生のようだ。しかもその内容も小学生レベル。
想定外なカミングアウトのあまり、スズカは悟空の胸元を何度も叩いた。
悟空「へへっ!最初からこうしとけば良かったな!」
スズカ「こうしたくなかったから色々頑張ったんじゃないですかぁっ!」ペシペシ!
悟空「んでももう言っちまったしなぁ」
スズカ「せめて一言相談でもっ」
悟空「スズカ」
スズカ「!」
悟空「そろそろ腹括れ。いま喋んのはオラじゃねえだろ?」
悟空は人差し指を伸ばす。
それがどこに向かってるのかは、確認するまでもない。
スズカ「セイウンスカイさん…。キングヘイローさん…」
スカイ「………友達って、」
キング「本当ですか?悟空さんに言われて無理矢理、とかでしたら怒るのに協力しますけど」
スカイ「…………」
スズカ「っ、…………ほんとう、です」
スカイ・キング「「良かったぁ…!」
安堵にも等しい歓喜の声が聞こえた。
スズカ「え?」
スカイ「実は私達も考えていたんです。スズカさんと友達になりたいって」
悟空「へぇ。でもそれならスペ達が話してる時に一緒にいたらよかったんじゃねえか?いつか会話くれぇすんだろ」
キング「そういうのスズカさん苦手かもって事になったのよ」
スカイ「私達が知ってるスズカさんって、人との関係よりも走る事に集中してて、門限破って走ったり、ご飯抜いて走ったり、先輩に向かって " 私の前に立つな ,,って言った噂があったり…」
キング「そんなパーソナルスペースの狭いヒトなら、スペさん達の中に私達がいると邪魔に感じるだろうってね」
スカイ「あまり口数も多くない事は知ってたから、私達も消極的になっちゃって…」
スズカ「…………」
悟空「おめぇが自分の首絞めてたんじゃねえか」
スズカ「………い、言わないでください…」カァァァ
ウララ「スズカちゃんって怖いヒトだったんだね…」
悟空「これは不良ってやつだな」
ウララ「スズカちゃんは、ふりょー。お金とられちゃうんだっけ…?」
スズカ「取りません!それにかなり昔ですから!」
スカイ「でも本当なんですよね?」
スズカ「え、っと………先輩と揉めたこと?」
スカイ「いえ友達になるって事です」
スズカ「ああっ……、ほんと。本当よ!」
キング「それなら嬉しいんですけど、単刀直入に聞きます。どのラインまでなら不快に感じないですか?」
スズカ「ライン…?」
スカイ「距離感ですよ。先輩呼び、さん付け、呼び捨て。敬語やタメ口。直接聞くのは申し訳ないですけど、嫌な気持ちにさせたくないので」
スズカ「んー…………考えたことないわね…」
悟空「おめぇ達、すげぇ細かいとこまで気にするんだな。聞いてるだけで疲れてくんぞ…」
キング「上下関係とはこういうものなの」
悟空「ふーん。…………な、ウララ。やっぱさ、おめぇも早く敬語使いこなさないとマズくねえか?」
ウララ「だ、だよね…。グラスちゃんを意識して今からでも練習しとこうかな…」
キング・スカイ・スズカ「「「私にはしなくて良いから」」」
ウララ「!?」
悟空「ん、まぁ相手が大人だけの時だけで良いだろ」
ウララ「わかった。がんばってみる!」
悟空「おう」
スズカ「ーーーうん。セイウンスカイさんとキングヘイローさんが普段スペちゃん達と話すようにしてくれると嬉しいわ」
スカイ「りょーかい。でもそれなら私の事も気軽に呼んでほしいな。出来れば呼び捨てで」
キング「同じく」
スズカ「え?良いけど、呼び捨てにするのに何か理由でもあるの?」
スカイ「スペちゃんの嫉妬が面白そうなんだよね〜」
キング「一度エルさんに、ちゃん付けで呼んでもらうよう抗議していたくらいだもの」
スカイ「エルの場合はリギル時代があるかもだけど、私達が一瞬で呼び捨てにされたらスペちゃんモヤモヤすると思うし」
キング「それを見たグラスさんがモヤモヤするまでお決まりパターンよ」
スカイ・キング「「絶対に面白くなる!」」
スズカ「あなた達と友達になるのが怖くなって来たわ…」
悟空「たまに性格悪くなるんだよなぁ、コイツら」
スズカ「そうみたいですね。……知らなかった」
ふふっ、と笑みをこぼすスズカ。
心の鎖が解けたかのように、軽く、スッキリとした感覚を感じた。
悟空「なあ、話し済んだんなら飯行こうぜ。オラ腹へっちまったよ」
ウララ「さんせーい!」
スカイ「食堂っていちご大福あったかなぁ?」
キング「茶化さない。……でも中々面白かったわね」
スズカ「…………お願いだから忘れて」
和やかなムードを漂わせ、食堂に向けて歩を進める一同。
1番後ろにいるスズカは前を歩く4人を見てふっ…と息を漏らす。
" ともだち ,,
その単語を声に出さず、口だけを動かした。
【スズカ】
視線の一つに絞る。
頭の中に語りかけてきた彼は前を向いていた。
【なんですか?】
【良かったな!】
【っ!………、】
今回の一件。かなり情けないものだった。
1人ではろくに友達を作れず、いざ踏み込んでも空回りして後輩に気を遣わせる始末。
それでも、
「はいっ!」
彼女達と友達になれて良かった、と心の底からそう思う。
スカイ「はいはい出ましたぁ、内緒話〜」
キング「気持ちのいい返事だったわ」
ウララ「ずるいずるーい!ウララにも聞かせてよー!」
悟空「スズカぁ…」
スズカ「ごめんなさい。まだ慣れてないみたいで………つい」